本業領域に広がるAI活用
まず議論の前提として共有されたのは、AI活用が補助業務から本業領域へと広がっているという点です。要約や翻訳といった汎用業務から始まった取り組みは、現在では引受、査定、商品開発といったコア業務へと適用が進みつつあります。この点について、東京海上ホールディングスの生田目氏は、AI活用の現在地を試行段階から成果創出の段階へ移行していると説明しました。業務課題やKPIと結びつけながら、具体的な価値を生み出すことが求められるフェーズに入っているという認識です。
同社では、生成AIの登場によって非構造データの活用が広がったことが大きな転換点になったとしています。事故や災害に関する画像や文書といったデータを扱えるようになったことで、保険業務そのものへの適用が現実的なものとなりました。具体的には、海外の引受業務において、地域ごとに異なる条件確認をAIで処理することで、業務の迅速化と正確性の向上を実現しています。また、疾病の重症化リスクの予測や、山火事などの災害の早期検知といった取り組みも進められています。
こうした取り組みが進む中で、生田目氏は、効率化の議論は一定程度進んでおり、本業への適用も広がりつつあるとした上で、今後はその活用をどこまで具体的な成果や価値創出につなげられるかが問われていると指摘しました。
そのうえで、AI活用は経営の重要テーマになっていると述べています。単なる効率化ツールではなく、どのような金融機関を目指すのかという経営課題と結びついている点が特徴です。
一方、アフラック生命の高橋氏は、現場実装の観点からAI活用の実態を説明しました。同社では2023年に生成AIを導入し、2024年から査定業務など専門領域への適用を進めています。
査定業務では、過去の判断や関連情報を参照しながら意思決定を支援する仕組みが構築されています。その過程で、情報をどのように整理し、厳選するかが精度を左右することが明らかになったといいます。
また、高橋氏は、不確実な場合にはAIに回答させない設計の重要性にも言及しました。金融業務では誤答のリスクが大きいため、精度向上だけでなく制御の設計も不可欠です。
さらに、AI活用は個別業務にとどまらず、第2ライン・第3ラインを含めた業務設計の見直しを伴うと指摘しました。こうした動きは、AI導入が組織全体の再設計につながることを示しています。
同社では、生成AIの登場によって非構造データの活用が広がったことが大きな転換点になったとしています。事故や災害に関する画像や文書といったデータを扱えるようになったことで、保険業務そのものへの適用が現実的なものとなりました。具体的には、海外の引受業務において、地域ごとに異なる条件確認をAIで処理することで、業務の迅速化と正確性の向上を実現しています。また、疾病の重症化リスクの予測や、山火事などの災害の早期検知といった取り組みも進められています。
こうした取り組みが進む中で、生田目氏は、効率化の議論は一定程度進んでおり、本業への適用も広がりつつあるとした上で、今後はその活用をどこまで具体的な成果や価値創出につなげられるかが問われていると指摘しました。
そのうえで、AI活用は経営の重要テーマになっていると述べています。単なる効率化ツールではなく、どのような金融機関を目指すのかという経営課題と結びついている点が特徴です。
一方、アフラック生命の高橋氏は、現場実装の観点からAI活用の実態を説明しました。同社では2023年に生成AIを導入し、2024年から査定業務など専門領域への適用を進めています。
査定業務では、過去の判断や関連情報を参照しながら意思決定を支援する仕組みが構築されています。その過程で、情報をどのように整理し、厳選するかが精度を左右することが明らかになったといいます。
また、高橋氏は、不確実な場合にはAIに回答させない設計の重要性にも言及しました。金融業務では誤答のリスクが大きいため、精度向上だけでなく制御の設計も不可欠です。
さらに、AI活用は個別業務にとどまらず、第2ライン・第3ラインを含めた業務設計の見直しを伴うと指摘しました。こうした動きは、AI導入が組織全体の再設計につながることを示しています。
顧客接点におけるAI活用の進展
次に議論されたのが、顧客や代理店といった対外接点におけるAI活用です。ここでは、業務支援を超えた新たな顧客価値の創出がテーマとなりました。
国内の取り組みとして、アフラック生命の高橋氏は、代理店向けに約款やマニュアルを参照できるAIツールを提供していると説明しました。代理店がAIと協働しながら業務を進める形が広がりつつあり、今後は募集から申込みまでを一体的に支援する仕組みも視野に入れています。
一方で、こうした動きは海外ではさらに先行しています。デロイト トーマツの滝沢氏は、海外ではAIが経営戦略の中核に位置づけられていると説明しました。効率化によって生まれたリソースを、新たな商品やサービスに振り向ける動きが進んでいるといいます。
具体例として紹介された英国のAvivaでは、事故受付から査定、顧客対応に至るまでの一連のプロセスに複数のAIエージェントを多層的に組み込み、それぞれが連携することで業務全体を最適化する取り組みが進められています。
また、ドイツのClarkでは、顧客が保険証券をアップロードするとAIが内容を分析し、保障の過不足や重複を可視化した上で商品提案を行う仕組みが構築されています。さらに、必要に応じて人の専門家につなぐ設計が採用されており、利便性と安心感の両立が図られています。
滝沢氏は、AIによる客観性と人による安心感の組み合わせが重要であると指摘しました。特に日本では対面文化が残るため、この設計が重要な論点になると考えられます。
こうした動きからは、AIが単一業務を支援する存在から、顧客接点全体を構成する要素へと変化していることが読み取れます。
また、高橋氏は、顧客接点でのAI活用を進める上では制度面の整理も重要であると指摘しました。保険募集における主体の考え方や、誤った案内が生じた場合の責任の所在などは、今後の実装に向けた重要な検討課題となります。
国内の取り組みとして、アフラック生命の高橋氏は、代理店向けに約款やマニュアルを参照できるAIツールを提供していると説明しました。代理店がAIと協働しながら業務を進める形が広がりつつあり、今後は募集から申込みまでを一体的に支援する仕組みも視野に入れています。
一方で、こうした動きは海外ではさらに先行しています。デロイト トーマツの滝沢氏は、海外ではAIが経営戦略の中核に位置づけられていると説明しました。効率化によって生まれたリソースを、新たな商品やサービスに振り向ける動きが進んでいるといいます。
具体例として紹介された英国のAvivaでは、事故受付から査定、顧客対応に至るまでの一連のプロセスに複数のAIエージェントを多層的に組み込み、それぞれが連携することで業務全体を最適化する取り組みが進められています。
また、ドイツのClarkでは、顧客が保険証券をアップロードするとAIが内容を分析し、保障の過不足や重複を可視化した上で商品提案を行う仕組みが構築されています。さらに、必要に応じて人の専門家につなぐ設計が採用されており、利便性と安心感の両立が図られています。
滝沢氏は、AIによる客観性と人による安心感の組み合わせが重要であると指摘しました。特に日本では対面文化が残るため、この設計が重要な論点になると考えられます。
こうした動きからは、AIが単一業務を支援する存在から、顧客接点全体を構成する要素へと変化していることが読み取れます。
また、高橋氏は、顧客接点でのAI活用を進める上では制度面の整理も重要であると指摘しました。保険募集における主体の考え方や、誤った案内が生じた場合の責任の所在などは、今後の実装に向けた重要な検討課題となります。
ガバナンスと制度の論点
AI活用の進展に伴い、ガバナンスや制度面での論点も重要性を増しています。
金融庁の野崎氏は、AIにはリスクを上回る便益があるとの認識を示し、活用を進める必要性を強調しました。また、AI活用に取り組まないこと自体がリスクになり得るとの考えも示されています。
一方で、AIの特性を踏まえると、従来のようにあらかじめルールを定めて管理するだけでは十分とは言えません。技術の進展や活用範囲の拡大に応じて前提が変化する中で、評価と見直しを繰り返すアジャイル型のガバナンスが重要になるとされています。
特に顧客向けサービスでは、誤情報の提示や推奨の妥当性といった観点から、顧客保護の重要性が高まります。そのため、回答の制御やロジックの透明化、人による確認や介在といった仕組みを組み合わせて運用していくことが求められます。
こうした点について、生田目氏は、ガバナンスにはリスク管理としての側面だけでなく、経営が意図した成果を確実に生み出すための仕組みとしての側面があると指摘しました。AI活用が経営課題となる中で、価値創出とリスク管理の両立をどのように実現するかが、今後の重要なテーマとなります。
金融庁の野崎氏は、AIにはリスクを上回る便益があるとの認識を示し、活用を進める必要性を強調しました。また、AI活用に取り組まないこと自体がリスクになり得るとの考えも示されています。
一方で、AIの特性を踏まえると、従来のようにあらかじめルールを定めて管理するだけでは十分とは言えません。技術の進展や活用範囲の拡大に応じて前提が変化する中で、評価と見直しを繰り返すアジャイル型のガバナンスが重要になるとされています。
特に顧客向けサービスでは、誤情報の提示や推奨の妥当性といった観点から、顧客保護の重要性が高まります。そのため、回答の制御やロジックの透明化、人による確認や介在といった仕組みを組み合わせて運用していくことが求められます。
こうした点について、生田目氏は、ガバナンスにはリスク管理としての側面だけでなく、経営が意図した成果を確実に生み出すための仕組みとしての側面があると指摘しました。AI活用が経営課題となる中で、価値創出とリスク管理の両立をどのように実現するかが、今後の重要なテーマとなります。
オクトノット編集部の所感
本セッションから見えてくるのは、保険業界におけるAI活用が「再設計」の段階に入っているという点です。業務単位での効率化から、業務プロセス全体の再構築へと論点は移行しています。さらに、AIエージェントの進化により、顧客との関係性そのものも変化する可能性があります。
生田目氏が指摘したのは、AIエージェントの普及によって顧客と企業の関係性そのものが変わる可能性です。これまでのように企業が用意した画面や手続きに顧客が従うのではなく、顧客側のAIが自由な形式で問い合わせや比較を行うようになると、企業が設計した導線は前提として機能しにくくなります。
このとき問われるのは、画面の分かりやすさではなく、商品情報や約款といった中身の情報です。これらの情報がAIに正しく読み取られ、他社と比較されたうえで選ばれるかどうかが重要になります。これは、顧客に見せるための設計から、AIに理解される前提での設計へと重心が移ることを意味します。
また、高橋氏の指摘の通り、こうした変化は組織全体の見直しを伴います。さらに、野崎氏が示したように、それを支えるガバナンスも進化が求められます。
AI活用は導入の是非ではなく、どこまで構造を見直せるかが問われる段階に入っています。金融機関にとっては、業務プロセス、情報設計、ガバナンスをどの単位で見直すのか、その優先順位をどう定めるのかが、今後の競争力を左右する重要な論点になると考えられます。
※本記事は、イベントを取材し、執筆者が記事にしたものです。 ※本記事の内容は、執筆者およびイベントの登壇者、協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。 ※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
生田目氏が指摘したのは、AIエージェントの普及によって顧客と企業の関係性そのものが変わる可能性です。これまでのように企業が用意した画面や手続きに顧客が従うのではなく、顧客側のAIが自由な形式で問い合わせや比較を行うようになると、企業が設計した導線は前提として機能しにくくなります。
このとき問われるのは、画面の分かりやすさではなく、商品情報や約款といった中身の情報です。これらの情報がAIに正しく読み取られ、他社と比較されたうえで選ばれるかどうかが重要になります。これは、顧客に見せるための設計から、AIに理解される前提での設計へと重心が移ることを意味します。
また、高橋氏の指摘の通り、こうした変化は組織全体の見直しを伴います。さらに、野崎氏が示したように、それを支えるガバナンスも進化が求められます。
AI活用は導入の是非ではなく、どこまで構造を見直せるかが問われる段階に入っています。金融機関にとっては、業務プロセス、情報設計、ガバナンスをどの単位で見直すのか、その優先順位をどう定めるのかが、今後の競争力を左右する重要な論点になると考えられます。
※本記事は、イベントを取材し、執筆者が記事にしたものです。 ※本記事の内容は、執筆者およびイベントの登壇者、協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。 ※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。


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