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流行りの通話ツールDiscordとは?その特徴や影響について

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Discordという名前を聞いたことがありますか?現在、若い世代を中心に流行している通話ソフトで、元々はゲーマー向けに作られたものですが、現在ではより広いコミュニティに利用されています。Discordコミュニティの影響力は拡大しており、金融業界でも無視できない存在になっています。さらには、今後到来するWeb3やメタバースの時代においてコミュニケーションを担うツールとなる可能性を秘めているとも言われています。今回はこのDiscordについて、その成り立ちや特徴について見ていこうと思います。

Discordとは

Discordとはそもそも何か?

Discord(ディスコード)は、アメリカで誕生したボイスチャットサービスです。音声とテキストの両方によるユーザー間でのコミュニケーションが可能で、1対1だけでなく大人数でのやりとりにも対応しています。
主にオンラインゲームのプレイヤーが使用するサービスとしてアメリカを中心に人気を集めていましたが、日本でもユーザー数が増加し、現在では 通話ツールのスタンダードとなっています。オンラインゲームでは、通話の遅延がゲームの展開に大きな影響を与えるため、通話の遅延が少ないDiscordが評価され利用されています。
また、チャットサービスとしての使いやすさから、ゲーマーだけでなく、ビジネスなどでも使用されるようになっており、近年、一層注目を集めています。

Discordの仕組み・特徴

Discordにはサーバーと呼ばれるコミュニティ(Teamsでいうチーム)に位置するグループがあり、サーバー内のボイスチャンネルに入ることで通話が可能です。ボイスチャンネルは通話部屋のようなもので、常時存在しているため好きな時に出入りが可能です。また、ボイスチャンネルはサーバー内に複数作ることができるため、用途に応じて分けることができます。空いている部屋(ボイスチャンネル)に一緒に入れば話せるという手軽さと、サーバー毎にボイスチャンネルやテキストチャンネルを自由に設定できる自由度の高さが特徴です。
また、Discordはbotを組み込むことで、機能の拡張が可能です。具体的には、コミュニティに参加したユーザーに自動で対応を行うMEE6(※1)や自動翻訳を行うDiscord Translatorなど、便利なbotが多く公開されており、定型的な操作であればbotに代行させることができます。

(※1)ゲーム内の特定にコマンドに対応する応答を自前に定義できるなど、ゲーム内での行動とメッセージを自動的に連携するbot機能。

ビジネスにおけるDiscord

元々、Discordは利用規約にて商用利用が禁止されていましたが、2020年の規約改定にて、商用利用が解禁されました。企業がDiscordを利用する目的は大きく二つあると考えられるでしょう。
一つは社内コミュニケーションツールとしての利用です。前述のサーバーとボイスチャンネルを活用することで、ライトなコミュニケーションを取りやすいと言われています。企業によってはサーバー内にボイスチャンネルを複数作成し、それぞれに会議部屋や作業部屋というように名前を付けて、疑似的なオフィス空間を作っているところもあるようです。会議部屋はイメージが出来ると思いますが、作業部屋は個人の作業をするためのチャンネルです。基本的にはキーボード音が響くのみで会話を目的としてはいませんが、常時通話をつないでいる状態なので、ちょっとした質問などをしやすいという特徴があります。
もう一つは企業を主軸にしたコミュニティ活動です。広報などを目的とした情報を発信するため場所や、会社主催の勉強会などを実施するための場所として利用されています。特に、Python等のプログラム言語やNFT等の最新の技術トレンドについては既にユーザー主体で大きなコミュニティが展開されており、ベンチャー企業などを中心に情報感度が高い人々が集まりやすい土壌となっているようです。

Discordの金融業界への影響

●金融商品の売買コミュニケーションへの利用
オンラインゲームでのリアルタイムコミュニケーションを実現するために利用される低遅延という特性を持ったDiscordは、金融取引に関するサーバーが多く用意されています。トレーダーがDiscordを使い投資に関する助言の交換などが活発に利用されています。しかし、こうした利用に対して少しネガティブな事象も発生しているようです。

●「GameStop」の株価急騰の裏にDiscord
2021年1月下旬、世界最大のビデオゲーム小売チェーンである「GameStop」の株価が急騰し、5日間で3倍になるという驚異的な値動きを見せました。GameStopの株価上昇を推進したのは海外掲示板・Redditの個人投資家集団でしたが、彼らのコミュニティツールとして利用されていたのがDiscordでした。Discordは当該の投資家集団が集まるサーバーを削除したと発表しましたが、Discordは特定の技術だけではなく暗号資産を中心とした資産運用についても有識者が集まったコミュニティが活発であり、今後も動向を注視する必要があると考えられるでしょう。

●金融情報を盗むマルウェアの横行
デジタルアーツ社は、パスワード付きZIPファイルとパスワードを同じ経路で送信する方法(いわゆるPPAP)の代替手段として利用が進むファイル共有サービスが、マルウェアの感染経路になっているとするレポートを発表しました。中でも、Discordを使った手法が増加していると注意喚起されています。Discordで確認したマルウェアの9割が、オンラインバンキングの認証情報を盗むものとなっており、新たな犯罪の経路となる可能性として金融機関としても把握しておくことが必要であると考えられるでしょう。

Discordはこれからどうなるのか

●NFTと暗号資産の流通の場としてのDiscord
現在、既にDiscordはNFTのコミュニティの事実上の拠点となっています。DiscordのCEOであるJason Citron氏が2021年11月に、メタマスクなどの暗号資産ウォレットを通したイーサリアムネットワークとの統合を示唆しましたが、その後計画の取り止めを発表しています。Discordは現在、チームにそれを成し遂げるだけの暗号技術が備わっていないとしていますが、今後、ウォレット事業者の買収を行ったり、技術者のチームを結成してウォレットを構築したりすることは可能だと言及しています。
また、Discordを活用している企業もNFTの活用に意欲的であり、今年の2月にはWeb3関連プロダクト開発企業のKnotがDiscord上のユーザーのロール(※2)情報をNFT化できるサービス「Proved」をローンチしています。このサービスを活用することで、本名ではなく偽名(ニックネーム)で活動しているユーザーでも、仕事の実績や経歴の証明が可能です。
Knotの代表の小林氏は、ニックネームを使用することによって、外見、年齢、性別などの差別や偏見なくオンライン上で自由に仕事をする世界観の実現を目指すと語っています。これからもWeb3やNFTといった文脈で登場する多くのサービスにおいて、Discordの名前を見かけるようになることでしょう。

(※2)サーバーの管理やメッセージ送信、ボイスチャンネル参加など権限。

●ソーシャルなプラットフォームとしてのDiscord
サムスンの米国部門はWeb3関連のコンテンツにアクセスするための場所として、Discordで独自のサーバーを開設しました。
ゲーマーやクリエイターの交流向けの部屋と、メタバースやNFTの購入・取引に興味を持つWeb3ファンに向けた部屋を用意しており、すでに17万人ほどのメンバーを獲得しています。こうした動きはサムスンに留まらず、スキットルズといった食品・外食産業、アディダスやNew Eraなどのファッションブランドにも広まっています。Discordコミュニティもまた、新たなプラットフォームとなりうる可能性を秘めていると言えるでしょう。
一方で、難しいところは、現在のDiscordは隠れ家的な側面もあるため、ビジネス/プライベートを問わず大々的に利用されはじめると、アーリーアダプター達が別のプラットフォームに移行してしまい、専門性の高いコミュニティとしての役割は結果的に無くなってしまう、という可能性もあり得ます。いずれにしても、Discordのコミュニティプラットフォームとしての動向に注目していく必要があります。

田代 浩平
NTTデータ 第三金融事業本部 e‐ビジネス事業部 デジタル戦略室

前職の総合印刷会社にて、金融機関が顧客向けに提供するスマートフォンアプリの企画・開発に従事。
規制緩和やオープン化など金融を取り巻く環境が変化する中で、オープンAPIを活用した金融サービスの企画・開発に携わる。
NTTデータ入社後は、金融×デジタルの分野での技術動向の調査・発信の経験を経て、
現在は金融サービス向けのAPI連携基盤の開発や次期スマートフォンアプリの企画に取り組んでいる。

※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています 。
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執筆 オクトノット編集部

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