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Salesforceを金融業で活用する
 「NTT DATA 金融 Salesforce Hub」

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CRM(顧客管理)プラットフォームとして有名なSalesforce。名前を聞いたことはあるものの、どのように導入し、どのように活用していけばよいか明確に描けていない——そんな金融業界の方々も多いのではないでしょうか。導入から活用までの難易度の高さに悩む企業は少なくありません。この問題を解決するチームがNTTデータの「金融 Salesforce Hub」です。この記事では金融 Salesforce Hubの概要と強み、取り組み内容、今後の展望を紹介します。

はじめに

Salesforceは多くの顧客に活用されているCRMプラットフォームです。金融業界での活用も増加しており、顧客情報の一元管理、営業やマーケティングの高度化、業務の属人化の防止など多くの効果を発揮しています。とても効果的に見られるSalesforceですが、導入・活用に難しさがあります。

特に金融業界には、安全対策や法基準への対応、顧客情報への適切なアクセス管理、企業間連携や企業内での組織再編など、CRMを使用する上でのいくつかの考慮すべき点があります。さらに、安全対策や法基準への対応として、金融庁ガイドラインのクラウドサービス利用に関する指針やFISC(金融情報システムセンター)の安全対策基準など、遵守すべき事項も多くあります。また、顧客情報へのアクセス管理では、金融機関内の部門を横断した顧客情報の一元管理と権限設定や金融機関の合併や業務の合理化など、組織再編による統廃合を見越した柔軟な設計が必要です。

「Salesforceを導入して業務を効率化したいけれど、どこから手をつけてよいのかわからない。」そんな悩みをお持ちの金融業界の方に向けて、NTTデータではSalesforceに関する専門知識に加え、金融業務の知見を兼ね備えた「金融 Salesforce Hub」を2025年4月に立ち上げました。図1はNTTデータの金融 Salesforce Hubに関わる組織を示したものです。

図1:NTTデータと金融 Salesforce Hub、パートナー会社の関係図

NTTデータのなかには、金融・公共・法人の業態別の分野と全社横断の技術推進をする分野があります。図1には、「金融 Salesforce Hub」と関わりを持つ金融分野と技術推進分野の2つの分野を示しています。

図1にあるNTTデータの金融分野は、金融インフラ・金融機関へ業務系システムや決済・ネットワークシステムを提供しています。金融分野内には担当顧客や役割ごとに部門分けがあり、銀行、信託、証券、保険、カードなどの金融機関を担当する事業部や、さまざまな事業部とともに横串で金融に関する事業を促進するアセットを作成し事業創造、ビジネス拡大を担う金融イノベーション本部などがあります。
金融 Salesforce Hubの活動に参加するメンバーの多くは、この金融イノベーション本部に所属しています。

また、NTTデータのテクノロジーコンサルティング&ソリューション分野(以下、TC&S分野)は、先進テクノロジーを強みに、業界横断で技術コンサルティング、先端技術・ソリューションの販売、新規事業ソリューションの企画などを実施しています。構想策定から環境の実現まで一気通貫でサポートし、顧客に価値を提供するのが特徴です。

この組織の重点的な取り組みにSalesforceの展開があり、金融 Salesforce Hubは、NTT DATA Salesforce Hubと連携し、技術支援やアセットの共有に取り組んでいます。

金融 Salesforce Hubは、NTTデータの社外との連携も積極的に行っています。図1にあるように、金融業務サポート、Salesforceや周辺ソリューションの技術サポートをするパートナー企業もあり、Salesforceの効果的な導入を実現しています。

次に金融 Salesforce Hubについて説明します。

金融 Salesforce Hubとは

NTTデータには、Salesforceに関する導入、運用、コンサルティングのノウハウを全社的に共有し活用する「NTT DATA Salesforce Hub」(以下、全社Hub)があります。(図1の①)全社Hubと連携する「金融 Salesforce Hub」はNTTデータの各事業部、グループ会社、パートナー企業で構成されています。(図1の②)金融業界でのさまざまなプロジェクト経験者、金融業務の有識者、国内トップクラスのSalesforceエンジニアなどが在籍しています。

金融 Salesforce Hubには、銀行・信託・証券・保険などの業務経験を持ったメンバーがいるため、金融分野のさまざまなお客様に対しても最適なチームを組むことができます。Salesforceの導入のサポート、内製化、定着支援などSalesforceの活用全体を通じた支援を提供できます。金融 Salesforce Hubは、①の全社のSalesforce Hubとも連携しながら日々、金融領域におけるイノベーションを推進しています。

では次に、金融Salesforce Hubの取り組みと強みについてご紹介します。

金融 Salesforce Hubの取り組みと強み

金融 Salesforce Hubでは、Salesforceの新規導入だけでなく、導入したが十分に活用ができていない、という金融機関の方々の相談を受け、提案活動をしています。個々の金融機関の方の状況に合わせ、Salesforce導入と活用に向けたさまざまな取り組みを行っています。その取り組みと強み、適用事例を紹介します。

金融 Salesforce Hubの取り組みと強み
1. Salesforce導入に関するコンサルティング、要件整理、構想策定の支援
お客様の現場の方々も含むインタビューを通じ業務の現状把握をし、営業改革ロードマップの策定、Salesforce導入のRFP作成までを各金融機関の状況に合わせて実施します

2. Salesforce上で動くnCino※1、Agentforce※2などを活用したソリューション提案
Salesforceの標準機能だけでなく、Salesforce関連ソリューションなどを含め勘定系システムや金融業務に特化したシステムとの連携も提案できます

3.  銀行、保険、カードなどさまざまな金融機関への導入、活用支援実績
NTTデータグループ全体で3500件以上の導入実績があります。この知見を用いて効果的にSalesforceの業務導入を進めることができます。

4. グループ会社、パートナー企業との協業体制による、柔軟かつ専門性の高い支援
協業体制が整っているため十分な金融業務サポート、Salesforceや周辺ソリューションの技術サポートを提供することができます。

金融 Salesforce Hubを介することで、15000人以上のSalesforce認定資格者、4700人以上のSalesforce認定プロフェッショナルにアクセスできます。Salesforceの最高技術資格認定テクニカルアーキテクト(CTA)」を取得しているメンバーも在籍しています。Salesforceに通じたメンバーによる柔軟なサポート体制を提供できます。
※各数値は2024年9月時点のもの

※1 nCino
米国のnCino, Inc.(日本法人のnCino株式会社)が提供する融資業務プラットフォーム。
Salesforce上に構築される融資業務特化のクラウド型プラットフォーム。
金融機関の法人・個人融資業務(案件受付、融資稟議、契約締結、モニタリング)を一元管理。
紙やExcel中心の手作業を効率化、申し込みから実行までの時間短縮を実現。

※2 Agentforce
Salesforceが提供する自律型AI。
「Sales Agent」や「Marketing Agent」の総称。
面談記録の作成・要約自動化、問い合わせの自動回答等による営業活動支援。

図2:金融 Salesforce HubでのSalesforce導入イメージ

図2には金融 Salesforce Hubが行うSalesforce導入のイメージを示しています。特徴のひとつに要件定義前の「事前要件整理」を適用することがあげられます。「事前要件整理」を行うことで要件定義の進め方ノウハウや、過去の実績をもとに作成した金融機関向けのプロトタイプを用いて、Salesforceで、できること・できないことを具体的に説明し、円滑に進めることが可能です。

次に金融Salesforce Hubが実施したSalesforceの適用事例を2つ、紹介します。

【事例①:地方銀行への次世代営業支援システム導入】

金融 Salesforce Hubでは、地方銀行がその預金者や融資先となるお客様に対して十分な価値を提供するめに、Salesforceを活用した営業変革の推進を行いました。

図3:地方銀行への次世代営業支援システム導入で実現する営業プロセスのあるべき姿

図3はSalesforceの導入によって変革する銀行の営業の「あるべき姿」を示したものです。データ活用によってアプローチするお客様を選定、お客様の理解を深めることで最適なプランを作成します。過去の好事例などのナレッジを容易に取得し、参考にすることで効率よく高品質な提案を実現します。

交渉履歴はスマホでの音声入力等で入力負担を軽減することも可能です。また、ダッシュボードで交渉履歴を可視化することで、本部や上長からも活動状況を管理でき、必要に応じて営業担当者をサポートできます。営業店からの声を収集してアップデートする際も、Salesforce導入により、ノーコード・ローコードで容易に項目追加・編集が可能となり、ベンダーに頼らず改修を行うことができます。

Salesforceを導入した「あるべき姿」となった営業活動では、AIが財務情報や交渉履歴からデータを分析して融資提案機会をもれなく抽出し、新規契約に向けた提案や、顧客情報の一元管理により、ターゲットとするお客様の情報検索時間が削減されます。これにより、顧客へのヒアリングや契約等の提案活動にあてることができる時間が約20%増やすことができます。

金融 Salesforce Hubでは、システム実装の前段階でこの「あるべき姿」に向けたフィージビリティのあるロードマップを描くことが有効であると考えています。

実際のプロジェクトでは、まず地方銀行の支店を約30件訪問し、約100名の方に現場の具体的な課題をインタビューするところから始めました。これに基づき、法人・個人営業、営業マネジメントの各領域での「あるべき姿」を定義し、現状とのギャップを抽出し、Salesforceと周辺ソリューションを合わせた提案をしています。営業変革の上流工程のコンサルティングから、システムのリリース、利用定着、成果の具体化までの伴走サポートといった一気通貫での対応が可能な点が評価され、開発ベンダーに選定され、営業変革に関与するに至っています。

【事例②:保険会社のコンタクトセンター業務の高度化支援】

保険会社の契約者の方から電話などでコンタクトセンターに入る情報を処理する音声基盤と、Salesforceを組み合わせた提案・実証実験を実施しました。図4は、保険会社のコンタクトセンターのあるべき姿を描いています。

図4:保険会社のコンタクトセンター業務の高度化プロジェクトで描いたあるべき姿

Salesforceの導入に合わせ、電話だけでなく、Web等の複数チャネルからの問い合わせを可能にし、接客応対にAIを導入しています。AIのチャットボット等の応対により人間のオペレーターの負荷を軽減します。また、人間のオペレーターがAIサポートを使用しての応対することで、安定した品質での応対が可能になります。顧客情報や応対履歴等をAIが分析し、応対を改善し、より高度なコンタクトセンターを実現できます。

また、図4では各領域で導入ポイント(図4の①~③)を整理しています。図の①から③を説明します。

導入ポイント① シームレスな顧客応対
お客様が好みのチャネルを使用することで、ストレスなく応対を完結できます。
また、どのチャネルからでも、お客様情報を一元的に把握し、一貫してパーソナライズされたサービスを提供します。

導入ポイント② 効率的かつ安定したオペレーション
AIと人間の協業により人間のオペレーターへの呼量を抑制するなど、お客様からの問い合わせに迅速かつ的確に対応できます。
AIの力を借りることで、これまでのオペレーターの経験に基づくナレッジを活用し経験の浅いオペレーターでも安定感あるサービスを提供できます。

導入ポイント③ 「お客様の声」の分析高度化
AIが応対履歴分析から自動応対やFAQの有効性を分析し、接客応対シナリオの拡充を実現します。
さらに保険契約更新の案内を電話するキャンペーン施策の高度化等も推進できます。

AIの活用や、顧客情報の一元化によりバックエンドの業務を効率化し、また顧客情報・行動履歴等を分析し、「お客様の声」の理解を促進しています。さらに、SkyVisualEditor※3というソリューションを使用することで保険業務に適したコンタクトセンターの業務システムの画面をノーコード・ローコードで作成しています。従来は業務ごとに画面を移動して対象のシステムを使用していましたが、一画面で複数の業務ができるようにレイアウトを集約することで、画面の移動が不要となり、効率よく業務を進められるようになります。Salesforce標準では実現が難しい画面を作成でき、現場の方々の要望を充足できています。

※3 SkyVisualEditor
株式会社テラスカイが提供
Salesforce開発を支援するノーコード/ローコードツール
標準機能だけでは実現が難しい画面をドラッグ&ドロップで簡単に作成可能

金融機関のSalesforce導入の窓口として

金融 Salesforce Hubはシステムを導入後も、金融機関とともに伴走してSalesforceの活用を定着させる活動を行っています。新しくSalesforceを使って動くシステムを使い始めたことで見えてきた課題に対しても具体的な解決策を提案し、利用定着・成果創出を実現します。システムを導入したから終了、ではなく、金融機関に成果をもたらすことが、本当の意味での「営業改革」であると私たちは考えます。

また、金融 Salesforce Hubでは現在、展示会や業界セミナーへの参加、記事発信など、情報発信にも力を入れています。これらの場を通じて、Salesforce導入を検討している金融機関や事業者の皆さまとの接点を広げ、より多くの課題解決に貢献したいと考えています。

NTTデータの金融業界への深い理解と、これまで培った知見やノウハウを活かし、導入に関する初期的なご質問から、PoCのご相談、既存活用の高度化まで、幅広く対応可能です。私たちが、Salesforce導入に関するあなたの“最初の問い合わせ窓口”になります。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
お問い合わせ先:
金融Salesforce Hub_hml(アセットビジネス推進) 
financialsector_sf_cp@hml.nttdata.co.jp

この記事を書いた方
山内 大優 (やまうち たいゆ) さん
株式会社NTTデータ 金融イノベーション本部 ビジネスデザイン室
2020年、株式会社NTTデータに入社。損害保険会社や銀行にてデータモデリング支援に複数参画。モデリングに付随し、各種設計書の作成や変更運用、SQL性能試験等を経験。金融(主にバンキング)におけるデータ理解において強みを持つ。2025年より金融 Salesforce Hubに参画。


※本記事の内容は、執筆者が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事内に登場する商品またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。
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執筆 オクトノット編集部

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