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金融が変われば、社会も変わる!

挑戦者と語る

デジタルツインを活用した新たなATM設置戦略
セブン銀行の先進的取り組み

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ATMサービス、インターネットバンキングなど幅広い金融サービスの提供のみならず、メタバースやAI、データ利活用に象徴されるようなテクノロジーの進展を見据えた、新たな価値創発にも挑む「セブン銀行」。
そんななか、セブン銀行コーポレート・トランスフォーメーション部AI・データ推進グループで事業・現場をリードする高尾さん、下山さん、NTTデータグループで幅広い最新技術への知見を持つ渡辺さん、NTTデータで金融業界へ新規ビジネスを創発する横田さんが取り組んだ「デジタルツインを活用したATM設置シミュレーション」についてお話を伺いました。

「デジタルツインを活用したATM設置シミュレーション」とは

_まずは、本案件において企画を担当した高尾さんと横田さんにお話を伺います。簡単に自己紹介をお願いしたいです。

高尾さん セブン銀行コーポレート・トランスフォーメーション部の高尾です。普段はデータ分析や新規事業創発を担当しておりまして、これまでもATMのデータを活用した予測やATMの設置に関する分析などをしてきました。

横田さん NTTデータ金融イノベーション本部の横田です。「金融×テクノロジーで世の中をより良くする」を志に、最新テクノロジーの動向の調査やそれらを用いた新規事業創発、社内外への情報発信などに取り組んでいます。

セブン銀行の高尾さん(左)とNTTデータの横田さん(右)

_NTTデータと協働で取り組まれた「デジタルツインを活用したATM設置シミュレーション」について教えてください。

高尾さん 簡単にいえば、‘’ デジタルツインを使ってセブン銀行ATMの設置場所を検討しやすくしよう‘’といった取り組みです。セブン銀行のATMはセブン-イレブンに置かれているイメージが強いと思いますが、コンビニだけでなく地下鉄や商業施設など街なかにも設置されています。デジタルツインを用いたATM設置シミュレーションを可能にすることで、行内でのATM設置の意思決定や営業促進、データ分析などをより進めることができればと思いました。

デジタルツイン空間にATMを設置し、人の並び方や周辺の人の流れをシミュレーションするイメージ

横田さん セブン銀行は、銀行という枠にとらわれずにテクノロジーを積極的に活用して進化し続けていらっしゃる印象があったので、金融×テクノロジー起点で新規事業をと考えたときに共創させてしいただきたい企業でした。また、デジタルツインは現実そっくりの仮想空間上でシミュレーションを行うことのできる技術です。ATMという現実の筐体を軸にビジネスをされているセブン銀行だからこそ、現実のさまざまな制約を仮想空間上でシミュレーションできることはメリットになるのではと仮説を立て、ご提案することになりました。

_高尾さんは、NTTデータから、「デジタルツインを活用したATM設置シミュレーション」を実施しないかと提案された際、率直にどう思われましたか。

高尾さん 新しいことと、現状の課題を紐づけた形で仮説を持ってきてくださったので、たいへんありがたいと感じました。私が所属するコーポレート・トランスフォーメーション部は新技術を深堀りしてビジネス化する部署です。これまでは業務部門として協働して構造データ(※1)を扱うことはあっても、本案件のように非構造データ(※2)を扱うことはありませんでした。新しいチャレンジでしたが、上長からもすぐにやってみようと後押しもあり実現しました。
※1. 構造データとは
数値、短いテキスト、日付など、データテーブルに収まるデータのこと
※2. 非構造データとは
音声、画像・動画ファイルなど、データテーブルに収まらないデータのこと

デジタルツインの構築と活用の実践を通じた見解

_次に、デジタルツイン上でATM設置シミュレーションを構築し活用した下山さんと渡辺さんにお話を伺います。簡単に自己紹介をお願いしたいです。

下山さん セブン銀行コーポレート・トランスフォーメーション部の下山です。本案件では、NTTデータに作っていただいたデジタル空間をどのように活用するかを検討したり、環境構築のために必要な写真撮影などのノウハウをいただきながら内製化を目指したりすることを担当しました。

渡辺さん NTTデータグループ技術革新統括本部の渡辺です。普段は、さまざまな最新テクノロジーの研究や実証を行っています。本案件では、実際にセブン銀行が使用されるATM設置シミュレーションの環境構築を担当しました。

セブン銀行の下山さん(左)とNTTデータの渡辺さん(右)

_デジタルツイン環境を構築したり、それを用いて実際にATM設置シミュレーションをしたりするなかで、お二人が感じたことや苦労などがあれば教えてください

下山さん デジタルツイン環境というのは、非構造データである3D空間を扱うものです。これまで私は構造化データを扱ってきたこともあり、3Dデータを扱うことは難しいんだなと感じました。また、撮影した画像をデジタルツイン環境に貼りつける作業があり、聞くだけでは簡単に思えますが、実際に作業してみたら大変でしたね。

渡辺さん ユーザーがデジタルツイン上でなるべく簡単に作業できるように、モノを配置する仕組みやUIが業務要件となることが面白いと感じました。私たち技術者目線では、3D空間にモノを配置する際に制約があることに慣れてしまっていましたが、設置業務の目線では、例えば、壁に吸着する仕組みや、3D空間で空中に吊り看板を配置するなどの仕組みが立派な要件になるため、より使いやすい操作仕様を考える機会になりました。

デジタルツイン上の空中に吊り看板を配置することによって、ATMの場所をわかりやすくするイメージ

高尾さん 今回構築した環境でシミュレーションにを触れた際に、こんなUI見たことないと感じました!素晴らしい操作感でした。

_デジタルツイン環境を用いてATM設置シミュレーションができるようになったことによって、どのようなメリットが生まれましたか。従来のATM設置場所検討の流れと比較して教えてください。

下山さん 行内のATM設置営業部隊から「わかりやすい」と好評だったので、実際に設置先企業様にご確認いただいたところ、現場担当者と決定者間での設置業務に関する共有のスピードアップに活用できるとのお声をいただきました。これまでは、ATM設置場所を確定させる際に、設置先施設の内部で、実際に現地に調査に行った人と、ここに設置していいですよと決定する決定者などステークホルダーの間で確認工程が発生するケースがありました。決定者に現地(設置予定場所)の確認のポイントが伝わらず設置妥結に結びつかなかったり、建物基準や制約が後から分かったりといった場合です。高精細な再現により同じ場や時間にステークホルダーが集まることが難しい場合においても同じイメージをみて、現場確認のポイントを直観的に共有できる点で課題解決につながると考えています。

なぜ、セブン銀行は最新テクノロジーを活用した先進的なビジネスに挑戦するのか

_高尾さん、下山さんのチームがかかげるミッションについて、詳しく教えてください。

高尾さん わたしたちのチームは、データ活用や新規事業に挑戦をして、全社展開することをミッションとしています。データ活用のみならず、仕事のやり方やそもそものビジネススキームを変えていくといった目標もあり、新しい技術や外部の知見を探索することを大事にしています。

チャレンジングなミッションについてお話しするセブン銀行の高尾さん

_セブン銀行が、従来の銀行が果たす役割を超越して、本案件のような先進的な取り組みをする理由や、意義についても教えてください。

高尾さん セブン銀行のそもそも成り立ちによるところが大きいと思います。それ以前は銀行にあるのが常識でしたが、当時、「コンビニにATMがあったほうがいい!」というお客様の声をもとに、セブン銀行が生まれ、全国のコンビニにATMを設置するに至りました。先進的なこと、新しいことにチャレンジするというのは、昔から持っていた社風だといえると思います。ただあくまでも、「お客様ファースト」を大事にしてチャレンジすることに、意義があると考えます。

_セブン銀行と他銀行の違いについて、より詳しくお話を伺いたいです。

下山さん 業態が大きく違うと思います。利益の大きな部分がATMの取引手数料であることが他の銀行と大きく異なります。ATMを介して直接お客様と触れ合うタイミングが多いため、それらのペインを解決したいという想いが常にあります。こうした課題を解決するためにも広く外部の知見や技術をスピーディーに取り入れることを大事にしていて、例えば自動車メーカーなどの金融業界以外の企業とも幅広く情報共有をしています

ATMを起点とした顧客接点の重要についてお話しするセブン銀行の下山さん

高尾さん そうした外部企業との意見交換やセミナー・展示会への参加など、どんどん外に出てさまざまな業界の有識者と会話しようといった取り組みもしているところです。そこで得た情報は、私たちのチームで作成した仕組みを使って全社に連携をしています。

横田さん すごい!ノウハウが蓄積される仕組みがあるんですね。

高尾さん 例えば、こういうセミナーを受けたなどを全社に共有すると、それに対して他の社員から返信がきて情報交換が生まれたりもしているのでいい取り組みだと考えています。

横田さん 社内の風通しが非常によいですね。連携がうまくいっているからこそ、外からどんどん新しいノウハウを取り入れて活用し、進化していこうというマインドになっているのだと腑に落ちました。

NTTデータが考える、金融機関での最新テクノロジーのビジネス活用について

_金融機関で最新テクノロジーをビジネスに活用する可能性や発展性について、お話を伺います。渡辺さんは、先ほどお話にあったような先進的な取り組みをする、セブン銀行の攻めの姿勢をどのように思われますか。

渡辺さん 時代を先取りするというチャレンジ精神が素晴らしいと感じます。我々もセブン銀行のチャレンジ精神や積極性を模範にして、世の中に影響を与えるような活動を推進していきたいです。先進的な取り組みをすることは持続的な成長に必要不可欠な要素だと考えております。

_技術的知見が豊富な渡辺さんから見て、最新テクノロジーをビジネス活用する意義や重要性について教えてください。

渡辺さん 一言でいうと、競争力ですね。人手不足が深刻化する現代において、業務効率の向上は企業の存続と成長のために欠かせない要素といえます。一方で、最新テクノロジーをただ導入するだけでは不十分です。レガシーシステムとの共存を考慮する必要があるため、企業の安定性を保ちつつコスト面を最適化するためには、新旧システムをいかにうまく融合させるかが重要な課題ですね。

_横田さんは、最新テクノロジーだけでなく、金融機関への知識にも精通しているとお伺いしております。金融機関や銀行において、最新テクノロジーをビジネス活用する意義や重要性について教えてください。

横田さん 金融サービスは、インターネットバンキングやスマホアプリの登場など、時代に合ったテクノロジーを取り入れてより使いやすく発展、進化されてきたと理解しています。昨今は最新テクノロジーへのエンドユーザーのリーチがますます速く容易になってきていることから、たとえ金融から遠いのではないかと感じられるテクノロジーであっても、「攻め」の観点で幅広に関心を持つことには意義があると思います。一方で、テクノロジーの急速な発展はビジネス継続上のリスクにもなるといえます。例えば、生成AIがはらむ倫理的なリスクなどですね。テクノロジーの動向を追うことは「守り」の観点でも重要だと考えます。

高尾さん 守りという観点でいうと、最近セブン銀行で「AI利活用ポリシー」を制定しました。さまざまなデータを業務で活用するため、それらを適正に扱うガイドラインは必要不可欠だと考えます。

最新テクノロジー活用における今後の展望

_高尾さん、下山さんのチームの今後の展望について教えてください。

高尾さん 下山さん 最新テクノロジーを使いこなし、業務に落とし込むといった活動をさらに促進していきたいです。また、テクノロジーを活用する場所の業務も細かく知っておかないと、ビジネスを考える際にフィットさせられません。NTTデータさんには技術支援だけでなく、各業界・企業・金融機関の情報提供をしてくださるので助かっています。

今後の展望についてお話する高尾さん・下山さん

_NTTデータグループ技術統括本部として、どのように最新テクノロジーのビジネス活用を支援できるか教えてください。

渡辺さん 我々の部署では、最先端の技術を駆使し、お客様のビジネスに革新をもたらすための伴走型支援を提供しています。経験豊富なメンバが、社内のコンサルティングチームと連携し、構想・企画の段階からお客様と共に革新的なソリューションを共創する体制を整えているので、持続可能で競争力のあるビジネスモデルの実現を全力でサポートしたいです。

_NTTデータビジネスデザイン室として、どのように金融領域での最新テクノロジーのビジネス活用を支援できるのか教えてください。

横田さん 当室のミッションは、最新のテクノロジーと金融機関のお客様をつなぐことです。お客様のビジネスの伴走者として、テクノロジーを金融業界のお客様の課題解決に資するツールへと「昇華」させてデリバリーしていきたいと考えています。今後も、渡辺さんのような技術部隊、また、お客様と日々連携を図りながら、トレンドテクノロジーの動向調査や、金融業界のお客様におけるユースケースの考案などに取り組んでいきます。
高尾 庄吾(たかお しょうご) さん

高尾 庄吾(たかお しょうご) さん

セブン銀行 コーポレート・トランスフォーメーション部 兼 ATM+企画部
金融機関での勤務を経て、2019年にセブン銀行へ中途入社。 現金需要の予測などデータ活用の案件に携わる。現在、新型ATMを使った新サービス「+Connect」の担当も兼務。
下山 翼(しもやま つばさ) さん

下山 翼(しもやま つばさ) さん

セブン銀行 コーポレート・トランスフォーメーション部
マーケティングや大規模顧客データなどの分析の業務を担当したのち、2023年にセブン銀行に入社。現在、データエンジニアリングやATMの設置業務に関する分析を担当している。
渡辺 尚弘(わたなべ たかひろ) さん

渡辺 尚弘(わたなべ たかひろ) さん

NTTデータ 技術革新統括本部 Innovation技術部 シニア・エキスパート
入社以来、官公庁におけるWebシステム構築に長年順次。その後、XR技術を使った新規サービス開発に取り組んできた。現在は、Innovation技術部が取り扱うR&Dテーマ(デジタルツインや生成AI、他)を基にしたサービス企画やスタートアップ連携などのプロデュース活動を推進する。
横田 里穂(よこた りほ) さん

横田 里穂(よこた りほ) さん

金融イノベーション本部 ビジネスデザイン室 イノベーションリーダーシップ統括部 主任 
他部署と連携し、新規事業創発に取り組む。「金融を通じて世の中をより良くする」を志に、金融×デジタルを切り口とした技術・ビジネス動向の研究や、社内外への情報発信にも関わっている。

※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。​

金融×デジタルを切り口として、メタバースをはじめとしたさまざまな技術やビジネスの動向を研究し“Foresight”として発信するForesight担当に所属。上流コンサルからビジネス創出、そして成果の社内外情報発信まで一気通貫で取り組んでいる。

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