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コラム

量子とは何か~物理学者vs光~(前編)

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前回のコラムでは、「今さら聞けない量子コンピュータ」と題して、量子コンピュータとはどのようなものか、しくみや種類、社会的な影響について解説しました。
本コラムでは、量子について分かりやすく解説し、量子の知識を深めます。

量子コンピュータのおさらい

量子コンピュータは情報の表し方に量子の性質を使ったコンピュータです。
現在使われているコンピュータ(以下、古典コンピュータ)は1bitに0と1の数字のどちらかを記録し、2進数で情報を表現するのに対して、量子コンピュータは1Qbitに0と1の数字を同時に表現できます。
そのため、古典コンピュータでは計算処理に膨大な時間を要する問題でも、量子コンピュータではより短い時間で解けるようになる可能性があります。古典コンピュータではすべての組み合わせを計算しなければならず、問題が複雑になると指数関数的に計算量が増加します。量子コンピュータでは複数の計算が並列処理できるため、高速で問題が解けるのです。
このような量子コンピュータが実現した際の社会的・経済的インパクトが非常に大きいことが見込まれるため、世界各国で多額の予算を投じて研究開発が進められています。
同時に表現するとはどういうことかというと、量子の性質を使って、確率で0と1を重ね合わせているのです。

【図1 量子コンピュータのしくみ】

この0と1が共存するような状態はどのようなものなのか、私たちが目で確認することはできません。というのも、0と1が共存している量子を観測すると、0か1のどちらかを表現した状態に確定してしまうからです。

量子とは

私たちの身の回りにある物質はすべて原子からできています。その原子をさらに細かく見ていくと、電子や陽子、中性子から成り立っています。量子とは、こうした原子レベル以下の小さな物質やエネルギーの単位のことです。
すべてのものは小さくしていくと、量子としてみることができます。
例えば、光をどんどん小さくしていって粒子として見たときの「光子」も量子の一種です。
量子の発見には、光とはいったい何なのか?という疑問と探求の歴史が大きく関係しています。

光とは何か

みなさんは光の正体は何だと思いますか?
現代では、光は電磁波の一種だと考えられており、粒子と波の両方の性質を持っていることがわかっています。
子どものころから赤外線や紫外線といった単語に触れ、電波のような見えない波がそこかしこに飛んでいる状況に慣れている私たちにとっては、光は波の一種であると飲み込むのはさほど難しくはないかもしれません。しかし、光を非常に小さくした光子がどんなものなのか、想像ができるでしょうか?
まして、そうした学問がなかった時代、光は非常に不思議な存在で、多くの物理学者を悩ませてきました。
解明されていない現象に対する物理学の基本的なアプローチは、仮説を立てて、法則を見つけ出し、実験によって検証するという流れになっています。
なぜリンゴは地面に向かって垂直に落ちるのか?という謎に対し、ニュートンは地球がリンゴを引き寄せているのだという仮説を立てました。これにより、ニュートンの運動3法則※が立てられ、運動方程式が生まれます。
※慣性の法則、運動の法則、作用反作用の法則
ニュートンの3法則より発展した古典力学は、のちに厳密には誤りであることが判明します。
古典力学は原子や分子レベルの大きさの物までは当てはめることができます。しかし、それよりも小さなサイズの粒子、すなわち量子は、古典力学の法則に当てはまらないふるまいを示します。
量子力学誕生以前、ニュートン力学の誤りをアインシュタインが相対性理論で示すまで、物理学の常識に矛盾することなく光の性質を説明する仮説を立てることができないという状況が長く続きました。
まずは、光のどういった性質が物理学者を悩ませたのか、実験を通してみてみましょう。

光の波と光の粒子

量子力学の実験の一つに二重スリット実験というものがあります。非常に有名なので、ご存じの方も多いかもしれませんね。
使うものは光源、小さな隙間を1つ開けた板と2つ開けた板(以下、スリット)、スクリーンの4つだけ。
やることも単純で、スリットに向かって光を照射し、スリットを通り抜けた後の光がスクリーンのどこにどのように当たっているかを見るだけです。
イメージとしては、スクリーンに向けてレーザーポインターを当てると丸い点が見えますよね。レーザーポインターとスクリーンの間にスリットを置いてあげるとどうなるか?という実験です。
結果を上から見た図に表すと以下のようになります。

【図2 二重スリット実験】

左から進んだ光が、穴を通りぬけるときに2つの波になり、ぶつかりあってスクリーンに縞模様を作っています。
この縞模様は2つ以上の波がぶつかり、強めあったり弱めあったりすることによりできる干渉縞と呼ばれる模様です。
次に波を横から見てみましょう。
上の図のように波の赤い部分と赤い部分、青い部分と青い分がぶつかると、強めあってより大きな波になります。
一方、下の図のように、赤い部分と青い部分をぶつけると、弱め合って波がなくなってしまいます。

【図3 波の干渉】

スクリーンの赤く光っている部分は波が強め合っている部分、暗くなっている部分は波が弱め合って凪いでしまっている部分です。同じ形、大きさの波同士をぶつけないと見えない特別な模様で、これを干渉縞と呼びます。
以上の実験結果から、古典力学の常識で考えると、光は波であるということができます。
次に、スリットの部分に光の粒子を検出する機器を設置してみます。
この場合に得られる結果は以下の図のようになります。

【図4 波だった光が粒子になっている図】

驚くべきことに、粒子を検出する装置を置いただけで、波だったものが粒子のように振る舞うようになってしまうのです。
粒子1粒の振る舞いは、ボールをイメージするとわかりやすいでしょう。一つのボールを穴が開いた板に投げると、どちらかの穴を通ってスクリーンにぶつかります。
検出器を確認すると、光の粒子がどちらか片方のスリットを通過しているという結果が得られます。どちらのスリットを通るかは確率できまり、予測することはできません。
この実験の結果は、古典力学の常識に沿って考えると、光は粒子であるということを示しています。

1つめの実験では、干渉縞ができていることから、波が同時に2つのスリットを通り干渉しあったことがわかります。
それなのに、2つめの実験では光はどちらか片方のスリットを通っているという観測結果になってしまうのです。
いったい何が起こっているのでしょう。どうしたら説明できるのでしょうか?
この疑問は多くの物理学者を悩ませることになります。
次回の記事で、ここから物理学者たちの量子力学に至るまでの試行錯誤を通して、量子への理解を深めていただこうと思います。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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