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本人確認を楽にするeKYCとは?利便性を向上させるポイントや導入事例を紹介

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eKYCとは電子的な方法で行う本人確認のことです。eKYCを導入することで、利用者の本人確認の手間を省き、申し込み者の離脱防止などの効果が期待できますが、それだけに導入すれば万事解決!というわけではありません。

この記事では、eKYCの基本的な仕組みから実際に導入している企業の事例、今後の展望などについて考えてみたいと思います。

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eKYCとは

まずは基本知識として、eKYCの概要と導入された背景を見ていきましょう。

eKYCとは電子的な方法を使って本人確認をすること

eKYC(electronic Know Your Customer)とは、「電子本人確認」と訳され、インターネットやICチップなど電子的な方法で本人確認を完結させることを指します。

eKYCが導入される前、例えば証券会社で口座開設をする際には、「本人確認書類を郵送」もしくは「お店に行って本人確認書類を掲示」して本人確認をする必要がありました。

一方、eKYCでは本人確認をオンライン上で済ませられるため、証券会社で口座を開く際も必ずしも郵送したりお店に行く必要はありません。eKYCを利用すれば、スマホカメラで本人確認書類や自分の顔を撮影したり、データを送ったりするだけで本人確認を完了させ、証券口座を開くことができるのです。

このようにeKYCは本人確認の手間を大幅に減らし、申込み離脱の低減などさまざまなメリットを生みます。

eKYCが導入された背景

eKYCが導入された背景の元を辿ると、「アメリカ同時多発テロを踏まえた本人確認厳格化の流れ」があります。テロを機に、マネー・ロンダリングやテロ資金供与対策として、各国が協調して本人確認の厳格化を進めました(それを証拠に、アメリカ同時多発テロ以前の期間に絞り「eKYC」と検索しても、ヒットしません。)。

当時はまだ電子的な手法ではなく、郵送や店頭で本人確認を実施していました。ですが、インターネットの普及及び発展に伴い、利便性の観点から諸外国ではオンライン上でも本人確認ができるように法整備が進みました。

こうした状況に、日本でも一般社団法人Fintech協会からの働きかけもあり、管轄だった警察庁も重い腰を上げて法改正を行います。その結果、日本においても2018年11月よりeKYCが可能になりました。

eKYCの利用シーン

具体的にeKYCはどのようなシーンで利用されるのでしょうか。

<eKYCの利用シーン例>
  • 金融機関での口座開設
  • クレジットカードの発行
  • シェアリングサービスの利用
  • 電子チケットの購入
  • 中古品の買取
  • 携帯電話の購入
  • 不動産の賃貸契約
上記のとおり、eKYCは本人確認が必要なあらゆるシーンで利用されます。とくに証券会社や仮想通貨取引所など、「すぐにサービスを利用したい」と考える利用者を多く抱える幅広い業界が、そのニーズに応えるために導入を進めています。

eKYCの仕組み

eKYCの仕組みにはいくつか種類があります。ここではよく使われる4つの仕組みを説明していきます。

(ホ)本人確認書類の画像送信 + 本人の容貌の画像送信

本人確認書類及び本人の容貌(顔写真)の画像をインターネット上で事業者へ送ることで本人確認とする仕組みです。画像は事業者が用意しているツールでも撮影できます。

またこの仕組みでは、ZoomやTeamsなどインターネット上のビデオ通話ツールで、本人確認書類を掲示して、容貌を事業者に確認してもらうことで本人確認とすることも認められています。
例えば、住信SBIネット銀行の本人確認では、株式会社Liquidが提供している、オンライン上で本人確認を完結できる「LIQUID eKYC」というサービスを利用し、口座開設申し込みから本人確認までノンストップで完了できる仕組みを整えています。利用者としては別途画像を用意しなくて済むので非常に楽ですね。

(へ)本人確認書類のICチップ情報送信+本人の容貌の画像送信

本人確認書類に埋め込まれているICチップ内の情報と本人の容貌の画像を送ることで本人確認とする仕組みです。

例えば、ビデオ通話を使って、あたかも支店にいったように口座の開設ができる(ホ)型の仕組みに加え、免許証やマイナンバーカードのICチップ情報を読み取れる(へ)型の仕組みで本人確認上のセキュリティを強化しています。

(ト)本人確認書類の画像又はICチップ情報送信

利用者は本人確認書類の画像もしくはICチップ情報を送信し、事業者は「①銀行等に顧客情報を照会する」「②少額振り込みをした取引画面を利用者から送ってもらう」ことで本人確認とする仕組みです。

①については、利用者としては本人確認書類の画像かICチップ情報を送信のみすれば良く、既に利用者が口座を開設してある銀行が身元を保証してくれるため、利便性は高いと言えるでしょう。

三菱UFJ銀行ではこの仕組みを利用して、「本人確認サポート(個人)APIサービス」を展開しています。本人確認をしたい事業者に対して、氏名や生年月日などの本人確認事項を、利用者の同意を得た上で「三菱UFJダイレクト」と連携させるサービスです。

(ワ)「公的個人認証サービス」を通じて本人確認

マイナンバーカードに内蔵しているICチップに搭載された電子証明書を使って本人確認する仕組みもあります。    

実際に、株式会社メルカリが運営するフリマアプリ「メルカリ」ではスマホにマイナンバーカードを読み取らせることで本人確認としています。マイナンバーカードを数秒かざすだけで本人確認ができるため、利用者としてはとても便利に感じることでしょう。

eKYCで行う本人確認方法の種類

eKYCでの本人確認の方法は仕組みに応じて大きく3種類に分けることができます。

画像型

本人確認書類や本人の容貌の画像を送ること、またはビデオ通話などによる動画で本人確認とする方法です。この方法は、(ホ) 本人確認書類の画像送信 + 本人の容貌の画像送信や(ト) 本人確認書類の画像又はICチップ情報送信にあたりますね。対応している本人確認書類の多さから、「画像型」を採用している企業が多く見受けられます。

ICチップ型

運転免許証やマイナンバーカードのICチップを利用した本人確認を「ICチップ型」と言います。(ト) 本人確認書類の画像又はICチップ情報送信や(ワ)「公的個人認証サービス」を通じて本人確認にあたる種類です。

ICチップ型は公的な機関が本人確認をして、発行・証明している信頼性の高い電子情報を利用している点がポイントになります。とくにマイナンバーカードは、デジタル庁の後押しもあり、今後本人確認ツールとしての活用がますます広がっていくことが予想されます。

eKYCを導入するメリット

eKYCを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを紹介します。

利用者の利便性の向上

eKYCを導入することで、オンライン上でも本人確認ができるようになります。

eKYCを導入していない場合、利用者は店舗に行って本人確認手続きをしたり、郵送で本人確認書類を送ったりしなければならず、時間も手間もかかります。

eKYCであれば、利用者の本人確認にかかる手間を大きく省くことができるほか、郵送にかかる時間がかからないため、スピーディに本人確認及びサービスの提供を始めることが可能です。

例えば、SMBC日興證券で口座開設する場合、取引開始までeKYCであれば最短即日で開設でき、郵送を使うと約1週間かかります。多くの利用者はすぐに取引を開始できるeKYCに利便性を感じるでしょう。

コストの削減

eKYCの導入により、郵送による本人確認処理が少なくなるため、郵送料や紙資料の管理の手間など、さまざまなコストを削減できます

コスト削減効果が分かりやすい郵送料については、例えば簡易書留を送付している企業であれば「(基本料金+320円)×利用者数」のコスト削減効果を見込むことができますね。

また紙資料を所定の場所にわかりやすく揃えたり、探したりするなどの金額には表れない管理コストも削減できるでしょう。

申込み離脱の低減

eKYCの活用により、本人確認にかかる手間を減らすことは利用者の申込み離脱の低減にも繋がります。利用者目線で考えたとき、郵送したりお店に行って本人確認及びサービスの利用ができないとなると、腰が重くなってしまいそうです。オンラインで済ませられるとなると申込みのハードルが低くなるでしょう。

eKYCを導入する課題とリスク

一方で、eKYCを導入する際に考えておきたい課題とリスクもあります。

本人確認が認証されない・読み込まれない

技術的な問題によって本人確認が認証されない、もしくは読み込まれないという事態も起こりえます。また技術的な問題以外にも、たまたまスマホの電波状況が悪く、本人確認が上手くいかないと、利用者の申込み離脱に繋がる恐れも出てきてしまいます。

一方で本人確認には、「不正を検知しなければならない」という側面があり、申込者の本人確認書類や容貌を正確に読み込む必要があります。そのため、不鮮明な画像で容易に本人確認を認証できないのもまた事実です。本人認証技術は大分改善されてきてはいますが、引き続き技術的な進歩に期待したいところです。

個人情報の漏洩

eKYCで本人確認をするということは個人情報をインターネット上で取り扱うということを意味します。そのため、個人情報の漏洩リスクに対応することも必要になります。例えば以下のような対応をすることで個人情報の漏洩リスクを下げることができます。

  • 日々進化するサイバー攻撃に対応できるよう、例えば本人確認画像だけではなく、公的機関が証明するICチップ情報も使う、といった複数のセキュリティ対策を徹底する
  • 住所など不要であれば、必要以上の情報は取得しない
  • 情報が不要になったらすぐに削除するなど、セキュリティ管理をする
  • 社員一人ひとりにセキュリティ教育をする
「住所など不要であれば、必要以上の情報は取得しない」について、例えば動画配信サービスを利用するにあたり、住所の入力は求められませんよね。漏洩リスクを下げるためにも、どの情報が必要なのかをよく精査することが大切です。

eKYCを導入する際に検討するポイント

メリットや課題・リスクを踏まえて、eKYCを導入しようと考えた際に意外と見過ごしがちなポイントが、「UI(ユーザーインターフェイス)の重要度」です。

この記事を読んでいる方の中にもインターネットからの申込みで、「手続きが煩雑で途中で申し込むのを止めた」という方もいるのではないでしょうか。利用者の負担をなるべく減らす工夫を施したUI(※)にしなければ、“利便性を考えて導入したeKYCのはずなのに逆に利用者の負担を増やしてしまう”なんてことにもなりかねません。

そのためUIの実績のあるIT企業に相談するなどして、UIにもこだわるようにしましょう。

eKYCの導入事例

では、実際にどのような企業がeKYCを導入しているのでしょうか。ここではeKYCの導入事例を3社紹介します。

事例①LINE Pay

LINEのモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」を手掛けるLINE Pay株式会社では、本人確認を郵送からeKYCに一本化しました。eKYCの導入によりコスト削減やサービス提供開始時間の短縮などを実現させています

とくにLINE Pay社がeKYCでこだわった点が「正確さ」と「UI/UX」。LINE Pay社ではAIの認識技術を使って正確に必要情報を取得して、利用者にわかりやすいUI/UXで手続きをしてもらうことで、申込みの離脱を防いでいます。

事例②三菱UFJ銀行

eKYCを導入している三菱UFJ銀行では、店舗に行かなくても、ネット上での契約やオンライン口座開設などに必要な本人確認を最短・当日、オンラインで済ませることができます。

三菱UFJ銀行がeKYCを導入した背景には、もちろん利用者の利便性向上もあるでしょう。一方で、将来的にオンラインでサービスを利用する人を増やし、店舗削減をすることで、店舗の維持コストを下げようとする戦略も見てとれます。

事例③NTTドコモ

対面での本人確認も重視しているNTTドコモでも、eKYCを導入しており、以下のシーンで本人確認をオンライン上で済ませることができます。

  • 新料金プラン「ahamo」契約時
  • ドコモオンラインショップにおける新規契約時
NTTドコモでは「ahamo」をオンラインで受け付けることで料金や事務手数料の引き下げを実現させたのちに、ドコモオンラインショップにもeKYCの活用を広げました。

銀行と同様に、携帯電話も店舗に行って各種契約手続きをすることに慣れている方が多いでしょう。しかし、eKYCによって「店舗に行くのは面倒」「できたらオンラインで済ませたい」というニーズを持つ利用者層を取り込めることが期待されます。NTTドコモを含め、携帯電話会社のeKYCの活用は今後も拡充し、利用者としては便利になっていくことが期待されます。

eKYCの今後の展望や重要性

今後eKYCは、インターネットに慣れ親しんだデジタルネイティブが増えていくにつれ、本人確認が必要なサービス全般に広がりを見せることが見込まれます

金融機関での口座開設といったイメージしやすいシチュエーションだけでなく、例えば電子チケットの売買や不動産契約、車購入、カーシェアや電動キックボードといったシェアリングエコノミーなど、さまざまなシーンでeKYCは広がっていくでしょう。

また2021年9月に発足したデジタル庁の存在もeKYCの後押しになりそうです。デジタル庁が創設されたことで、政府が推進するマイナンバーカードを使った本人確認が広がる可能性も十分あるでしょう。

eKYCを導入してビジネスチャンスを広げよう

2001年アメリカ同時多発テロ以降、事業者・利用者双方の本人確認にかかる負担は増えてきました。そして、これからも厳格な本人確認の規制は続くことが見込まれます。

利便性の向上や申込みの離脱防止などのメリットがあるeKYCは、少しでも利用者の負担を減らし、ビジネスチャンスを失わないためにも必要な手段なのかもしれません。さまざまな企業の事例を参考に、検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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