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金融が変われば、社会も変わる!

挑戦者と語る

多様な人材を採用せよ! 金融×デジタル領域の採用事情!

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金融業界では、社内のDXやキャッシュレス決済、オンライン通話によるリモートの接客や会議など、あらゆる面で急激なデジタル化が進みました。その一方で、経済産業省が2019年に発表した「IT人材需給に関する調査」によると、デジタル化を担うIT人材は2030年に79万人の不足になる試算がされています。そのようななかで求められる人材とはどのようなものでしょうか?
金融×デジタルの領域でなぜ、多様な人材が求められているのか、人材の流動性が高まるなかで、入社なさった方に活躍していただくためにはどうすればよいのか。企業の中途採用を支援するリクルートエージェントの織田真奈海さんと、IT企業で採用強化をリードするNTTデータ 金融戦略本部 金融事業推進部 人事総務の小泉夕季さん。2人の挑戦者が熱く語り合いました。

史上空前の売り手市場が到来

小泉さん 私は新卒でNTTデータに入社して以来ずっと人事畑、という当社としては珍しいタイプのキャリアなのですが、ここ数年は採用業務をメインに担当しています。普段からリクルートさんにはとてもお世話になっています。
今回は織田さんに金融×デジタル領域の転職事情についていろいろと教えていただければと思います。最近はIT業界のエンジニア不足が話題となっていますが、実際のところどういう状況なのでしょうか。
織田さん 私はリクルートに入社して10年になりますが、これまで一貫してIT業界のお客さまを担当してきました。ここ数年は金融×デジタルの領域に限らず、あらゆる業界で採用市場が活況となっており、求人ニーズが右肩上がりです。私の経験のなかでもあらゆる業界の企業様で採用意欲が高まっていることを感じています。
とりわけIT人材に関してはどの業界からも引く手あまたな状況です。2021年の中ごろから求人数が急増し、今はコロナ前、2019年の水準を大きく上回っています。求職者数が求人数の増加に追いついていないために、熾烈な獲得競争が続いているというのが今の状況です。
企業側としても、中長期的に人材を確保するためには何かを変えなければいけません。そこで業界未経験、職種未経験、若手のポテンシャル層の採用、さらにはシニア活用といった従来は採用が少なかった層から人材を獲得する動きが増えています。
小泉さん ありがたいことに当社の場合、新卒採用では学生から人気の企業と言われている状況ではあるのですが、それに対して経験者採用はやはり能動的にこちらからアプローチをして人財を獲得していかなくてはならないという状況です。圧倒的な売り手市場のなかでどう経験者を採用していくのかというのは、当社に限らず金融×デジタル領域にいる企業はどこも大きな課題になっています。
こうなっている背景には、金融×デジタルのビジネス領域が拡大しているという点があげられます。当社はシステム開発がメインなので、開発ポストが多いのは当然です。それ以外にもコンサルのスキルを持っている方、製販一体の部門では開発も営業もどちらもできる方など、金融領域のデジタル化が進むなかで顧客ニーズが多様化・高度化し業務が広がっています。それに合わせて仕事が多様化し、求める人材もどんどん多様化してきていると感じています。
織田さん 従来はシステム開発のスキルを持った人材を採用したければ、システム開発会社でのエンジニア経験者を採用するというのが主流でした。ところが今は、さまざまな業界・職種の垣根がなくなってきていて、求職者のキャリアも、求人の選択肢も、そのバリエーションは増え続けているように思います。
そういった多様なスキルを持った人材をしっかりと見極め、無数の選択肢のなかから、自社に興味を持っていただけるようなコミュニケーションを心掛けなければ、企業側は求職者に選ばれることが難しくなります。
小泉さん 以前自分が働いていた業界や領域だからという理由だけで転職先を選択するという考えは、もう古いかもしれませんね。直近でも、IT業界以外、例えば、印刷業界、素材メーカー、エネルギーインフラ業界、物流業界の方が、NTTデータの金融領域へ入社されています。
織田さん 選択肢が増えたことで、最初から絶対に金融領域の開発をしたいんだというように、携わる業界にこだわって転職活動をされるエンジニアは少ないと思います。その代わりコロナ禍を経て特に顕著になりましたが、在宅ワークやフレックスタイム制度の有無や副業はできるのかなど、働き方に柔軟性を求める方が増えてきています。
小泉さん 人材を確保するためには会社として働き方から考える必要があるということですね。

多様な人材を求めるなら採用方法も変わるべき

小泉さん リクルートさんからは、「まずは面接で会うところまで行きましょう」というアドバイスをよくいただきます。キャリアが多様化しているからこそ、書類では判断できないところを自分の目で見て、質疑応答のなかでその方のスキルや人となりを確認していくことが、ますます求められている気がします。
織田さん その通りですね。異業種への転職は今や当たり前になっています。金融×デジタルの領域で働いていた方が、同じ領域を目指すとは限りません。もはや経験と年数の掛け算で判断していると、採用できないどころか、面接に来ていただくことすらできません。
学歴や職歴ではなく、その方が持っているコアスキルや能力を見ようというスタンスを持っていないと、応募者を獲得することが非常に難しい市況感になっていると思います。
小泉さん 織田さんから見て、採用が上手だなと感じるのはどういう会社ですか。
織田さん そうですね。経験者採用・未経験者採用の役割を、未だに新卒採用の補填と置いている会社は、まだまだたくさんあります。そのような会社は、新卒採用の社員と比較しながら、経験と年数の掛け算で経験者採用・未経験者採用者を評価する傾向があるので、結局、なかなか採用がうまくいかないケースが多いように思います。
一方で、経験者採用・未経験者採用と新卒採用の役割を明確に切り分けて、経験者採用・未経験者採用によって人材の多様化にチャレンジをされているような会社は、書類上でのバイアスをなくし、応募者にできる限り会って、どんな仕事を任せ、どんな活躍が期待できそうかをフラットに判断しています。そういうスタンスで臨んでいる会社は、入社した方が、早期からしっかりと活躍されている印象があります。

人材を募集するうえで社内コンセンサスがとれているか、もっと言うと、経営層から、社内に向けて、採用に注力していくという強いメッセージが発信されているか。そして採用した方を受け入れる現場側も採用ミッションをしっかりと理解しているかも採用成功の重要なポイントです。
これまであまり採用していなかった未経験者やシニアを採用すると決め、実際に求人票にもそのように書いている会社が増えてきてはいます。ただ、現場レベルにもその採用の意味や意義が浸透していないと、実際に採用活動を始めたものの、書類選考や面接で通過者が出ず、結局採用につながらなかったり、せっかく採用しても、受け入れ現場の当事者意識が足りず育成に失敗して、早々に辞めてしまったりというケースもあります。
なぜ今、採用をしなければならないかという必然性と、強いメッセージを経営、人事、現場が同じように認識をしていないと、結局どこかのポイントで行き詰まってしまいます。
小泉さん なるほど、その通りですね。当社の場合、現場の部課長が採用面接をするケースも多いですが、みなさん採用に対して熱意が高いけれども、それを候補者の方に対して表現できていない面があると思います。みなさんすごくがんばっていただいているのですが、エンジニアスキルや営業・企画スキルほど、採用スキルはまだ高くないと思います。
以前、ご本人の経歴から判断するとマネージャーというポストがぴったりだと採用したものの、入社後改めて確認をすると、ご本人は管理ではなく現場のスペシャリストとしての仕事を希望していたということがありました。この辺りをきちんと引き出していただくことも大事ですよね。
当社の場合、金融分野だけでも領域×職種で数多くのポストが用意されています。候補者の軸となるスキルや目指したいキャリアなどうまくお話を聞きだすことができれば、その方に最もマッチするポストの見極めができると思うんです。
人物としてとてもよい方であるのに、適切なポストをご提案できないのはすごくもったいないので、組織全体として採用力を高めることが大切だと改めて感じました。
織田さん 採用とは、課題解決型営業にも例えられるように、まずはどんな企業なのか、自分たちのことを求職者に知っていただく必要があります。そのうえで、もしあなたがこういう志向だったらこういうことができるけれども、こういう志向だと合わないかもしれないと選考のなかで、しっかりと事実をお伝えします。それによりポストがアンマッチでないかの確認やセルフスクリーニングを候補者側からも、してもらえるようにすることが大切です。
入社後のアンマッチは、企業・求職者、双方にとって幸せではないので、自社の魅力を伝えることはしながらも、誤解なく、すり合わせることを意識していただくことが大事だと思います。

ますます求職者にとってのハードルが下がる転職活動

織田さん 引き続き、転職者が引く手あまたな市況はしばらく続くと想定しています。その傾向に拍車をかけるのが転職活動の変化です。
これまでは転職をしようと考えてから自分でいろいろと調べ、転職サイトに登録をするのが一般的でした。ところが今は、本人が転職を本格的に考え始める前からSNS上でプッシュ型の広告を頻繁に目にしたり、企業から直接スカウトが届くなど、これまでになかった手法による転職が増えています。
面倒な書類を書き上げる手間もなく、面接もオンラインでできてしまうので、転職活動開始のハードルはますます下がっています。さきほど、会社側は、“応募者とまずは会う”スタンスが大切というお話をさせていただきました。転職歴や志望動機にこだわった採用は過去のものとなり、転職を想起する前の応募者にいかにリーチし応募獲得するかといった形で、経験者採用・未経験者採用の競争が、より早いフェーズから始まる流れになっていくのではないでしょうか。
金融業界においては、さまざまな業種の企業が参入してきていて、果たしてどこまでが金融なのか、業界の境目がなくなってきています。求人のバリエーションも、候補者の職歴もますます多様化していくと思います。そのなかで候補者に転職先として選んでいただくためには、自社に転職することでしかできないことが何なのかをしっかり言語化して打ち出していく。これができないと人材獲得は難しくなっていきます。
小泉さん 最近の特徴としてはSDGsのように、このビジネスに関わることで社会にどんなインパクトが与えられるかがキーワードになっていますよね。
実際に発信している会社も増えていますし、私たちも発信していかなければいけないと思っています。この領域で絶対に働きたいというよりも、この領域で何が実現できるかをみなさんが考えるようになっている傾向は確かにありますね。
織田さん ちなみに、金融×デジタル領域の魅力とされやすいのは、例えば銀行ですと、顧客基盤の大きさ、影響範囲の広さ。保険会社などであれば、自社内のCXやDXを自由度高く推進できることだったりします。そのなかで、さらに自社にしかない魅力を言語化していくことが大切です。

小泉さん 転職のハードルが下がると当然、離職者も増えていくことになります。当社の場合は採用と同じくらい、新たに入社する方だけに限らず働いている方全員のエンゲージメントを高めること、社員の満足度を高めることを大切にしています。
織田さん それはすごくいいと思います。やっぱり、現職の社員の方が満足していない会社は、求職者から見ても魅力的ではありません。今いらっしゃる社員の方が働きやすいかとか、働き続けたいと思えるかというところを磨いていただくことも重要です。それが、求職者への魅力となり、採用活動にも返ってくると思います。特に、ダイバーシティー、インクルージョン、エクイティ、多様な人が働ける制度や風土を作っていくことは、この先、企業が求職者から選ばれるうえで、絶対に必要なテーマだと思います。
転職を希望する方は、求人のバリエーションが増え、異業種にもチャレンジできる世の中になっているので、自分と一番合うところを選択していただきたいと思います。
小泉さん 転職のハードルが下がったとは言え、人生のなかでは大きなチャレンジであることは変わらないですよね。NTTデータも新しい金融サービスを作っていこうと常々言っているように、さまざまな業界に金融が組み込まれていく世界を目指しています。
長年にわたり金融インフラを支えてきたという土台を持ちながら、新しい分野にどんどんチャレンジできる、金融×デジタル領域で大きな可能性を秘めた会社です。金融はお堅そうだとか、働きにくそうだとか、そういうイメージは捨ててもらって、ぜひ転職先の一つとして、積極的に考えてもらえると嬉しいですね。今日は採用担当として勉強になりました。本当にありがとうございました。
〈プロフィール〉

織田真奈海さん  
株式会社リクルート
Division統括本部 HRエージェントDivision 首都圏統括部 IT・コンサルティングサービス営業部 1グループ グループマネジャー 

新卒でオリエンタルランドに入社。
レストラン部門にて、担当店舗マネジメント全般に携わる。
2012年、リクルートに入社。
リクルートエージェントの法人営業に配属され、一貫して、ITマーケットの中途採用支援を行う。
2019年より、同営業組織のマネジャー。

小泉夕季さん
株式会社NTTデータ 金融戦略本部 金融事業推進部 人事総務担当
新卒でNTTデータに入社。
入社1年目より全社人事本部配属となり、その後、2回の育児休職を取得しながら、一貫して人事・育成業務全般に携わる。
現在は、金融分野の人事担当として、採用関連業務のチームリーダーの立場で主に経験者採用の戦略立案・推進に従事。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。
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執筆 オクトノット編集部

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