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挑戦者と語る

ハイス・ファン・ウルフェン氏と語るみんなで創出するイノベーション~FORTHイノベーション・メソッドとは?~

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イノベーション創出において、戦略が不明確、ビジネスモデルがないといった悩みは共通的で根深いものです。また、昨今の複雑化する社会課題に取り組むうえで、自社や自組織に閉じるのではなくオープンイノベーションや共創といった形態が広がっています。今回はAPI gallery Meet UP特別コラボ企画として、世界中の企業・NPO・国際組織等で数多くイノベーション成功事例を生み出してきた「FORTHイノベーション・メソッド」の開発者であるハイス・ファン・ウルフェンさんをお招きしました。「API gallery Meet UP」でお馴染みの青柳さん、このメソッドのマスターファシリテーターとしてイノベーション支援に取り組んでいる西村さんとの対談の模様をお知らせします!みんなでイノベーションを創出するやり方とは?組織のイノベーションの創出方法や、イノベーションをリードする人材などについて語り合いました!

本記事はNTTデータが運営する「API gallery」プレゼンツで2022年10月18日に開催したウェビナー「API gallery Meet UP ~ 特別コラボ企画“ハイス・ファン・ウルフェン氏と語るイノベーション”」のトークセッションの内容を記事化したものです。
API galleryでは随時ウェビナーを開催中です!過去の企画、および今後の開催予定については以下のリンクをご覧下さい!
<FORTHイノベーション・メソッドとは>

FORTHイノベーション・メソッドは、ハイス・ファン・ウルフェンさんが生み出したイノベーション手法です。ビジネス思考とデザイン思考の融合と、組織の力学の制御によって新規事業開発の成功確率を格段に高めると言われ、欧米含め海外の企業・NPO/国際組織等で膨大なイノベーション成功事例があります。

当該メソッドの特徴は、「イノベーションの初期段階のカオスを構造化し、イノベーションを遮る組織の力学を推進力に変える」ことだと言われています。以下の5つのステップ(それぞれの頭文字をとると「FORTH」)を通じて、チームにイノベーションの成功をもたらす手法です。

1.FULL STEAM AHEAD:チームのコアメンバー、サポートメンバーを選出します。そして、そのメンバーで「イノベーションの使命」を描き出します。
2.OBSERVE & LEARN:ポテンシャルを持つ将来の顧客を洞察し、観察し、実際にその人の話を聞き、本当の困り事を深く学んでいきます。
3.RAISE IDEAS :ポテンシャルユーザーの困り事を解決するためのアイデアを全員で創出していきます。
4.TEST IDEAS:創出されたアイデアを「イノベーションの使命」に照らし合わせ、選出し、コンセプトにまとめます。ポテンシャルユーザーに評価、フィードバックをしてもらい、その評価点からコンセプトを絞り込みます。
5.HOMECOMING:選出された複数のコンセプトを軸にビジネスモデルをデザインしていきます。チームはプレゼンのセッションを行います。最後に、経営幹部の前で磨き込まれたプレゼンをし、投資すべきいくつかのビジネスモデルを選出します。

出展:https://www.bmia.or.jp/report-column/2493/

(参考)
2022年10月に「Thinkers360」(格付機関兼エキスパートサービスプロバイダ)が発表した「50 Thought Leading Companies on Innovation 2022」(https://www.thinkers360.com/50-thought-leading-companies-on-innovation-2022/)において、GoogleやMicrosoft、MasterCardと並び、FORTHイノベーション・メソッドが紹介されました。このように、有効性が高いメソッドとしてグローバルで認知されています。

伝統的な組織でイノベーションを創出するには?イノベーションとリスク

青柳さん FORTHイノベーション・メソッドについては、組織でイノベーションをどう創出するかという点に真髄があると理解しました。組織という観点では、伝統的・トラディショナルな組織もあれば、先進的な組織もありますが、本日の聴講者の多くはトラディショナルな組織にいるのではないでしょうか。

そこではなかなか上司の理解が得られない、予算を確保できないといった課題を抱え、どうすればイノベーションが進むのかを悩んでいるケースもあると思われます。最初の一歩はどうすればよいのでしょうか。

ウルフェンさん ポイントは、あなたの上司は頑固かつ強力であり、その上にはさらに保守的で強力な上司がいるということです。上司を無理やり説得するのは得策ではありません。なぜなら人間関係が悪化してしまう可能性があるからです。

ある国の自動車メーカーが電気自動車へ投資を始めた際に、あるジャーナリストが「なぜ電気自動車の研究開発に膨大な金額を費やすのか」聞いたところ、「何もしないことによるリスクの方が圧倒的に大きいから」と答えたそうです。

青柳さん なるほど。何もしないことが大きなリスクになるという考え方ですね。

ウルフェンさん 日本ではかつてソニーがウォークマンという革新的な商品を市場に出しました。また、日本は「カイゼン」のスペシャリストと言えます。より良いものを求めることにはリスクが少ないかもしれませんが、さらに新しいものを目指さなければならない瞬間もあるはずです。その際には、どのように上司を説得すればよいのかという課題がありますね。

アプローチとしては、何もしないことがより大きなリスクとなると伝えることで緊張感を保つというやり方があります。「こんな新しいテクノロジーを見たことがありますか」、「スタートアップ企業がどんどん出てきています」、「この市場調査を見ると当社のイメージはどんどん下がっていますね」、「このクライアントが離れていってしまうかもしれませんね」といった具合に継続的にメッセージを送り、緊張感を持たせるのです。

西村さん おそらく金融機関は、イノベーションの必要性に迫られているもののなかなかスタートできないということが多いのではないかと感じています。

ウルフェンさん イノベーションを起こしたい状況と、イノベーションが必要である状況の2種類がありますよね。イノベーションが必要な時というのは、多くの場合はコスト削減などでは状況が好転せず、経営者にとって解決策がなく変革するしかないという場面です。緊急性はある一方でイノベーションに使う予算がないという壁に当たることがあります。

他方で、イノベーションを起こしたい経営者がいても、社員はその日の成果を出すのに精一杯ということが多くあります。いずれの場合においても、経営者のビジョン実現のサポートができる人材や、イノベーションする緊急性を生み出せる人材が大事になってきますね。

青柳さん 金融機関に限らないとは思いますが、改革には長期的な視点が大事だよねとは言いつつ、単年で結果が求められます。どうしても目先の利益を追ってしまうという非常に難しいジレンマがあります。こういう課題に対してはどのように向き合うのがよいのでしょうか。

ウルフェンさん イノベーションを起こせるチームとなるには、最初から革新的なものを目指すというよりも、まずは段階的な進化を組み合わせていく考え方も大事です。例えば、1年ないし2年で小さくてもよいので何かしらイノベーション的な事例を導入できると、スモールステップですが、アイデアを実際に実現できることがわかります。

西村さん 実際に事業開発のサポートにいろいろ取り組んでいると、収益化までに時間がかかることも多いですね。初期フェーズから段階的に発展させてマネタイズするサイクルがあるためです。

ウルフェンさん 小さい成功を収めていくことで、新しいアイデアを実現したとして会社から信頼されますし、より革新的なステップにも進めるという自信も生まれます。継続することで、結果的に大きな飛躍に繋がれば望ましいですし、最終的には社内のマインドセットをも革新できる可能性があります。

一方で、最初から革新的なプロジェクトを目指してしまうと、結果が出るのに長い年月がかかる場合でもあっても、単年ごとに成果を聞かれます。そして数年後には、結果が出ていない部門として解体されてしまうことも多いです。

イノベーションとは関係する市場やマーケットにとって革新的なものを生み出すこと

西村さん イノベーションに対してある種の誤解を持っている人も多いです。例えば、スティーブジョブズのような天才がいて、特別なアイデアにより突然iPhoneといった革新的なプロダクトが生まれるとか、そういった事象をイノベーションだと思っている人もいます。

確かにシリコンバレーなどでは、凄いイノベーター1人が事業も社会も変えていく、ということもあるかもしれません。しかし今の日本では、組織の力でイノベーションを創出していく、という考え方が非常に重要です。その点、ウルフェンさんはどのように考えていますか。

ウルフェンさん 私にとってのイノベーションは、顧客との関係で起こる課題や問題に対するソリューションです。そのソリューションは新しい技術的コンセプトを持ち、顧客の持つ課題や問題を解決するビジネスモデルを必ず伴います。

ここで「新しいとは何か?」という論点があります。極端な例え話ですが、「革新的かつ新しいことを始めた」と言う人に、「何を始めたか」聞いた際に「テニスを始めた」と答えられたらどう思いますか。その人にとっては新しいことであり素晴らしいのでしょうが、これはイノベーションとは言えませんね。

あなたの部署や会社にとって新しいことを始めるのは当然良いことです。それをきっかけに大きな革新が始まるかもしれません。しかしながら、イノベーションというのは、関係する市場やマーケットにとって革新的なものを生み出すことであると私は考えています。

西村さん 深い意見をいただきましたね。イノベーションにおけるデザイン思考という観点にもなりますが、FORTHイノベーション・メソッドのイメージマップは、あえて構造を明らかにせず、アートに近いかたちでマッピングしてあるように見えますよね。右脳的に作用させるようにデザインしているのでしょうか。

ウルフェンさん 右脳と左脳の双方に訴求する意図でデザインしています。左脳派の人ほど物事を構造的に見る傾向があり、エンジニアにもそのような人が多いように思います。しかしながら私は、構造的なビジネス思考と創造性のあるデザイン思考の両者を融合させることが大事だと考えています。

左脳と右脳の両方を使って360度全方向のイノベーションを実現すべく、FORTHイノベーション・メソッドではアートに近いマッピングも活用しているのです。

組織におけるイノベーションに必要な人材は?諦めずに挑戦することが大事

西村さん よく議論となるのが、イノベーションを起こすのはどんな人材なのか、という論点ですね。この辺りについてお考えをお聞かせください。

ウルフェンさん 重要なのは、組織の一員として組織のイノベーションをファシリテートするには、必ずしも自分自身が革新的な人材である必要はないということです。組織におけるイノベーションのファシリテーターのミッションは、保守的なメンバー含め全員を理解・共感し、導くことです。イノベーションは決して一人では起こせません。大事なのは“We”nnovationの考え方です。

優れたイノベーションの促進者は、メンバーの望みや目標など、彼らを理解・共感することに長けています。類まれなる柔軟性も備えています。これは能力というよりは特性だと思います。動物の群れは最も遅い動物と同じ速さで移動します。人間の組織も同じであり、優れたイノベーションのファシリテーターは、組織の中で腰の重い人たちを走らせる方法を知っているということです。

社外の顧客相手でも同じです。顧客が本当に必要とするものを、顧客自身よりも深く理解することが重要です。イノベーションがなかなか進まない時には、この理解・共感というのを意識すると良いかもしれません。

西村さん やはり昨今は、スペシャリストであるべき、スキルを身に着けるべき、と言われることも多いですが、社員それぞれが生身の人間であることに目を向けることが大事ですよね。そのうえで、人間の集団であるチームでイノベーションを創出していくとはどういうことか、という根本的な部分から改めて考えてみることが重要と感じます。

ウルフェンさん 一番伝えたいのは、決して諦めずに挑戦し続けてください、ということです。止められても何度も立ち上がって欲しいです。ノーを突き付けられた時には、それを個人の問題として受け止めないことが大事です。

上司はあなたという人間にノーと言っているのではありません。上司も不安であり、恐怖に思うこともあります。そこで諦めてはいけません。一度上手くいかなくても、最終的には上手くいくかもしれません。イノベーションで日本を盛り上げていってください。

青柳さん その通りだなと感じました。私自身もイノベーターとして取組みを続けてきましたが、何度も何度もトライアンドエラーを繰り返すことが大事であり、失敗しても立ち上がることの大切さを実感しています。我々もNTTデータのイノベーターとして、新しいチャレンジをこれからもどんどん進めていければと思います。

西村さん NTTデータでは、私以外にもFORTHイノベーション・メソッドのファシリテーターが次々と誕生していっています。当該メソッドにご興味を持たれた方や、イノベーションを創発してみたい方がいらっしゃったら、遠慮なくお声がけいただければと思います。皆様と一緒にイノベーションを起こせることを楽しみにしています。
<プロフィール>

ハイス・ファン・ウルフェン さん
FORTHイノベーション・メソッドの生みの親
イノベーションコンサルタントとしてLinkedIn では、トップソートリーダーの150人に選出。
Innovation Excellence 部門でインターナショナルトップブロガーとして第2位に選ばれる。
2022年 Top of Global Thought Leadersデザインシンキング部門Top3。
世界中のさまざまな製造・サービス業、NPO組織で、講演・ 研修、ワークショップのファシリテーターを担当、数々のイノベーションを成功に導いている。
デザイン思考や最新マーケティング手法も組み込み開発された、独自のイノベーション・メソッド「FORTH」は、クリエイティブなビジネス思考のベストプラクティスであり、科学的に効果が実証されたイノベーション創出手法として全世界で導入が進んでいる。
ハイス・ファン・ウルフェンさん:https://www.gijsvanwulfen.com/
FORTHイノベーション・メソッド:https://www.forth-innovation.com/

西村 祐哉 さん
NTTデータ 法人C&M事業本部 法人コンサルティング&マーケティング事業部 部長
FORTHイノベーション・メソッドのマスターファシリテーター。
多くの共創や伴走型アクセラレーターとしての新規事業開発支援を手掛け、事業創出にとどまらないイノベーション人材の育成/教育や組織づくり、プロセスや制度の整備まで網羅した包括的なイノベーションエコシステム形成を得意とする。

青柳 雄一 さん
株式会社NTTデータ 金融戦略本部 金融事業推進部 部長
入社以来、数多くの金融系新規サービス立ち上げに従事。2015年からはオープンイノベーション事業にも携わり、FinTechへの取組みを通じて、複数の金融機関のデジタル変革活動を推進。NTTデータのデジタル組織立ち上げ、デジタル人財戦略策定/育成施策も実行。現在は当社金融分野の新デジタル戦略、外部連携戦略策定・実行にも従事。2021年10月にリリースした金融APIマーケットプレイス「API gallery」の推進をリード。
API Gallery(https://api-gallery.com/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。

新卒で銀行の業界団体に入職。金融機関や他業界団体等との折衝・調整に携わり、具体的には資金決済インフラや為替取引の制度運営に関する業務に従事した後、金利指標改革や市場規制の案件に関する業務等を幅広く経験。
その過程で、金融分野におけるNTTデータの影響力の大きさを実感したこと、社会を支える重要インフラを提供している点に魅力を感じたこと等をきっかけに、NTTデータへ中途入社。
現在は、金融業界のトレンドを、IT技術やビジネス、社会課題といった様々な切り口で調査・整理し発信する「金融版NTT DATA Technology Foresight」の取組み等に携わる。

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