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挑戦者と語る

デジタル化の流れのなか、さらなる価値を生むBPO

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デジタル化が進む流れのなか、BPOを通じた新たな価値の提供に今あらためて注目が集まっています。それは、企業におけるDXの推進やコアビジネスの競争力強化にBPOサービスが大きく貢献すると言われているからです。今回は、企業の業務をまるごとBPOで受託しデジタル化領域と組み合せることでBPO領域の発展に挑戦する株式会社DACSの𠮷﨑智雄さんに、専門家の立場からBPOのトレンドや今後について寄稿いただきました。

BPOビジネスとは

BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業活動の業務プロセスの一部、または全部を継続的に外部委託することで、お客様に価値を提供するビジネスであると理解しています。

BPOサービスをうまく活用することで、委託企業側は、①BPO対象業務におけるコスト削減 ②法改正等への迅速な対応 ③自社コア業務にリソースを集約 等のメリットが期待できます。

BPOサービスとして業務プロセスを担う受託企業側は、対象業務における企画・設計から業務運用までのプロセスのアウトソーシングを一定期間包括的に受託することになります。
この際、対象業務のプロセス可視化、専門スキルやノウハウを活かしたプロセス効率化、デジタル化を組み合せたプロセス改革により、委託企業であるお客様に十分な価値を提供します。その価値と引き換えに受託企業は対価を受け取ることになります。BPOサービスにより委託企業と受託企業でWin-Winの関係を築き、双方のコア・コンピタンス(※1)に特化することで、それぞれの事業の収益性を高めることができます。

 (※1) 企業における競合他社と比較して優位性のある中核の事業や技術

BPOビジネスの動向とそれを取り巻く環境

矢野経済研究所が実施したBPO市場に関する調査では、BPOマーケット全体でCAGR (Compound Annual Growth Rate:複合年間成長率)で、2.67%の成長が見込まれており(2022年度実績から2027年度予測をもとに当方にて計算)、2026年度には5兆円を突破すると予測されています。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3397

このように成長が予測される日本のBPOマーケットにおいて、株式会社DACS(以下:DACSという)のBPOビジネスは、主に金融機関・自治体・法人のお客様のニーズに応えることで、少しずつではありますが、着実に受託実績を積み上げています。

図1:株式会社DACSのBPO事業推移・予測

BPO市場が拡大を続けている背景には、主に以下の3つの要因があると考えています。

①企業の人材不足
日本の高齢化は年々進んでおり、内閣府の高齢社会白書によると、令和4年の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は29.0%です。少子高齢化に伴う労働人口の減少は今後も続く見込みであり、企業が抱える人材不足は今後拡大していく可能性が高いとされます。

②働き方改革
人材不足が慢性化するような状況で持続的に事業を行うためには、働き手の拡大や労働生産性の向上が必須です。従業員の業務量調整や勤務体制改善などの働き方改革が数多くの企業で進められています。BPOサービスを活用し業務を外部に委託することで、人材が限られるなかでも、コア・コンピタンスに注力した円滑な事業運営が可能になります。

③デジタルトランスフォーメーション(DX)の促進
人材不足や業務の遂行にさらに深刻な影響を及ぼす経験者不足という課題への対応として、DXが注目されています。DXはデジタルテクノロジーの活用によって業務効率の向上やサービス品質の向上を実現しようとする動きです。
DXを進めるためにはITの活用が不可欠ですが、BPOサービスを活用すれば、社内でIT人材を十分に確保せずともBPO事業者が有する専門知識やスキルを使ってスピーディーにデジタルテクノロジーを活用した業務効率化・サービス品質向上を推進することができます。

このような背景から、以下のような定型化しやすい業務、高度な判断を含めたプロセスの可視化しやすい業務がBPOサービスの対象領域として注目されています。

・多くの企業に共通して発生するバックオフィス系業務
・プロセス可視化により業務の品質確保と効率化が期待できる業務
・窓口業務、電話対応業務など、対応プロセス確立による業務代行が可能な業務

DACSでは、金融機関や銀行取引先のお客様へのサービスを中心に、長年に渡って業務プロセスのアウトソーシング、BPOサービスを継続しています。

直近では、足立区の国民健康保険に関する窓口等の受付やシステム入力にかかるBPOサービスを担っています。国民健康保険加入者の皆さまが、手続きや問合せ等での窓口にご来訪された際の手続きや電話や郵送にて受付をした際の業務などで、例えば入院などで医療費が高額になりそうな時に医療機関窓口へ提示する限度額認定証発行、高額療養費の給付、医療費の過誤払いや不当な給付などに関する業務です。それらの各種手続きに加え、国民健康保険課内のシステム入力業務も含め多岐に渡ります。

足立区の人口は693,223人(2024年1月1日現在 区HPから引用)と大規模です。国民健康保険に関する業務についてBPOサービスを利用することで足立区では職員の方のリソース最適化と区民の方々への地域サービス向上に貢献しています。

図2:国民健康保険業務BPOサービスの例

このほかにも、さまざまな業務をBPOサービスとして受託しています。具体的には下記のように自治体のほか金融機関や企業のお客様にも幅広くご利用いただける業務もBPOサービスとしてお取り扱いしています。

・口座振替データ集配信サービス(市民税、固定資産税、軽自動車税、国民健康保険料等)
・給与BPOパッケージサービス(給与振込代行、年末調整申告書チェック代行等)
・りそな銀行がEXPO2025で提供するポイントサービス(愛称「ミャクポ!」)のサポータ企業への受付・問合せ業務

BPOを得意とする企業の特徴とは

BPOサービスを提供する事業者は数多く存在しますが、パートナーとなるBPO事業者の選定に失敗してしまうと、BPOサービス導入の効果を十分に享受できない可能性があります。ここでは、BPO事業者の選定にあたって考慮すべき3つのポイントを紹介します。

①専門性
委託したい業務に精通したBPO事業者に依頼することで、BPOサービスの導入による業務改善や品質向上などの効果が高まります。対象業務の範囲や課題に対して、BPO事業者の得意分野や強みがマッチしているかを確認しましょう。

②セキュリティ
委託したい業務で顧客の個人情報や機密情報を扱う場合、万が一これらの情報が漏えいすると、自社のみならず顧客や取引先にも多大な損害を与えることになります。受託事業者側のリスク管理体制や認証資格の取得状況、社員教育など、セキュリティ対策が万全であることの確認は必須と言えます。

③実績
経験豊富なBPO事業者であれば、円滑な業務遂行はもちろん、的確な提案やきめ細やかなサポートが期待できます。安心して業務を委託するために、豊富な受託実績があり信頼できるBPO事業者を探しましょう。

DACSも、この3つのポイントを意識してBPOサービスを提供しています。

DACSは、金融機関の取引先へ、システム開発・運用や業務アウトソーシングのサービスを提供する目的のために設立された会社です。設立以来、金融分野やシステム開発・運用への専門性を培ってきたこと、及び「アウトソーシング」「金融サービス」「システムソリューション」の3つの領域に関してお客様の業務を幅広く担ってきた実績があります。

また、セキュリティやサービスマネジメントシステムの認可を得ていることも信頼を得ている査証となります。

https://www.dacs.co.jp/2020/12/25/JQAの認定する安全対策基準/

BPOとテクノロジーの関わり

冒頭で述べたとおり、BPOは単なる業務委託ではありません。企画・設計から業務運用までのプロセスを包括的に委託することにより、業務プロセスの可視化と見直し、デジタル化をあわせたプロセス改革を行うことで、業務そのものの効率化や品質向上という付加価値をもたらします。

ここで、テクノロジーの発展がもたらした業務プロセス変革の例を見てみましょう。

2000年前後、オフィスでパソコンが1人1台に普及したことをきっかけに、ワークフローシステムの導入が進みました。業務の一連の手続きを可視化・集約することで、業務フローを統一し、ボトルネックになっているプロセスの改善を図るという試みです。

その後、さらなる技術の発展とともに、パソコンを使って行う業務の効率化・高度化の取り組みが進みました。例えば、AI-OCR(※2)を用いたデータ入力作業の効率化とRPA(※3)によるオペレーションそのものの自動化を組み合せて、業務プロセスの自動化(コスト削減)や作業高度化(品質向上)に繋げるといったことが行われるようになっています。


これらのような、業務プロセスそのものの可視化や標準化、高度化に寄与するデジタルテクノロジーは、BPOとも親和性が高く、委託業務の効率化や生産性向上のために活用することができます。

近年話題となっている生成AIも、今後、社内の繁雑化したナレッジの活用やコールセンターのオペレーターの支援など、業務変革を伴う幅広いBPOサービスに活用されていくことでしょう。

(※2)AI-OCR:“Artificial Intelligence - Optical Character Reader” の略で、AI技術を活用したOCRの仕組みやサービスを指す。AIの特徴である機械学習やディープラーニングによって、文字の補正結果を学習し、文字認識率を高めることができる。

(※3)RPA:“Robotic Process Automation”の略で、これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業やより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習などを含む認知技術を活用して代行・代替する取り組みを指す。

今後のBPOビジネスの変化

これまで見てきたように、BPOサービスの市場規模は拡大を続けており、労働力人口が減少する将来を見据えると、今後もさらに需要が増えていくものと考えられます。2013年にオックスフォード大学のオズボーン博士らは、米国で10~20年内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが70%以上という推計結果を発表しています。その発表から10年以上が経った現在は、過渡期的状態にあるとも言え、AI-OCR、RPA、生成AIなどのデジタルテクノロジーと人間が協働して質の高い業務プロセスを遂行することが求められています。

https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf

企業に対してイノベーションへの取り組みを求める声が高まるなか、いかにして生成AI等のテクノロジーを活用したDXの推進やコアビジネスの競争力強化に注力するかが、今後重要になるのではないでしょうか。

また、規制緩和による市場競争の激化や、情報セキュリティに対する企業姿勢も厳しく問われるようになっています。ビジネス環境が大きく変化するなかで、それに対応する方法のひとつとして専門性の高い企業による安全なBPOサービスの活用シーンもさらに増えることでしょう。

DACSとしても、企業のコア業務集中に寄与できる間接業務の効率化、非金融の事業会社による金融業務参入のバックアップ、企業の基幹業務の効率化、ニーズに応じた情報セキュリティシステムの開発など、時代の動きを読みとった新しいサービスの展開を考えています。みなさまのビジネスを次のフィールドへと繋ぐためにDACSも貢献していきたいと思います。
𠮷﨑 智雄 (よしざき ともお) さん

𠮷﨑 智雄 (よしざき ともお) さん

株式会社DACS取締役副社長。
社員と共にBPO×DXにてお客さまへ価値をお届けする取り組みを推進。
1985年4月りそなグループ入社、システム部門に約25年間在籍し、銀行・信託のシステム開発、事務システム統合、事務プロセス改革等に従事。
2017年4月 りそなホールディングス執行役 兼 りそな銀行執行役員、2020年4月 りそなビジネスサービス代表取締役社長、2023年6月より現職。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
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執筆 オクトノット編集部

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