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挑戦者と語る

シニア人材活躍を考える
 〜地域金融×デジタルで支える2ndキャリア〜
API gallery MeetUP ~Vol.24

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近年、人口減少社会に入り、人材不足が各業界で大きな課題となっています。
こうしたなかで注目されているのが“働きたいシニア世代の労働力”です。今回はギグベース社長の田中祥司さん、NTTデータのしんきん事業部でアプリバンキング開発に取り組む村本晋一さんが、シニア世代と仕事を結びつける新たな連携事業について語り合いました。

「ローカル経済圏」での人材不足と「働きたいシニア世代」の存在

青柳さん 円安が強まる前の、以前のデータになりますが、 ​日本のGDP約5.1兆ドルのうち、70%がローカル経済圏、30%がグローバル経済圏という比率になっています。グローバル経済圏は、自動車輸出、情報IT産業のような、必ずしも生産拠点で消費されない産業で、日本のグローバルビジネスを引っ張る製造業や大企業が中心となっています。

一方で、ローカル経済圏は生産と同時にその場で消費する産業で、交通物流、飲食宿泊、小売卸売、社会福祉など、サービス産業、中小企業が中心になってきます。シニアとは関係ない話のようですが、実は密接に関係しています。それはグローバル経済圏に比べ、ローカル経済圏の労働生産性が非常に低いことにあります。人手がかかるわけです。

また、日本は既に人口減少社会に入っています。人口がどんどん減少し、国内消費も、働く人も少なくなっていくという課題があるわけです。少子化も深刻ですから、相対的に65歳以上のシニアの方が増えていきます。労働人口比率でも、65歳以上の比率が増えています。

問題は、働きたい意欲のある人はいるのですが、どこでどう働くか、マッチングがうまくいっていないことです。 自分に合う職場を見つけて楽しく働かれているシニアの方もいるものの、スキルを生かせずにマッチしない仕事をされているシニアの方もいらっしゃる。

そういう大きな社会課題を解決するために、地域金融機関と中小企業と、働きたいシニアをマッチングさせるヒントを得るべく、ギグベースの田中社長と、NTTデータしんきん事業部の村本さんにお話を伺いたいと思います。

自分のスキルを活かしてスキマ時間で働きたい人が増えている

青柳さん 田中さんは、様々なスキルを持った人を会社とマッチングするプラットフォーム「ギグベース」を展開されています。働き方の選択肢が広がっている今、どういうマッチングの実績があるかなどお話ししていただけますか。

田中さん ギグベース株式会社は2010年に設立以来、一貫して多様な人材に多様な働き方を届けるということをテーマに会社運営してきました。

具体的な事業内容としては、サービス業のなかでも、机上で働くいわゆるデスクワークというより、現地へ行って働く仕事、これをデスクレスワークと定義して、そういったお仕事の求人、業務をマッチングするプラットフォームを運営しております。業種は、主に不動産業、ホテル、建設業の会社を中心に約1500社のお客様とのお取引があります。

その方のタレント性を生かして働くという意味で、当社ではギグワーカーのことをギグタレントと呼んでいます。全国で6万名ご登録をいただいています。ギグタレントの男女比率はやや女性の方が多いぐらいで、男女問わず働けるサービスです。年齢も30歳から50歳くらいが中心ではありますが、シニアの方もどんどんサービスに関心を持って登録いただいています。

どんな人材がいるのかですが、まず自身のスキルを生かして業務委託等で仕事をするフリーランサーの方、それから自宅の近くで育児や介護に伴うスキマ時間で週に2日~4日、1日5時間ぐらいで働きたいというような方が多いです。本日のテーマになっているシニアの方も同様ですね。

青柳さん 多様な働き方ということですが、スキマ時間を使った副業というのも増えてきているんですね。

田中さん 国の調査では、過去に副業経験があるか、副業を今後やってみたいという方が全国に約2700万人いるそうです。これは無視できない規模の存在だと考えています。ギグベースは、このような多様な働き方を望む人に対して企業の方に求人を出していただき、それにマッチングする人材にスカウトを送り、求人応募を受け付けて、採用するまでの流れがオンライン上で完結するプラットフォームとなっています。

青柳さん その中で、働くシニア世代の方にはどんなニーズがあるんでしょうか。

田中さん シニア世代の就業希望人数は約10年でほぼ倍程度まで増えています。非正規で働くシニアの方々が仕事を選ぶ理由として共通しているのは、自分に都合のいい時間に働きたいということ、もう一つはスキルを生かして働いて収入を増やしたいということです。

実際に当社のサービスで活躍するシニアの方にヒアリングした結果でも、1日4時間~5時間程度、時間は7時から16時で、通勤時間は片道15分~30分くらいを希望する方が多いです。収入を増やしたいという方も、高給ではなく1ヶ月で3万円~10万円ぐらいの範囲で収入補填できたらと考えているようです。今までずっと定年するまで働いていた職種や技能を生かせるような仕事が良いということで、過去の職務経験を生かして働きたいという方が多く存在しているということです。

図1:非正規の職員・従業員の高齢者雇用者が現在の雇用形態についた主な理由(2020年)

出典:総務省統計局ホームページ (https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1292.html)

金融機関×アプリバンキング×人材マッチングで地域を元気に

青柳さん 村本さんはNTTデータのしんきん事業部でしんきんのアプリバンキングを企画していますね。ギグベースのサービスと、アプリバンキングをマッチングした新しい事業について教えてください。

村本さん 初めに、NTTデータでなぜ人材マッチングサービスなのか、この取り組みの背景についてです。近年、地域の事業者の人手不足が深刻化し、それによって地域経済が縮小しているという大きな課題があります。

一方で住民の方はワークスタイルの変化で副業が当たり前のようになってきています。金融機関では人材紹介業の解禁など、規制緩和で参入できるビジネスが増えています。このような中、それぞれをうまくつなげて持続可能なビジネスモデルを作っていきたいと考えています。

青柳さん 人手不足を解消することで、地域活性化につなげる取り組みなのですね。具体的にはどのようなサービスになるのでしょうか。

村本さん NTTデータが提供するアプリバンキングにギグベースの人材マッチングプラットフォームを連携して、地域金融機関に提供していくサービスです。

人材マッチングサービスを金融機関から企業、住民の方に紹介していただく流れですが、企業向けには対面営業活動でのご提案などをしています。住民の方には、スマートフォンのバンキングアプリに通知が届き、そこからギグベースのアプリに誘導してスムーズにご案内ができます。紹介の対価として金融機関側はギグベースから手数料を受け取れるという形となっています。

最後に、この取り組みのそれぞれの立場におけるメリットについてです。
まず地域住民の方は、すきま時間で働けるという新たな労働機会を得られます。また金融機関の目利きを利用して、安心安全な企業からお仕事の機会提供を受けられるというところがあると思います。

シニア世代の方は、アプリなどに個人情報を提供することに抵抗がある場合も多いと思います。ギグベースのサービスを金融機関の馴染みの担当者様からご紹介することで、安心して登録いただけることも狙いです。

次に利用企業側ですが、雇用計画がないのでプラットフォームを使って必要なスキルを持つ即戦力や信頼できる労働者を何度も調達することができます。
最後に地域金融機関としては、人材紹介による地域経済の活性化の役割を担っていけるということです。こういったサービスを推進することで、非金融サービスによる新たなビジネス手数料の確保やお客様の確保というところにも繋げることができるのではないかと考えております。

青柳さん 地域金融機関を通じた紹介ということで、安心感があるところもポイントですよね。

図:2地域金融機関を通じたギグベースの人材マッチングプラットフォームの利用イメージ

シニア世代にとっては「スマホリテラシー」「信頼感」も課題

青柳さん 続きましてお二人の展開する取り組みについてより掘り下げて伺います。
ギグベースは田中さんが立ち上げた事業ですが、立ち上げのきっかけとなる出来事は何だったのでしょうか。
田中さん 前職で、シェアハウスなど不動産の開発管理をする学生ベンチャーをやっていました。その際、短時間で終わる軽作業のために移動時間を多くかけたりすることがありました。自分が移動しなくても、その時、その場所で作業できる人手を見つけられたら良いのにという課題を感じて、サービスを始めました。

青柳さん シニア世代からの応募や登録は、最近多くなってきていますか。

田中さん 増えてきましたね。 コロナが明けたぐらいから加速してきたなっていう感覚を持っています。

青柳さん ギグベースさんのサービスは、パソコンでは使えないスマホ特化型ですよね。シニア世代には、スマホのリテラシーがポイントになってきますね。

田中さん ご登録いただいたときのデバイスはスマートフォンが多いですし、リテラシーも高い方がいらっしゃるので、スマホだけでもやっていけるように年々なってきていると思います。

青柳さん 今日はシニアがテーマですけれども、地域のDXといった観点でもシニア世代のスマホ対応については話題にあがります。村本さんは金融機関さんのバンキングアプリを幅広い層にご提供されていますが、バンキングアプリ利用者の世代にはどのような変化がありますか。

村本さん 特に信用金庫業態は、シニアの方が非常に多いという特徴もあります。アプリ利用者の半分ぐらいが40歳以上、2割ぐらいがシニアの方です。まだシニアの方の登録は進んでいないところが課題です。

青柳さん 最近スマホを使う層もシニアの方を含めて、かなり幅が広がったと思いますが、お二人は実際にサービスを展開されていて、どう感じていますか。さらに利用を広げていく取り組みは何かありますか。

田中さん 使い手の方がLINEなどを使うようになって、こちらの意図が自然と伝わるようになったなと感じています。

村本さん アプリの認知度が足りていない部分があるので、パンフレットを作成したり、ウェブ広告を活用したマーケティングを開始したりしています 。

青柳さん トラディショナルなメディアと、スマートフォンのWebサービスをどう繋げていくのかは重要ですね。この点は田中さんどうでしょうか。

田中さん サービスにご登録いただく方々は、必ずしも常日頃から仕事を探しているわけではないため、ポスティングなど、チラシを配ることによって目について登録するケースもあるので、何かの接点で情報を仕入れていただけるようにしています。

青柳さん ポスティングもシニア世代にとっては重要なきっかけになりますね。
お話ありがとうございました。では最後に、田中さん、村本さんに。今後の展望について伺います。

田中さん 地域の金融機関様が間に入っているのであれば安心だという信頼感をもって、シニア世代の方にもよりお仕事のマッチングサービスを利用してもらえれば良いなと感じています。

村本さん NTTデータは、シニア世代も含め、色々なお客様に使ってもらうサービスを作っています。バンキングアプリであれば、より簡単に登録や本人確認ができるようにするなど、より使いやすく多くのお客様に使ってもらえるようにしていく必要があるのかなと思っています。

青柳さん お二人ともありがとうございました。
田中 祥司 (たなか しょうじ)  さん

田中 祥司 (たなか しょうじ) さん

ギグベース株式会社 代表取締役社長

法政大学在学中に、東京都学生起業家選手権にて優秀賞を受賞。
「ルームシェア」と「留学生専門」の不動産会社を創業。
退社後2011年、ギグベース株式会社へ取締役として参画。
2012年 同社代表取締役に就任
ギグベース株式会社(https://about.gigbase.jp/
村本 晋一 (むらもと しんいち) さん

村本 晋一 (むらもと しんいち) さん

株式会社NTTデータ 第二金融事業本部 しんきん事業部 課長

NTTデータ入社以来、金融機関向けの新規サービス企画や開発に従事。
2019年からは信用金庫業態向けの新規サービスの立ち上げを担当。近年は信用金庫に向けた個人向けアプリバンキングや、事業者向けサービス、職員向けサービス等を推進。
青柳 雄一 (あおやぎ ゆういち) さん

青柳 雄一 (あおやぎ ゆういち) さん

株式会社NTTデータ 金融戦略本部 金融事業推進部 部長

入社以来、数多くの金融系新規サービス立ち上げに従事。2015年からはオープンイノベーション事業にも携わり、FinTechへの取り組みを通じて、複数の金融機関のデジタル変革活動を推進。NTTデータのデジタル組織立ち上げ、デジタル人材戦略策定/育成施策も実行。現在は当社金融分野の新デジタル戦略、外部連携戦略策定・実行にも従事。2021年10月にリリースした金融APIマーケットプレイス「API gallery」の推進をリード。
API Gallery (https://api-gallery.com/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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