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金融が変われば、社会も変わる!

挑戦者と語る

デジタルでお金をもっと身近な存在に!TORANOTECの挑戦

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昔から日本人はお金に対して安定志向という話をよく耳にします。教育や老後資金など、すぐに使わないお金は長期運用の投資で増やしていくのが有効と言われていますが、具体的に行動に移している人はまだまだ多くないように思われます。すべての人がより良い生活を送れるように、金融サービスができることとは何か。人々のマインド・行動を変えるにはどうしたらよいのか。そのヒントを得るべく、資産運用サービス『トラノコ』などで注目を集めるTORANOTECの代表取締役社長ジャスティン・バロックさんに、オクトノット編集部の美山さんがお話を伺いました。

なぜ日本では投資への意識が低いのか?

美山さん TORANOTECさんと言えば、少額から気軽におつりで投資ができる『トラノコ』が有名です。バロックさんはもともとオーストラリアのご出身でステート・ストリート・グループに在籍されていたとうかがっています。どうして日本で事業を立ち上げようと考えたのでしょうか。
バロックさん 私は金融機関でのキャリアが長く、アメリカ、ロンドン、シンガポール、オーストラリアなどさまざまな国で仕事をしてきましたが、TORANOTECを設立する前の10年はステート・ストリート銀行の在日代表を務めていました。
新たなチャレンジを考えていた頃、ちょうどFintechがバズワードとなっていました。世界にはとても面白いビジネスモデルがいくつもあり、アメリカやヨーロッパ、アジアなど世界各地に足を運び、Fintechのビジネスモデルを見て回りました。そうした中で、日本でも資産運用のWealthTech、Fintechにかなり大きなビジネスチャンスがあるのではないかと感じました。
美山さん 日本は欧米などに比べると個人における資産運用への意識がまだまだ未成熟な国だと思います。なぜあえて日本をマーケットに選んだのでしょうか。
バロックさん 日本のリテール金融サービスには長い歴史がありますが、色々な面でハードルがあり、個人が自ら投資を行うことが当たり前という状態にはなっていません。そこにFintechの発想を持ち込み、スマートフォンなどのテクノロジーをうまく活用することで、新たな資産運用の世界への入り口を作ることができると思いました。日本は経済大国であることは間違いなく、始めやすく続けやすい仕組みを提供し、金融リテラシーを高めていけば、高いポテンシャルがあると感じたことも日本での起業を選んだ理由のひとつです。
美山さん そもそも、どうして日本は投資への意識が低いのでしょうか。
バロックさん 個人投資家向けの投資商品やサービス自体は非常に多いのですが、おそらく日本ではお金や投資の話はプライベートなことと考えられていて、あまり話題に上らないのだと思います。海外では身近な人と「この株いいね」「この投信ファンドに投資してすごく伸びた」といった話をするのはごく普通のことです。
美山さん 確かに、日本では仲のいい友人であってもお金の話はあまりしないですよね。パーソナルかつものすごくプライベートな話題だと考えられているような気がします。
バロックさん 海外でももちろんパーソナルなことではありますが、日本にはお金について自由に話せる雰囲気がない。例えばアメリカ、イギリス、ヨーロッパなどの国々では、大学生同士でも普通に株取引の話をしています。特にこの5年ほどで、スマホで簡単に取引できるような仕組みがたくさん出てきたこともあり、若いうちから投資を行う文化がより当たり前のこととして定着してきています。日本にはまだその文化が根付いていないので、逆にチャンスがあるとも言えます。
美山さん チャレンジングではあるものの、マーケットは広いのではないかと。
バロックさん そうですね。日本はスマートフォンの所有率が高いことも魅力です。いいものを作れば、ダイレクトにお客様にリーチできる国だと思います。

投資を生活に溶け込ませるTORANOTECの挑戦

美山さん 日本でサービスを展開されるにあたって、なぜ「おつり」に着眼されたのでしょうか。
バロックさん 私たちは「すべての人を投資家に」というモットーのもと、誰もが自らの将来のために資産運用を行える世界の実現をめざしており、投資を始める上でのハードルをとことん低くしたいと考えました。
日本で個人による投資が増えるためには、投資教育など様々な課題がありますが、私たちは「日々の生活のあらゆる場面に資産運用につながるタッチポイントが増えれば、もっと投資をすることが当たり前なことにできるのではないか」と考えました。そのためには日本の文化に適したコンセプトを考える必要がありました。
そこで、「まとまったお金がない」、「なんとなく怖い」という人も気軽に安心して少額から投資を始められるよう、おつりやポイントに着目して仕組みづくりをしました。生活の真ん中にある消費行動と一緒に投資できる、そういうサービスなら、誰でも気軽に参加して頂けるのではないかと。

美山さん 実際に投資が初めてというユーザーが多いのですか。
バロックさん 6割くらいが未経験の方ですね。一方で投資歴5年以上の方も2割くらいいらっしゃいます。投資経験のあるユーザーは他の証券会社などにも口座をお持ちのはずですが、それでも追加でトラノコをやりたい、と感じてもらえている。長期的な資産形成の運用手法として王道の国際分散投資を低コストで手軽に行えることに魅力を感じていただけているのではないかと考えています。
トラノコを通じて、次世代の投資家を育てられているという実感があります。ユーザーの半分くらいは20~30代で、40代も含めると約75%に上ります。従来型の証券会社の場合はおそらく50代以上が利用者の多くを占めているのではないでしょうか。トラノコでは逆のユーザープロファイルとなっており、デジタルのタッチポイントが若い人に受け入れられているのだと思います。
美山さん TORANOTECさんが提供している、歩くだけで投資資金が貯まる歩数計アプリ「マネーステップ」も同じ思想なのかなと思っています。誰でも参加しやすいですよね。
バロックさん マネーステップはトラノコのサテライトアプリとして立ち上げました。最初は投資と関係なく、簡単に始められて、ポイントがたまれば投資に使うことができる。トラノコよりも、もっとライトな入口を意識しました。マネーステップのポイントの使い道はあえてトラノコでの投資に限定しています。
美山さん ポイントが好きという日本人の国民性がサービスのヒントになったんですね。
バロックさん 日本人はポイント好きな方が多いので、このビジネスモデルが適していると思いました。また、ポイントというのは日々の生活に溶け込んでいるものですよね。買い物したり、歩いたり。日本ではなんでもポイントがもらえます。なので、そのポイントを資産形成のタネにする仕組みを作れば魅力になると思いました。
美山さん 生活により溶け込ませていくために、マイルを発行しているような企業さんとも提携されていますよね。
バロックさん 私たちがこのビジネスを展開する中で醍醐味を感じているのは、色々な企業と提携することで新しいチャンスをどんどん広げていけることです。トラノコは金融機関、小売、ポイント、エンターテイメントなど、色々なタッチポイントで他社との連携ができます。
つい先日、JCBとの業務提携により、「トラノコ」をJCB会員様向けにカスタマイズした資産運用サービス「トラノコ for MyJCB」の提供を開始しました。JCBカードのショッピンングの利用明細を「トラノコ for MyJCB」に連携することで、ショッピングと資産運用を一体化しています。決済分野や、新しい金融機関との新しい提携を常に考えており、これからも様々なコラボレーションを推進していきます。

デジタルが人々の金融行動を変えていく

美山さん TORANOTECさんは社名に「テック」が入っていることからも、デジタルやテクノロジーには思い入れがおありなのでしょうか。
バロックさん 私たちが提供する資産運用サービスはタッチポイントをスマホにしています。ウェブでのサービス提供も行っていますが、トラノコのコア戦略としてはモバイルファーストが基本にあるので、社名にも「テック」とつけました。
美山さん モバイルファーストで敷居を下げ、生活の中に溶け込ませることが重要であると。やはり、金融はデジタルと相性がよいでしょうか。
バロックさん そうですね。金融とデジタルのコネクションは今後ますます重要性を増すと思っています。資産運用サービスだけでなく、保険、ローンを含めて、広い意味でのフィナンシャルサービスにおいて、新しいアクセスポイントはどうしてもデジタル優先になってくるのではないでしょうか。
リアルな世界、日々の生活、いつも使っているブランドと店舗のようなリアルなチャネルにデジタルのチャネルを組みこむ、というのが我々の戦略です。リアルからデジタルに引っ張ってトラノコの入り口に来てもらう。ですから、日々の生活のベースにどんな入口を作れるかが重要だと考えています。
美山さん 金融リテラシーについての話もありましたが、投資教育のようなアプローチも考えてらっしゃいますか。
バロックさん 大事なことだと思います。トラノコが投資の世界の入り口である以上、金融リテラシーの向上をサポートしないといけません。「トラノコ」のご利用者には毎週ファンドマネジャーがその週の投資状況の背景を解説する「ウィークリー解説」をアプリ上で配信しています。また、「トラの知恵」というサイトを開設し、人々の生活にまつわるお金や資産運用のコラムなどを掲載していますが、まだまだできることがあると思っており、今後も金融リテラリーの向上に資する取組を計画していきます。
日本では2022年4月以降、高校のカリキュラムの中で「資産形成」に関する教育が始まるなど、すごくいい動きもあります。金融リテラシーは非常に重要なので、私たちもサポート続けていきます。
美山さん ちなみに、トラノコにはユーザーのリスク許容度に応じて、安定重視の「小トラ」、バランス重視の「中トラ」、リターン重視の「大トラ」と3つのファンドが用意されています。初めて投資をする方はどういった選択をされる傾向がありますか。
バロックさん 実は、一番人気は「大トラ」です。
美山さん それは意外ですね。少額だからリスクテイクする人が多いのでしょうか。安定志向という日本人の価値観とは違いますから、トラノコさんのサービスが日本人に新しい価値観を提供しているような気がします。

新規事業も投資も「とにかくやってみる」

美山さん オクトノットには新しいサービスを考えている読者の方がたくさん訪れます。新規事業を前に進めるためには何が必要でしょうか。
バロックさん とにかくやってみるということが大事です。第一歩を踏み出すとエネルギーが湧いてきて次に進める。プランニングを行うことも大事ではありますが、企画段階で色々なリスクのことばかりを考えて潰してしまうよりも、大きなステップを踏み出すことが重要だと思います。
外国人の私にとって、大手金融機関を退職して、日本でベンチャーを起業することは非常に大きな挑戦でした。しかし、全てを把握して正解を先に求める必要はなく、始めてみることで、色々な関係者からアドバイスをいただきながら方向性を調整することはできるのです。
美山さん 「とにかくやってみる」というマインドは、トラノコのサービスそのもののコンセプトにも通ずるところがありそうですね。投資を体験したことがない方でも、あまり構え過ぎずに日常生活の中で無理なく少しずつ始めてみようよと。
バロックさん そうですね、投資もとにかく始めてみることだと思います。少しずつでもやってみることが重要になります。もちろん、取れないリスクを取るべきではないですし、無理をして全財産を投資すべきではありません。でも、少しずつでもやってみることで、投資をしていくことに慣れて、長期的に投資ができるようになる。歴史が語っている通り、長期投資が資産形成に有効なのは確かです。早いうちから着実に資産を築いていってほしいと思います。

美山さん トラノコの事業を通じて、どういう未来を作っていきたいですか?
バロックさん まずは日本で累積開設口座数100~200万口座を目標としています。現在は約35万口座ほどですが、投信協会のデータを見ると投資未経験の方が多い。まだまだポテンシャルがあります。
また、日々の生活の中に簡単な投資世界への入り口を作るという発想は、他のアジアの国にも受け入れられると思っています。こちらは現在準備フェーズの段階で、コロナ禍であまり進んでいなかったのですが、今後はそうした海外展開も進めたいです。
美山さん 投資をやっていない人に対しての戦略はすごくわかりやすいなと思いました。連携先を増やして、入口のハードルを下げて誘導する。これだけさまざまな分野の連携先があれば、普段生活をしている中でもどこかでは目にしますよね。
バロックさん TORANOTECの未来としては、どこでもトラノコのロゴが認知されている状態にしたいです。金融サービスを、特別なことではなくて、日々の生活の一部、当たり前の一部にしたいと思っています。
美山さん ちなみに、2022年は寅年ですね。
バロックさん そうですね。マーケティングにおいて重要な一年になりそうです。「トラノコ年」というワードをぜひ使いたいと思っています(笑)
躍進の年にしたいですね。
〈プロフィール〉
ジャスティン・バロック さん
TORANOTEC株式会社 代表取締役社長

ステート・ストリート・グループで18年にわたり証券、投資顧問、銀行業務を担当。2004年から2015年までステート・ストリート・グローバル・マーケッツ証券の代表取締役、ステート・ストリート銀行の在日代表、ならびにステート・ストリート・グループの証券部門のアジア環太平洋地域のトップとして、グローバルでビジネスの展開を主導。2016年8月にTORANOTEC株式会社を設立、代表取締役社長を務める。ニューサウスウェールズ大学商学部卒業、同大学経済修士課程修了。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。
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執筆 オクトノット編集部

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