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金融が変われば、社会も変わる!

挑戦者と語る

デジタルでコミュニケーションを変革する ~I’mbesideyou~

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昨今、テレワークやオンライン授業といった非対面コミュニケーションが急速に拡大しています。オンラインでのコミュニケーションは利便性などの利点も挙げられる一方で、画面越しでは得られる情報量が少なく、対面に比べて相手を理解しにくいといった課題が生じているとの声も聞かれます。今回は、NTTデータで金融領域のDXに取り組む松尾さん・小坂さんが、AI技術を活用してこのようなオンライン・コミュニケーションのペイン解消に挑むI'mbesideyouの代表取締役社長 神谷渉三さんと対談し、デジタルを活用したコミュニケーションの概況と新規事業を生み出すための考え方についてお話を伺いました。

デジタル×コミュニケーション

デジタルでもコミュニケーションは高度化できる

──神谷さんは2020年にI'mbesideyouを設立し、「人以上に人に寄り添うAI」をキーワードに掲げてオンライン・コミュニケーションの課題に挑んでいます。そもそも、会社設立の経緯は何だったのでしょうか?

神谷さん 実は設立以前に「Nei-Kid」という小学生向けの教育事業をやっていまして、子供の様子をスマホのカメラで撮影して個性を明らかにする、ということに取り組んでいたのですが、見事に挫折しまして。子供は走り回るので、カメラでちゃんと撮れないんですよ(笑)。それで、その取り組みは頓挫していたんですが、そのあと新型コロナウイルスが流行して、みんながZoomでコミュニケーションするような時代がやってきました。

Zoomの枠にみんなの顔が入っていて、マイクに向かって喋っているという状態です。前回挫折した問題が全部クリアされていて、これならいけるんじゃないかと思ってサービスを作ったら実際に盛り上がって、会社を立ち上げたんです。

──感染症の流行やテクノロジーの進展という外部環境の変化の波に乗って、もともとやりたかったことが実現できるようになったのですね。

神谷さん そうです。「唯一無二を見える化する」というのが当社のミッションですが、一人一人が、かけがえのない個性を持っている。それを世界中の人に分かってもらって、個性を尊重しあって、お互いがより良いコミュニケーションの中で学びあえるようになる。それが、僕たちがやりたいことです。

──具体的に、どのように良いコミュニケーションを作り出すのでしょうか。

神谷さん コロナ時代のペインをゲインに変えられないかと考えています。オンラインでは、一人一人の表情や反応は読みづらいと言われていますが、オンラインの方が、一人一人に寄り添ったコミュニケーションができるのではないかと。

AIを活用して、表情、顔の向き、視線、音声、脈拍などのデータを複合解析して、オンラインの向こうにいる相手の喜怒哀楽や集中度を測れるようにします。そうすることで、一人一人の反応から個性を理解して、ベストなコミュニケーションに近づけることができる。

もちろん、ただ笑顔が多いから良いコミュニケーションだというわけではありません。相手のキャラクターや、各データのバランスを見て、コミュニケーションの質を評価できるようにするんです。こういったことができるのはオンラインならではの利点です。

──AIのようなテクノロジーに着目したのはなぜでしょうか。

神谷さん そもそも、新規事業を始めたのは息子がきっかけなんです。息子が小学校に入ったら元気をなくしてしまいまして。ここに座れとか、宿題やれとかで。画一的な教育に違和感を覚えていたのだと思います。

でも、世界にはいろんな価値観があるんだよ、ということをちゃんと伝えてあげたくて、息子が通う場所や、小学校とは違う教育の場などを作ってきたんです。けれど、そこで育った人たちが元のコミュニティに戻ると、出る杭だと言われて打たれてしまう。

だから、世の中全体を、個性を認める社会に変えていかないと抜本的な解決にはならないということに気付いたんです。そして、社会全体の価値観を変えるとなるとITしかない。新しいテクノロジーなら世界中にリーチして世界を動かすことができる。

デジタルはリアルとは違うもの

──歴史を振り返ると、メールの誕生からスマホやSNSの普及、今はビジネスもビデオ会議と、コミュニケーションを支える技術も進化しました。これに伴って、人々のコミュニケーションのあり方も変わってきたのでしょうか。

神谷さん 僕は技術が進化しても人々のコミュニケーションの根幹はオフラインだと思っています。例えば、デジタルマーケティングの成功例として挙げられるような小売業界の自社アプリでも、捉えられているのはお客様全体の数%程度だったりします。そこから全体を類推しているわけです。リアルの情報のほうが、圧倒的に情報量が多い。それはいつまでたっても変わらないと思います。人間が何万年も積み上げてきたリアルのコミュニケーションが、10年20年で変わるものじゃない。だから、リアルは大事というのが大前提です。

一方でデジタルの比率がどんどん上がっていくのは間違いない。AmazonがECの世界を破壊したと言われますが、購買活動全体で見れば10%くらいの置き換えです。でも、ものすごくインパクトがある。それは、成長率がものすごいからです。その変化を起こしているのは明らかにデジタルなわけです。

──デジタルが加速する一方、そのデジタルに足りない部分を埋めていく視点が、コミュニケーションにおいても重要だというということでしょうか。

神谷さん そうですね。世の中にはxRのような、デジタルをリアルに似せてリアルに追いつかせるアプローチもあります。でも、僕はリアルとデジタルは違うものだと考えています。だらか、デジタルならではの価値を付け加えてあげて、プラスマイナスで見るとデジタルのがちょっと上になる、そんなイメージで捉えていくのが正しいアプローチかなと思っているんです。

例えば、どんな優秀な先生でも30人の子供たちの顔を同時に見分けることはできないですよね。でもコンピューターならそれができるわけです。教育サービスの中でのペインは、どんなにいい教育の場を作っても、その前にいる少人数の生徒にしか届けられないということです。そういうリアルの限界も、デジタルを使えば解決できる。

松尾さん デジタルがリアルと違った視点を与えてくれることもありますよね。私は以前、長崎の観光を活性化するために、訪日外国人の行動を分析するプロジェクトに携わっていたことがあるのですが、いわゆるKKD、経験と勘と度胸を重視するという考え方が、旅行業界にも浸透していたんです。でも、デジタルデータでしっかり見てみると、それまでは「こう思う」というスタイルでやっていたことが、全然違って見えてくる。

先ほど例に挙がった教育分野でも、先生や家庭教師の中には、教育方法やコミュニケーション方法にそれぞれの信念を持って教えているという方も多いと思うんです。でも、それを客観的に評価してもらう機会はなかなか得られない。数値化することで、肯定したり、思い込みの部分を覆したりすることができるのは面白いですね。

日本の社会ではKKDでやっていることがすごく多いと思うので、神谷さんのアプローチは、日本の業界が抱えていそうな問題をたくさん解決できそうだなと思いました。

神谷さん まさにそうです。僕たちが取り組んでいるのは透明性を作ることなんです。日本らしさというところで言うと、例えば、複数の指標が相反するシグナルを示した時は悪いコミュニケーションだ、というロジックがあります。口では「ありがとう」と言っているけど、顔が全然笑っていないとか、「分かった」と言っているけど顔が不安そうとか。そういうコミュニケーションって、日本人には結構あるんですよね。

こういうのは大概良くないコミュニケーションなんですが、それが議事録などに形を変えると分からなくなるわけです。それを見えるようにして、コミュニケーションが正しく機能するようにしてあげる。それから、人間だと躊躇することもAIは空気を読まないで言いますから、そういう役回りをポンと入れてあげる効果もあると思います。そういう存在は日本人のメンタリティにフィットするはずです。

デジタル・コミュニケーションは金融を変えるか

──金融領域でもデジタル・コミュニケーションは高度化できるのでしょうか。

神谷さん 例えば、銀行は商品の差別化が難しいとよく言われますよね。お客様に持っていく商品がほとんど同じなのであれば、片方が固定されているわけですので、営業担当者ごとのコミュニケーション分析や比較、改善がやりやすい領域だと思います。

小坂さん 確かにそうですね。私は信託銀行に勤めていたことがあるのですが、商品の差別化が難しいからこそ、一人一人のお客様と自分たちの取引関係を維持する上で、最後にはあの手この手で築き上げたリレーションが効いてくる。そういう意味でも、銀行はお客様との距離、リレーションを大事にする文化がありますよね。

自身の経験から、銀行には、会いに行けるなら行くというコミュニケーションの型がスタンダードな考えとして根強くあると感じています。ただ、銀行でもチャネル変革が進む中、オンラインチャネルを使いながらいかに良質なコミュニケーションを実現できるかが、今後はポイントになってくるのだろうと思います。

神谷さん そうですね。最近、自分自身には、オンラインで関係を築いていない人となぜリアルで会うのか?という感覚も生まれつつあって、もしかすると人々の価値観も変わってきているのかもしれません。

小坂さん 確かに、利用者の立場で考えてみると、金融商品の営業は対面でなくてもいいのにと感じることもあります。おっしゃる通り、人々の感じ方はどんどん変わっているように思います。銀行の営業でも、先にオンラインで関係を築くことがスタンダードなコミュニケーション方法になるかもしれませんね。

神谷さん 僕は、ビジネスはオンラインに代替されていくんじゃないかと考えています。オンラインは、雑談みたいなコミュニケーションにはあまり向いていないので、友達と仲良くするとか、親密な人と過ごす時間はリアルで残ると思いますが、ビジネスライクなやり取りはオンラインの方が圧倒的に効率的です。

松尾さん 営業現場では、よく「笑顔で接客しましょう」と言われることもありますが、笑顔だからコミュニケーションの質が良かったという評価をするわけではないんですよね。そこが、金融領域でも新しい気付きをもたらすかもしれないと感じました。

今日は自分とお客様とのコミュニケーションが健全だったのかということについて、たくさん笑ったから良かった、うまくいったという単純な話を超えてフィードバックを得られそうですね。

神谷さん 銀行の営業にも当てはまると思いますが、ミーティングにはパターンがあって、アイスブレイク、商品説明、Q&A、ファイナライズ、といったパートに分かれるんです。

それで、成約ケースを解析してみると、アイスブレイクで場が和やかになったから成約に繋がったかというとそうではなく、第3パートのQ&Aを乗り越えた後の第4パートで、お客様の声のトーンとか発言がどうだったかが、実は受注失注に大きく影響していることが分かったりします。

小坂さん 商談の様子をリアルタイムで見ながら打ち手を変えられると面白いですよね。そういったアプローチができるのもデジタルならではなのかなと思います。営業現場にいるとついつい商品の説明ばかりになってしまったりすることもあります。そんなときに自分に対してアラートをあげてもらうだけでもコミュニケーションを改善するきっかけになります。

神谷さん そうですね。金融領域でもデジタルマーケティングを使うかWEBサイトを構えて待っているだけかには、今後大きな違いが出てくると思っています。僕は、コロナ流行によるオンライン・コミュニケーションの加速は、戦国時代の鉄砲伝来くらい、ビジネスのやり方にインパクトをもたらす変化だと考えています。

新規事業を生み出すために

日本から始めない

──ここからは起業家としての神谷さんにお話を聞いていきます。新しい事業を立ち上げるときにベースとしている考えはありますか。

神谷さん 日本から始めないことです。日本は高齢化社会ですので、変化に対してポジティブな人がマジョリティにはなりにくいですよね。ミレニアルズみたいな層が山ほどいるインドのような国は、どんどん新しいテクノロジーにキャッチアップしてくるんです。

それを日本が何年か遅れて導入、といった流れがグローバルでは生まれているのを感じます。でも、最近はそれさえもなくなってきている。ビジネスのスピードや効率性を考えると、マーケットが縮小する国にローカライズするより、グローバルでPDCAを回そうとなってしまうわけです。それにはすごく危機感があります。

──最初から世界を見て始めないと、勝てない。

神谷さん はい、日本語の方言とか複雑性を正確に判断するようなところに工数を割いていたら、ゆでガエルになってしまうと思います。僕らも、プロダクトのベースは起業したときから英語でしか作っていません。

ただ、日本がおしまいかというとそうではないと思います。新型コロナウイルスの流行は千載一遇の機会でもあると思うんです。競争で一度世界に遅れてしまっている日本だからこそ、世界全体が変化する次の時代には、いまのGAFAみたいな仕組みに捕らわれずジャンプアップして勝つこともできる。リープフロッグのような感じですね。僕らはそんな存在に近づきたいと思っています。

──だからこそ、神谷さんは世界に挑戦する。

神谷さん 「社会全体を学校にする」と言っている以上、世界中に届けないといけないんです。当たり前ですが、日本は高度成長期でもないので、ビジネスがグロースするのは困難です。だから、日本の中だけで頑張っていても、成長マーケットで戦っている人と横並びで勝負しても勝てるはずがありません。

日本ではない場所でちゃんと勝って礎を築く。次はインドでゼロイチを起こすことに挑戦したいと思っています。日本でビジネスをやりながらインドでゼロイチというのは非常にハードルが高いわけですが、これをやらないとグローバルにはいけません。

大事なのは「まずやってみる」こと

──オクトノットが軸としている金融領域における新規事業創発について、普段感じていることはありますか。

神谷さん 金融ビジネスの中心を担っている金融機関に言いたいのは「まずやろう」ということです。何でもいいからやらないと話は動きません。机上で時間をかけて考えるよりも、まずやってみて、だめだったらやめればいいんです。

ゴールを示さずにリスクだけ語って新しいことをやらないのでは、働いている人たちが可哀想です。やらないと分からないことって、いっぱいあるんです。僕自身、余裕でできると思っていたことができなかったこともあれば、できないと思っていたことが余裕でできてしまったこともありました。すべてはやらないと分からなかったことです。

大企業でもできる

──神谷さん自身はもともと長く企業にお勤めされていた経験があります。起業に至るまで、葛藤もあったのでしょうか。

神谷さん そんなことはなく、楽しくやっていましたよ(笑)。今振り返ってみても、僕らが成功しているのは間違いなく長く企業に勤めた3人が揃って起業して力を注いだからだと思っています。

もともと新卒で会社に入って、そこでしか勤めたことがない3人が立ち上げて、今のビジネスが作れているわけです。企業勤めでしっかり仕事してきた人は、地力はあるし、マーケットに通用する力を身に着けてきていると思います。それをマーケットでちゃんと発揮すればいいんです。

だから、大企業も社員に新しいことをどんどんやらせてあげたらいいと思います。スリーマンセルのチームを作って、予算を付けるから数億円のビジネスを作ってみろとかね。その代わり、自由にやって良いと。何人かは作る人が出てくるんじゃないでしょうか。

──組織としても、挑戦に対する理解が必要ですね。

神谷さん 大事なのは「マーケット基準で適正に評価してあげること」です。既存事業のサイズから新しい事業の価値を見てしまうことが、大企業にはありがちです。世の中の新規事業の立ち上げをやっている人と同じスタートラインに立たせてあげて、彼らの平均点と比べてどうなのか、それを評価してあげるべきです。

新規事業をゼロから立ちあげると何年でどのくらいに育つかというパイプラインのようなものがベンチャーの世界にもあるんです。子供は6歳で小学校に入ります、みたいなものですよね。パイプラインを理解していないと、そこで6歳に向かって「なんで、成人並みの力が出せないんだ」ということを平気で言ってしまう。

それでは、できる人もチャレンジしなくなってしまいます。これだけ世の中が大きく変化して、機会がたくさんある中で、いくらでもスケールする領域がある。大企業も外部環境の変化や新規事業のパイプラインを踏まえて、どんどんチャレンジすべきだと思います。

<プロフィール>

神谷 渉三さん
株式会社I'mbesideyou 代表取締役社長
神戸大学経済学部卒。NTTGroupにて新規事業やDX推進、通信事業者にてM&Aやアライアンスに従事。Nei-Kid Founderとして経済産業省「始動」2017SV選抜、2018優秀賞受賞。小中高生向けオンライン起業家教育TimeLeap Academy創業メンバー。大企業挑戦者支援プログラム「CHANGE」メンター。2021年には東京オリンピックの開幕にあわせて、世界中の人たちの声援を感情解析でみえる化するサービス『UNITE BY EMOTION』を開発。

(I'mbesideyou)
https://www.imbesideyou.com/

松尾 佳秀さん

株式会社NTTデータ 金融事業推進部 デジタル戦略推進部
2005年にNTTグループに入社。公共系の案件、学校移転プロジェクトおよび訪日外国人の実態把握のプロジェクトに従事。2019年にNTTデータに転籍。金融×デジタルを実現するために、社内での情報流通の活性化および新規デジタル案件の促進に従事。

小坂 衣美さん

株式会社NTTデータ 第一金融事業本部 金融ITマネジメント事業部
新卒で信託銀行に入社し、非営利法人向けコンサルティング業務、受託資産の運用に関するコンサルティング業務を経験。金融機関を取り巻く環境が変化するなかで、自身が感じていた課題をシステム面から解決し、銀行ビジネスの持続、競争力強化に取り組みたいとの思いから、NTTデータに入社。NTTデータでは、前職の経験をもとに金融機関を対象とした新規サービスの企画を経験し、現在は銀行の融資系・情報系システムを中心とした営業活動に従事。

※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。

新卒で都市銀行に入行し、個人向けコンサルティング業務に従事したのち、ネット専業銀行に転職。送金などの決済ビジネスを中心に、他企業とのアライアンス拡大や、新規サービス企画、プロモーションなどを幅広く経験。その後、消費者の変化や規制緩和といった環境変化を体感するなかで、業界を超えたオープンな金融の仕組み作りに関心を抱き、NTTデータへ。現在は、金融業界のさらなるTransformationへ貢献すべく、「金融を通じて世の中をより良くする」を志に、金融×デジタルを切り口とした技術・ビジネス動向の研究や、社内外への情報発信などに取り組んでいる。

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