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金融が変われば、社会も変わる!

挑戦者と語る

デジタル技術が人生100年時代をもっと豊かにする

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デジタルサービスが急速に普及するなか、シニア世代のデジタル格差がニュースなどで取り上げられる機会も増えました。他方でデジタルはシニア世代の生活をより豊かに変えていく手段としても注目され、さまざまな分野で取り組みが進められています。今回は、80代でiPhoneアプリ「hinadan」を開発した現役プログラマーでITエヴァンジェリストである若宮正子さんと、デジタルでシニア世代の暮らしに革新を起こすべく挑戦を続けるNTTデータ東海の奥山さん、NTTデータの酒井さんの3人が、人生100年時代をより豊かに生きるためにデジタル技術が果たすべき役割や、実現したい未来について語り合いました。

1.パソコンとの出会いが人生を変えた

奥山:ここ数年さまざまな分野でデジタル化が進み、行政サービスもデジタル化が進んでいます。便利になったところもありますが、その一方でデジタル機器を使いこなせないシニアの方がサービスを申し込めないといったような問題も起こっています。そこで、私たちはいま、みんなが安心して100歳まで暮らせる社会を実現するために、シニアの方々に向けたサービスの開発に力を入れています。

若宮さんにはデジタルに詳しいシニア代表として、これまでもいろいろとご意見を伺ってきました。今回あらためて、若宮さんご自身のことやシニア世代に必要なデジタルサービスについて、お話を聞いてみたいと思います。最初に若宮さんとパソコンの出会いを教えてもらいたいのですが、パソコンを使い始めたのはいつ頃ですか?

若宮:私は銀行で働いていたんですけど、定年前の58歳のとき、1993年にパソコンを初めて買いました。世の中にパソコンが普及するのはウインドウズ95が登場してからなので、随分早かったですね。もともとコンピューターに興味があって、というのも、私は不器用だったのでお札を数えるのが遅くてよく叱られていました。

でも、どんなに手の器用な人だって、機械よりも早くお札を数える人はいませんから。機械やコンピューターがいろいろ出てくると、手の器用さなんていうものは関係ありません。だから、私は機械に嫌悪感がなくて、私の代わりに作業をやってくれるありがたい人というような気持ちをずっと持っていました。

酒井:パソコンではどんなことをやっていたのですか?

若宮:今でいうSNS、当時はパソコン通信と呼んでいました。電話回線を使っての通信なので、文字を送るのがやっと。今のチャットみたいなものですね。パソコンなんて持っている人のほうが珍しい時代でしたので、ユーザーは個性的な人ばかり。会ったこともない同世代の人とパソコン上でコミュニケーションを取れるのがすごく楽しかったですね。そのときの交流から生まれたのが「メロウ倶楽部」(※)で、インターネット上で交流できる場所として、今でも多くのシニア会員が交流しています。
※シニア世代の生きがいづくりを目指し1999年に創設されたインターネットコミュニティ。若宮さんは副会長を務める。国内はもとより、海外にも会員がおり、さまざまな交流を楽しんでいる。
奥山:もともとは人と交流するためにパソコンを始めたんですね。若宮さんはエクセルアートの生みの親でもありますけど、どうやって考えたんですか?

若宮:パソコンを使えるようになると友達から私も教えてほしいという要望を多く受けまして、パソコン教室を開くことになりました。初心者にパソコンはこういうものです、というのを知ってもらうために、最初はエクセルの表計算を使って老人会のお花見大会とかの会計報告書を作ってもらっていたんです。

でも、「先生こんなのつまんない」ってみんな言うわけです。そこでなんとかエクセルと楽しく付き合ってもらう方法はないかと考えたのがエクセルアートです。手芸とか編み物が好きな方が多いので、小さなセルに色を付けていく作業に親近感があるんです。それで人気になりました。

若宮さんがエクセルアートから作ったオリジナル作品

酒井:エクセルアートはパソコンの操作を覚えてもらうために考えたものなんですね。若宮さんがプログラミングをしたゲームアプリ『hinadan』(※)はどこから思いついたんですか?
(※)hinadan:シニアが楽しめるように若宮さんが81歳のときに開発したゲームアプリ。内裏雛や三人官女などの雛人形をタップして雛壇の正しい位置に配置する。 ‎iOS・Androidに対応。
若宮:スマートフォンが普及して、私の周りの友人たちも使うようになりました。でもスマホはシニア世代には使い勝手が悪くて、評判が悪いわけです。肌が乾燥しているからスワイプが反応しにくいという人もいたりして。若者達は楽しそうにゲームをしているけど、自分たちはスワイプもうまくできないし、面白いアプリなんて1つもない。みんなが「若宮さんなんとかしてよ」と言っておられるのです。

そこで調べてみたらアプリは誰が作ってもいいと書いてある。最初は若い人に「年寄りでも楽しめるアプリを作って」とお願いしました。でも、若い人は「シニア世代が何を楽しいと思うか分からないから、若宮さんが作ればいいじゃないですか」とおっしゃるのです。ちょうど、プログラミングを教えてあげますよ、と言ってくれる人もいたので、もうやるしかないと。とにかく聞いて聞いて聞きまくって、なんとかできたのが『hinadan』です。

酒井:『hinadan』は雛人形を移動させて正しい位置に並べていくゲームですけど、タップで移動させるのはシニアの方でも楽しめるようにという観点で考えられているんですね。このアプリを作ったことがきっかけで、人生が大きく変わったんですよね?

若宮:プログラミングを教えてくれた先生の友達が新聞社に勤めていたんですね。その方が面白がって、私がアプリを作った記事を新聞に載せてくれたんです。そうしたら今度はそれを読んだCNNから取材が来て、私のニュースが世界中に配信されました。私も知らない間に世界的な有名人になっていました(笑)。この話にはまだ続きがあって、アップル社から「CEOが会いたいと言っているのでアメリカに来て下さい」とメールが来たんです。最初は偽メールじゃないかと疑っていたんですけど、どうやら本物らしいと。年に1回開かれるアップルの発表会WWDCにサプライズゲストとして招待されました。そこでCEOのティム・クックさんとお会いしたときにハグをしてくださいましてね。「あなたは私を刺激してくれた」っていう言葉をかけてくださったんですよ。

奥山:本当にパソコンを始めてから人生が大きく変わりましたね。私もクックさんと一緒で若宮さんからすごく刺激を受けています。

酒井:若宮さんはそのときどきで必ず一歩を踏み出しているんですよね。何かやってみようという勇気がすごいです。

若宮:80歳を過ぎてからプログラミングなんてよく決断と勇気がありましたねって言われますけど、開発ソフトなんて無料でダウンロードできるからお金もからないし、嫌になったらやめちゃえばいいだけですから(笑)。新しいことを始めるのに怖がる必要はないと思います。私も面白いからやっていただけで、まさかこんなに人生が180度変わることになるとは、想像もしていませんでした。

アップル社「WWDC」でティム・クックCEOと。

2.世界に遅れをとっている日本のデジタル化

奥山:私は2012~2016年に仕事の関係で中国に駐在していたんですけど、そこでITによって中国社会が激変するのを目の当たりにしました。ちょうど携帯電話の電波が3Gから4Gに切り替わった時期でしたが、ものすごいスピードで次々とアプリが開発されていって、こういうことができれば便利なのにと思うことが、すぐに実現されていくような状態でした。とにかくスピードが速い。当時は中国の銀行向けにインターネットバンキングのサービスを提供する仕事をしていましたが、日本の10倍くらいのスピードでいろいろなことが進んでいく感じがしました。

日本では常に100点を目指してシステムを作りますが、中国は競争が激しかったので、品質よりもスピードを重視していて、必要以上にシステム化せず、70点でリリースし、ユーザーの声を反映しながら100点に近づけていました。日本ではATMでお金が出てこないということはないですが、中国ではATMでお金が出てこなければ、みんな平然と隣のATMに移動して、お金を下ろしていく。新しいサービスをスピード感をもって提供するには、何でもかんでもシステム化することが良いわけではないということが重要と感じました。

当時の中国ではLINE PayやUber Eatsのようなサービスがすでに始まっていて、こんなサービスが日本にあったら便利だなと思っていましたが、最近の日本もようやくその時の便利さを感じるレベルになりました。そう考えると日本のIT化は中国に5年くらい遅れている気がします。

若宮:本当に中国はIT化が進んでいますね。私が2018年の末に西安を訪問したときの話ですが、朝市でおばあさんがお鍋を持ってお豆腐を買いに来ていたんです。本当に小さな屋台のような店なのにちゃんとQRコードが貼ってあって、支払はキャッシュレスでさっと済ましちゃう。それを見たときにへーって驚いたのを覚えています。

奥山:道端にあるような屋台でも、キャッシュレスで決済ができるのにはびっくりしましたね。使う人のことを考えて商流に合わせた金融サービスが提供されているので、すごく使いやすい。私たちもそんなサービスを作りたいです。

酒井:何よりもシニアの方でも使いこなしているのがすごいですね。

若宮:世界的にもシニアのデジタル格差というのは問題になっていて、2019年に大阪で開かれたG20で金融庁が主催するシンポジウムにゲストスピーカーとして登壇したときに、ヨーロッパの学者の先生たちが「我が国でももっとIT化を進めたいんだけど、シニア世代がなかなか協力してくれない」とおっしゃるのです。でも、ヨーロッパの中でも、エストニアのように世界最先端のIT国家といわれるくらい、IT化が進んでいる国もある。どうしてエストニアではIT化が進んでいるのかを知りたくて、実際に現地に行ってみました。エストニアでは選挙も電子投票ができるんですが、シニアの人たちもすごく積極的に使っていました。その理由を考えてみると、自然環境も影響しているんじゃないかと思ったんです。

エストニアは冬になると気温はマイナス30度になるそうです。ちょっとATMにお金を下ろしに行くだけでも命がけですよね。そう思って世界を見てみると北欧のデンマークやフィンランドもITのレベルが高い。学校だって猛吹雪になればオンライン授業を活用しようとなりますよね。ところが日本は今までデジタルを積極的に活用しなくても生活できていました。それが今回のコロナで日本は初めてステイホームしないといけない状況になったわけですよね。そこで浮き彫りになったのが、あんなにインターネットが使えない人がいるという現実です。スマートフォンの普及率が60代では70%以上と言っていたって、実際に使っているのは親しい友達とLINEでやりとりをするくらいだったということですよね。ワクチン接種を予約するだけでこんな大騒ぎになるなんて誰も思ってなかったでしょう。

奥山:そうですね。サービスがどんどんオンライン化していく中で、シニアの方々が若年層とまったく同じようにデジタル機器を自由に使いこなすのは、なかなか難しい部分もあるのかもしれませんね。シニア世代のデジタルデバイドをどうやって解決するかという点は今後ますます重要になってくると思います。私たちが作っているシニア世代向けサービスに「ミナスタ!」(※)というサービスがあるのですが、そのサービスにAIスピーカーを搭載したスマートディスプレイを使っているのは、そこに理由があります。電話の延長のような形で今存在するオンラインサービスをシニアの方でも使えるようにするためにはスマートディスプレイがベストだと考えたんです。

(※)「ミナスタ!」:NTTデータが開発するシニア向けの健康寿命延伸をサポートするサービス。『話し相手機能』や『テレビ電話』などの機能がある。話しかけるだけで動画や音楽等色々なコンテンツを楽しむこともできる。

若宮:話しかけるだけで操作ができるデジタル機器というのは本当に便利ですよ。私達くらいの年齢になると知っているけど名前を思い出せないということがよくあります。そんなときはsiriに単語をいっぱい言うんです。「キュウリみたいなもの、イタリア、野菜」といえばズッキーニと教えてくれる。
それから、私はAIスピーカーを使っていますけど、タケノコご飯を炊くときに、「予約」をしてしまうと炊き始める直前に具を入れることができないので、「4時35分になったら教えてちょうだい」って、アラームをセットしておく。秘書みたいに使っています。AIスピーカーはシニア世代の強い味方です。みんなどんどん使えばいいんですよ。

パソコンやiPhoneはもちろん、Apple Watchまで使いこなす若宮さん

3.シニア世代が求めるデジタルサービスとは

若宮:お二人がシニア向けのサービスを作ろうと思ったのはどうしてなんですか?

奥山:しんきん事業部という部署は信金さん向けのビジネスをしています。信金さんは地域に密着していて高齢のお客様が多いんです。一時期話題になりましたが、認知症になってしまうとお預かりしている金融資産を自由に動かせなくなってしまいます。そこで、信金さんでは認知症などで判断能力が十分でないシニアの方に後見人を付ける成年後見制度の活用などのサポートに力を入れています。その分野で何かできないかと考えた結果、普段から高齢の方とお客様として接している信金さんの強みを活かせば、もっと早く認知症の兆候に気づくことができたり、認知症になるのを遅らせて、健康寿命を伸ばすことができたりするかもしれないと考えたのがスタートです。

酒井:今は亡くなってしまったんですが、私の祖母も生前は、友達が亡くなっていくと「寂しくなってもう生きている甲斐がない」といったことをよく言っていました。「そんなこと言わないで元気出してよ」と励ましていたんですが、長生きすることがリスクになる人生にはなって欲しくないですし、そういう現状を変えたいと思って、奥山さんと一緒にシニア世代向けサービスの開発に取り組んでいるんです。

若宮:昔、私も銀行で働いていたので分かりますが、信金は地域に根ざしている金融機関ですから、こういう取り組みをするのはとても意味がありますね。

奥山:最初は店舗の空きスペースを利用してシニアが集まれるサロンのようにしようと考えていました。巣鴨信金さんが提供されている4のつく日にお客様が来店するとお茶を出して休憩できるようなサービスで、お金のことだけではなく、困ったことがあったらシニアの方がなんでも相談できるような場所にしたいと思っていました。それが新型コロナウイルスの影響で、人を集めることができなくなり……。

でも、シニアの方へのサポートは必要ですよね。そこでデジタルを活用してリモートでも実現できるサポートの仕方はないかと考えたときにAIスピーカーを使うことを思いつきました。一人暮らしの方がAIスピーカーと毎日話をするようになって、忘れかけていた好奇心が蘇ってきて、元気になっていく。その姿を見ているとこのサービスが本当にシニアのためになっていると感じました。

酒井:すでにシニアの“見守り”をサポートするサービスもたくさんあります。ただ“見守り”は監視されているようで嫌だという声もよく耳にします。その点、AIスピーカーなら、シニアの方にも楽しんでもらいながら自然に見守ることができます。

若宮:私にも90歳の兄がいますけど、インターネットを使ってメロウ倶楽部に何時にアクセスしたのかをチェックするのが見守りになっています(笑)。やっぱり楽しくないと続かないですよね。「ミナスタ!」も民生委員さんとか保健師さんとかいろいろな人が入ってきて、みんなが繫がれるようになるといいですよね。例えば安否確認というだけなら毎朝8時に写真を撮ってアップロードするだけでもいいんです。でも、それじゃつまらない。自分が撮った写真を人に見てもらってコメントがもらえるとなると、楽しみになる。今日は眠いから寝坊しようと思っていたけれど、みんなが楽しみにしているから写真をアップロードしないと、と思うことが年寄りをアクティブにしてくれるんです。

酒井:行政や企業だけじゃなくて地域のいろいろな人が繋がって、みんなでシニア世代を見守ったり、一緒に楽しめる環境を作ったりすることが、理想ですね。

見守りもその1つだと思いますが、シニアの方と家族をしっかり繋げて安心させてあげられるような仕組みを、信金さんのような地域の金融機関と一緒になって作っていけたら面白いなと思います。

地方では、相続時に預金が都市銀行に流れてしまうことに課題を持っている金融機関もあります。最近では、判断能力が落ちてきたときに家族が資産を管理する家族信託という仕組みも登場していますが、元気なときから家族をつなげていくような取り組みをもっともっとやっていくことも大切ですよね。

若宮:実は私、信金さんにお願いしたいことがあるんです。昔、地元の信金さんに提案したことがあるんですけど、『じじばばファンド』を作って欲しいんです。シニア世代が地元のスタートアップ企業に自分の貯金から投資をするんです。その代わりにスタートアップの若い起業家さんは、年寄りにも分かるように事業を説明しなきゃいけないし、工場案内にも連れて行く。そういうことができたら、地域のスタートアップ企業は資金を集められるし、年寄りも生きがいになるでしょ。自分が投資したお金がどう使われるのかは気になるから、一生懸命勉強する。それが生きがいになる。絶対にいいと思っているんですけど(笑)。

奥山:それは面白いですね。

若宮:クラウドファンディングみたいなものでもいいと思います。我が町の小さな企業を町のみんなで育てていく。そこに信金さんが入ってくれると、年寄りも安心してお金を出資できますよね。

酒井:信金さんの役員の方とお話をしていると、みなさん本当に地域のことを考えていて、地域に恩返ししたいと言っている方が大勢いらっしゃいます。今若宮さんが話してくれたように、地域の若者を助けるような仕組みは、地域に根ざした信金さんだからできることですよね。

若宮:信金さんが地域社会の中心になっていただければ地域が活性化すると思うので、ぜひお願いしたいですね。

4.人との繋がりがシニアを元気にする

奥山:以前、若宮さんとお話したときに健康寿命はもう古い、これからはボランティアや地域活動などを通じて社会と関わっていく活動寿命の時代だと教えていただきました。どうしたら若宮さんみたいに元気でいられるのでしょうか?

若宮:やっぱり人と交流することが大切ですね。何もすることがないんだったら、まずはボランティアに参加するといいと思います。子ども食堂のお皿を並べるだけでもいいので、できることをやってみる。それが刺激になります。「メロウ倶楽部」がどうして20年以上続いているかというと、Zoomからドローンまでいろいろな勉強会があって、そこが自分の居場所になっているからなんですね。おばあさんがインターネットを使えるようになっても、周りの友達が1人もやっていないとなるとつまらなくなって辞めてしまうんです。私がパソコンを始めたきっかけがパソコン通信でのコミュニケーションだったように、デジタルを使っていてもそれは手段であって、人とのコミュニケーションが大切だと思います。

奥山:私は今名古屋で暮らしていますが、愛知県というのは健康寿命がとても長いんですね。ご存じのように喫茶店文化が根付いている土地柄ですので、シニアの方も朝は必ずモーニングを食べに馴染みの喫茶店に行ってちょっとした話をする。そういう習慣がある方がたくさんいらっしゃるので、それが健康寿命延伸につながっていると思っています。若宮さんの話を聞いて、改めてコミュニケーションの大切さを感じました。

若宮:いま、老人会は人が少なくなっていて懇親会が開けなくなったという話もよく聞きますが、「メロウ倶楽部」は全く逆で、人がどんどん増えている。年寄りが増えていくと、今度は若い人が何か楽しいことをやっていそうだぞと、入ってくるようになったんです。みんな穏やかですから、Twitterみたいに炎上もしない。そういうコミュニティってないでしょう。一番若い人だと小学生まで入って来ました。そうなってくると異世代交流が始まります。コミュニティを作って、広げていくと仲間意識が生まれて、コミュニケーションがどんどん広がっていきます。

奥山:私達もシニア世代向けのサービスを通じて、コミュニティ作りに貢献していきたいですね。先ほどお話しした「ミナスタ!」も、コミュニティに使ってもらえるように企画を広げているところです。

若宮:シニア世代にデジタルサービスを使ってもらうには、デジタルデビュー前のおじいちゃんおばあちゃんたちに、どんな楽しいことができるのかをしっかり伝えていくことが大切ですよね。まずはプラットフォームを作って、そこにコミュニティができてくると楽しくなって、長く使われるようになると思います。

酒井:そうですね。私たちもデジタルをうまく活用して人と人をつなげ、元気なシニアの方々を増やすことに貢献したいと思っています。

若宮:私も内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室からデジタル改革関連法案ワーキンググループの構成員を仰せつかっていますので、シニアの誰一人として取り残されないようにこれからもデジタル改革を推進していきます。

〈プロフィール〉

若宮 正子 / Masako Wakamiya
世界最高齢プログラマー  
三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)の定年前に、パソコンを独自に習得。1999年にシニア世代のサイト「メロウ倶楽部」の創設に参画し、現在も副会長を務めているほか、NPO法人ブロードバンドスクール協会の理事として、シニア世代へのデジタル機器普及活動に尽力している。2016年にiPhoneアプリを開発、2017年6月にはアップル社の世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待される。人生100年時代構想会議有識者議員。

奥山 一茂 / Kazushige Okuyama
NTTデータ東海 取締役第二事業部長 兼 イノベーション推進室長

NTTデータ入社以来、リスク管理分野でソリューションカットでのビジネスに従事。メガバンク、地銀、信金、ノンバンク、格付機関、総合商社などのさまざまな業種向けにサービスを提供する。2012年から中国の合弁企業に出向し、地域金融機関向けのインターネットバンキングサービスを提供。帰任後、メガバンクビジネスなどを担当後、しんきん業界向けの新規ビジネスとしてBtoBtoXの視点でシニア向けサービス「ミナスタ!」を立ち上げる。2021年4月よりNTTデータ東海に出向し、東海エリアでの「ミナスタ!」普及に向けて活動中。

酒井 宏幸 / Hiroyuki Sakai
NTTデータ 第三金融事業本部 しんきん事業部

NTTデータ入社以来、信金業界のシステム開発に従事。2013年~2015年、信用金庫のセントラルバンクである信金中央金庫に出向し、システムリスク管理態勢の強化に取り組む。2018年、信用金庫のエンドユーザー向けの新規ビジネスを提供するために、シニア向けサービス「ミナスタ!」の立ち上げから参画。

<参考>円熟世代の生きがいづくりをめざした全国ネット「メロウ倶楽部」
円熟世代の積極的社会参加を情報化の積極的な支援によって促進することにより、ゆとりある豊かな活力に溢れた21世紀の長寿社会を構築して行くことを目指して1999年に設立されたインターネット・コミュニティ。円熟世代の豊富な知識と経験をインターネットを利用して世界に発信すると共に、「オンライン活動」と「オフライン活動」で積極的に会員間での交流を行っている。

<参考>シニア向け健康寿命延伸サービス「ミナスタ!」

「シニアが安心して100歳まで暮らせる社会の実現」をコンセプトにITでシニアのデジタルデバイド解消や健康寿命延伸をサポートするサービス。スマートディスプレイを使った声で簡単に操作できるサービス「ボイスタ!」とスマートフォンを使った健康促進サービス「ゴースタ!」の2つのサービスを提供予定。充実したアフターサービス、楽しく使い続けられる工夫がある。
2021年福島県磐梯町と行政情報の伝達やシニアの健康確認、見守りに活用する実証実験を実施。今後はシニアと自治体、金融機関、企業をつなぐプラットフォームとしてサービスを拡大予定。

(実証実験に関するニュースリリース)
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2021/030500/
<問い合わせ先>
株式会社NTTデータ
担当:第三金融事業本部 しんきん事業部 事業推進担当
TEL:050-5546-7010
メールアドレス:info-voista@am.nttdata.co.jp

※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
<参考>
金融の未来をテーマとしたメディア同士仲良くさせていただいているマネーフォワード研究所さんのブログでも、所長の瀧さんと若宮さんの対談が掲載されていますので、そちらもあわせてご覧下さい。

マネーフォワードFintech研究所ブログ
『日本のデジタル化とこれからの社会で必要な考え方』

https://moneyforward.com/mf_blog/20211006/guesttalk-9/
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執筆 オクトノット編集部

NTTデータの金融DXを考えるチームが、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信。「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、金融サービスに携わるすべての人と共創する「リアルなメディア」を目指して、日々奮闘中です。

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