都市農業とは
※農林水産省ホームページ『都市農業の振興・市民農園について』を参考に著者記載
都市農業の維持
例えば、農地の貸借です。自身の高齢化によって今まで通りの農業経営は難しいが、ご先祖様から受け継いだ農地を手放したくない。そうしたニーズに応えるべく、法改正により農地を貸しやすくはなりましたが、全くの他人に自分の庭先を貸すのに近い行為への心理的な障壁があったり、貸す場合も地元の有力農家で構成される農業委員会の許可が必要だったりと、それなりのハードルがあるようです。
農林水産省『都市農業をめぐる情勢について』
都市農業、実はあまり困っていない?
※調査する側としては、実はここを深ぼりたかったのですが、ちょっと拍子抜けしたのは、ここだけの話。
というのも、都市農業で生産した農作物は、消費者にとても売れるのです。
農作物の美味しさを左右する一番の要因は、鮮度です。産地や品種も美味しさの要因でしょうが、一番は鮮度です。都市農業は都市近郊で生産し、そのまま直売という形で売られることが多い。そうなると必然的に鮮度が良いわけで、多少値段が高くても、やはり売れるのです。(JA、卸売市場、スーパー、という一般的な流通経路と比較すると、その鮮度の違いは想像できますね。)
都市近郊であるがゆえに広い土地で耕作できない(つまり出荷量自体は少なく、高い売上にはならない)のですが、都市近郊であるがゆえに「安定した売り上げ」は期待できるわけです。
加えて、昨今の新型コロナの影響で内食需要が高い傾向はしばらく続くでしょうし、密回避の流れからか自然が見直され、農業体験や貸し農園といった新たなビジネスの可能性も高まっているようです。
また、都市農家さんは兼業農家が多いのです。もともと土地持ちなので、不動産経営など農業以外の商売もやっており、農業がサブ収入的な位置づけとなっているケースが多いのも、農業経営として困っていない要因といえます。
ITとビジネススキル
逆に考えるとITは、都市農業ではなく、地域でそれなりの規模で経営している農業で活かすべきであると言え、もっというと、ITにより地域の農業をいかに規模拡大できるか、という視点で捉えたほうが良さそうです。今回の調査でインタビューした中で、日本の土地面積で考えると農家の数が多すぎる、とおっしゃっている有識者の方もいました。今までの国の方針は、農家を守り農地を維持する、という強い意思が働いているように感じますが、これからの日本の農業全体をサステナブルという意味で考えた場合、こういう方針から見直す必要があるのかもしれません。その場合にITの活用は不可欠ですし、またITをひとつのツールとして捉えられるビジネススキルも必要であるため、農家さん自体にもそういった観点が求められていくでしょう。高齢化に伴う農家自体の減少は課題でしょうが、単に農業従事者の人数を維持するのではなく、ITやマーケティングなどのビジネススキルを備えることも必要になっていく。そして弊社のようなIT企業も、そういったニーズに応えられるよう、テクノロジーやサービスを準備しておくべきと強く感じました。
安全の価値とサステナビリティ
その理由は、日本は基本の安全レベルの水準が高く、それが当たり前のものとして刷り込まれているから、と推測できます。中国人旅行者が日本の食べ物を評価するのは、自国の食べ物に対して彼らが不安を感じているのが一因ですし、アメリカでは健康保険が国民皆保険ではないので富裕層ほど自分の体は自分でお金を出して守る傾向にあります。それらに比べ、日本は基本的に安全であり、安全にお金を払う必要がないのです。
今後もっと広がっていくグローバル社会やサステナビリティを考えると、この今までの当たり前の考え方は是正していく必要があるように感じました。当然、安全にはコストがかかっているはずですし、その価値を正しく捉えないと、市場として成り立たなくなっていき、最終的にはその市場がなくなります。安全な農作物を買いたくても買えなくなるのです。
またこの価値を正しく捉える、ということは、SDGs的視点でも重要といえます。農業では生産過程上で廃棄する農作物が一定量発生するのは一般的なことですが、それをもったいないとしてビジネス利用できないかというアイデアがよくあります。一見理に適っているように思いますが、しかし農家さんからすれば、廃棄物を安くもしくはタダで使われるより、正規ルートで買って欲しいと考えるのは当たり前の話で、実はこういったビジネスを継続するのは簡単ではないそうです。農家さんにとっての価値とサステナビリティの価値、その両者のバランスを取らないと、持続可能なビジネスは難しいわけです。
農業の可能性と我々のすべきこと
冒頭の通り、持続可能な世界を実現するために農業は非常に重要なファクターでありますが、一方で、ITや安全やビジネス観点など、まだまだ改善の余地がたくさんある産業です。これは決してマイナスではなく、今後の伸びしろとして捉えるべきで、日本全体としてのビジネスチャンスであると感じました。
一企業としても、農業という産業をそのような大きな目線で捉え、また一生活者としても、自分自身の「食」として、自分の住まう地域として、地球としての目線でSDGs的に農業を捉えてみる。この記事が、そうしたきっかけに少しでもなれば幸いです。
最後に、養鶏場の息子としては、鶏卵は美味しいたまごと普通のたまごとの味の差が明確なので、いつもと違うものを食べて比べてみるのにお勧めです。コロナ禍で家族での外食も難しいなか、週末のごちそうとして是非お試しいただき、小さいタマゴから大きなチキュウへ想いを馳せましょう。
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