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【FIT展講演】デジタルヒューマンで描く金融の未来(後編)

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人口減少は日本で必ず起こる問題であり、金融機関においても生産性向上が求められます。また、テクノロジーの進歩により、ビジネスの環境は大きく変化しています。生産性の向上と変わりゆくビジネス環境に適応するにはオートメーションの活用が不可欠です。オートメーションのさらに進んだ形として、デジタルヒューマンの活用について解説します。

当記事は、2024/10/17(木)に開催されたFIT展のセミナー『デジタルヒューマンで描く未来の金融』の書き起こしです。

NTTデータのデジタルヒューマンの取り組み

NTT データのデジタルヒューマンの取組について説明させていただきます、百田です。
まずは私が所属するイノベーションセンタの紹介を簡単にさせて下さい。
NTTデータイノベーションセンタは、2022年8月に設立された組織です。
先端技術開発の推進拠点として、イノベーション人材を集め、世界トップクラスの先進技術の活用や、お客様などとの共創 R&Dを実施するために作られました。
イタリアやアメリカ、インドなど世界中にイノベーションを推進するための拠点がありまして、拠点数は2022年当初の 6拠点から、現在は 11拠点まで急増しており、所属メンバーも 100人から220人まで増えています。
取り扱う技術テーマとしては、今回ご紹介するデジタルヒューマンも含めて、デジタルツインや量子コンピュータ、衛星データ活用など、幅広い 16の技術テーマにおいて、共創 R&D活動を推進しています。
NTTデータのデジタルヒューマンには、主に二つの種類があります。
1つは、人間らしい見た目や声などのインターフェースを再現する「AIアバター」に関する取り組みと、もう1つが人の個性や考え方、知識を再現する「AI対話・ペルソナ」の取り組みの2種類となります。

NTTデータのAIアバター

続いて、AIアバターに関する取り組みをご紹介します。
NTTデータは、主に2種類のデジタルヒューマンプラットフォームを展開しております。

1つ目は左側 PARSONII サービスとなりまして、こちらはデンマークチームが開発・販売しています。
チャットボットとLLMの両方の会話生成方式に対応できまして、高いグラフィックで、会話に合わせて唇や体を動かすなど、より人に近い自然な動作が可能です。
PARSONIIは1つのデジタルヒューマンを動かすのに、1台の GPUが必要になるため、主にホテルやイベント受付などの、キオスク型の利用シーンに最適です。
次に右側の Edge Ghostについては、こちらは開発中のサービスとなりますが、LLM をベースにしたサービスです。
GPU環境に依存しないのと、独自開発しているプラットフォームのため、超低コストで短期のPoCが可能です。
唇の動きなどに制限はございますが、アバターをアニメキャラなどにも柔軟に変更可能です。
高額なGPUサーバー無しで大規模な同時アクセスの利用も安価に可能のため、 ECサイトや、接客トレーニングなどで活用できます。
XR空間などのデジタル空間と連携させる事例もあります。VR空間にデジタルヒューマンを配置し、会話や観光案内なども実施できます。

AIアバターはバックグラウンドのサービスを切り替えることで、イベントやホテルなどの来場者案内・コンシェルジェのユースケースのほか、XRなどのデジタル空間と連携した臨場感のある EC販売アシスタントや金融商品紹介、高度なロールプレイとして、仮想空間における営業研修や接客の研修にご活用いただけます。
次にNTTデータのデジタルヒューマンのもう一つの主な取り組みとなる、「AI対話・ペルソナに関する取り組み」を紹介させてください。

NTTデータのAI対話・ペルソナ

デジタルヒューマンというと、どうしてもアバターの見た目を思い浮かべがちですが、これからご紹介する取組は、アバター無しのデジタルヒューマンの活用例です。
今回は、営業活動の効率化を目的実施した、社内PoCの事例をご紹介します。
このPoCを行った背景としては、社内サービスの「Kairu」というサービスがございまして、このサービスはNTT Data社内でコンサルが必要な求人案件と、パートナー各社のコンサルとのマッチングサービスを提供しています。
「現状の課題」としましては、Kairuでは社員のマッチング担当が実際に各案件のヒアリングや提案を個別に実施するため、サービスを拡大する際に、マッチング担当の稼働がボトルネックになります。
この「PoCの狙い」としては、マッチング担当がもつノウハウや考えをAI化することで、案件とコンサルのマッチングを自動化し、人の稼働に依存しないサービス拡大を実現することです。
期待するAI特有の効果としては、提案案件が人の認知可能な上限を超える数百、数千規模になった場合も、適切な人材マッチングが期待できることと、既存の検索技術などとは異なり、マッチング担当が重要視する要素や観点、個人の考え・好みをマッチングに反映できるといったものが挙げられます。
この取り組みのポイントは、従来のこういったマッチングはキーワードなどのマッチングしかできなかったのですが、デジタルヒューマンによるマッチングは案件オーナーやコンサルタント、AIマッチング担当の個人の考えや思いを基にするため、より人の判断に近いマッチングが可能な点です。
最終的なPoCの結果ですが、評価ポイントは 2 つあります。
一つ目の評価ポイントは、AIマッチング担当が、実際のマッチング担当と同等の人材提案ができるかです。
こちらは、納得できる人材提案をできた割合の目標値である 75%に対し、77%の結果となりました。
マッチングが高いコンサルをスコアリングから外した場合も、評価結果が全体的に低くなったのと、ネガティブな判断ポイントなども明示されていたため、一定の適切な評価ができていたと考えています。
2つめの評価ポイントは、AIマッチング担当によるヒアリングがどれくらい適切に行われていたかです。
こちらは案件の基本情報を聞き出せた割合が全体の 73%となり、マッチング担当が重要視する希望するコンサルタントの人物像を聞き出せた割合は全体の27%と低く、不十分な結果となりました。
ただこの課題についても、その後のデジタルヒューマンの修正で改善が見られたため、今後に予定しているベータ版開発などに向けて良い手ごたえが得られたと考えています。

こういった個人の考えや想いなどを基にした、デジタルヒューマンによるマッチング適用例を、3つほど紹介します。
1つは M&A領域におけるマッチングです。
M&Aマッチングは、未来の構想や思いなどを持つベンチャー企業経営者と、投資先を探している投資家などをデジタルヒューマン化することで、M&A や投資案件のマッチングを効率化する例です。
ベンチャー経営者は将来への考えや想いが強いため、特にAIマッチングに適していると考えています。
2つめは金融商品販売のマッチングです。
M&Aと同じように、金融商品営業と投資家のデジタルヒューマンを構築することで、投資家に最適な金融商品の提案・マッチングが可能です。
3つ目は、人材マッチングとなりますが、地域への想いや将来の夢などを抱く人材と、地域企業の採用担当をデジタルヒューマン化することで、AIが効率的な人材マッチングの提案をする例となります。
これ以外にも、デジタルヒューマンによるマッチングは非常に応用の幅が多く、今後の様々なシーンにおける有効活用、DXが期待できます。
以上で、NTTデータの発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
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執筆 オクトノット編集部

NTTデータの金融DXを考えるチームが、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信。「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、金融サービスに携わるすべての人と共創する「リアルなメディア」を目指して、日々奮闘中です。

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