当記事は、2024/10/17(木)に開催されたFIT展のセミナー『デジタルヒューマンで描く未来の金融』の書き起こしです。
金融を取り巻く環境変化と生産性向上の要請
NTTデータ金融イノベーション本部ビジネスデザイン室の土田と申します。今回、デジタルヒューマンで描く未来の金融をご紹介します。
本日のアジェンダですが、まずデジタルヒューマンについて説明する前に、昨今求められている生産性向上に対して、現在テクノロジーでどのようなことが行われているのか、そのトレンドをご紹介いたします。
続いて、生産性向上の鍵となるデジタルヒューマンについて詳しくご説明します。
また、NTTデータのデジタルヒューマンに関する取り組みや技術革新の活動についてもご紹介いたします。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
金融を取り巻く環境変化
まず、金融環境の変化について、簡単に振り返らせていただきます。
図1 金融を取り巻く環境変化
図1 金融を取り巻く環境変化
SとTが特にインパクトが大きい要素と考えています。
SとTが特にインパクトが大きい要素と考えています。
まず1つ目が、S(ソーシャル)の部分ですね。人口減少に関してです。
人口減少は日本では必ず起きることであり、人口の落ち込みを踏まえた生産性向上の取り組みが必要になります。
人口減少は日本では必ず起きることであり、人口の落ち込みを踏まえた生産性向上の取り組みが必要になります。
もう1つは、T(テクノロジー)の部分です。テクノロジーのインパクトは今後ますます大きくなるため、例えば新しいテクノロジーが新規産業のインフラになるなど、将来のビジネスにどのように影響を与えるか考える必要があります。
生産性向上に求められるアプローチ
この生産性向上に対して、どういったアプローチが求められるかといいますと、AI技術が非常に大きな役割を果たしています。
生産性向上のためには、AIを活用した既存業務の効率化、新規領域への幅だしが欠かせません。また、金融機関には、金融機関の顧客である企業の生産性を上げることが求められます。
生産性向上のためには、AIを活用した既存業務の効率化、新規領域への幅だしが欠かせません。また、金融機関には、金融機関の顧客である企業の生産性を上げることが求められます。
もちろん、アプローチのベースとして、AIをはじめとしたテクノロジーを活用するケイパビリティ・人材および経費削減が不可欠です。
日本の銀行業務も手続きの自動化や文書作成のAI活用が進められています。
海外の事例などを参考に、さらなる効率化を推進する必要があると考えています。
ここまでトレンドについてご紹介いたしました。それを踏まえて、現在テクノロジーでどのような生産性向上の取り組みが行われているかについてご紹介します。
テクノロジーにおける生産性向上のトレンド
大きい例として3つのテクノロジーを挙げます。
1つ目がノーコード・ローコード、2つ目がRPA、そして最後がAIです。
1つ目がノーコード・ローコード、2つ目がRPA、そして最後がAIです。
それぞれの技術は単独で生産性向上が期待できます。しかし、今後はこれらのテクノロジーを一気通貫で活用することが鍵となります。
例えば、ノーコード・ローコードで人に蓄積されたノウハウをソフトウェアに落とし込んで、RPAでソフトウェアを効率的に扱い、AIでソフトウェア化できない人の判断を補完するというプロセスを組み合わせることで、個別の導入よりも効果的な生産性向上が期待できます。
更なる生産性向上のためのAutomation
まず、オートメーションについてです。業務効率化の中でさまざまな方法を紹介しましたが、つきつめるといっさい人の手を介さない業務の実現を目指していると言えます。実際に業務への適用を検討するにあたって、無人化が本当に可能なのかを真剣に考える時期に来ているかもしれません。
中途半端にITを活用して効率化するのではなく、固定概念を取り払って新しい可能性を考えることが重要です。例えば、無人の近未来店舗の実現や、請求書が届けば自動で支払いが行われるシステムなどが考えられます。自動支払いなどは、ノーコード・ローコード、RPA、AIを組み合わせることで、実現できる部分もあるでしょう。
このように断片的ではなく、1つのシステムとして統合された完全な自動化を目指すオートメーションを重要なキーワードとして挙げています。
図2 完全なオートメーション
人のために価値を生みだすPeople-Centric
次に「ピープルセントリック」です。オートメーションが進展すれば人が不要になるのではないかという疑念を持つ方もいるかもしれません。しかし、あくまでもテクノロジーは人に寄与し、価値を生み出すものとして考えられるべきです。
ガートナーが毎年夏に発表する『先進テクノロジのハイプ・サイクル』でも「ピープルセントリック」が重要なキーワードとして挙げられています。
これは、労務負荷の削減、創造的な業務へのシフトや適正な業務のマッチング、人間の暗黙知や意思を引き継ぐというように、テクノロジーは人がいてこそという原則のもと発展するべきという考え方です。
これは、労務負荷の削減、創造的な業務へのシフトや適正な業務のマッチング、人間の暗黙知や意思を引き継ぐというように、テクノロジーは人がいてこそという原則のもと発展するべきという考え方です。
これからご紹介するデジタルヒューマンも、人の振る舞いに近い形で構築することで、ピープルセントリックの実現につながると考えています。
今回、この後に具体的にデジタルヒューマンとはどういうものか、金融分野に応用することでどういった可能性があるのかについてご紹介します。
デジタルヒューマン×金融の可能性
デジタルヒューマンとは何か?
まず、デジタルヒューマンとは、人間らしさを備えた3Dモデル、またはそれを活用した技術のことを指します。非常に人間に近い外観で、さまざまなやり取りが可能です。
図3 デジタルヒューマンとは
デジタルヒューマンは主に2つの技術で構成されています。一つは「人間らしいインターフェース」です。コンピューターで生成された画像を用いて人間の振る舞いを再現し、人間に近い形での応答を実現します。
もう一つ重要な要素は「AIによる学習機能」です。こちらはいわゆる個性や考え方、知識の再現に重要な役割を担います。状況に応じた応答能力もあり、単なるUIにとどまらない技術です。
デジタルヒューマンの特性としては、親密性や代替性などが挙げられます。これをビジネスに活用する際に、リアリティ、正確性をどのように担保するかが課題です。これらを検討しつつ実際のモデルを構築することが重要です。
デジタルヒューマンのユースケース
デジタルヒューマンの具体例をいくつか示します。
まず一つ目がデジタル銀行員です。デジタルヒューマンには基本的な銀行業務だけではなく、特定の専門性を備えさせることができます。例えば、認知機能が低下した高齢者や外国人、聴覚障害者といった、特別な対応が求められる顧客に対してデジタルヒューマンを使用することで、より均質な対応が可能になります。特にコンプライアンスに違反していないかの判断は、デジタルヒューマンは人間よりも優れています。
続いてご紹介するのは、パーソナルショッピングアシスタントという事例です。ここで1つご紹介したいのが、マシンカスタマーという概念です。マシンカスタマーは、人間の代わりにボットとやり取りをし、ユーザーの趣向や要望にかなう商品をみずから選出し、購買を行うアシスタントです。例えばいくらのパソコンが欲しいといった希望を自身のデジタルヒューマンに伝えると、比較検討を行い、購入まで代行してくれるというイメージです。
もちろん、実現には課題がありますが、こうした未来が期待されています。
金融商品に対しても、難しくないものに関しては適用できる部分もあるかと思います。
もちろん、実現には課題がありますが、こうした未来が期待されています。
金融商品に対しても、難しくないものに関しては適用できる部分もあるかと思います。
または、金融教育やOJTへの活用も相性がいいテーマです。クレーム対応や商品説明の際に先輩行員についてトレーニングをすることがありますが、デジタルヒューマンに先輩行員役をさせることで、先輩社員の負担を軽減し、均質なトレーニングを提供することが可能です。
また、金融教育コンテンツとしてデジタルヒューマンを講師やチューター役に採用することで、個人個人に適した学習カリキュラムを提案し、実際に授業をやってくれるといった世界観も考えられます。
これまでご紹介してきた内容は仮説を含んでいますが、デジタルヒューマンにはさまざまな活用可能性があると考えています。
ここで1つお伝えしておきたいのは、デジタルヒューマンは単なるUI改善ツールではないという点です。例えば、デジタルヒューマンの顧客対応の利点として、ハイタッチなコミュニケーションをローコストで実現できることがあります。現在は稼働量の問題から、一部の富裕層などに限定して重点的なアプローチを行っている現状かと思いますが、デジタルヒューマンを導入することで、すべてのお客様に対して同等なアプローチが可能となります。
また、人事ローテーションの影響を受けないため、継続的なリレーションシップを築けます。さらに、デジタルヒューマンをCRMと連携させることで、より深い顧客理解に繋げることも可能になっていきます。
当然、現時点では対人と比較してコミュニケーションがスムーズではないといったところで一部の方からは受け入れられにくい部分もありますが、幅広い可能性を踏まえてデジタルヒューマンの活用方法を考えることが求められています。
以上でデジタルヒューマンが金融分野でどのように活用できるかをご紹介しました。
後編では、NTTデータのデジタルヒューマンの取り組みをご紹介します。
後編では、NTTデータのデジタルヒューマンの取り組みをご紹介します。