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電子ウォレットってどんな財布? その機能と可能性とは

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キャッシュレス決済のサービスが拡大しつつある日本。電子マネーやクレジットカードなど、決済手段を使い分けている人は多いでしょう。キャッシュレス社会の利便性を高めるツールとして、注目を集めているのが「電子ウォレット」です。その利便性は決済にとどまらず、私たちの生活全般にわたる可能性を秘めています。電子ウォレットの特徴や今後の発展の可能性などについて解説します。

電子ウォレットとは

電子ウォレットとは、現金以外の複数のキャッシュレス決済手段を保管、使用するためのアプリやオンラインサービスのことを指します。この定義を機能面に着目して分解すると、
  • 口座へのアクセス手段である
  • 安全に保管できる(金庫)
  • 一つにまとめて持ち運べる(財布)
の3つに分けられます。

機能①口座へのアクセス手段である

電子ウォレットは、キャッシュレス決済手段を使用して支払いや送金、残高の確認などをするために必要な情報(口座)にアクセスする手段として機能します。

例えばECサイトの決済でクレジットカードを使用する場合、カード番号や有効期限、名義人などの入力が必要ですよね。また店頭決済で現物のカードを使用するときは、サインが必要になることが多いでしょう。

しかし電子ウォレットにあらかじめカードの情報を保持しておけば、決済のために必要な情報にすぐアクセスできます。そのため決済のたびにカード情報や氏名、住所などを入力する必要がなくなりますし、電子的に本人であることを証明してくれます。

機能②安全に保管できる(金庫)

キャッシュレス決済では、各種残高は電子的なデータとして存在します。とりわけ暗号資産は紙幣や貨幣といった現物が存在しないので、なおさら電子データを厳密に管理する必要があります。

キャッシュレス決済をPCで利用できるようにするには、サーバー上でデータを管理する仕組みが必要になります。また、スマホアプリで使用できるようにするには、端末内で管理するためのハード・ソフトの仕組みが必要です。それに加えて、管理されたデータは、簡単に盗まれたり改ざんされたりしてはなりません

そのため電子ウォレットには、残高や口座情報、カード情報などの機密情報の安全を確保する「金庫」の機能が不可欠です。暗号資産でウォレットが使われるようになったのは、この「金庫」の機能がことさら重要だったからでしょう。
暗号資産ウォレットとは
電子ウォレットの一つで、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を安全に保管・管理するツールやサービス。スマホアプリだけでなくWebブラウザで操作するもの、カードやUSBメモリのようなハードウェア端末で管理するものがある。

機能③一つにまとめて持ち運べる(財布)

私たちがふだん使っているリアルな財布には、現金だけでなくクレジットカードやポイントカード、運転免許証といったさまざまなものを一つにまとめて持ち運べる、という特性があります。

電子ウォレットも「ウォレット(財布)」と言うからには、クレジットカードや電子マネーなどの複数のキャッシュレス決済手段を入れるのはもちろん、他にもいろいろと入れて保管し、持ち運び、取り出せる「財布」の機能を誰もが期待しますし、実際にそのような携行性を備えています。

電子ウォレットのメリット

「口座へのアクセス手段である」「安全に保管できる(金庫)」「一つにまとめて持ち運べる(財布)」という3つの機能をもつ電子ウォレット。ここからは、私たちの生活で身近なスマホの電子ウォレットアプリにフォーカスし、そのメリットを紹介します。

膨らんだ財布を持ち歩く必要がない

お札や硬貨、クレジットカード、さらにカード型電子マネーや複数のポイントカード……。気がつけば財布がパンパンに膨らんでいる人は多いのではないでしょうか。電子ウォレットで保持すれば、ポケットからはみ出すような巨大な財布を持ち歩く必要がなく、身軽に外出できます。

すばやく決済できる

お金を支払うさまざまな場面で、財布から現金やカードを取り出すことなく、スマホをかざすだけで決済できます。電子ウォレットには「口座へのアクセス機能」があるため、瞬時に支払いが完了します。

実はこれは電子ウォレットに限らず、NFC※1を利用した決済手段のメリットでもあります。電子ウォレットならではのメリットの一つは、アプリに複数の決済手段を保持し、それを簡単に取り出せること。例えば店舗によって決済のカードを使い分けたいときにも、財布を出さずにアプリから選んで、すばやく決済できます。

決済手段に限らず、ポイントカードも一緒に財布に入れて持ち運びたいもの。いずれは決済と同時にポイントも自動的に加算されるようになれば、もっと便利ですよね。

※1「Near Field Communication」の略で、近距離無線通信。非接触ICチップを使って、かざすだけで通信できる通信規格のこと

不正利用を防げる

電子ウォレットの金庫の機能は、スマホの場合、端末に情報を保管する標準化された技術がベースになっています。保持した各種決済手段の残高やカード情報などは暗号化され、安全に保管されます。

これにより、仮にスマホの端末に第三者が不正アクセスしても、カード情報を復号することはできず、情報を抜き取ることも困難な工夫がされているのです。

また現物の財布を紛失すると、被害は甚大ですよね。電子ウォレットに保持した決済手段は、スマホ自体に顔認証や指紋認証、パスコードなどを登録することによって、不正利用を防げます。

こうした安全性を保障する技術はICチップに始まり、その後世界中で研究と進化が進み、標準化が進みました。その結果いろいろなメーカーがスマホに搭載できるようになり、近年ようやく実用的になりつつあるのです。

電子ウォレットにデメリットはある?

まず、言うまでもなくスマホの充電が切れたら、アプリに保持した決済手段は使えません。また、災害時など、通信環境のぜい弱な場所でも使用が制限されてしまいます。電子ウォレットそのもののデメリットというよりは、電子ウォレットを使用する外部環境にまつわるデメリットと言えるでしょう。

代表的な電子ウォレットとその特徴

代表的な電子ウォレットには、日本が世界に先駆けて開発した「おサイフケータイ」、米Apple社が開発した「Appleウォレット」、米Google社が開発した「Googleウォレット」などがあります。

おサイフケータイ

日本における電子ウォレットの草分けとも言えるのが、非接触型ICチップ「FeliCa(フェリカ)」を搭載した「おサイフケータイ」です。ガラケーで愛用していた方も多いでしょうが、現在も携帯電話の3キャリア(docomo、au、Softbank)で利用できる日本で発売されているAndroidスマートフォンがあります。(対応機種にはおサイフケータイのマークが記載されています。)

複数の電子マネーやポイントカードの他、航空機の搭乗券も対応しています。クレジットカードはQUICPayやiDで利用できます。おサイフケータイに保持したい電子データはすべてFelicaに安全に保管されますが、電子データの閲覧や操作には、個別のアプリが必要になります。

ガラケー時代のおサイフケータイは、何と電池が切れても、電波がつながらなくても使えました!今のスマホはそういう意味では退化してしまったのかもしれません。

Appleウォレット

iPhoneやApple Watchなど、Apple社が提供するデバイスに対応した電子ウォレットが「Appleウォレット」です。

電子マネーやクレジットカードなどの決済手段、ポイントカード、搭乗券、イベントチケットの他、車のキーも保持できます(2023年11月時点ではBMWのデジタルキーのみ)。

またiOSに統合されたことで、紛失・盗難時を含めた安全面でも工夫がなされています。iCloud.comや「iPhoneを探す」アプリを通じて、ウォレットに入れた決済手段を一時的に停止したり、完全に削除したりできます。

Googleウォレット

Google社が提供するAndroidを搭載したスマートフォンとWear OS スマートウォッチに対応した電子ウォレットが「Googleウォレット」です。

機能はAppleウォレットとほぼ同様で、電子マネーやクレジットカードなどの決済手段、ポイントカード、搭乗券、イベントチケット、車のキー(BMWのデジタルキー機能)を登録保持できます。

紛失・盗難時には「android.com/find」にアクセスして、端末に登録されているデータを削除できます。
おサイフケータイ Appleウォレット Googleウォレット
電子マネー
交通系ICカード
クレジットカードなど
ポイントカード
搭乗券
イベントチケット
車のキー ●(※) ●(※)
上記はすべてのサービスで使えるわけではありません。あなたがお使いのポイントカードや搭乗券が対応しているか調べてみましょう!

※車のキーは、BMWのデジタルキーのみが電子ウォレットに入れられるようです(2023年11月現在)。

これから電子ウォレットはどう発展していく?

現状の電子ウォレットのサービスでは、決済が主になっています。これからは技術の発展やインフラの整備、各国政府のデジタル化の推進施策などによって、実際の財布さながらにあらゆるカードが電子ウォレットに一元的に保管でき、必要に応じて取り出せるようになることが期待されています。

アメリカの状況

アメリカのアリゾナ州では2022年3月より、Appleウォレットでデジタル運転免許証や州身分証明書「IDs in Wallet」を提供。他の州でも順次提供される予定と報じられています。

なおアメリカではJPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴなどの銀行が団結し、2024年に電子ウォレットアプリ「Paze(ペイズ)」の提供を計画しています。Pazeは、オンラインでの個人間送金サービス「Zelle(ゼル)」を運営する企業が管理します。

AppleウォレットやGoogleウォレットを提供する巨大IT企業から、金融機関の領域を守るためにメガバンクが団結。Pazeの提供により電子ウォレットの勢力図が大きく変化するのではないか、競争が激化して新しいサービスが生まれるのではないかと、注目が集まっています。

日本の状況

日本では、2023年6月9日に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定。「マイナンバーカードとデジタル行政サービスで便利な暮らしを提供する」ことを重点取り組みの一つに掲げています。

具体的な取り組みとしてマイナンバーカードを「確実・安全な本人確認・本人認証ができる『デジタル社会のパスポート』」と位置づけ、健康保険証、運転免許証、医療費助成制度受給者証など各種カードを一体化し、スマホに搭載することを検討すると発表しています。

Androidスマホへの搭載は2023年の5月にはできるようになりました。技術的な違いのあるiOSへの対応も検討されています。近い将来には使えるようになることでしょう。

すべての情報が電子ウォレットで管理できる未来へ

スマホの登場と普及につれて、何でもスマホに入れて持ち歩きたいという夢は膨らんできました。スマホのハードやソフトのメーカーや通信業界は安全性や利便性を実現する技術の進化に努め、それらの技術が世界標準化されることで、近年ようやくその夢が実現化されようとしています。

電子マネーやカード、クーポン、チケット、健康保険証などはもちろん、ホテル・バウチャーやホテルのルームキーの保持など、すべての情報が電子ウォレットで保持できる日は、そう遠くないかもしれません。

また、電子ウォレットは、財布の枠を超えた大きな可能性を秘めています。例えばイベントチケットは買った本人の電子ウォレットにだけ安全に保持することによって、チケットの不正転売という社会課題を克服することもできるかもしれません。

電子ウォレットが私たちの生活に浸透していくことで、さまざまなニーズが生まれ、また新しいサービスが生まれていく……。そんな未来が見えてきそうです。
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執筆 オクトノット編集部

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