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SDGsビジネスの成功とは?企業や金融業界の事例からできることを考えてみよう

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昨今、持続可能な社会づくりのためのツールとして注目されている「SDGs」。ただ、「SDGsを活用したビジネスは本当に上手くいくの?」「実際にどんなことができるの?」と疑問に思っている人もいるかもしれません。実は、ビジネスという側面で考えたとき、SDGsが生み出す市場規模は莫大なのです。今回は企業が取り組むメリットが多いSDGsについて、注目される背景や金融業界における事例を解説します。

「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。

SDGsが注目されている背景

頻発する自然災害や気候変動、新型コロナウイルス感染症の流行など、人々は地球規模のさまざまな問題に直面しています。こうした問題に対して、地球環境が保全され次世代の人たちが必要なものを損なわない持続可能な社会をつくるために、SDGsは注目を集めています。ここではSDGsの定義と市場規模について解説していきます。

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、「持続可能な開発目標」の意味。2015年9月開催の国連サミットにて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された国際目標のことを指します。

SDGsでは、多様性(ダイバーシティ)と包摂性(インクルージョン)のある持続可能な社会を実現するために、2030年を年限とする17のゴール及び169のターゲットが掲げられているのです。こうして、より良い社会を実現していこうというのがSDGsになります。

以下、17のゴールと169のターゲットの中から、イメージの湧きやすいものをピックアップしてみました。
ゴール(概要) ターゲット例
目標① 貧困:
あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる
2030年までに、現在1日 1.25ドル未満で生活する人々と定義されている
極度の貧困 をあらゆる場所で終わらせる
目標⑥ 水・衛生:
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
2030年までに、すべての人々の安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する
目標⑧ 経済成長と雇用:
包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。
特に後発開発途上国は少なくとも年率 7%の成長率を保つ

目標⑨ インフラ、産業化、 イノベーション:
強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
特に開発途上国における小規模の製造業、その他の企業の安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び
市場への統合へのアクセスを拡大する
目標⑬ 気候変動:
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む
目標⑮ 陸上資源:
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、
生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う

SDGsの市場規模

SDGsの市場規模については、政府機関や民間企業などがそれぞれ自身に関わるゴールの規模だけを算出しているため、全体の規模が分かりづらいのが実情です。 ここでは、SDGsの策定を推進した国連開発計画(UNDP)が試算する、SDGsの目標達成による経済効果を以下に紹介します。
<SDGsの目標達成による経済効果>
  • 3億8,000万の雇用創出
  • 12兆ドルの市場機会
  • (今後10年~15年で)GDP成長率2~3倍の効果
出典:SDG Impact|UNDP

12兆ドルというと日本円で約1,416兆円(1ドル=118円で算出)、日本のGDPと比較すると2倍以上の数字です。つまりSDGsの目標達成におけるプロセスにおいて、日本市場2個分以上の市場が新たに生まれる試算であり、いかに大きな市場規模かがわかります。このことからも、SDGsはビジネスとしても取り組む価値があると言えるでしょう。

SDGsの3つのアプローチ方法

企業がSDGsにアプローチする方法ですが、以下の3つに大別すると理解しやすいでしょう。
  • 製品・サービス投入(CSV、Creating Shared Value):社会で暮らす人々にとって共通の課題をビジネスによって解決し、社会価値と企業価値の両方を創造すること。例:CO2排出の少ない自動車の製造・販売、人権侵害防止用のスマホアプリの開発など。
  • 事業プロセス改善(CSR、Corporate Social Responsibility):社会や環境に与える負荷を低減するなど、社会の一員として企業自身が責任ある行動をとること。例:自社のCO2排出削減、従業員の働き方改革など。
  • 社会貢献活動(フィランソロピー):自社のカネ、ヒト、モノなどの経営資源を社会に無償で提供すること。例:環境NPOへの寄付、地域社会へのボランティア、自社製品の寄贈、自社体育館の開放など。
このようにSDGsの達成に向けたアプローチは多種多様です。企業が最も得意とし、社会からも期待を寄せられているアプローチは、社会課題の解決に大きなインパクトをもたらす「製品・サービスの投入(CSV)」ではありますが、事業プロセス改善(CSR)や社会貢献活動(フィランソロピー)も、SDGsの達成にとっては重要です。

SDGsに取り組むメリット

SDGsの定義を踏まえた上で次に知りたいのが、企業がSDGsに取り組む具体的なメリットです。ここではSDGsに取り組むことのメリットを解説します。

収益につながる

SDGsに取り組む一番のメリットは、収益につながる可能性が高まることです。持続可能な社会の実現や、そのための社会課題を解決する製品及びサービスを市場に提供し、お客様に購入してもらうことで収益を得ることができます。

また一見収益とは関係なさそうな社会貢献活動(フィランソロピー)も、実は、収益獲得に間接的に影響を及ぼします。例えば、NPO/NPOへの寄付や地域活動を通じて企業のレピュテーションが高まれば、関係者が顧客となるかもしれません。またボランティアやプロボノ活動を通じて従業員が社会課題に直に触れることで、その経験が新製品・新サービスの開発にも活かされることもあるでしょう。

SDGsは世界各国の合意です。SDGsが描く未来の社会からは、解像度の高い未来の市場をイメージすることができるでしょう。SDGsに取り組むことは、結果的に、収益に結びつき、企業の持続可能性にも寄与すると考えられています。

投融資を呼び込める

これまで金融機関はどれだけ利益を上げたのか、資産はどれくらいあるのか、など財務の視点から企業に対する投融資を判断していました。

しかし昨今では、企業のESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)活動を、金融機関が投資判断に組み入れるケースが増えてきており、資金調達側としてはSDGsに取り組むことで、投資や融資を呼び込む効果が期待できます。

例えば、資金調達側が投融資を呼び込む一つの方法にグリーンプロジェクトに限定された債券・融資「グリーンボンド」や「グリーンローン」があります。
  • グリーンボンド:環境改善に資する事業に充てる資金を調達するために発行する債券
  • グリーンローン:環境改善に資する事業に充てる資金を調達するための借入れ
今後もESGを大きな評価軸に資金を融通する金融機関は増えていくことでしょう。グリーンボンドやグリーンローンが良い例ですが、資金調達側としてもSDGsに積極的に取り組むことで、投融資をより呼び込めるようになることでしょう。

人材獲得力の向上

学校でSDGsを勉強してきた“SDGsネイティブ”は、SDGsへの取り組みを企業選びの軸の一つにし始めています。そのため多くの学生が、どのようにSDGsに取り組んでいるのか、企業ホームページや採用パンフレットなどを通じて情報収集をしています。このようなSDGsネイティブに対し採用活動を行う企業にとっては、SDGsへの積極的に取り組みが人材獲得力の向上に寄与するのです。

SDGsの課題点

SDGsの大きな課題の一つが、「SDGsウォッシュ」です。SDGsウォッシュとは、「実態が伴わないにもかかわらず、表面的にSDGsの取り組みをしているように見せかけること」を指します。例えば、脱炭素社会を目指すことを宣言しているにもかかわらず、金融機関が化石燃料発電事業者に融資した場合、SDGsウォッシュと見なされる可能性があります。

SDGsウォッシュと見なされてしまうと、消費者や取引先企業からのイメージダウン及び信頼関係の失墜は避けられないでしょう。

ただし、SDGsウォッシュと判断される明確な基準は時代・社会により変化します。そのため、誇張表現や事実と異なるビジュアルを用いたPRなどはしないように気をつける必要があります。

SDGsのビジネスモデル・事例

ここからは、SDGsのビジネスモデル及び事例を3社紹介します。

①メルカリ

フリマアプリ「メルカリ」を提供している株式会社メルカリ。創業者の山田進太郎氏は、世界一周の旅の中で、限られた資源で生活を営む人々に遭遇。その経験から、「スマートフォンで世界中の人々をつなぎ、簡単にモノの売り買いができるようになれば、資源の有効活用が実現するのでは?これによって、人々はもっと豊かな生活を送れるようになるかもしれない。」という思いを持ちました。メルカリは、こうした想いを形にすべく、創業されたのです。

たしかにフリマアプリ・メルカリは、リアルな場でのフリーマーケットより簡単にモノを売ることができます。メルカリの登場により、元来ゴミ箱に捨てていたようなモノをアプリ上で出品・販売する人、つまりモノ(資源)の有効活用をしている人は格段に増えたことでしょう。

一方、メルカリでの取引量が増えるにつれ、梱包材の資源ゴミも増えるという問題も浮上しているのだとか。この問題に対処すべくメルカリでは、繰り返し使用可能な包装材「メルカリエコパック」も制作しています。

参考:メルカリのサステナビリティ|株式会社メルカリ

②住友林業

植林事業や木材の仕入れ・販売する流通事業などを手掛けている住友林業株式会社は、再生可能な森林資源を有効活用し、脱炭素社会実現に貢献することを目指しています。

そのため住友林業では、日本の国土の1/800の面積の森林を管理しています。管理下の森林では、「伐る→加工する→使う→植える・育てる」という“森林の循環”をつくり、豊かな森を次世代に引き継ぐ取り組みを行うことで、森林資源を活用しているのです。

参考:トップコミットメント|住友林業

③川崎ブレイブサンダース

プロバスケットボールチーム「川崎ブレイブサンダース」も、SDGsに取り組んでいます。具体的な取り組みの一つが、「来場者数×1円を川崎市内のこども食堂へ寄付」です。同取り組みでは、ホームゲーム(※)で開催される試合に来場した人数×1円を、地域の子どもたちを対象に食事を提供するこども食堂へ、かわさきこども食堂ネットワークを通じて寄付をしています。川崎ブレイブサンダースのホームゲームに足を運ぶことで、子どもたちの飢餓・貧困という課題に貢献することができるのです。

※ホームゲームとは、バスケットボールや野球などで、自チームの本拠地となる球技場で行われる試合のこと。

参考:【12/8更新】2021-22シーズン SDGsプロジェクト『&ONE』の取り組みについてのお知らせ|川崎ブレイブサンダース

金融業界でのSDGsの取り組み

前章ではさまざまな業界におけるSDGsの事例を見てきました。では金融業界はどのようにSDGsに取り組んでいるのでしょうか。ここでは金融業界におけるSDGsの取り組みを4社紹介します。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)

連結子会社の三菱UFJ銀行が、日本の金融機関として初めて「インパクト投資の運用原則」に署名をしました。同原則の署名機関は、経済的リターンだけでなく、持続可能な社会・環境へ貢献する投資の推進が期待されています。

また三菱UFJフィナンシャル・グループの特徴的な取り組みに、2013年から設定しているグローバルボランティア強化月間「MUFG Gives Back」があります。同取り組みでは世界各地のMUFG社員が、植樹や災害復旧などの社会貢献活動を行っており、2015年には35ヵ国、6,000人以上の社員が参加しました。

参考:優先領域への取り組み|三菱UFJフィナンシャル・グループ

第一生命ホールディングス

第一生命ホールディングスでは、DSR(Dai-ichi's Social Responsibility)経営を実践しています。DSR経営とは、第一生命グループ独自の価値創造経営のための枠組みのこと。DSR経営のDは、第一生命の“D”です。外の概念をそのまま取り入れるのではなく、社名そのものを取り組みに融合させてしまうという独自性を取り入れている点がDSR経営のポイントです。

DSR経営の実践により、経営品質の継続的な向上及びステータスホルダーに対する社会的な責任を果たしていきます。また、DSR経営は第一生命独自の枠組みであるため、従業員への説明も必須です。そのため、社内に浸透しやすいという特徴があります。

参考:持続的な価値創造|第一生命ホールディングス

SOMPOホールディングス

SOMPOホールディングスは、社内外のルールメイキングの場に積極的に関わる企業文化を持っています。そんなSOMPOホールディングスが環境問題に意欲的に取り組み始めた一つの契機が、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「地球サミット」です。同サミットへ、安田火災(現・損保ジャパン)の社長が参加。翌1993年には「市民のための環境公開講座」を開催し、市民と一緒に環境問題を学ぶ場を提供してきました。さらに従業員をNPOへ出向させる取り組みも行っており、積極的にSDGsに取り組んでいる代表的な日本企業の一つと言えるでしょう。

参考:サステナビリティ|SOMPOホールディングス

大和証券グループ

大和証券グループは、外部からCSR専門家を採用した日本初の企業といわれています。大和証券グループでは目指す姿として「2030Vision」を策定しています。
同Visionでは、「貯蓄からSDGsへ」をコアコンセプトとして“資金循環の仕組みづくりを通じたSDGsの実現”の取り組みを実践しています。具体的な取り組みとして、経済的な利益を追求すると同時に、貧困や環境などの社会課題に対して解決を図るインパクト・インベストメントや各種のSDGs関連ファンドの提供実績があります。

参考:大和証券グループの経営ビジョン「2030Vision」・マテリアリティ|大和証券グループ本社

SDGsビジネスの成功にはルールメイキングに参加することが重要

SDGsをビジネスにして、さらに成功させるためにはルールメイキングに参加する、つまりSDGsの実現に向けたルール作りに参画することが重要です。これから適用されるルールがどのような議論を経た作られたかを理解した上で、自社のサステナビリティ経営にいち早く反映させることができるためです。

このようなルールメイキング・コミュニティには、国際機関、政府、地方自治体が主導するものだけではなく、経済団体や業界団体、また、NGO/NPOが立ち上げたものもあります。 SDGsに関するさまざまな情報を網羅的に収集、活用したい場合には、例えば、国連グローバル・コンパクト(UNGC)や、その理念を日本で実践するプラットフォームであるグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)に加盟することも一案です。

まずは自社のニーズに適したルールメイキング・コミュニティに参加するところから始めてみてはいかがでしょうか?

自社の強みを生かしてSDGsビジネスに繋げよう

SDGsは持続可能な社会をつくるだけでなく、持続可能な企業になるために必要なツールです。本来10年後の未来を見通すことは容易ではありません。しかし、現在は、世界中の国や地域、市民社会、そして企業がSDGsの達成という共通の目的を共有しており、持続可能な社会というロードマップが示されています。自社の強みを生かして、持続可能な社会づくりに参画すると同時に、持続可能な企業になる第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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