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挑戦者と語る

金融から非金融へ、銀行が地域を支えるミライ

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銀行が広告を売る……。銀行法が改正され、多くの銀行が規制解除されたマーケティング・広告や地域活性化に資する業務を模索する中、京都銀行は広告にとどまらず、地域のくらしを支える総合ソリューションと銘打った非金融サービスを始めた。多様化するお客様のニーズに応えるには!? API-Gallery Meet UPでは、生活総合サービス「京銀くらしのサイト」を立ち上げた京都銀行の井上さんに、その戦略や苦労をお聞きしました。多様なソリューションでまとめ上げてサポートしたNTTデータの三輪さんが、デジタル化の秘訣を解説します。

銀行が金融だけでなく、非金融ビジネスを行うトレンド

青柳さん 最近よく「金融x非金融」を耳にすることが多くなりました。
その理由として最も大きいのは銀行法が改正され、銀行が広告やマーケティングビジネスを行うことができるようになったことでしょう。

2021年の改正銀行法で広告や地域活性化に資する非金融業務が解禁になった(青柳さん)

お金の流通を生業とする銀行は、その性格上顧客の情報を仲介する役割があり、情報やデータを流通させるプラットフォーマとしての事業展開を進める銀行が増えています。お金と情報の流通は似ており、広告やマーケティング事業は銀行にとって相性がよいのです。
特に地域の金融機関は、地域活性化をミッションとしていますし、その地域社会で培ったリレーションがあり、地域を深く理解しています。それを活かして、融資だけでなくどうやって地域を支えていくのか?広告などの非金融事業を進めていくと、個人や法人顧客への金融以外への多面的な理解が進み、深まっていきます。同時に地域社会の情勢や動向にも詳しくなり、銀行の持つポテンシャルや優位性がより活かせるようになります。
一方で住民にとっては、金融か非金融かは関心事項にはなりません。預金も広告もいろんなサービスのひとつにすぎません。ですから金融と非金融を分けて考えるのではなく、どうすれば住民の体験が良くなるのか?という視点から考えるべきです。
井上さん、京都銀行はまさにこうした金融、非金融を相互に融合させながら進めていますね。

お客様のニーズは金融の先の生活の中にある

井上さん まさにおっしゃる通りのことを京都銀行としてもかなり意識しています。従来のように金融サービスの提供を中心としたビジネス展開だけでは、今後多様化するお客様のニーズに十分に対応していけないのではないか?という危機感を我々はもっていました。総合ソリューション企業を目指して、積極的に事業領域を拡大していくことを、重要テーマに掲げ、生活総合サービス「京銀くらしのサイト」を立ち上げました。今まで京銀アプリは振込みや残高照会のいわゆる金融機能の提供しかできてなかったのですが、ECサイトやくらしに役立つ情報をお届けし、ライフプランをサポートする金融と生活が一体となったサービスを提供していけるようになりました。同時に京銀アプリを媒体とした広告事業へ参入しました。
お客様のニーズは必ず金融ニーズの先、生活の中にあります。
一般的にお客様が住宅ローンの相談に銀行に来るときには住宅の購入はもう決まっていて、あとはローンをどこで借りようかという段階であることが多いと感じています。そのため、必然的にご提案の幅も狭くなる傾向にあります。
お客様の本当のニーズは住宅の購入ですから、それを起点に何かサービスを提供して、お客様のニーズをしっかり把握する。その上で金融サービスにつなげていく、そのビジネスモデルの転換が大きなテーマと捉えて、今回のプロジェクトを進めてきました。
今回の生活総合サービス「京銀くらしのサイト」というサイトを立ち上げ、広告事業へ参入する取り組みを行ってきたのが最初で、これによって今後は地元企業と連携しながら、金融と生活が一体となってサービスを提供していきたいと考えています。
これは通過点にすぎず、ここで得られたお客様の本当のニーズを起点に、今まで金融ビジネスだけでは得られなかった個人法人の様々なデータも活用して、事業先へのマーケティング支援や福利厚生サービスなど、さらなる事業領域の拡大、新しいビジネスの創出につなげていきたいと考えています。

生活総合サービス「京銀くらしのサイト」とそれを支えるデジタル技術

井上さん 9月からは新たにライフプランシミュレーションを始めました。
お客様の、年齢、家族構成、職業、年収、日々支出の情報をご入力いただき、今後起こり得るライフイベント毎にお客様が詳細に入力していただけるようになっています。それの結果を受けて、資産寿命を表示したり、関連するアドバイスがあったり、資産推移がわかるグラフやキャッシュフロー表を用意しています。それだけではなく、結果に応じて、金融情報を始め、広告も出していく、そういう構想になっています。
ことよりモールはECサイトですが、カテゴリー検索で地域の企業さんの商品を見つけていただけたり、ギフトや手土産といった項目で、テーマ検索で京都以外の方にも使っていただける構成になっています。随時変わっていきますが、いまはお肉の特集をやっていますね。
以前から提供していた地域応援クーポンも、画面の刷新や機能の追加を行っています。登録していただいた記念日情報を元に、その記念日に使える他よりも少しお得な記念日クーポンも新しく始めました。
京都銀行は以前から銀行アプリを提供していましたが、こうした新しいサービスを、アプリの中でタブの切り替え操作だけで生活サービスもご利用いただけるようになったのが一番大きなポイントです。

京銀アプリはタブの切り替えだけで新しい生活サービスが使えます(井上さん)

三輪さん ご支援させていただく立場としては、金融サービスから生活サービスにシームレスに連携できる、ユーザの方が違和感なく、且つ簡単に生活サービスを使っていただけるようにするにはどうすればよいかを考える難しさがありました。
銀行アプリは、振込などお金を扱うため高い信頼性が求められます。一方で生活サービスは、生活をより豊かにする便利な機能を提供していくものですので、スピード感が求められます。
京都銀行さんの京銀アプリでは、NTTデータのMyPalleteというバンキングアプリ基盤をご利用いただいていまして、WebViewでアプリ実装できるような機能があらかじめ用意されていました。今回はそれを使って実現しています。
用意をされていたとはいっても、京銀アプリとしてのフロントデザインや、お話にあったレコメンドをするための外部システムとの連携といった非常に新しい試みをしています。こうした開発は前例の無いチャレンジでした。
そのためのクーポンやマーケティングオートメーションといった重要な機能を提供してくれる他の多くのベンダーさんがいて、短期のWebサービス開発にしてはステークホルダーが本当に多くて、開発当初から困難なプロジェクトになることが予想されました。そこで初期段階でコミュニケーションのやり方を確立させて、不透明さを早い段階で解消できたのが、成功のポイントでした。

成功の秘訣は多くのステークスホルダーの相互理解をマネジメントできたこと(三輪さん)

井上さん 2年前くらいから本件の担当になりましたが、最初はシステムのことが全く分からなかった。そこが一番困りましたが、青柳さんや三輪さんには本当に助けてもらいました。
三輪さん 最初に将来構想を含めた整理を一緒にさせていただき、ベンダーさん毎の作業の進め方の違いを共有しあう勉強会を開いて相互理解を深めコミュニケーションロスを減らす。プロジェクトマネジメントとしてはそこに心を砕きました。今後も今回のように自社だけでなく様々な企業と連携させていただく開発スタイルは増えていくのだと思います。他の多くの銀行さんにも役立つノウハウだと自負しています。

地域と広告と銀行の親和性

青柳さん 実際に広告事業を構想から開始まで行ってみて、いかがでしたか?
井上さん 広告代理店というのは広告宣伝費がそれなりに多い企業をターゲットとしていて、広告宣伝予算が限られてしまうお客様はターゲットとされていない。京都銀行のお取引先の大半は中小企業で、認知向上を課題とされているが広告予算は限られている。我々はそこをサポートしたい、という想いで安価でわかりやすいサービスとして始めています。
銀行アプリには銀行ならではの信用があり、安心感が高く、日常的に銀行残高を見るといった、広告露出媒体としての親和性も非常に高い。趣味嗜好やライフステージといった入力していただいたデータも広告ターゲットを絞れる独自性につながると考えています。
青柳さん 北海道でも沖縄でも残高を見る機能は同じですが、同じ京都でも市内と市外でも求められる非金融サービスはおそらくだいぶ違うでしょう。京都の場合は日本、いや世界中から人が訪れる観光地という特性もある。非金融サービスには地域特性による違いがあり、それも踏まえて戦略を立てていかないといけないですよね。私も支援していて、そういった地域をちゃんと深く理解しながらやっていく難しさをあらためて感じました。

金融から非金融へ、銀行が地域を支えるミライ

青柳さん 今後の展開や構想について教えてください。
井上さん せっかくこうした生活サービスも含めたアプリのひとつのかたちを作れたと思っていますので、興味を持つ他の金融機関と一緒に作り上げて提供していくことも検討できると思っています。実際に、EC事業では当行を含めた三行で地域金融機関連携のポータルサイト「アンドワ」を開始した事例もあり、今後はEC事業に限らず、生活サービス全般においても拡大していく方針です。
例えば京都でホテルを経営している方が、京都に住んでいる人だけに広告を出したいわけではないと思いますので、他の銀行のアプリと相互に配信できれば魅力的なプラットフォームになると考えています。
青柳さん 複数行で連携する場合には、システムは共同利用する選択もあります。その場合、悩ましいのは京都銀行さんとして京都の地域に寄せた話もありながら、例えばライフプランシミュレーションは地域によらないところもありますので、銀行さん毎の好みによって取捨選択することもできたらよいですよね。
井上さん 最初の最初は、ライフプランシミュレーションも何もありませんでした。やっとサービスがリリースできた今、本当にお客さんに求められるサービスってなんだろうと、最初に行内で取り組んだワークショップを思い出して、思いを新たにしているところです。次にやろうとしている住まいや相続もそうした取り組みの中から見えてきたお客様の本当のニーズでした。
これで終わりではありません。お客様に使っていただいて、改善ポイントもいっぱい出てくると思います。事業領域ももっと拡大させていきたいですし、その先にある地域活性化への貢献という最終的な目標に向かって、本当に止まっていられないなぁ、と思います。
三輪さん 実は次の取り組みは先週から始まっているんですが、その着実な実現と、他サービスですがすでに当社より提供させていただいている住宅ローンの受付サービス等といったところもうまく組み合わせ、魅力的な住まいのサービスを作り上げるために、これからもしっかり伴走サポートさせていただきたいと思います。

<プロフィール>
井上 莞司(いのうえ かんじ)さん

井上 莞司(いのうえ かんじ)さん

2017年に京都銀行入行。営業店にて、銀行事務、法人営業を幅広く経験。2021年にイノベーション・デジタル戦略部に異動。京銀アプリを活用した新たなビジネス創出に向けたプロジェクトに従事。生活総合サービス「京銀くらしのサイト」の立ち上げを含め、京銀アプリを活用した新たなビジネス創出に従事
現職:京都銀行 イノベーション・デジタル戦略部 DXビジネス開発部 主任
三輪 裕介(みわ ゆうすけ)さん

三輪 裕介(みわ ゆうすけ)さん

2017年、NTTデータに新卒入社。第二バンキング事業部に配属。銀行勘定系共同利用システムSTELLACUBE/BeSTACloudの開発に携わる。2020年より地銀向けデジタル案件の企画・開発に携わり、オンラインレンディングや行員向けwebサイト開発等を行う。2022年より、京都銀行様生活総合サービスの方式検討~開発までを担当。
現職:株式会社NTTデータ 第二金融事業本部 第二バンキング事業部 主任
青柳 雄一(あおやぎ ゆういち)さん

青柳 雄一(あおやぎ ゆういち)さん

入社以来、数多くの金融系新規サービス立ち上げに従事。2015年からはオープンイノベーション事業にも携わり、FinTechへの取り組みを通じて、複数の金融機関のデジタル変革活動を推進。NTTデータのデジタル組織立ち上げ、デジタル人材戦略策定/育成施策も実行。現在は当社金融分野の新デジタル戦略、外部連携戦略策定・実行にも従事。2021年10月にリリースした金融APIマーケットプレイス「API gallery」の推進をリード。
現職:株式会社NTTデータ 金融戦略本部 金融事業推進部 部長
API Gallery (https://api-gallery.com
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※本文および図中に登場する商品またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。

1994年株式会社NTTデータ入社以来、インターネット黎明期のEC構築、初期の携帯電話へのPayment機能搭載、海外への着メロ壁紙配信からブロードバンド黎明期の動画コンテンツ配信の実証実験等、数多くの新しい分野への取り組み検討に携わる。いつの間にか15年以上のキャリアになった金融分野でも変わらず、先物システムへの新しい通信方式導入、銀行基幹システムのオープン化、その海外への展開、スマホペイメントの検討など、ひとところに落ち着くことがない。現在は金融×デジタルの最新情報を追いながら、今度は早すぎないよね?と時代とにらめっこしつつ新しい可能性を探っている。最近は車にはまっている。

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