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挑戦者と語る

“未来のウェルビーイング~ヘルスケア共創ラボより “
API gallery MeetUP ~Vol.28

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最近、よく耳に入るようになってきたキーワードのひとつに「ウェルビーイング」があります。
未来のウェルビーイングを体感し、新しいビジネスを生み出す共創空間「ヘルスケア共創ラボ」室長である矢野さんに、健康で豊かな人生を目指すウェルビーイングとデジタル技術の最新トレンドをお伺いしました。

本記事はNTTデータが運営する「API gallery」プレゼンツで2024年6月25日に開催したウェビナー「API gallery® MeetUP ~Vol.28 ““未来のウェルビーイング~ヘルスケア共創ラボより “」の内容を記事化したものです。
API galleryでは随時ウェビナーを開催中です!過去の企画、および今後の開催予定は以下のリンクをご覧ください!

企業価値にもつながる「ウェルビーイング」

青柳さん 本日のテーマのウェルビーイングについてお話ししたいと思います。
病気でないということだけではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされている状態が重要であるというのがウェルビーイングの定義です。ポジティブな感情や、何かに没頭するであるとか、人との関係性であるとか、生きていく意味、あとは達成という、主観的な幸福感の5領域がありますが、このベースになるのはやはり健康であることです。そういった部分を追求していくとどうなるか、矢野さんのお話から学ばせていただきたいと思っております。

最近、ウェルビーイングは企業価値にかなり結びつけられてきています。企業価値には売上や利益などの財務指標以外に非財務指標があります。
非財務指標として、これまでは安全衛生、人間ドックなどの健康増進、オフィスの環境整備などが評価されていましたが、今は働きやすさ、働きがい、ひいては生きがいが企業価値全体を広げていくということでウェルビーイングに取り組む企業が増えてきています。
本日、矢野さんにヘルスケア共創ラボのお話をしていただきますが、NTTデータがトライアルをしているだけではなくて、実際に企業とのコラボレーションや、企業経営に役立たせるような事例も増えてきていますので、そういったところも是非お聞きしたいと思っています。

健康で豊かな人生を送るためのヘルスケアの重要性

矢野さん 私は主に保険事業に携わっていて、保険業界の未来をコンサルとして描いています。今まで保険業界は病気になったり事故に遭ったりしたとき、金銭で補償することが中心でした。しかし、これから先は事故に遭わない、病気になりにくい世界を作っていくのが重要になってくると考え、NTTデータの中でヘルスケア共創ラボを作りました。新たな未来を創造することで生活者の健康や安心安全で豊かな人生の実現を目指す活動をしています。

技術の観点では生成 AI の急速な進化により、私たちの健康を保つための技術も進化しています。一方で、社会課題として少子高齢化に伴い、労働人口が減少していく中で、どのようにして健康経営を保つかが企業の課題でもあると思います。 健康で豊かな人生を送ることが重要になります。

このような環境変化を踏まえて目指す世界観がヘルスケアエコシステムです。生活者を中心に据え、さまざまな産業や官民が一体となって、生活者をサポートする環境を整えることで、自然で無理のない健康社会が実現されていくと思っています。

ヘルスケアエコシステムを実現するためのヘルスケア共創ラボの活動を紹介します。

まず、レベル1では“フォーサイトをデザイン”します。環境分析をもとに未来を描くだけではなくて、先進技術をうまく活用し、そこに知見を生かしながらどのような未来になるのかを描いていくという活動を行っています。
次にレベル2は、“発信”ということで、お客様や生活者の皆様と会話やセミナー通じて、我々が描いている未来を知っていただきたいと思っています。
レベル3は“体感”です。未来を実際に体感することにより、新たなサービスやビジネスを発想につなげることを重要視しています。
レベル4は“共創”です。ソリューションを体感いただく中で新しいサービスや新しいビジネスを一緒に生み出していくという活動を行っています。これらの取り組みが“フォーサイトアプローチ”という我々が取り組んでいる活動です。

特に注目していただきたいのが、レベル3、レベル4です。
レベル3の体感は非常に重要であり、ヘルスケア共創ラボは単に触れてもらうだけでなく、その中でアイディアに気づいたり考えたりしてもらうことを重視しています。ワークショップなどを通じて、参加者とともに新たなビジネスを一緒に生み出せる場所としての役割を果たします。

ヘルスケア共創ラボの中は、睡眠・運動・食という健康の三大要素についてのソリューションが展示されています。このソリューションについてご紹介します。

Facingウェルビーイング測定は皮膚表面の30秒間における色の変化を見ることで、ヘモグロビンの濃度からストレス値をチェックできる技術です。自分ではそこまで体調が悪くないと思っていても、意外とストレスがたまっていることに気づかせる健康可視化のソリューションです。

ニックネーム生成 AIは、NTT 研究所が開発したtsuzumiという生成 AIを搭載しており、顔の表情や声のトーンや、発話内容をもとにその人の個性や長所を可視化して、ニックネームをつけるというソリューションです。

食の分野ではフードプリンターがあります。3Dプリンターの技術を応用し、デジタルデータに基づき食べ物を作ります。プリンターは食材を粉末状にしたものをもとにしたペーストを用いて3Dの食べ物を実際に作り出すことができます。このような食の新たな体験をしていただくことができます。

ビジネスパートナーやお客様にこれらのソリューションを体感いただくことで、私たちが持っているソリューションと組み合わせるともっと面白いことができるのではというアイディアをいただいたりしていて、そこから実際にビジネスが生まれているケースもあります。

今後の展望として、このラボの活動を通じて新しいビジネスやサービスを作り、それらを世に送り出すことで、生活者の皆様の安心安全で豊かで健康な暮らしの実現を目指したいと思います。

具体的な計画としては、新しい施設として美容、食、リラクゼーションをメインとしたヘルスケアカフェを作りたいと考えています。 睡眠や運動も健康には重要ですが、特に若い方がサービスやアイディアのソリューションに触れることで、意見を出せるような場として美容・リラクゼーションを重視しようと考えています。

例えば、リラクゼーションということで5分~10分めい想することで、カフェから出たときにストレス値が大幅に軽減されて活力が生まれてきたら素敵だなと思います。ビジネスパートナーさんと協働で開発したサービスやソリューションをカフェに実験的に置いて、生活者の方にはそれらを直接的に触ってもいただけるような場を作りたいなと考えています。

技術の進化とともに広がるヘルスケア共創ラボの取り組み

青柳さん 保険会社とコンサルティングファームを経て矢野さんがNTTデータに来て、ヘルスケア共創ラボを作ろうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

矢野さん 保険というのは事故や病気、怪我などに対して金銭で保障するのがメインですが、保険業界で長年携わってきた経験から、これからの未来はそもそも健康で病気にならない身体作りが重要になっていくと感じていました。そこからヘルスケアを非常に重視するようになりました。
なぜ共創ラボという形にしたのかといいますと、NTTデータは業界団体、ビジネスパートナーの力をつないで社会課題の解決をやってきています。ITベンダーにできることは限りがあり、スタートアップや官民も含めた力も借りて共創することで社会課題を解決していけるのではと思い、共創ラボを作ろうと考えました。

青柳さん 既に企業や官公庁の方などは来ているのでしょうか。

矢野さん 一般企業さんはオープンしてから、もう200社ぐらい来られています。学生も含めて一般生活者の方が2000名ぐらい、官公庁に関しては、東京都や経済産業省などにも来ていただいています。

青柳さん 特にヘルスケアの技術の発展は、テクノロジーの側面からどのようなところが大きく影響しているのでしょうか。

矢野さん まずはデバイスによる健康の可視化ができるようになったことです。これまでは、何となくストレスがあるなと思っていても、ストレス値を数字で見ることはなかったと思います。デバイスの進化で、かなり精緻(せいち)なデータでバイタル情報が取れるようになっています。これらのデータに対する分析も進化が著しく、健康の見える化から改善のために何をすればよいのか考えるところまでできるようになったことがポイントだと思います。

青柳さん ウェアラブルデバイスで脈拍数・体温は取れますが、さらに進化が進んでいるのですね。

矢野さん これまで 針を腕に刺して取っていた血糖値も、針を直接体に入れなくても指先で取れるデバイスが出始めているのはかなりの進化だと思います。  

青柳さん 進化の速度がすごいですね。特に日本国内でのヘルスケアに対する注目度が今まで以上に上がってきていますよね。へルスケア共創ラボのソリューションの中で最近注目されていますか。

青柳さん ​生成AIで調べたり、資料を作ってもらったりではなく、こういった形で人間の感情に訴えかけることもできるのですね。

矢野さん 我々のところはヘルスケアやウェルビーイング増進をやっていくラボなので、生成AIを活用して、ウェルビーイングにつながるようなものができないかなと、ポジティブになるニックネームをつけてくださいと依頼しました。ポジティブにその人が一歩踏み出せるような面白いニックネームになるように調整していただいて、ご意見いただいて作っているのが共創の優位点かなというところです。

青柳さん ラボのソリューションを活用して、お客様と共創した具体的な事例などはありますでしょうか。

矢野さん 大きな事例として、アロマの会社さんとFace.ingというストレス値を測るソリューションの掛け合わせを行ったものがあります。アロマの香りでストレスが和らぐのはイメージできますが、それを可視化する取り組みです。個室の中で、アロマスプレーをかけて5分ぐらいアロマの香りと音楽と映像の中に身を置くと、入る前と入った後で、ストレス値がぐんと下がる人が多くいました。アロマの会社さんはこれからお店の中でめい想の体験をプログラムに組み込んでいくことになりました。

青柳さん NTTデータはシステムの会社ですが、ウェルビーイングの取り組みの幅を広げていく場所としては、カフェも含め、今後どう考えられていますか。

矢野さん まずはカフェから始めて、さらにもっと違うところにつなげたいと考えています。カフェは都心部で、若い方やビジネスワーカーの方向けに出しますが、将来はクリニックビルなどに進出して、未病状態の方を少しでも健康に近づけていければと考えています。 また介護施設などでも我々のソリューションは生きてくるのではと思いますので、 そういった分野にも広げていきたいですね。

青柳さん 最後に、ヘルスケア共創ラボとして今後の展望等をお話いただけますか。

矢野さん ヘルスケア共創ラボはNTTデータだけでなく、生活者の皆様やビジネスパートナーの方々と一緒に新しい未来を作るために設立した施設です。カフェなどいろいろなところに展開していきますので、足をお運びいただき、実際に体感して、率直なご意見をいただけると励みになります。よろしくお願いします。

矢野 高史さん
株式会社NTTデータ 第三金融事業本部 保険ITサービス事業部
戦略デザイン室 室長
国内大手生損保、外資系コンサルティングファーム、グローバルクラウドベンダーにてDXを推進後、保険事業コンサル組織の責任者としてNTTデータに入社。保険業界の垣根を越えて、新たな未来を創造し、生活者の健康や、安心安全で豊かな人生の実現を目指します。

青柳 雄一 さん
株式会社NTTデータ 金融戦略本部 金融事業推進部 部長
入社以来、数多くの金融系新規サービス立ち上げに従事。2015年からはオープンイノベーション事業にも携わり、FinTechへの取り組みを通じて、複数の金融機関のデジタル変革活動を推進。NTTデータのデジタル組織立ち上げ、デジタル人材戦略策定/育成施策も実行。現在は当社金融分野の新デジタル戦略、外部連携戦略策定・実行にも従事。2021年10月にリリースした金融APIマーケットプレイス「API gallery」の推進をリード。
API Gallery (https://api-gallery.com/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※本文および図中に登場する商品またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
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執筆 オクトノット編集部

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