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“バンキングアプリ最前線~金融?非金融?進むボーダレス化“ API gallery MeetUP ~Vol.26

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近年、金融機関のバンキングアプリだけでなく、金融機関以外の分野で金融機能を持ったアプリが次々と登場しています。金融と非金融の垣根が薄くなり、キャッシュレス化の流れとともに生活に溶け込んでいく中で、最新の状況はどうなっているのでしょうか。
バンキングアプリ「My Palette」を手掛けるNTTデータの相場さんにお話を伺いました。

アプリの中に金融が組み込まれる「エンベデッドファイナンス」

青柳さん 銀行アプリの現状ということでお話したいと思います。昨年のある調査では、全体の70%の人が銀行の公式アプリを使っていて、使用頻度は週1回以上の人が56%という結果でした。よく利用する機能は明細・残高確認となっています。
さらにアプリを毎日使っているヘビーユーザーの使い方は、明細残高確認に加えて、公共料金の支払い、投資関連サービス、スマホATMや家計簿アプリなどが多いということです。

アプリがここまで変化してきた背景には、金融機能を部品化しサービスに組み込むエンベデッドファイナンスというキーワードがあります。エンベデッドファイナンスによってユーザー体験が変化しています。今までは銀行が窓口や通帳、カードやATM、インターネットバンキングなどを用意して提供していたのに対し、金融機能がアプリに埋め込まれて提供されるのがエンベデッドファイナンスの考え方です。

銀行の提供する従来のバンキングアプリと、金融機能が組み込まれた他のアプリの間の境界線が薄くなってきています。例えばポイントを貯める、分割払いするなど以前はオフラインだった金融機能がスマホで完結し、ユーザーの行動動線が変わってきました。 コロナ禍の行動変容についてのアンケートで、銀行アプリで口座の残高を確認するようになったという人が27%から38%に伸びています。 バンキングアプリがコロナ禍で飛躍的に使われるようになったことがわかります。
エンベデッドファイナンスが進んでいくと社会がどう変わっていくか、いざというときにしっかり話せる相談相手として銀行の金融は残る一方、生活サービスに溶け込んだ金融がどんどん広がってアプリの中に金融が組み込まれていくでしょう。
金融がさまざまなサービスに組み込まれるのに伴って、データ活用の高度化が幅広く進んでいくのではないかと予想されます。
例えば銀行だけではなく地域の自治体、住民や加盟店が使うようなプラットフォーム化していき、広告にもつながっていくというところがポイントになります。
ではこういったデータ活用の高度化はなぜ必要なのでしょうか。
ここで人口増加局面、人口減少局面という考え方が関連してきます。
人口増加局面は高度経済成長期の需要が供給に合わせる経済です。例えばバス停でバスを待っている場合、乗れなかったら次のバスを待つ。便が足りなければ増発すればいい、これが今までの経済成長期だったわけです。
人口減少局面ではそうはいかず、運転手がいないとバスが出せない、そうすると乗客の都合に合わせるわけです。バス停に乗客が多いときに合わせて、ルートを組み替えて運行する。
そのためには、いつどこにどういう乗客がいるかデータがあればそれに合わせて運行状況を変えられるので、非常にデータ活用が必要だということになります。
人口増加期では、インフラを競争して作るわけですが、人口減少期においては、民間がともに助け合ってデータ連携の基盤や決済インフラを作ることが増えていくので、無駄にインフラを作らない時代になっていきます。みんなで知恵を出し合ってどう作っていくかが非常に重要だと思っています。バンキングアプリも共助のインフラの一部になるのではないでしょうか。
今まで産業ごとに縦割りだったのが混じり合ってくると、ビジネスが重なってくる。その際のところに金融機能を埋め込んでいくことで、より社会が滑らかに回っていき、データが活用できるという話になるわけです。 こういった共助のインフラをどう作っていくかという観点で、バンキングアプリがどう役割を果たすのか少し議論できればと思います。

バンキングアプリからひとつのメディアへ進化をめざすMy Palette

相葉さん 今日はMy Paletteサービスのご紹介をいたします。
2015年にサービス開始したMy Paletteは、当初は残高・入出金明細照会だけのアプリでしたが、現在はインターネットバンキング、振込や定期預金、投資信託だけではなくスマホATMの機能も搭載し、基本的に全てのバンキングサービスが利用可能となっています。デジタルでお取引を完結することで営業店の負担やコスト削減をすること、来店予約をアプリから行うなど、顧客接点を深めることによって売上高の向上を目指すことを目標と考えています。

2024年4月現在、周辺金融サービスとの連携機能の拡充や、他サービスとシームレスに繋げる点を課題としてサービスを刷新してきました。画面は2種類あり、トップページなどの銀行の独自色を出したいところは自由に作成できます。残高照会や振込の部分、入出金明細照会については、我々の方で基本の画面を提供しています。
My Paletteを導入しているのは約30の金融機関で、アクティブユーザーはMy PaletteとインターネットバンキングAnserParaSOLと合計YAU(Year Active Users)数で1100万ユーザーとなり、国内人口の約10%をカバーする個人向けのバンキングアプリを提供するプラットフォームとして地位を確立しつつあるのではと考えています。
My Paletteが今後目指す姿として顧客体験の追求、サービスの組み合わせ、マーケティング機能の三つの大きな柱があります。
顧客体験の追求ですが、UX 強化のためにお客様の声やストアの評価から情報を汲み上げ3ヶ月ごとに10~20件ぐらいの機能改善を行っています。
サービスの組み合わせについては、2024年以降をめどに、保険とデビットカード・クレジットカードの連携を予定しています。複数保険会社のコンテンツにアクセスして、 保険契約情報を調べることができる「保険ポータル」とカード会社のID 連携によりマイページに飛べるサービスを提供予定です。これを保険の申し込みやカードの申し込み等に広げて金融機関の収益向上に繋げることを目指しています。
マーケティングの取り組みとしては、金融機関の広告効果を向上させるために流入元を計測するツールを組み込んでいます。どこから飛んできてどの取引をされたか、口座開設を最後までやったかどうか、それはどの広告かなどを調べることができます。
今後の中長期的な戦略として、非バンキング領域を拡大し、保険連携であればヘルスケア、住宅ローン関係は住宅情報、年金など最初から最後まで金融機関がユーザーの生活に関われるようにしていきたいと考えています。
そのために必要な機能としてミニアプリ構想があります。 My Paletteは共同利用型で様々な金融機関が同じシステムを使っています。ニーズや社会の変化の流れに対応できるよう既存の Web サービスや新しいサービスをミニアプリ化して、ホストアプリとは別の環境で機能提供できる基盤を構築したいと考えています。
弊社や他のベンダーや金融機関が独自のサービスをリリースすることができ、ミニアプリ基盤に参加している他の金融機関もサービスを使えるようにすることで提供者を増やし、早く開発できるようになっていくと思っています。さらにサービスの提供者間で契約を結ぶことで少しでもマネタイズに繋がっていくと考えられます。

最終的な目標は国内人口の約10%をカバーしているMy Palette自体を一つのメディアと捉えて、金融機関向けのサービスだけではない新しい広告媒体としてMy Paletteに広告を取り扱うメディアを設けて企業広告の誘致を進めていきたいと考えています。
My Palette は地方銀行を中心に提供しているものですので、全国のブランドから広告を打つことにより全国と地方の広告を両方共存できるサービスとして少しでも価値拡大に繋げていけるよう取り組んでいるところです。

総合プラットフォームとして進化を続ける金融アプリ

青柳さん My Paletteの進化がすごいですね。1100万人の利用者がいるプラットフォームを広告メディア化していく。その中でも地域性があるわけで、プラットフォームで出す広告は地域の特性に合わせるのでしょうか。
相場さん プラットフォーム上では全国的な広告を出していきたいと考えています。全体的なところを支援させていただいて、そのうえでさらに、それぞれ地域ごとの広告を出していただくということを考えております。
青柳さん メガバンクが最近では広告代理店とジョイントベンチャーを設立してデータプラットフォームをやっています。そういう話と似ているのでしょうか。
相場さん 基本的には同様の考え方です。ビジネスをサポートしていただけるようなところと一緒に連携してやっていきたいと考えています。
青柳さん 地域金融機関はプラットフォームで力を合わせてやっていく方向性になりつつあるということですね。

青柳さん バンキング以外にも保険とか決済といった連携が進んでいるみたいですが、保険連携はどんな感じになるでしょうか。
相場さん 保険連携については、保険ポータルというサービスがあります。 これは各種生命保険、損害保険のデータを表示させるものでそれとMy Palette のID を連携して機能を提供し、最終的に保険販売に繋げていくことを想定しているサービスです。
青柳さん 保険といっても、生命保険や損害保険など様々な種類があります。このバンキングアプリの保険ポータルは、どういう保険種別を想定したサービスでしょうか。
相場さん 資産形成の役割を持つ保険を想定しています。保険を資産として捉えている、投資信託をしているようなヘビーユーザーの方々が同アプリ上で投資情報や資産情報を見ながら、保険も買えるようにしていきたいと考えています。
青柳さん 中小企業経営者などが総合的な資産運用をする中で保険を活用するケースも結構多いと聞きます。そういう方が同じバンキングアプリで資産を見られるようになっていくのですね。My Paletteはカード会社との連携もありますが、具体的にどういうことができるのでしょうか。
相場さん カードの利用明細照会が行えるので、いつどれだけ使ったかをバンキングアプリから見ることができます。分割やリボなど支払い方法の変更も ID 連携によりマイページで行えるようにしています。
青柳さん 今までバンキングアプリとクレジットカード会社のアプリで別々に行っていたことがひとつのアプリで行えるのは便利ですね。
相場さん カード会社の方によると、マイページのパスワードや ID を覚えていないというお客様の声が多くあるそうです。バンキングアプリの ID パスワードで連携できると楽になるということからスタートしたものです。
青柳さん 今後のトピックとして金融ジェロントロジー(金融老年学)という言葉があります。高齢者の消費、資産管理・運用などの経済活動を支援することを目指す学問ですが、転じて高齢者の経済活動を支援する金融サービスを意味します。バンキングアプリとヘルスケア、金融ジェロントロジーについての事例はありますか。
相場さん ヘルスケアはまだ始まったばかりの領域ですが、高齢者の健康状態を連携できるようなサービスやさらに相続関係に繋げていけるような機能を提供しようと検討中です。
青柳さん 金融アプリから保険へ、さらに保険情報から今度はヘルスケアの方へと発展していく流れですね。 保険は顧客接点がバンキングに比べて少なく、事故など保険を使う場面にならないと接点がないですよね。保険のアプリで銀行の残高が見られると、保険アプリを使う頻度が上がりますね。
相場さん 保険連携のもう一つの狙いとして、保険会社のマイページにアクセスを増やしたいという要望もあったので、それに対する回答としてサービスを提供しています。
青柳さん 最近は保険会社も銀行代理業として、銀行サービスを提供することが増えていますよね。今日は金融と非金融の垣根がなくなるというテーマでしたが、銀行と証券、保険など業種の間でも垣根が低くなっています。
相場さん お互いに相乗効果を生めるように進めていくことが最近の課題だと思います。

青柳さん 相場さんは今後バンキングアプリのトレンドは、どういう方向に進むと考えていますか。
相場さん まずはバンキングサービス以外の金融サービスとの連携からはじめて、その後最終的に非金融業界との連携へと進んでいくと考えています。
金融機関と話をするとサービスを少しでも伸ばしたいという要望があると感じます。お客様の価値拡大に努めるようにするには、改善を積み上げていって、ミニアプリ基盤などのイノベーションをシェアしていく仕組みを組み合わせ、最後は地域経済の活性化に繋げていく進め方をしていきたいと考えています。
青柳さん あっという間でしたけれども最後に一言だけ、今後の意気込みをいただければと思います。いかがでしょうか。
相場さん 我々の使命として価値拡大に繋がるように様々なものを取り込んで、もっとより良いサービスにしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
青柳さん ぜひまたAPI Galleryにも来ていただいて、アプリの最前線についてお話をお伺いできればなと思います。本日はありがとうございました。
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執筆 オクトノット編集部

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