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VUCAとデザイン‐大切なのは「社会問題と理想の未来」の設定

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我々は、あらゆる環境が急激に変化し続け、未来の予測が困難な時代を生き、ビジネスをしています。VUCAと呼ばれる、このような状況はつい最近始まったことではありません。
日本においては90年代の半ばあたりから顕著になり、すでに30年近く経とうとしています。

日本はVUCAへの適応が未だに追いつかず、何も生み出せなくなり、経済力も低下しているという状況です。これを「失われた〇〇年」などと揶揄しながらも、なかなか変わることができずにいるという話もよく耳にします。

VUCAに適応するためには

VUCAとはどのような状態なのか、語源を元におさらいしてみたいと思います。

1.    Volatility:変動性
2.    Uncertainty:不確実性
3.    Complexity:複雑性
4.    Ambiguity:曖昧性

要するに、明確な答えなどなく、何の確証も得られないような状況です。

では、こういった状況に適応するにはどうしたら良いでしょうか?唯一の解決策などありませんが、有効な方法が2つあります。
それは、「未来を自分たちで作ってしまうこと」「とりあえず試してみること」です。

他の誰かが生み出していく未来を予測することが困難なのであれば、自分たちで先回りして未来を計画してしまうのです。それを実現するためにビジネスをすれば、予測は出来なくても計画ができるというわけです。
いわゆる「バックキャスティング」という考え方です。

そして、答えがないのであれば、とりあえず試して有効かどうかを確認し続けることも有効です。
我々はどうしても事前に大丈夫なのかを確認し、1回で成功させようとしてしまいます。
もっと言えば、絶対失敗しないように、絶対に損しないように、絶対に混乱させないように頑張ってしまいます。
マネジメント思考ですべてを管理しようとする姿勢も大切ですが、これではVUCAに向き合うことはできません。
これは、検証可能な仮説のもと、試し続けるという「プロトタイピング」の考え方です。

こうした2つの方法は、実は近代デザインの基本姿勢でもあります。

デザインによる、社会問題と理想の未来の設定

前回、デザインは「設計」ではなく「創造計画」であると書きました。創造とは未だ存在していないモノゴトを生み出す行為です。
未来においてそれを存在させるために計画をする、これがデザインの工程です。

さらに、創造の対象は社会にとって必要とされるモノゴトでなければなりません。
どこかの誰かが、自分たちだけの都合で創造するモノゴトは、誰にも必要とされず、需要がないものはビジネスとして成立しません。まず、未来において、いかに多くの人に必要とされるものを創造するのか、を見つけ出さなくてはなりません。

必要という言葉のとおり「必ず要る」という需要に対応します。この「必ず要る」という状況は、困りごとに直面したときに発生します。
つまり、必要とは「困りごとの解決」に他なりません。
単に便利である、お得である、新しい、というだけでは必要には至らず、不要という存在になります。
不要なものをビジネスとして成立させるのは、かなりの力技が要ります。

ビジネスデザインで「ゼロイチ」「イノベーション」を実現するためには、こういった不毛な力技に頼らないために、最初に「問題」を見つけ出すことから始めます(ここで「問題と課題」という話が発生しますが、それはまた次回考えてみたいと思います)。
ここで見つけ出す「問題」は、まだ見ぬ未来を計画するためのものですので、「社会問題」というところまで、いったん掘り下げます。

「社会問題」を見つけたら、次はいよいよ「未来」です。
「未来」は単に将来ということではなく、より豊かな人間社会となっていることを前提としていますので、「理想の未来」として設定します。
ただし、売上や利益が向上している、というような提供者の理想ではありません。
あくまでも「社会とそこで暮らす人々」にとって理想とされる未来です。

「社会問題」を解決し、「理想の未来」を実現するためには、「解決策」が必要ですが、これが「ビジネス」です。
AsIsとToBeを設定し、解決するためのソリューションを提供する、と言い変えると理解しやすいかもしれません。

VUCAの時代においては、目の前の課題に対処しても、あっという間に状況が変わってしまい、需要も供給も予定通りには進みません。徒労に終わることがほとんどでしょう。
だからこそ、目に見えない社会問題を見つけ出し、理想の未来を設定し、バックキャスティングとプロトタイピングの姿勢でビジネスを提供することが有効なのです。

ユーザーに聞いても未来のことはわからない

VUCAの時代になる前は、市場に適応することでビジネスや経済は上手く回りました。
市場調査を行い、ユーザーの需要を確認し、既存のチャネルを駆使すれば一定の予測と答えは得られました。
しかし、市場調査でユーザーに問いかけても、ユーザーは「いまの市場に即した」「いま現在」のことしか答えてくれません。

まだ見ぬ理想の未来を設定するためには、ユーザーの回答をそのまま捉えるのではなく、我々が仮説として設定した「社会問題」「理想の未来」の辻褄が成り立つか検証するための素材として捉えます。
そこから、ギャップや新たな発想が見えてくる、というのがデザインのアプローチです。

現在の顧客の要望をそのまま反映させたのに、サービスがなかなか利用されない、もしくは、いつまでたっても顧客の要望が増え続ける、という現象を目のあたりにされた方は少なくないと思いますが、まさにこの状態が「ユーザーに答えを聞く」ことの限界です。

デザインのアプローチで「問題」「未来」「解決策」を仮説設定し、その仮説を検証するために「ユーザーに確認する」ということをすれば、新たな需要と供給を生み出します。こうなってしまえば、現在の要望に捕らわれることなく、対症療法のイタチごっこから抜け出し、先に進むことができるのです。

失われた○○年、という新しいモノゴトを生み出すことに苦心している日本に、デザインのアプローチが有効な理由が、こういった点からも見てとることができるのではないでしょうか。

高校~大学でデザイン、教育、美術学を専攻。卒業後は、大手印刷会社、広告代理店、制作会社の起業、コンテンツプロバイダーでのインキュベーションマネジャー、SIerでのデザイン事業と部門の立ち上げなどを行い、2020年よりNTTデータ金融事業推進部に所属。
日本のビジネスにおいて機能するビジネスデザインをモットーに、単に手法として海外のデザインフレームワークを輸入/伝達するのではなく、日本人が理解できる表現に置き換えて導入するスタイルを実践している。
立命館大学映像学部にて情報デザインの年度講師、著書『創造力とデザインの心得』を執筆するなど、デザイン啓発活動も積極的に行っている。

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