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「見えない知見」で新たな価値を創造する ~株式会社ビザスク~

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オープンイノベーションという言葉もすっかり世の中に定着しましたが、消費者の価値観・行動様式の多様化が進む中、単独企業が持つリソースのみで革新を生み出すことはますます難しくなっています。近年では、保守的と言われる金融業界でも、他業種と新たな価値を生み出そうとする動きが加速しています。他方で、リモートワークの普及や副業解禁など、私たちを取り巻く雇用環境もここ数年で大きく変化しています。このようなトレンドの中で、効果的に外部の知識やスキルを取り込んで新たな価値の創出に結び付けていくにはどうすればよいのか。今回は、知見と挑戦をつなぐプラットフォームを通じて世界のイノベーションを支援する株式会社ビザスク 執行役員の井無田ゆりかさんに、ハッカソンなどを通じて新しい価値の創造に挑戦しているNTTデータの岡田哲明さんがお話を伺いました。

価値創造を取り巻く環境変化

多くの人が持つ「見えない知見」

── ビザスクさんでは、さまざまな業界のプロに1時間から相談ができる『スポットコンサル』をはじめ、ナレッジを持つ人と、それを求める人をつなぐサービスを展開しています。こういった事業が生まれた背景は何だったのでしょうか。

井無田さん 事業の原点は創業者である端羽の体験にあります。端羽はもともと金融機関に勤めていたのですが、キャリアとMBA留学などの経験を経る中、起業に挑戦しました。

当初EC事業を立ち上げようと考えて経験者の方からアドバイスをもらった1時間で、ビジネス経験にもとづく個人の知見の価値に気付いたそうです。経験のある有識者に対価を払って相談できる仕組みがあれば、世の中に知見の価値を届けられる。これがビザスク立ち上げのきっかけとなりました。

── 『知見と、挑戦をつなぐ』というミッションもそこから来ているのでしょうか。

井無田さん そうですね。私たちは、個人の働き方の多様性と同時に、スタートアップや新規事業など新しい挑戦をしたい方が求めている知見とつなぐ機会を提供し、その成功確度を上げることに貢献したいという想いも強く持っています。

ビジネス経験のある方は、どなたにも暗黙知となっている知見があります。ただ、会社にいると自分よりも経験のある方がたくさんいるので、その知見が特別なものだと気づかないんです。

その一方で、新しいことを始めようとする方は、いつも情報に困っています。その双方をつなげることができれば、新しい挑戦の成功確率も上がるはずです。

そのために、たくさんの知見がデータベースとして溜まったナレッジプラットフォームを作ることがビザスクの大きなミッションです。日本だけでなくグローバルなプラットフォームとして世界中の知見をつなぎ、イノベーションを支える。それが私たちの目指している世界です。

挑戦する機会・知見提供する機会の拡大

── ビザスクさんのサービスがローンチされたのは2013年ですが、当時と比べると世の中のトレンドも変わってきたのではないでしょうか。

井無田さん 企業も個人も、変化していると思います。企業側では、「新規事業に挑戦するときには積極的に社外の方に相談したほうが、成功確度が上がる」という認識が広がってきています。個人側では、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにリモートワークが普及し、空いた時間を使って活動する環境が整ってきました。

また、政府主導で働き方改革が進められ、副業推奨など、キャリアの多様性に関する考え方が世の中に広まってきたことも大きいと思います。

創業当時「副業」は多くの企業で推奨されていませんでしたが、スポットコンサルは、基本「1時間」で無理なく知見をシェアしてもらう仕組みですので、私たちはいまでも「副業」という言葉をあまり使いません。もちろん、依頼者の方が、アドバイザーの方に、もっとコミットして取り組んでもらいたいという時もありますので、そういったニーズに対しては『ビザスクpartner』というサービスを通して、実際のプロジェクトに参画いただけるような機会を提供するなど、社会の変化に合わせて、サービスの幅も広げています。

岡田さん 私も、世の中が変わってきているという空気は感じます。IT業界でも人財の流動性は高まってきており、大企業からフリーランスやベンチャーに挑戦する方も増えています。NTTデータでも、副業への理解が以前より進んできていると思います。

社内で新しい領域への挑戦できる場も増えていますよね。私自身も、実は社内のグローバルハッカソンに挑戦した経験があります。日本では高齢化の進展により健康寿命を延ばすことが社会課題になっていますが、外出ができなくなってしまうと活動レベル下がって、身体的・認知機能的にも衰えが進んでしまうと言われています。そこを何とかしたいと思い、シニア向けの生涯学習プラットフォームを作ったんです。

井無田さん その挑戦はうまくいきましたか。

岡田さん 事業化には至りませんでしたが、グローバルコンテストで第3位の評価をいただくことができました。私は学生時代にジェロントロジー(老年学)の勉強をしていたのですが、そのような土台があったことは大きかったですね。

新しいことをする上で、背景知識は重要だと感じました。過去には新規事業企画を担当していた時期があったのですが、調べて分からないことをどう解消していくかは常に課題でした。仮説検証で進めるのか、知見のある方に聞くのかはビジネスをやる上でのスピード感にも影響しますから。

── 世の中のトレンドとして、挑戦する機会も、知見を提供する機会も広がってきていると言えますね。いまはどのような知見に対するニーズが高いのでしょうか。

井無田さん 「デジタル」のニーズは高いですね。例えば、金融業界は業法が整備されていて、新しい取組みがしづらい面もあり、比較的差別化が難しい業界ですが、新しい価値を生むためにデジタルをうまく使うというところに、多くの企業の意識が向いている印象を受けています。例えば、「営業」というキーワードなら、デジタルを駆使した営業手法とか、顧客とのタッチポイントのデジタル化などです。
      
もう1つは人事領域です。採用の視点も以前とは変わってきています。金融機関にもデジタルに強い人財が必要です。デジタル人財をどう採用するのか、どう評価すれば活躍し続けてもらえるのか、その制度設計のために話を聞きたいというニーズも増えています。

多様な働き方が本業への意欲を高める

── 人事は働き方にも直結するテーマですね。ビザスクさんでは働き方の多様性も大切にされているとのことでした。

井無田さん 企業に所属しながら、知識・スキルを別の場所で発揮できるような仕組みは、本人の働くモチベーションにもつながると考えています。会社の中だけでは、自身の知識・スキルの価値はなかなか自覚しにくいものですが、アドバイザーとして、社外の方へ知見を提供することで、自分がどのくらい知識やスキルを習得しているのかを知ることができます。

アドバイザーの方に登録した際のモチベーションを伺うと「知見を活かして貢献がしたい」という回答が圧倒的です。さらに面白いのは、アドバイザーとして実際に相談を受けた後には「収入を得たい」というモチベーションが減り、一方で「スキルアップしたい」という回答が増えていることです。

井無田さん 悩みを抱えている方の相談に乗ると、自分の価値に気付き、自信につながります。一方で、自身のウィークポイントにも気付くことができるんです。それが、本業をもっと頑張ってスキルアップしようという気持ちにつながってくるのだと思います。

人事部の方からは、新しい働き方を許容すると転職してしまうのではないかという不安もよく聞くのですが、実は本業に対してもっとやる気を高めるきっかけになっていることが、当社が実施した別の調査(※)で明らかになっています。

(※)ビザスク『知見をシェアする活動が働き方への意識に与える影響調査』
https://visasq.co.jp/archives/7702

岡田さん 私にも、技術者として自分の知識・スキルが生きているということをリアルに感じたいという思いがあります。アドバイスを通じて自分の知識・スキルの価値を知ることができるというのは、自信や喜びにつながると思います。

世の中の企業にはこのアンケート結果をしっかりと受け止めて欲しいですね。先日リクルートワークス研究所が公表した『Works Index 2020』(※)で日本企業の働き方に関するスコアリングを見ると、リモートワークの普及によって向上したスコアが目立つ中、学習に関するスコアが下がっていることが分かります。

研修の中止などで他者から学ぶ機会が減ったことが一因かもしれませんが、一方でスキルアップに割ける時間は以前より増えているという方も多いはず。何か起爆剤がいるというのが世の中の状況だと考えています。アドバイザーのような形で新しい働き方に挑戦することで、スキルアップのモチベーションが生まれる。企業も攻めの考え方でこの結果を受け止めると良いのではないでしょうか。

(※)リクルートワークス研究所『Works Index 2020』
https://www.works-i.com/research/works-report/2021/works_index_2020.html


知見がつくり出す新しい価値

知見は「生きた」データベース

── 知見を溜めたプラットフォームは、具体的にどのような場面で活用されているのでしょうか。

井無田さん 金融機関では新規事業領域での活用が多いですね。例えば、保険会社のお客様に新規事業のニーズ探索や仮説構築の場面でスポットコンサルやエキスパートサーベイを使っていただいた実績があります。

従来のやり方だと、事業のアイディアに対し、全国の販売店を通してお客様から個別に意見収集しなければならず、時間もかかりますし、相手も忖度して、必ずしも本音が聞き出せないという課題感をお持ちでした。業界有識者へのスポットコンサルやビザスクのエキスパートサーベイ(数十名からアンケート形式で意見を収集)を活用することで、効率よく質の高い情報が手に入るため、「新規事業担当者としては本当に助かっています。」というお声をいただいています。

もう1つの事例としては、海外サービスのビジネスモデル研究です。規制緩和も進む中で、海外の先進的な事例をベンチマークにする金融機関は増えています。ビザスクでは「初めから世界を見よう」というバリューを掲げています。海外のアドバイザーも約3万人登録があり、海を超えて知見をつなぎ、このようなニーズの変化にも対応しています。

── プラットフォームを作ったからこそ見えてきた、新しい価値はありますか。

井無田さん ビザスクのプラットフォームの特徴は、アドバイザーご自身が登録された経歴情報や知見情報だけでなく、様々な案件を通じて、ご本人も認識していなかった「暗黙知的な知見情報」が引き出され、個人の“生きた知見のデータベース”として蓄積されているところです。これらの情報があれば、個人のスキルや経験の質が求められる領域においても、履歴書だけでは捉えきれない知見情報を活用し、精度の高いマッチングができます。

正に、付加価値を増幅できるナレッジデータベースに育ってきていると言えますね。こうした個人の”生きた知見のデータベース”を生かして、スポットコンサル以外にも、サーベイ、業務委託、社外役員の紹介など、マッチングするサービスの展開を進めています。

── キャリア支援にも活用できそうですね。
 
井無田さん そうですね。世の中にない情報を作るということかとも思っています。例えば、転職経験のない方は、職務経歴書を書いたことがなく、世の中にその方のスキル情報は存在しません。それを、ビザスクでは会社を辞めることなく、新しい知見データとして生み出していくことができるわけです。

岡田さん エンジニア視点で見ると、転職時に自分のスキル情報を使えると良いなと思いますね。ITスキルはトレンドの変遷が速いため、応募先の会社に評価の仕組みが存在しないということがあります。蓄積された情報からリアルな実績を示すことで、そういったところを埋められると良いですよね。

井無田さん そうですね。企業観点ですと、既存の社員に対しても、例えばスポットコンサルを通して評価されている社員の知識やスキルを、人事評価や人財配置の加点材料として活用することができるとよいのではないかと思います。

金融業界における知見の活用

── 金融業界でもオープンなビジネスの共創を目指す動きが活発化しています。金融業界でも知見の活用は進んでいるのでしょうか。

井無田さん 新生銀行様が行員のビザスクへの登録を副業の第一歩として公認するなど、変化も表れています。とはいえ、金融業界全体では、アドバイザー登録数は他業界と比べるとまだまだ多くはありません。でも本当は、金融業界の方も、たくさんの貴重な知見をお持ちです。

例えば銀行の支店に勤務経験のある方は、その地域の企業を幅広く見ていらっしゃるので、さまざまな業界に触れる機会があります。そういった、地域全体もしくは業界横断的にお話しできる方にご相談したいというニーズは多いんです。

ビザスクを活用いただいている企業様ですと特に保険業界は新規事業に積極的な印象があります。一方で、自分たちのこれまでのやり方や、上司の考え方を変えることに苦戦されている金融機関もまだまだ多いように感じます。もしかすると、新しいことに挑戦したり、今までなかった仕組みを取り入れたりすることは、トップが意識的に発信しないと難しい面もあるのかもしれません。

岡田さん 金融機関も共創やDXに本腰を入れ始めていますが、その活動が一筋縄ではいかないのは井無田さんのおっしゃる通りですね。トップ主導であることの他にも、組織横断で変革を推進できているか、経営者自身が意思決定にあたっての考え方をアップデートできているか、といった要素が挑戦を成功に導く鍵になっていると感じています。そういった変革への一歩をまだ踏み出せていない金融機関をサポートしていくことは、私たちのようなITパートナーの課題でもあります。

金融機関でもクラウド利用が広がってきたり、アジャイルでのサービス開発が一般的になってきたりと、道具は揃っています。また、金融機関が変わっていくことが社会的にも求められるようになっており、世の中のムードとしても環境が整っています。最後の一歩を踏み出すには、経営者の覚悟も大切ですし、それを後押しする材料が、先行事例や経験者の知見ということもあるかもしれませんね。

井無田さん ビザスクが今年実施したアンケートでは、金融に関わらず、新型コロナウイルスの影響で新規事業に対する意思決定が遅くなったと答える企業が増えています。先が見通しにくい時代の中で成功確率を上げるためには、いかに質のいい材料を集められるかが大事です。

そういった新しい挑戦をする際、意思決定者を同席させてスポットコンサルを活用するケースも増えています。部下から伝え聞くよりも、有識者の言葉を直接聞いてもらうことで、挑戦のムードを醸成しやすくなる効果があるようです。

── 熱量が権限者に伝わらない。そこを突破することは、新しい挑戦を前に進める上で大事なポイントですね。

無田さん 以前は、金融機関ではオンライン形式での面談は難しいという慣習が強かったですが、今ではそこも変化してきたと感じます。そのお陰で、多忙な方を巻き込んだオンライン面談の設定もしやすくなり、物理的な環境も整いつつあります。特に、新規事業においては、事業アイディアを前に進めることもそうですが、やらない決断をすることも大事です。上位者をうまく巻き込み、それら判断をスピーディに行うという面でも効果があると思います。

知見と、挑戦をつなぎ、新しい価値を創造する

── 最後に、お二人が今後挑戦したいことを教えてください。

岡田さん 私は「価値創造の活動の仕組み化」に取り組んでいきたいです。金融業界が変わろうとしている中で、変革のパートナーとなることが当社のようなIT企業にも期待されていることです。これには、積極的に前に進んでいく方々への伴走と、一歩踏み出せていない方々への伴走という両面があります。

挑戦に終わりはないので、金融業界の方々と私たちのパートナーシップにも終わりはありません。常に高いところを目指していかないといけない。先進的な活動は高スキル人財に支えられている面も大きいですが、裾野が広がってスケールしたときにも一緒に挑戦し続けられる仕組みを作ることが大切です。また、変革に踏み出せない方々に対しても、先行事例のノウハウをうまく活用することなども含めて、しっかりと支援する仕組みを作っていきたいです。

新しい挑戦をするときにIT企業が1社いればOKということはなくて、知見は常に課題になります。井無田さんのお話にもあった、色々な方が持っている暗黙知を引き出して使えるようにするということが1つのカギになるかもしれませんね。

── 井無田さんはいかがでしょうか。

井無田さん 私もたくさんあります(笑)。弊社のプラットフォームには、アドバイザー個々人に紐づく素晴らしい知見がどんどん蓄積されています。中々、気づきにくいご自身の知見の価値を、我々を通して引き出していただき、ご自身のキャリア形成に役立ててもらえたら嬉しいですね。

また、アドバイスを通して、イノベーションの創出に貢献できるという意味では、社会的意義のある経験とも感じています。これまで積みあげてきたこと、自分のキャリアって素晴らしいなと思ってもらえる、そんな機会を私たちが生み出していきたいですね。

そして、金融機関のお客様に対しては、特定の地域や領域に留まらずに、外に目を向ける機会を作っていくことです。世界中の情報を集めてつなぎ、それを組み合わせて、もっといいものを生み出していく。そんな“つなぐ”世界の実現を私たちがお手伝いできたらいいなと思っています。


<プロフィール>

井無田 ゆりか さん
株式会社ビザスク 執行役員
2003年に慶応義塾大学法学部卒業後、JPモルガン証券株式会社に入社。アジア初、新卒で内部監査部に配属。2006年に本社であるニューヨークへ転勤し、2年勤務。帰国後、2013年に第1子を妊娠、出産。その後、夫の仕事の関係で自身は退職し、再びアメリカへ移住。2年後、帰国し株式会社ビザスクに事業部長として入社。

(株式会社ビザスク)
日本最大級のナレッジプラットフォーム「ビザスク」を運営。国内外14万人超の知見データベースを活用し、新規事業開発における業界研究やニーズ調査、人材育成、グローバル進出等、様々な課題の解決に、個人の知見をピンポイントにマッチングしている。大手法人の利用は800アカウントを超えるまでに成長している。2020年3月10日、東証マザーズ上場。
https://visasq.co.jp/

岡田 哲明 さん
株式会社NTTデータ 第四金融事業本部 金融GITS事業部
2014年にNTTデータへ入社後、AIを始めとするデータ活用技術の研究開発に従事。その後、金融機関のDX推進に向けたコンサルティングを担当。2017年に日本代表としてグローバルハッカソンへ出場し、3位入賞。先進技術を活用した新規事業企画の担当を経て、現在は金融機関のデジタル案件にて新規ビジネスの実現に向けて邁進中。

※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。

新卒で都市銀行に入行し、個人向けコンサルティング業務に従事したのち、ネット専業銀行に転職。送金などの決済ビジネスを中心に、他企業とのアライアンス拡大や、新規サービス企画、プロモーションなどを幅広く経験。その後、消費者の変化や規制緩和といった環境変化を体感するなかで、業界を超えたオープンな金融の仕組み作りに関心を抱き、NTTデータへ。現在は、金融業界のさらなるTransformationへ貢献すべく、「金融を通じて世の中をより良くする」を志に、金融×デジタルを切り口とした技術・ビジネス動向の研究や、社内外への情報発信などに取り組んでいる。

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