Switching 金融機関の乗り換えサービス
最寄りの駅前にあるからという理由で使っていた銀行が、新しい引っ越し先にはなくて、別の銀行に口座を作って、電気料金の支払元口座を変更しなければなりませんでした。これって結構面倒ですよね・・・。
もともとは、利用者が既存の大銀行から新しい銀行へと取引を移しやすくすることを目的としていましたが、別の銀行に口座を移動するときは、指定されたガス・電気・水道などの毎月の決まった支払いも含めて別の銀行に移さなければならない、というおまけがついたことによって、利用者にとっては引っ越しなどのやむを得ない変更でも、泣かずに楽にできるようになった、というわけです。
つまり、国際的には標準のサービス提供形態がもう定まっているのですね。余談になりますが、このようにイギリスは自国の金融分野の改革を海外に展開するのがうまい。さすが歴史ある大国は試合巧者ですネ。
・給与を払う側(雇用主ですね)は、Plaid経由で、給与をダイレクトに口座に振り込めるようにしておきます。
・給与をもらう人は、アプリなどを通じて、給与の受け取りリクエストを送ります。
・Plaidは銀行コード、口座番号を特定して雇用主からお金をいったん受け取り、もらう人が指定した口座に振り込みます。
・ユーザはそれを確認して承認します。それだけで終わり。
日本では、2021年中にも給与の振込先が現金と銀行口座以外にも解禁される見通しです。まさに日本でも、便利な給与口座変更の仕組みが必要とされるタイミング。おそらく多くの会社の給与関係担当者達が、自社の社員が、給与を××Payに振り込んでほしい、と言ってきたらどうしよう!?と悩んでいるのではないでしょうか。そこに自社のシステムには手は入れず、PlaidのAPI(※1)を使ってもらえばできますよ!もう申請書を一生懸命管理する必要はありませんよ、と言われると、じゃ使ってみようか!?となるのではないかと、私は想像していますが、はてさてどうでしょう?
(※1)API:アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略で、あるアプリケーションの機能や管理するデータ等を他のアプリケーションから呼び出して利用するための接続仕様・仕組みを指します。
【出典】一般社団法人全国銀行協会
子供向けの金融サービス 儲からない顧客?
アメリカでは口座を自分で作ることができる16歳以下をターゲットとした、STEPというネオバンクがありますが、この宣伝方法がイマどきっぽい。アメリカのTikTokの人気インフルエンサーに使ってもらい、宣伝していることが昨年話題になりました。このインフルエンサー、宣伝にとどまらず(多分儲かっているのでしょうね・・・)、STEPに出資して株主にもなっています。同様のサービスを銀行が提供することを可能にするenablerとして、GreenlightというFinTechもあり、昨年秋にJPMorganがこのFinTechと提携して開始した子供向けサービス Chase First Bankingも少し話題になりました。
イギリスのいくつかのチャレンジャーバンクも、同様のサービスを開始しています。検索しやすいサービスとしてはRevolut Juniorというものがあります。Revolutは日本でもサービスを開始していますが、このJunior向けサービスは日本ではまだですね。
このサービスにはどんな特徴があるのか?例えば、子供の口座と親のアカウントを紐づけることで、親は子供が使うデビットカードの上限額を設定できます。これは親が安心できる機能として、まぁ、当たり前であり、必須でしょう。これまでもクレジットの家族カードでそんな機能はありました。
でも子供の立場に立ってみると、例えば、「学校の帰りにおなかがすいたので、(イギリスなので)ちょっとチップス買いたいな。でも今日のお小遣いだけでは足りない」なんて場合もあります。そんな時はアプリに搭載されたコミュニケーション機能を使って親にリクエストを送れば、親はそれを見て、ケースバイケースで、上限額超過の承認・拒否ができます。子供はこうしてお金の使い方を学ぶし、親にとっても子供とのコミュニケーションに役立つ。
そういえば日本でもPayPayでそんなCMがありました。これまでのプラスチックカードはしゃべることはなく、通信機能もありませんから、こうしたことはできませんでした。金融機能にコミュニケーション機能をつけると、教育、家族の団らんに役立ち、顧客満足度を向上させることができる。それに加え、新たなちょっとした追加の金融サービス提供機会につながる、とそういう目論見ではないかとみています。少なくとも既存の家族カードよりは、使われる機会がより増えそうなことは間違いないと思われます。
子供ですから、あまったお年玉で投資信託を買うわけでもなく、ましてやお金を借りることもありません。これまでは銀行がターゲットとすることはまずなかったといってもよいでしょう。だって儲からないのですから。先に例として挙げた銀行はいずれも、子供を持つ親が、お金の使い方を子供が学べるようにサービス提供をはじめた、と謳っています。でも、視点をちょっと変えると、子供向けの金融教育に熱心な親であれば、お金に対する意識が高く、もしかして金融機関にとって、優良な顧客・・・なのかもしれません。
他にも、家族、という響きで日本にいる我々がすぐに思い出すのは、家族割?携帯電話とは特に相性の良いサービスなのかもしれませんね。このように視点を変えるとこれまで儲かるとは思えなかったサービスも、違った価値をまとって輝きだすかもしれません。
実際に使ってみたら・・・!?
そこで、オクトノットでは、海外の豊富な人脈を生かして、実際使ってみたらどうだったのか?というリアルなレポートをお届けしていくことも構想中です。今回ご紹介したサービス以外でも、このサービスを使ってみて欲しい!などリクエストがありましたら、ぜひ編集部までお寄せください!