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「オムニチャネル」をわかりやすく解説。事例から金融業界での活用方法を探る

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小売業を中心に販売戦略として普及しているオムニチャネルですが、金融機関においても従来のビジネスモデルに代わる戦略として導入されています。この記事では、オムニチャネルの現在に至るまでの歴史的な経緯、またメリットや課題について整理してみました。オムニチャネル導入のステップと国内金融機関における活用事例についても紹介します。

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オムニチャネルとは

オムニチャネルとは、2021年9月現在では、「オンライン・オフライン」を問わず、店舗やECサイト、SNSなどあらゆる販売チャネルの顧客接点を連携し、販売促進につなげるマーケティングの考え方です。まずは、現在のオムニチャネルに至るまでの経緯について見ていきましょう。

オムニチャネルの歴史的な経緯

オムニチャネルは、インターネットによるECサイトの出現、インターネットの進化、その後のモバイルやSNSの出現により、さまざまな言葉が生まれ、収れんされて現在の姿になったと言えます。
インターネットが普及する以前でも、カタログ販売、電話販売、TVショッピングといった販売経路がありました。こうした店舗以外のさまざまな経路で販売することを、マーケティング用語では「マルチチャネル」と呼んでいました。
・「O2O」出現の経緯
インターネットのECサイトの出現により、オンライン上で情報収集をして、最終的に店舗での購入に至るように、オンラインから店舗へ顧客を誘導することを「O2O(Online to Offline)」と呼ぶようになります。オムニチャネルもこの頃から使われるようになった言葉です。
・概念に変化が起こる
しかし、その後の技術進化に伴い、店舗で商品を見ても好みの色やサイズの在庫がない場合に、豊富な在庫を持つオンラインへ誘導するようになりました。店舗ではサイズや見栄えを確認し、実際の購入はインターネットを通じて購入するという近年の顧客行動への対応がされるようになり、逆の「Offline to Online」の使われ方もするようになっています。
このようにオンラインとオフラインを状況に応じて販売機会を最大化させるようになった結果、O2Oは「OMO(Online Merges with Offline)」という概念に進化(深化)しました。

オムニチャネルの今とその例

現在では、オムニチャネルもこのOMOの文脈で使われることが多いです。近年ではインターネットでの販売も多様化し、PC、モバイルといった端末の違い以外に、さまざまなSNSも別のチャネルとして意識され、それらの違いを含めてあらゆるチャネルを有機的に融合させた販売戦略というマーケティング用語になっています。    

オムニチャネル化で得られるメリット

販売チャネルを連携させるオムニチャネル化は、顧客と企業の両側にとって、さまざまな良い効果をもたらします。次にオムニチャネル化で得られるメリットを見ていきましょう。    

顧客側のメリット:利便性が向上する

オムニチャネル化することで、欲しい商品をいつでもどこでも購入できます。店舗へ行ったものの、欲しいものが在庫切れだったが、在庫はこちら、というQRコードを撮影すると、その場でスマホでECサイトから探すことなく購入できるため、自宅で再びネット検索して購入したりすることがなくなります。顧客にとっては利便性が向上し、サービスへの満足度も高まります。結果的にリピーターが増えて、安定した売上にもつながるでしょう。

企業側のメリット①購買行動を分析しマーケティングに活かせる

各チャネルの統合がないと、顧客数や購入までの行動パターンの分析が困難になります。オムニチャネル化により、様々な角度から商品の売れ行きや行動パターンを分析する意識が生まれ、複数チャネルから得た情報をまとめて分析することで顧客のニーズに合ったサービス提供に繋がります。

例えば、「SNSの口コミからECサイトへ移動して購入」といった、購入に至るまでの一連のデータが各チャネルのデータを統合すれば入手可能です。同じような行動パターンをとった顧客数が多いという分析結果が得られれば、さらにSNSを活用して販売するなどマーケティング戦略を立てやすくなります。

企業側のメリット②販売機会ロスの防止や業務の効率化が図れる

それぞれのチャネルでバラバラに行っていた在庫や受注の管理を一元化すれば、可能になります。実店舗に加え、ECサイトやSNSなど複数のオンラインチャネルを運営している場合、チャネル別だった在庫管理を一つにまとめることで、実店舗の在庫が無いと顧客が他の店で購入してしまう販売機会のロスを減らすことができます。管理業務だけでなく、コールセンターも統合できるため、従来の作業工数も減り、コストの削減や業務の効率化にもつながります。

オムニチャネルの課題

オムニチャネル化には、さまざまなメリットがある一方で、まだ取り組むべき課題もあります。次にオムニチャネルの課題について見ていきます。

認知度向上への対策が必要

オムニチャネルの効果を発揮するには、店舗の最新情報をSNSで発信したり、複数チャネルで買い物ができることを伝えたりして、顧客に認知してもらうことが前提となります。店舗の利用客へ説明することに加え、オンライン上での広告出稿や検索エンジンで上位表示されるようなSEO対策などもする必要があるでしょう。

オムニチャネル導入のステップ

オムニチャネルの導入には、ビジネス戦略をしっかりと立て、準備を進めていくことが大切です。ここでは、オムニチャネルを導入するまでのステップを紹介します。

ステップ①組織横断で推進体制を構築する

縦割りの組織形態で会社全体の認識が統一されておらず、連携がうまくいかないと、オムニチャネルの実現が難しくなります。まずは、組織横断でオムニチャネルを推進する体制を構築し、社内全体の認識の統一を図りましょう。  

ステップ②自社を取り巻く環境を分析し、基本戦略を構築する

競合他社の動向、現状の顧客ニーズや特徴など自社を取り巻く環境を分析し、顧客拡大やブランドイメージの方向性、販売チャネル戦略など基本戦略を構築します。

ステップ③具体的にサービスをイメージし、個別課題を抽出する

カスタマーズジャーニー(顧客がサービスや製品を購入するまでのプロセス)を作成し、具体的なサービスをイメージします。モバイル機能やFinTech活用などに必要な個別課題も抽出します。

ステップ④データの連携とシステムの統合をする

オムニチャネルの肝である、データの連携とシステムの統合をします。商品・在庫・顧客の情報や購入履歴などすべてのデータを一元管理します。  

国内銀行のオムニチャネル活用事例

オムニチャネルを導入して、顧客の利便性と組織の生産性の向上を図る金融機関も増えてきています。次に、国内銀行におけるオムニチャネルの活用事例を紹介します。

活用事例①りそなホールディングス

りそなホールディングスは、オムニチャネルを経営戦略とし各チャネルを強化してきました。例えば、以下のような活用をしています。
  • スマホアプリでは、「スマート口座」や「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」を「提携ウォレットアプリ」と連動させたサービスを提供
  • タブレット端末を活用したサービスの効率化や投資信託・保険販売も行っている
    デジタル化のデザインを標準化し、グループ会社全体で共有することにより生産性の向上を実現。また、顧客情報を社内で共有し、コールセンターもチャネルの一つとして融合しています。情報共有によって顧客のニーズに合わせたサービスを提案しているのが特徴です。

    活用事例②七十七銀行

    七十七銀行は、NTTデータが提供する「CXMソリューション」の導入を決定。「CXMソリューション」とは、金融機関と顧客の接点を強化し、連携するためのサービスです。各チャネルから得られる顧客情報と行動情報を統合し、商品情報を配信できます。
    例えば、顧客がATMで目にした新商品の詳細確認ボタンを押すと、その情報がスマホアプリに通知され、内容をチェックできます。コールセンターとの連絡時には詳細説明から始められるため、コールセンター業務の効率化と質・量の向上、銀行商品の成約率の向上にも期待できます。  

    オムニチャネル戦略で新しい金融サービスを

    金融業界においても、オムニチャネルを取り入れ顧客の利便性の向上を追求することで、業務の効率化やコスト削減が実現し、結果的に自社の利益向上にもつながります。オムニチャネル戦略を成功させるには、いかにデジタル技術を活用するかもカギとなるでしょう。今後、さらに進化したオムニチャネルによる新しい金融サービスの拡大に期待が高まります。
    ※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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    執筆 オクトノット編集部

    NTTデータの金融DXを考えるチームが、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信。「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、金融サービスに携わるすべての人と共創する「リアルなメディア」を目指して、日々奮闘中です。

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