「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の意味と定義
初めに、あらためてDXの定義を見ていきたいと思います。IT化との定義の違いも確認します。
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
DXとは、デジタル技術を活用した業務やサービスにより、生活の利便性を高めることを指す言葉です。2004年、スウェーデンのウメオ大学エリック・ストルターマン教授が提唱しました。
英語でDigital Transformation、直訳すると「デジタルによる変換・変容」です。トランスフォーメーションのTransは、交差するという意味から「X」が略語として使われるため、デジタルの頭文字「D」とあわせて、DXと略されます。
英語でDigital Transformation、直訳すると「デジタルによる変換・変容」です。トランスフォーメーションのTransは、交差するという意味から「X」が略語として使われるため、デジタルの頭文字「D」とあわせて、DXと略されます。
経済産業省による定義
続いて、経済産業省によるDX推進の動きとともにDXの定義を説明します。経済産業省により、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が設置されました。
同年7月には『「DX 推進指標」とそのガイダンス』の中で、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
また、12月には「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を策定し、この中では、体制や仕組みづくりについて、より具体的な提示がなされています。
つまり、DXとはデジタル技術を駆使して組織のあらゆる面を向上させ、社会や顧客に還元することだと言えます。日々変化する顧客ニーズに対応するためにはDXが不可欠であり、DXが遅れると市場での競争が不利になる可能性もあると考えられます。
出典:
経済産業省「DX 推進指標」とそのガイダンス」
経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1.0」
同年7月には『「DX 推進指標」とそのガイダンス』の中で、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
また、12月には「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を策定し、この中では、体制や仕組みづくりについて、より具体的な提示がなされています。
つまり、DXとはデジタル技術を駆使して組織のあらゆる面を向上させ、社会や顧客に還元することだと言えます。日々変化する顧客ニーズに対応するためにはDXが不可欠であり、DXが遅れると市場での競争が不利になる可能性もあると考えられます。
出典:
経済産業省「DX 推進指標」とそのガイダンス」
経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1.0」
デジタルトランスフォーメーション(DX)とIT化の定義の違い
一般的にIT化とは、既存プロセスを効率化・強化するために、デジタル技術やデータを活用していくことを指して使うケースが多いようです。例えば、電話や郵便での連絡をEメールやSNSなどに置き換えたことが挙げられます。業務である、連絡そのものには触れていません。
一方、DXは、業務プロセスそのものの改革を指して使うケースが多いようです。単に、作業時間の削減や業務プロセスの自動化といった変化ではありません。「接客方法がデジタルを通じて根本的に運用が変わる」など、会社全体に関わる変化を生み出すものです。
IT化における変化は「量的変化」であり、目的に到達するために「手段を変えるもの」と言えます。対してDXは「質的変化」であり、目的そのものを変えるものです。DXの手段の一つがIT化と言えるでしょう。
一方、DXは、業務プロセスそのものの改革を指して使うケースが多いようです。単に、作業時間の削減や業務プロセスの自動化といった変化ではありません。「接客方法がデジタルを通じて根本的に運用が変わる」など、会社全体に関わる変化を生み出すものです。
IT化における変化は「量的変化」であり、目的に到達するために「手段を変えるもの」と言えます。対してDXは「質的変化」であり、目的そのものを変えるものです。DXの手段の一つがIT化と言えるでしょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性と課題
日本でDXが叫ばれるようになった背景に「2025年の崖」があります。気になる「2025年の崖」の詳細と、現状の日本が抱えるDXへの課題を、あらためて確認していきます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が必要とされる背景にある「2025年の崖」
「2025年の崖」は、2018年9月、経済産業省が報告した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」で言及されました。
DXレポートでは、日本の企業が現行のビジネス運営を継続すると、以下の3点の問題が発生すると提唱されています。
DXレポートでは、日本の企業が現行のビジネス運営を継続すると、以下の3点の問題が発生すると提唱されています。
- 既存システムの構造がわからない「ブラックボックス化」 ⇒事業部門ごとにシステムが構築されていると、ほかの部門の人が使えないなどの問題が出てくる
- 維持管理費の高額化 ⇒短期的にシステムを開発したために、保守費や運用費が高騰してしまう
- IT業務に秀でた人材の不足 ⇒サイバーセキュリティや災害などによるシステムトラブルに対応できる人材が不足し、そのリスクが高まる
上記のようなデジタル競争への対応の難しさ、運用費の高騰、セキュリティーのリスクなどの観点から、現状のままでは2025年以降、DXの遅延による経済損失が膨らむと言われています。市場の変化に合わせられず、デジタル競争の敗者になってしまうことが社会全体として危惧されている、という状況です。「2025年の崖」を回避し、競争に打ち勝つにはDXが必須だと考えられているのです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の課題
経済産業省は、各企業に対してDX推進の動きを加速させるために、自己診断用の指標(DX推進指標)を策定しました。DX推進指標の中で、顧客視点の価値創出ビジョンが不透明であること、またDXを根付かせる仕組みや基盤となるITシステムが不完全であることを指摘しています。
日本企業独自の課題として、そもそもIT投資額自体が低いことがあります。日本は「攻めのIT投資」よりも、「守りのIT投資」が多く、製品開発やビジネスモデル構築などの新たな価値創造より、業務効率化やコスト削減などの既存業務の改善のためにIT投資を行う傾向があるそうです。したがって、価値創造力がなかなか強くなってこないと言われているのです。
日本企業独自の課題として、そもそもIT投資額自体が低いことがあります。日本は「攻めのIT投資」よりも、「守りのIT投資」が多く、製品開発やビジネスモデル構築などの新たな価値創造より、業務効率化やコスト削減などの既存業務の改善のためにIT投資を行う傾向があるそうです。したがって、価値創造力がなかなか強くなってこないと言われているのです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)実現のメリット
「2025年の崖」を回避するために不可欠であるDX。負債面や競争に勝ち残るためだけでなく、企業にとって大きなメリットがあります。
1.生産性の向上
第1にDXを実現することで、業務が効率化されて生産性が向上します。業務効率化によりコストカットも実現できるので、利益率も向上するでしょう。
2.消費の多様化に対応
第2のメリットは、消費の多様化に対応できる可能性が高まることです。インターネットの普及などにより、従来のモノの所有に価値を見出す「モノ消費」から、体験に価値を見出す「コト消費」へと消費行動の形が変わってきています。例えば、好きなアーティストのCDを所有するよりも、好きな音楽を自分の好きな場所で聞けるという体験を重視する人が増加傾向にあると言われています。DXの実現により、このような消費行動への変化にも迅速に対応できる可能性が高くなります。
3.BCPの充実化
第3のメリットは、BCP(事業継続計画)の充実に繋がり得ることです。BCPとは、企業が自然災害、大火災やテロ攻撃といった緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限に留めながら、早期復旧するための方法・手段をまとめた計画のことです。
例えば、DXによるネット販売サービスの拡充で、コロナ禍で人々の外出が減るといった環境変化にも対応ができるようになることなどが挙げられます。こうした不測の事態に備えるための手段の1つとなることが期待されます。
例えば、DXによるネット販売サービスの拡充で、コロナ禍で人々の外出が減るといった環境変化にも対応ができるようになることなどが挙げられます。こうした不測の事態に備えるための手段の1つとなることが期待されます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現事例
続いて、DXの実現事例を見ていきます。具体的な成功事例と、陥りがちな失敗事例を調べてみました。
成功事例:三井住友銀行
三井住友銀行では、お客様から寄せられる膨大な量の意見を、独自開発ツールによって要約、分類しました。
従来の手作業でのチェックは人件費と時間がかかっていましたが、文中の重要単語や構造を考慮して文章の意味を判定する「テキスト含意認識技術」を活用することで、お客様のニーズをより早く把握し、商品やサービスの改善に結び付けるといった取り組みを行っています。従来は網羅的かつスピーディに把握しにくかった顧客の声というデータを体系的に活用し、新しい価値の創出に繋げている点で、単なる効率化に留まらない、一歩踏み出した事例と言えるのではないでしょうか。
従来の手作業でのチェックは人件費と時間がかかっていましたが、文中の重要単語や構造を考慮して文章の意味を判定する「テキスト含意認識技術」を活用することで、お客様のニーズをより早く把握し、商品やサービスの改善に結び付けるといった取り組みを行っています。従来は網羅的かつスピーディに把握しにくかった顧客の声というデータを体系的に活用し、新しい価値の創出に繋げている点で、単なる効率化に留まらない、一歩踏み出した事例と言えるのではないでしょうか。
3つの失敗例
失敗例としては、以下のようなものがあります。
- 組織名を「DX推進課」などに変更したものの、実際はDX業務を行っていない
- デジタルツールは活用するが、商品やサービスの品質改善まで活かせてない
- DXの実現により業務を効率化するはずが、むしろ煩雑化している
失敗の理由は、DXへの理解不足や、実態として推進できる体制が整っていないといった準備不足にあることが多いのかもしれません。DXは新しい社会をもたらす改革であり、短期間で実現することは難しいものです。社内一丸となって取り組むことが重要ではないかと考えます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)実現の5ステップ
実際に組織内でDXを実現する際の5つのステップを調べてみました。段階ごとに達成状況を検討していけば、確実に進めていくことができるかもしれません。
1.デジタル化:デジタルツールを積極利用
最初のステップは、企業内のシステムにデジタルを積極的に取り入れることです。例えば、勤怠管理や経費精算などをシステムで行うなどです。アクセス解析ツールを使い、すぐに取り出せるデータを積み上げていくこともこれに該当します。
2.効率化:蓄積したデータで業務を効率化
第2ステップは、データを使って効率化を図ることです。商品の販売記録(値段や販売時刻など)のPOSデータを活用した在庫管理や陳列調整、事務作業を自動化するRPAなどがあります。
※RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)の略語で、コンピュータなどで行なっている作業を自動化できるデジタルロボットのこと
※RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)の略語で、コンピュータなどで行なっている作業を自動化できるデジタルロボットのこと
3.共通化:効率化を組織全体へ波及
続いては、部門を越えた共通化です。蓄積したデータを他部門にも開示して活用することで、横の連携を強めて業務効率を図ります。組織全体で共通の重要業績評価指標(KPI)を設定し、PDCAサイクルを実行します。
4.組織化:データを活用した組織再編
第4ステップでは、蓄積したデータの活用と運用の効率化を前提に、組織の体制を再構築し、DXありきの業務プロセスを確立します。中には、専門の部署を置く企業もあります。
5.最適化:データを活用したより良い事業計画
最終的に、組織のビジネスモデルをより良くつくり変え、最適化を行います。成果がすぐ見えるものではありませんので、最適化へ到達するのには確実な取り組みと時間が必要でしょう。
データ活用による取り組みについては、以下の記事も参考にしてみてください。
データ活用による取り組みについては、以下の記事も参考にしてみてください。
デジタルトランスフォーメーション(DX)で組織体制強化へ
デジタル化の波は留まることを知らず、顧客の消費行動は大きく変動しています。金融業界でもそのニーズを把握してすばやく対応していくことが求められており、DXは無視できない段階に突入してきています。実現のステップは簡単ではありませんが、DX推進により生産性を上げて組織全体を発展させていくことは、新たな顧客価値の創出にも繋がる重要な取り組み課題であると考えられます。組織全体のDXへの意識を改革しながら、焦らず確実に取り組むことが大切なのではないでしょうか。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。