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スマートコントラクトの仕組みは?金融業界での活用事例や今後の展望を探る

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ブロックチェーンの仕組みを調べるうちに、スマートコントラクトという単語を目にすることも多いのではないでしょうか。この記事では、スマートコントラクトの仕組みからメリットや課題、金融サービスを含めた活用事例を見ていきます。また、金融業界におけるスマートコントラクトの展望なども考察してみます。

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スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは、そもそもなにか?ブロックチェーンとの関係や内容を詳しく見ていきましょう。

ブロックチェーン上での契約の自動化

スマートコントラクトは、ブロックチェーンシステム上の概念で、トランザクション(取引)や外部の情報をもとに、あらかじめ設定されたルールで自動的に実行されるプログラムです。

スマートコントラクトという考え方は、1994年、法学者・暗号学者であるNick Szab(ニック・スザボ)により既に提唱されていました。その後、2013年、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)よって、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンに実装可能なスマートコントラクトが開発され、世に広く提供されました。

スマートコントラクトの仕組み

スマートコントラクトの仕組みを分かりやすく説明するのによく使われるのが、自動販売機の例です。自動販売機を利用する時は、以下のように商品を獲得するまでが自動化されています。
  1. 価格の設定
  2. コイン投入+商品選択
  3. 商品獲得
スマートコントラクトも、事前に執行条件と契約内容を定義し、それに合うイベントが発生すれば、自動で執行される仕組みになっています。
  1. 契約の事前定義
  2. イベントの発生
  3. 契約の執行・所有権の移転

ブロックチェーンの実装手段であるスマートコントラクト

そもそもブロックチェーンとは、情報を適切に保管・管理するデータベースのようなものです。非中央集権型で、多くの人が同じデータ上の取引を見ています。そのため、偽造や改ざんがされにくいのが特徴です。

つまりブロックチェーンはデータそのものであり、そのデータを処理するための実装手段であるプログラムとなるのがスマートコントラクトです。契約を自動的に実行できることを“スマート”と表現しているわけです。

ブロックチェーン上での呼称が基盤により異なる

スマートコントラクトは、ブロックチェーン上での呼称が基盤によって異なるので注意が必要です。Ethereumであれば、最初に登場したので、そのままスマートコントラクトと呼ばれ、別のブロックチェーンである、Hyperledger Fabric(ハイパーレッジャー ファブリック)で実装されたスマートコントラクトは「ChainCode(チェーンコード)」と呼ばれます。

スマートコントラクトの2つのメリット

スマートコントラクトの利用により、さまざまなメリットが得られます。主なメリットを2つ見ていきましょう。

1.透明性の高さ

スマートコントラクトは、事前にルールが決められており、定められた条件をクリアすることで、自動的にプログラムが実行されます。ブロックチェーン上でスマートコントラクトのルールに従って実行された取引は公開されます。公開されているので、不正がおこなわれた場合、検知される可能性が高いのが特徴です。

ブロックチェーンは非中央集権的な場面で使われることが多いので、事前に民主的に決めたルールが実装できるスマートコントラクトの意義は大きいと言えます。

2.電子契約に対応できる

電子契約では、証跡が電子的に記録される必要があります。スマートコントラクトでは、この両者の合意を締結から履行まで実装し、記録をブロックチェーンに残すことができます。これにより、契約の正当性を証明できるのです。

スマートコントラクトの課題

一方で、スマートコントラクトには課題もあります。スマートコントラクトを活用する際に挙げられる課題について見ていきましょう。

契約後変更ができない

契約締結後に内容を変更する場合には、当然当初の契約に基づいたスマートコントラクトも実装し直さなければなりません。契約締結後の個別事情による内容変更は難しいでしょう。

ブロックチェーンの持つ性格による課題

既存の金融システムに不具合が見つかった場合、サービスを提供している1カ所のサーバを一時中断し、原因を追究して安全を確認したところでサービスを再開できます。

スマートコントラクトの場合、ブロックチェーンの持つ特性の影響を強く受けます。ブロックチェーンは分散された多数のノードに存在し、すべてのノードを一斉に一時中断することは難しく、ひとたび開始されたサービスを停止したり、内容を変更したりすることが困難です。サービスを提供する場合は、安全かどうか開始前に十分に検証することが望まれます。

契約が増えるほど時間がかかる可能性がある

こちらも現在のブロックチェーンの課題であり、スマートコントラスト自体の問題ではありません。現時点では利用する人が増えれば増えただけ、取引時間が増加する問題がまだ解消されていません。

例えば、ボールペン1本の買い物をするだけなのに処理に膨大な時間がかかってしまう可能性も考えられるでしょう。今はまだブロックチェーンの技術が追いついていないがために、利便性が損なわれることもあり得ます。

金融業界におけるスマートコントラクトの活用事例

スマートコントラクトは、その性質上金融サービスとの相性が良く、金融取引などにおいて活用が始まっています。次に、スマートコントラクトを実装した金融サービスの事例を紹介します。

DEX(分散型取引所)

DEX(分散型取引所)では、あらかじめ決められた手続きを定義したスマートコントラクトを通じて暗号資産などの取引を行います。なかでもシェアを拡大しているのが、Uniswapp(ユニスワップ)です。取引価格の決定や市場の流動性の管理などが、スマートコントラクトにより実装されています。

レンディング

レンディングとは、日本語で「貸出」を意味し、金融業界で使われる用語です。このレンディングは、暗号資産の世界でもスマートコントラクトにより、実現されています。代表的なサービスに、Compound(コンパウンド)があります。暗号資産をCompoundに担保として預け入れると、引き換えに「cToken」を受領します。任意のタイミングで、暗号資産を「cToken」と引き換え回収できます。そのときに預けた額プラス利息が受け取れる仕組みです。

金融業界以外のスマートコントラクトの活用事例

金融関連以外の分野でもスマートコントラクトは注目されています。その活用例を見ていきましょう。

投票

注目を集めている活用方法に投票があります。投票された票は、集計され、結果が公開されるまで、すべての有権者に等しく公開されなければなりません。ブロックチェーンの持つ透明性という特徴とマッチします。ブロックチェーンを用いた実証実験として、株主総会の議決権(これも投票の一種です)をデジタルトークンとして発行した事例もあります。スマートコントラクトはこの議決権トークンの処理で活躍しました。

不動産業界

紙で作成し、署名・捺印した契約書がまだ主流な不動産業界では、こうした煩雑さを解消する手段として注目されています。各種契約書をブロックチェーンに記録し、スマートコントラクトが参照・処理することで、本人確認から権利証明、さらには引っ越しの手続きまで、まさに「スマート」に処理してくれるのではないか?というわけです。

国内では住友商事がスマートコントラクトを活用した賃貸契約のプラットフォームを開発し、商用サービスを目指しています。海外でも活発にスマートコントラクトを活用した不動産契約のプラットフォームが開発されています。

スマートコントラクトの金融における今後の展望

スマートコントラクトはさまざまなサービスに実装可能です。今後の展望を見ていきましょう。

新たなサービスの創造

最近の金融業界ではDeFiで知られる分散型金融サービスの動きが非常に活発です。例えば証券業界では決済、債権の発行、デリバティブ契約、配当の分野で様々な試行が行われています。分散型金融サービスは、最初にスマートコントラクトが実装されたEthereumを使うことが多く、同じEthereumを使っている複数のサービスを組み合わせた新たなサービスを立ち上げやすい、という特殊性も見られます。金融取引も取引・契約である以上、決められたルールをブロックチェーン上に実装・実現するスマートコントラクトとの相性は非常に良いのです。

人を通さずにサービスを利用できる可能性

ブロックチェーンに記録された情報を自動的に処理してくれるスマートコントラクトの特性は、人手を介さずに様々な取引を可能にする可能性を秘めています。取引にあたり、必ず発生するお金のやり取り、つまり金融業界の参加・活用も避けては通れません。

スマートコントラクトの技術が進めば、例えば自動販売機のスマートコントラクトが、金融機関のブロックチェーンと連携して自動的に支払いを行ったり、集金が行えたりする。そんな、スマートな未来が待っているかもしれません。

スマートコントラクトの仕組みを理解し、今後の可能性を考えよう

スマートコントラクトは、ブロックチェーン上で実行されることで、人を介さずに自動で執行できる特徴があることから、金融取引においての応用も大いに期待されています。スマートコントラクトのメリットと課題を踏まえた上で、今後の可能性を考えていきたいですね。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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