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全銀EDI(ZEDI)とは
全銀EDI(ZEDI:ゼディ)とは、企業間の総合振込に活用できるシステムです。まずは、ZEDIの特徴や金融EDIとの関係について見ていきましょう。
XML形式で企業間の振込業務が便利になるシステム
ZEDIとは、企業間で総合振込を行う際に、 支払通知番号や請求書番号のみならず、1枚の請求書に含まれる個別明細の品目や金額など、さまざまな情報を一緒に送れるシステムです。
ZEDIを利用する前は、総合振込時に送付できる情報が固定長形式で20桁までに限られていたため、これまでほとんど利用されていませんでした。しかし、ZEDI稼働開始にあたり、国際標準であるXML形式に変更し、多くの情報が柔軟に送信できるようになりました。ZEDIの導入により、業務効率化や資金決済における合理的な作業が可能となったのです。
官・民一体となった取り組み
ZEDIは、そもそも産業界からの要請が始まりだったこともあり、現在も金融界・産業界・関係省庁が連携して周知活動を行っています。金融庁の決済高度化官民推進会議でもフォローアップを受けるなど、官・民一体となって取り組まれているシステムです。
全銀EDI(ZEDI)と金融EDIの関係
ZEDIと金融EDIの違いは何でしょうか。EDIとは、「Electronic Data Interchange」の略語で、電子データ交換のことです。つまり、金融EDIとは、金融取引を電子的に行い幅広い情報を交換・共有する仕組みのことを言います。
一方でZEDIは、全国銀行協会が構築した金融EDIシステムで、金融EDI基幹のプラットフォームとして2018年12月から稼働しています。支払いや請求情報に関する情報だけでなく、製品名や発注番号、担当者の名前まで多岐にわたる情報の共有が可能です。
これまでの全銀システムでは送金に必要なデータ交換しかできませんでしたが、送金以外のさまざまなデータの金融EDIが可能となったのです。
これまでの全銀システムでは送金に必要なデータ交換しかできませんでしたが、送金以外のさまざまなデータの金融EDIが可能となったのです。
全銀EDI(ZEDI)のメリット
ZEDIを導入することで、決済関連業務やビジネス分析において大きなメリットが期待されています。
消込業務時間を短縮できる
支払企業側が銀行窓口やATMを利用したり、複数の支払いを一括で振込んだりしたとします。その場合、受取企業側の経理担当は、振り込まれた金額はどの注文分なのか、また、各売掛金額と合っているかなど、請求書の控えを確認しながら消込作業を行う必要があります。ZEDIの活用により、受取企業側は入金消込業務を自動化できるため、経理業務の負担が軽減でき、業務の生産性も向上します。
問い合わせ対応業務を減らせる
受取企業側は、売掛金と入金額が合わない場合、支払企業側にメールや電話で問い合わせる必要が出てきます。ZEDIを活用すると、必要情報があらかじめ送付されるため、電話やメールでの確認業務を大幅に減らせるのもメリットです。また、支払企業側としても、受取企業側からの問い合わせに対応する時間を短縮できます。
実証実験によれば、金融EDIの導入により、受取企業側において中堅製造業では年間約400時間、大手小売業では年間約9,000時間(年間約15,000時間→約6,000時間)ほどの決済関連業務が合理化されたと確認されています。
また、実証実験を行った花王、富士通、小島プレス工業といった企業が、消込作業に関わる作業時間がゼロ、もしくはほぼゼロになったという結果も報告しています。
ビジネス分析が可能になる
ZEDIで得られる豊富なデータの活用により、企業だけでなく、金融機関にもメリットをもたらします。金融機関においては、金融EDIによる取引情報を把握することで、ビジネス分析や各種コンサルティング、市場調査などにも期待が寄せられています。いずれは、オンライン型の融資サービスの審査コストを低減させ、顧客企業の資金ニーズに対応したサービス提供も可能になるでしょう。
企業側にとっても、あらかじめ銀行にZEDIデータの閲覧許可を出しておけば、季節や社会状況の変化、ビジネスが繁盛して資金が足りない時に、銀行が融資を持ち掛けてくれるようになるかもしれない、といったメリットへの期待もあります。このように、ZEDIで得られる豊富なデータは、審査に活用できる可能性も指摘されているのです。
全銀EDI(ZEDI)導入時の注意点
ZEDIを導入する際は、対応するシステムや対象となる振込口座などを把握しておく必要があります。次にZEDIを導入する際の注意点を見ていきましょう。
ZEDIに対応したサービスを活用する
支払企業側と受取企業側のどちらのシステムもXML電文に対応している場合のみ、EDI情報が添付された入金通知を受け取れます。また、ZEDIに対応したバンキングサービスを提供している金融機関との契約が必要です。企業がすべての取引先と相対で事前にやり取りする情報を決めておくのは自社だけで対応するのは困難なため、ZEDIに対応した会計サービスやシステムプロバイダのサービスを活用すると良いでしょう。
全銀の総合振込だけが対象となっている
ZEDIが扱えるのは全銀の総合振込だけが対象となっています。全銀の給与振込(電文)は、総合振込とは別なので注意が必要です。賞与振込・預金口座振替も対象外になります。受取企業側は、振込入金通知と入出金取引明細のみ利用できます。
海外との取引には利用できない
内国為替制度参加銀行経由の取引が対象となっているため、海外との取引には利用できません。ここでいう海外との取引とは、直接海外に送金したい場合のことを指します。もちろん、海外の企業で日本に支店があり、国内でやりとりするのであれば問題ありません。全銀システムに参加している外国銀行を使うこともできますが、そもそも海外の企業が対応してくれなければ、利用は不可能でしょう。
全銀EDI(ZEDI)導入するための手順
ZEDIは、取引先である支払企業側と受取企業側の双方がお互いに相談して導入する必要があります。
社内と取引先でZEDIを取り入れるか検討する
まずは、現状の経理業務に関わる負担コストを明確にします。特に多様なサプライチェーンを持っている大企業には、ZEDIの導入によりコスト削減の高い効果が期待できます。また、導入するためにかかる費用も算出しましょう。その後、社内と取引先企業とで、ZEDIの導入や利用方法について検討に入ります。
インターネットEDIを利用できる環境を整える
インターネットEDIを使用できるシステムの導入を検討する必要があります。従来は、固定電話網(INSネット)を利用し、金融機関へ振込送信や、入出金明細の確認をするのが普通でした。2024年1月には、このINSネットの終了が予定されています。今もINSを利用している企業は多く、INS終了というワードもネット上で話題になっているところです。新しいシステム移行には時間を要するため、早めに切り替えることをおすすめします。
XML電文の送受信に対応するシステムを導入する
XML電文の送受信が可能な会計ソフトなどの導入やバージョンアップなどを行います。取引先と相談しながらシステムの導入を進めましょう。
全銀EDI(ZEDI)の利用状況と活用事例
現在数多くの金融機関や企業がZEDIを導入しています。ここでは、ZEDI店舗の加盟金融機関数利用件数、電子インボイスとの活用事例について見ていきましょう。
全銀EDI(ZEDI)の加盟金融機関数と利用明細件数
2021年8月時点で、銀行・信用金庫・信用組合・商工組合中央金庫・農林中央金庫・農協漁協系の1,054金融機関でZEDI接続が実現しました。企業による利用件明細数は、2020年12月で24,908件と伸びつつあります。一部の企業では、売掛金消込業務においてZEDIの導入が始まっているようです。
電子インボイスとZEDIを活用した事例
金融EDI普及の障壁の一つに、受益と負担の不一致があげられます。その課題解決には、電子インボイスとの活用が有効とされています。従来だと、消込業務が削減できる受取企業側の受益者メリットの為に、支払企業側に金融EDIに入力しなければならない、という負担がありました。その解消に、受取企業が入力して発行する電子インボイスは利用可能で、必要なデータがインボイスからコンバートされれば、支払企業の負担は軽減できます。2020年12月、電子インボイス推進協議会(EIPA:エイパ)は、日本における電子インボイス標準仕様として欧州標準の「Peppol」を選定しています。
このように金融EDIの活用で送金システム対応の効率化や自動化がされたとしても、紙の請求書にはハンコを押さなければならないといった非効率性がまだ残っています。海外でもRequest To Payという概念で、金流(お金のやり取り)と商流(受発注・請求)を効率化しようとする試みが進んでいます。
ZEDIのメリットや注意点をおさえ、取引先と相談し導入しよう
ZEDIは、振込時のお金の受け渡しだけでなく、その周辺の業務まで含めたデータの交換を可能とするために作られたインフラです。ZEDIの導入により、実際に消込作業がゼロになった事例もあります。また、ZEDIで得られる豊富なデータを活用することで、将来、さまざまなサービス提供の可能性も広がります。自社で活用できる場面を想定しながらZEDI導入を考えると、具体的にイメージしやすいでしょう。ZEDIのメリットや注意点も踏まえた上で、取引先とZEDI導入の検討をしてみてくださいね。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。