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デジタルバンクってなに?(2021年初決定版)~後編~

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前編ではデジタルバンクにまつわるモヤモヤを紐解いてみましたが、ではこれからはどうなっていくのだろう?というところに皆さんの興味の中心があると思います。後編ではそれを考えていきたいと思います。

日本の金融のデジタル化は進んでいるから安心?

前編では、日本ではデジタルを活用した金融取引が以前から当たり前になっていたために、それが今海外で進んでいる、というニュースに注目することに違和感がある、というお話をしました。では日本は進んでいるから大丈夫、と安心していてよいのでしょうか?

海外における銀行への評価から得られる気づき

イギリスやアメリカでは、既存の金融機関への不信感から、チャレンジャーバンクやネオバンクが生まれてきたことをお話しました。この不信感については調査結果がいくつもあることをご存じでしょうか?たいていの調査では「金融機関を信頼できない」と答えた人が、「信頼できる」と答えた人を上回っていることがわかります。
NPS(Net Promote Score)という調査手法があります。回答者のうち、「自信をもって勧められる」と答えた人の数から、「お勧めできない」と答えた人の数を引くこの調査手法だと、勧められると答えた人のほうが多ければプラスになるのですが、金融業界はマイナスになることが多い業界として知られています。不満の方が多いことがここからもわかります。

我々の日常生活を振り返ってみてもわかりますが、映画館やレストランに行く予定をワクワクして楽しみにすることはありますが、明日銀行に行くんだ、と嬉しそうに語る人はあまり見たことがありません。キャッシュカードをなくした、とか振り込みをしなきゃいけないとか、むしろ手間がかかる手続きのために行く場所というイメージがあるのでしょう。取引動機の性質上、そもそもマイナス感情を想起させやすいのが銀行という業態です。少なくとも各種の調査結果からそういう人が半分以上いるということは残念ながら真実です。
大事なのは企業人・経済人として我々が銀行には大変なリスペクトを持っているが、一般の利用者は必ずしもそうではないということがリテール金融にとっては非常に大事ではないか?という気付きです。

不満に応えるサービスが新しい顧客を開拓する

最近の新しい金融サービスはこうした不満に気づき、応える形で出てきています。その多くはこれまでの金融サービス事業者が提供できていなかったような価格やサービスの形をとっています。つまり既存の金融サービス事業者は新しい事業者によってその地位が脅かされているということになります。
例えば、銀行口座を持つこと自体のハードル。海外では、口座を開くときに最低預金額が決まっていたり、維持手数料がかかったりすることが普通です。そのため、銀行口座が作れない(Unbanked)、作っても満足な金融サービスが受けられない(Underbanked)といった人々がいます。昨今海外で登場しているデジタルバンクは、この口座維持手数料が0(ゼロ)、最低預金額も0(ゼロ)でよいというのが当たり前。つまり、これまで銀行が獲得できていなかった新しい顧客層を開拓したことになります。
銀行口座を作るだけなら手数料がかからないことが一般的な日本では、限りなく100%に近い銀行口座普及率を誇っているので気がつかない点ですが、世界全体を見たときには銀行口座を作れない人のほうが多いのですから、この点は重要です。

また、スマホ時代には「信頼」はもっと重要な意味を持ちます。みなさんはスマホにいくつアプリを入れていますか?その中に金融関係のアプリはありますか?インストールしてもらい、使ってもらうためにサービス事業者がDAU(Daily Active User)やMAU(Monthly Active User)を上げるために熾烈な競争を繰り広げている中で、毎日使いたくなるような金融サービスを作り出すことは、至難の業のように見えます。

デジタルバンクとは?

デジタルバンクの神髄

しかし、これに果敢に挑戦しているからこそチャレンジャーであり、使ってみたくなるような新しいサービスを編み出すからネオであり、それを技術で実現しているからデジタルと呼ばれているのです。
このような流れの中で、デジタルという言葉の意味も変わってきました。それまで人間が介在して、紙の元帳を使って提供されていたサービスを電子化する、Digitizationから、モバイルやネットワークが既に存在することを前提として、サービスの提供をゼロからデザインしなおすDigitalizationへ。こうした新しい視点や技術に基づき、これまでにない新しい金融サービスを提供している会社に対して、大きく括って「デジタルバンク」という言葉が使われている、というのが現状でしょう。

デジタル時代においては、毎日使いたくなるようなこれまでと違う体験を提供することが重要になります。デジタルバンクと呼ばれる多くのサービスがPaymentを起点にしている大きな理由がここにあります。日々の生活の中で、物を買うという行為は避けては通れません。この買い物を、簡単便利、ひいては気持ちのよい体験にできることは、DAUの増加に直接繋がります。さらに金融業界特有の事情として、マイナス金利の現在では決済手数料のほうがはるかに儲けの度合いが高いこともポイントです。皆さんも何か一つくらいは支払い用のアプリをスマホにインストールしているのではないでしょうか?

生活に寄り添って次のサービスを作る

日々やお金を使っている我々の生活のなかで、次に大きな不安は、明日や将来のお金が足りるのだろうか?ということでしょう。PFM(Personal Financial Management)がFinTechとして、一番初めに手掛けられた分野であるということもうなずけます。そして、この分野はFinTechやデジタルバンクの事例をよく研究したアメリカの大銀行が巻き返しを図っている分野でもあります。

例えば、Overdraft(当座貸越)という機能。毎月の支払いなどで銀行口座が一時的に赤字になったときに自動的にいくらかを銀行が貸してくれ、その代わりに利子が取られるサービスのことで、アメリカではリテール向けの収益源になっています。なにかというとペナルティが取られる、というのはアメリカで暮らしたことのある人から良く聞く話です。

毎月の入出金や、次の引き落としのタイミングから、このままだと次の水道料金引き落としで赤字になってしまう、ということが予めわかっていても、収益になるのだから黙っている、というのがこれまでの銀行の当たり前でした。

しかし、最近では、赤字になりそうだとスマホアプリの通知で教えてくれる銀行が出てきました。つまり、これまでの収益源をあきらめてでも、利用者の悩みを解決することを優先していることになります。では、それによって収益が落ち込んでいるのかといえば、そんなことはありません。毎日見たくなるようなアプリだという評判を勝ち得たおかげで、このアプリからの送金や支払いなどに利用してもらえるようになり、その結果、スマホからのトランザクションが増えています。このトランザクションの増加が、回りまわって別のサービスの収益に結び付いているのです。
興味のある方はBank of AmericaのスマホアプリやMarcus by Goldman Sachsについて調べてみるとよいでしょう。これらのアメリカでも名のある大銀行は、収益の半分以上をこうしたデジタルチャネルから上げており、既にデジタルバンクだといってよい変容を成し遂げています。

最新のサービスではAmazonでお金を使いすぎているという助言がされたり、なんらかの目標と金額を設定し、目標のためにお金を簡単に貯めるためのアクションを提示したりするようになっているようです。これまでは店舗に来てくれる優良顧客である富裕層に、経験豊富なアドバイザーでしか提供できなかったサービスです。顧客データに基づいたAIによる分析と蓄積された経験から、スマホを通じて金融アドバイスを半自動的に提供することで、質の高い金融サービスの提供につながります。質の高い金融サービスをお客さまに提供し続けることで、さらなる信頼の獲得と利用頻度の向上(リピート)を期待していることは間違いないでしょう。

このように、短期的な利益をあきらめてでも利用者のお金の不安を解消し、より豊かな生活を実現することがこれからの進化したデジタルバンクに求められることであり、それができて初めてデジタルバンクと呼ばれるような時代に、今まさになりつつあるのではないでしょうか?
少なくとも私には、ここ数年デジタルバンクにまつわる様々なサービスを見ている中で、それが重要な視点に思えてなりません。こうした視点が、日々流れてくるサービスを見る上で、皆さんが次に考える新しいサービスの大きなヒントになることを願って筆をおきたいと思います。


※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。

1993年株式会社NTTデータ入社以来、インターネット黎明期のEC構築、初期の携帯電話へのPayment機能搭載、海外への着メロ壁紙配信からブロードバンド黎明期の動画コンテンツ配信の実証実験等、数多くの新しい分野への取り組み検討に携わる。いつの間にか15年以上のキャリアになった金融分野でも変わらず、先物システムへの新しい通信方式導入、銀行基幹システムのオープン化、その海外への展開、スマホペイメントの検討など、ひとところに落ち着くことがない。現在は金融×デジタルの最新情報を追いながら、今度は早すぎないよね?と時代とにらめっこしつつ新しい可能性を探っている。ソロキャンブームに山岳部出身の血が騒ぐ今日この頃。

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