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生活に溶け込む金融サービス ~加速する異業種連携~

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「プレゼント代の精算はPayPayでやりましょう!」歓送迎会の多い季節、社内でこんなやり取りがありました。飲食やレジャーなどの精算に友人同士でスマホ決済アプリを使うことはそれなりに定着してきたように思いますが、その利用シーンが、ますます広がっているように感じます。対面で現金を授受する機会を作りにくい昨今の状況も影響しているのかもしれません。 このようなスマホひとつでお金をやり取りできるサービスは、金融の規制緩和によって実現されたものです。近年、金融分野の規制緩和が一段と進んだことで、非金融業から金融分野への参入が相次ぎ、生活者にとって便利なサービスが次々と生まれています。他方の銀行側にも、BaaS(Banking as a Service)と呼ばれる、銀行機能を他社に提供して新しいサービスの創出を目指す動きがあり、非金融業の参入を前向きな機会と捉える機運も高まっています。この記事では、近年増えつつある銀行と小売・サービス業などとの提携事例を紹介しながら、これから先の未来について考えてみたいと思います。

大きく変化した、私たちと金融との関わり方

さて、冒頭でスマホ決済について触れましたが、少し記憶をたどって、いまから10年前・・・2010年頃を振り返ってみると、どのような世界だったでしょうか。

実は、総務省の調査によると、今では生活にすっかり浸透しているスマートフォンの保有率は、わずか10%程度でした。コミュニケーションツールとして一般的になった「LINE」も、もちろんまだ誕生していません。当然ながら、飲み会の精算は「LINE Payで!」なんていう世界もまだなかったのです。

こんな風に、私たちの「金融」との関わり方は、ここ10年で大きく変わりました。

総務省『通信利用動向調査』を参考に著者作成

この背景としては、デバイス(スマホ)の進化と普及に加え、金融分野での規制緩和が大きく進んできたことが要素として挙げられます。例えば、銀行以外の事業者によるスマホアプリを使った送金サービスは、2010年の資金決済法改正によって、もともと銀行しか取り扱うことができなかった為替業務(送金などの資金移動)が、他の事業者にも開放されるようになったことで、実現が可能となりました。

こういった規制緩和の流れの中で、ここ数年、銀行業界で目にする機会が多くなったワードがあります。それは「異業種連携」です。一般の企業にとっては、銀行との連携と言ってもパッとイメージが湧かないかもしれませんが、これまで金融と接点が少なかった企業にとっても、また銀行にとっても、新しいビジネスを作るヒントとなり得るテーマなのです。

「異業種連携」とは、文字通り、銀行と他業種が手を組むことですが、昨今特に注目されているのが、他業種の企業が、自らは銀行ライセンスを取得せずに、既存の銀行が持つサービスや機能を使うことによって実現する、新しい金融サービスです。いま、この「異業種連携」による金融サービスが世界で、そして日本でも、増えてきています。

業界を超えたコラボレーションで生まれる新しい体験

「え、プリペイドカードの残高に利子が付くの?」

アメリカ大手小売業者ウォルマートが発行する「Money Card」に対する編集部の第一声です。ウォルマート会員向けのプリペイドカードサービスである「Money Card」、この残高に利子に相当するインセンティブが付与されるようになったことが昨年夏頃にちょっとした話題になりました。日本で馴染みがあるもので例えるなら、スターバックスカードに残高をチャージしておいたら、いつの間にか増えている、といったイメージでしょうか。

海外では、さまざまな事情から銀行口座を持てない人が数多くいます。「Money Card」は、そういった銀行と馴染みが薄い利用者の貯蓄をサポートし、金融に関連するベネフィットも提供することで、顧客満足度を上げて、ウォルマートのファンを増やす狙いがあると言われています。

「Money Card」の事例は、銀行ライセンスを持たない小売業が銀行と提携して銀行サービスを提供する「異業種連携」の象徴的な事例です。ウォルマートはアメリカのグリーンドット銀行と提携することで、銀行口座に近いサービスを実現したと言われています。

日本では多くの人が銀行口座を持っているので、そういったサービスは必要ないのでは・・・と思うところですが、ウォルマートと目的は違うものの、銀行と他業種が提携する動きはあちこちで起こっています。

例えば、ブライダルでおなじみの「ゼクシィ」を運営するリクルートグループが展開しているゼクシィ保険ショップでは、保険に加えて、住信SBIネット銀行の住宅ローンの相談をすることができます(※1)。結婚をきっかけに考えることが多い保険の見直しや家の購入を金融面でサポートする、利用者の心理をうまく捉えた提携だと思います。
(※1)ゼクシィ保険ショップ(https://hoken.zexy.net/homeloan

また、航空会社のANAは、ソニー銀行と組んで「マルチカレンシーデビットカード」と「ANAマイル付き外貨定期預金」というサービスを展開しています(※2)。

外貨預金でマイルがたまったり、海外ではデビット機能で外貨預金をそのままショッピングに使えたりします。新型コロナウイルス感染症の流行で海外旅行は難しい昨今ですが、アフターコロナを見据えると面白い取り組みですよね。
(※2)ANA(https://www.ana.co.jp/ja/jp/amc/promo/anasbw_deposit
銀行サービスの一部にとどまらず、もっと進んだ取り組みもあります。最近だと、2021年3月31日に、Tポイントでおなじみのカルチュア・コンビニエンス・クラブが、グループ会社のTマネーを銀行代理業者として「T NEOBANK」というスマホ向けの銀行サービスを開始しました(※3)。サービスラインナップとしては、預金、決済、融資という、いわゆる銀行の三大業務とされる機能を備えています。利用者から見える顔はTポイントですが、できることはほとんど銀行と変わりませ

裏側では、住信SBIネット銀行が提供する銀行機能を使っており、冒頭で触れたBaaS(Banking as a Service)をまさにフル活用した提携だと思います。金融取引に応じてTポイントが貯まったり、逆にTポイントを金融取引に使ったりすることができ、Tポイントをよく使う方にとっては活用シーンが一層広がりますね。銀行からすれば、約7,000万人ものT会員に、銀行の機能を使ってもらうチャンスが広がることになり、この提携でとても大きな支店を1つ作れたとも言えるかもしれません。
(※3)T NEOBANK(https://tneobank.tsite.jp/

普段の生活に「溶け込んでいく」金融サービス

前章で取り上げた国内外の「異業種連携」事例から見えてくるのは、消費行動やライフイベントに強い接点を持つ企業と銀行がタッグを組むことで、利用者のニーズ・タイミングを捉えたビジネス共創ができる、ということではないでしょうか。

銀行としては、利用者と日常的に接点を持っている企業とコラボレーションすることで、差別化が難しいと言われる金融サービスに色を付けることができますし、取引動機が生まれるタイミングに合わせたサービス提供によって自行が選ばれる確率を上げることもできると考えられます。

非金融業にとっては、利用者が自社のサービスを利用する途中で、決済や融資のような金融サービスが必要になった場合、離脱することなくシームレスに購買行動などに繋げていくことができるでしょう。

利用者から見れば、より最適なタイミングでさりげなく金融サービスを受けることができるので、ある意味では、利用者にとって金融サービスは見えなくなる、あるいは普段の生活により溶け込んでいくイメージかもしれませんね。

ちなみに、国内でこうしたサービスを支えている仕組みの1つが、銀行免許を保持せずに銀行業への関与を可能とする「銀行代理業制度」です。銀行代理業者は、預金、貸出、為替といった、いわゆる銀行の固有業務の契約の代理又は媒介を行うことができます。

実はこの銀行代理業者、5年前は許可件数が30社程度であったものが、2020年12月時点では60社以上と倍増していることがわかります(銀行が別の銀行を代理する場合を除く)。

金融庁『銀行代理業者許可一覧』を参考に著者作成

金融×異業種による体験変革はもっと加速する

銀行サービスの提供には免許取得が主流だった時代は、参入ハードルが非常に高く、新規参入は限定的でしたが、その環境は変わりつつあります。また、昨今のダイナミックな環境変化の中で、多くの銀行が新しいビジネスを模索している状況です。銀行が持つ機能を小売・サービス業とはじめとした他業種にオープンに提供し、利用者を中心にしたサービスに仕立て直すような動きは、今後より加速していくことが予想されます。

足もとでは、政府による規制緩和が続々と進められています。2020年には、多彩な金融商品をワンストップで提供できるようにする金融サービス仲介業の創設を盛り込んだ法改正や、銀行以外の事業者に100万円超の送金を認める法改正などが成立しました(※4)。小売業やサービス業などの非金融業にとっても、金融ビジネスに参入しやすくなる土壌が整ってきています
(※4)金融庁(https://www.fsa.go.jp/common/diet/201/01/setsumei.pdf

今後に想像を膨らませると、10年後には、自動運転のコネクティッドカーの中でこれから行くキャンプのレジャー保険を契約したり、ライフプラン相談をしながら生命保険の見直しや投資信託の購入、住宅ローンの繰り上げ返済がいっぺんにできたり・・・。そんな未来があるかもしれませんね。

そして、最後にもうひとつ気にしておきたいのは、やはり利用者の変化。オクトノットでも「Z世代との座談会」や「デジタルシニア」に関する記事を公開していますが、利用者の趣向は、世代などで簡単に一括りできるものではなく、どんどん多様化しています。

この変化の影響を受けるのは、金融サービスも例外ではないと思います。今回ご紹介したような金融×異業種のコラボレーションが、個々のニーズに寄り添った独自のサービスを生み出し、それが「新しい顧客体験の扉」を開いていくのではないでしょうか。

私たちNTTデータも、新たな「金融ITオープン戦略」を打ち出し、金融機関・行政・企業の「Open Innovation」実現のために動き出しています。幅広い業界を横断的に繋ぐことができるのがNTTデータの強みでもあるので、これからの時代で果たす役割は大きいと感じています。新しい価値の創造に向けて、私たちもチャレンジしていきます!
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。

新卒で都市銀行に入行し、個人向けコンサルティング業務に従事したのち、ネット専業銀行に転職。送金などの決済ビジネスを中心に、他企業とのアライアンス拡大や、新規サービス企画、プロモーションなどを幅広く経験。その後、消費者の変化や規制緩和といった環境変化を体感するなかで、業界を超えたオープンな金融の仕組み作りに関心を抱き、NTTデータへ。現在は、金融業界のさらなるTransformationへ貢献すべく、「金融を通じて世の中をより良くする」を志に、金融×デジタルを切り口とした技術・ビジネス動向の研究や、社内外への情報発信などに取り組んでいる。

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