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企画に効く!一歩抜け出す金融人材になる方法 (後編)

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2021/10/15日本金融通信社(ニッキン)が主催する金融機関のためのITフェア「FIT2021」にて、OctoKnot初のリアルイベントとなるセミナーを実施しました。『マネーフォワード ME』といったお金の見える化サービスなどでおなじみのマネーフォワードの執行役員 瀧俊雄さんと、NTTデータで金融領域のデジタルビジネスを推進する山本英生さんによる対談の内容を全編公開! 後編は金融メディアの中の人がどこから情報を収集しているのか?どうやって実ビジネスの企画につなげていくのか?その考え方について議論しています。

メディアのコンセプトや提供価値

宮本:次はメディアのコンセプトや提供価値について伺いたいと思います。
瀧さん、山本さんはメディアの中の人です。提供する側のコンセプトやどんな思いで提供しているのでしょうか?またメディアをご覧になる側の方にはどうとらえて、どういった活用をされるとよいのかお聞きしたいと思います。
瀧:私が見ているメディアを紹介しますと、Financial Times, Wall Street Journal、Economist、TechClunchの気になった記事。アメリカの事情だとAmerican Bankerは年間数千ドルかかる媒体ですが見ています。これが自分の基礎となっている媒体です。
日本ならばNIKKEI Financialはカバーすべきでしょう。ニッキンは購読も執筆もしています。ニッキンさんのライバルですが、金融財政事情も必ず全部読む。
そうやって「網羅している人が自分の代わりに情報を整備してくれた感」が最強のお得度を生むのですよね。これをウェブジャーナルにしたり、購読制のNoteにしたりすると、必ず食いつく人がいるものだと思うんです。
でも今述べたような媒体は定額購読の上にプラスアルファのプランを持っていることが多くて、例えばTechCrunchだと、日本では購読できないんですが、ExtraCrunchっていうコンテンツがあるんですよね。業界関係者にこのニュースにはこんな仮説があるけど、ホントはどうなの?と関係者にインタビューをして掘り下げたりしています。読みたくてしょうがなくなるあたりから課金コンテンツが始まる、と非常にうまくできている(笑)FTでもLexとかエディトリアルに相当するところは、上位プランの金額が設定されています。
解釈をライトパーソンに聞いている、というのがアップセル要素なんですよね。
英語はやらなきゃだめなんですよね。読まないと5年遅れのものが7年遅れになる。残念ながら日本人は英語を読まないので、こういった情報を非常にありがたがる。
とはいえなんでも訳せばよいというものでもないので、さすが!と言ってもらえるような内容軸をもって、トピックを選んで、さらにその上の理解度を上げるために当事者に聞くということもFintech研究所ブログではやっています。コンサルの方々がお金をとってやるようなことを無償でやったらどんなことが起こるんだろう?と思いながら、5年前から無償でやっています。
皆さんがメディアを見る上では、この二つのレイヤーを意識していただくのがよいかと思います。
宮本:ちなみにブログの評価基準は何か設定されていますか?
瀧:PV数は狙っていないんですよ。いますぐ○○が分かる方法とか、PV数は稼ごうと思えばそういう技術はあります。ただ、金融審議委員とか元日銀総裁といった方に、不意に、読んでると言われるんですよ。だからそういう要人の目に留まることを唯一のKPIにしています(笑)
山本:きんざいさんに言わせるとそんな個人の読者はみたことありませんと言われるんですが、入社以来20数年自宅で金融財政事情を購読しています。というくらい金融業界は興味を持ってみていますが、テクノロジーの話をすると基礎研究にあたるところはすごく面白いんだけれども、英語で読んでも専門過ぎて良くわからないところもあるので、日経サイエンスとか日経エレクトロニクスとか、MIT Technology Reviewあたりを妄想のヒントを得るために眺めています。まじめに読んでもすごい難しいことが書かれているんですけど、まじめに読まなくても、どういうものが流行っているのか眺めて気が付くことが重要だと思っています。そういう意味ではマネーフォワードFintech研究所ブログは必ずみてるところではあります(笑)
我々のOctoKnotで言えば、会社でやっていることなので、PV数も問われはするんですけれど、OctoKnotで商品を売りたいわけではなくて、こんなおもしろいことがある、と読者に思ってもらうことを一番狙っています。だから皆さんの眼にあまり触れないものを意識的に集めてきたり、研究開発を紹介したりしています。
こういった発信をしていると必ずそこにリアクションがある。リアクションがあればニーズがあるし、何もなければ望まれていない、ということが分かる。それを意識しながらやっているところです。
瀧:ウェブメディアを自分達でやっていると発信のハードルが下がるという部分がありますよね。特に研究者はそうなんですが、自分がいいと思うものは、世の中にとってもいいと思いたがるものなんですよね。それをちゃんと自己評価するためのツールの役割はありますよね。いいと思って発信しても見られていないとわかるのは、自分のためにもなるなと思っています。

新しいものとビジネスのつなげ方

宮本:最後のお題となりますが、こうやってこれまでに考えてきた企画を具体的な新しいビジネスにどう接続していくか?どういう風にやってらっしゃるのか、考え方や発想をお聞かせください。
瀧:私はアイデアについて、社運を賭けるべきと判断しなかったものは先に人にしゃべってしまうことも多いんですよね。スタートアップの世界では実行できるかがすべてなので、オープンソースならぬ、オープン仮説みたいなところがあります。
Fintechと言われるような金融サービスの場合、高齢者向けのお金の見守りサービスのように、実装難易度は非常に高いんだけれども、社会的価値の非常に高いものは、Fintechが直に提供するよりも、間に既存のチャネルがある人が入る方がよい場合があるんですよね。この見守りのケースなら介護従事者とか、警備会社のようなイメージです。より提供者として向いている人を一生懸命さがしてみて、内々に聞いてみるんです。いままで存在していないビジネスには、何らかの理由があって存在していないと思うので、より向いている人が絶対思いついているんですよ。
昔、宅配会社の社長に何で置配をやらないんですか?と飲みの席で聞いたことがあって、その社長にはそんなことは何十年も前から考えてます!と教わったことがあって。本業の人たちは何十年も前から悩んできたことなんですよ。
そのWHYはちょっとぶつけてみないと分からない、ぶつけることによって知るというのはすごい重要で、私はそう言って話をしにいってます。
山本:いままでやっていなかった理由があるというのは絶対にその通りで、ではどうするかということですが、ある意味時流に乗る、といいますか、デジタルの文脈でやってみると、もう一回再チャレンジできるかもしれない。本質的ではないかもしれないし、一見かっこよく時流に乗っているだけなのかもしれませんけど、やりたいことを実現するためにはえらい人にデジタルだからやれるかもしれない。だからあえて新しいキーワードに古いことをちょっとだけ変えて出してみることは、すごく大事なのかな?と思っています。
過去に出てきたものを新しいテクノロジーで衣装替えをしてみると意外と面白いところがあるんじゃないと思います。

瀧:過去に考えて実践した人というのは常にいるので、アイデアで一番になる必要はないんですよ。Twitterだってマイクロブログとしては後発でした。最速か、最高でないとだめ、では新規事業は生まれないと思うので、最初からベストなものである必要はなく、ユーザー理解をした人が勝てる世界だと思っていただければいいな、と思います。
山本:おっしゃる通りで、当社が商社や銀行などと共同出資しているTradeWaltsはブロックチェーンを使った貿易の電子化をする会社なんですけど、貿易の電子化なんて昔からみんなチャレンジして失敗してきたので、ブロックチェーンという新しい要素を前面に出してやってみた、そういう要素がすごくあるかな、と思っています。
宮本:最後に私から振るまでもなく、お二人にまとめていただきましたね。
本日はどうもありがとうございました。
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執筆 オクトノット編集部

NTTデータの金融DXを考えるチームが、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信。「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、金融サービスに携わるすべての人と共創する「リアルなメディア」を目指して、日々奮闘中です。

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