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1分でわかる「サプライチェーンファイナンス」

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近年、「サプライチェーンファイナンス」という言葉を耳にする機会が増えました。サプライチェーンファイナンスは仕入れなどで発生する受発注情報(商流情報)や会計情報(金流情報)を用いて行うファイナンスを指します。
具体的にどういうことができるようになるのでしょうか。本記事ではサプライチェーンファイナンスでなにができるのか、スーパーマーケットの仕入れを例にわかりやすく解説します。

「サプライチェーンファイナンス」とは

「サプライチェーン(Supply Chain)」とは、商品を顧客に提供するまでの調達、生産、在庫管理、物流、販売までの一連の流れを指します。供給を意味する「supply」に、鎖を意味する「chain」が加わっており、日本語で「供給連鎖」と表現されることもあります。

このサプライチェーンの情報を活かした資金調達方法が「サプライチェーンファイナンス」です。
具体例として、身近にあるスーパーマーケットに対してサプライチェーンファイナンスを考えてみます。

【参考】さらに詳細が気になる方はこちらの記事も参照ください。

スーパーマーケットの仕入れ構造

一般的なスーパーマーケットでは、店舗や本部からサプライヤー(帳合先、食品製造企業、農家 等)に対して、「①発注」作業を日々行っています。スーパーマーケットから発注連絡を受けたサプライヤーは発注内容を確認し、受ける場合は受注します。その後商品を「②出荷」します。スーパーマーケットの店舗に商品が届くと検品を行い「③受領」します。(例えば、もし腐っている商品などがあれば受領せず「返品」になります)発注通りに納品できるとサプライヤーから「④請求」を行い、スーパーマーケットは請求内容に沿って「⑤支払」手続き(※)を実行します。
(※)スーパーマーケットとサプライヤーの契約によっては、このフローの途中で“リベート”と言われるキックバックなども発生しますが、本記事では割愛します。

では、これらの手続きは日々どのように行われているのでしょうか? もしスーパーマーケット各社が独自様式の紙伝票やメールを使用していたら、非常に大変ですね・・。もちろんそんなことはなく、2024年現在、多くのスーパーマーケットでは統一された標準フォーマットを用いて、上記①~⑤を実施しています。

消費財流通業界では2007年に国や業界団体などが中心となって「流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)」を策定しました。流通BMSは①~⑤の手続きを行うための標準フォーマットで、スーパーマーケット以外にも百貨店やドラッグストア、ホームセンタ、卸・メーカなどで導入されています。導入企業数は何年も右肩上がりが続いており、小売業500社以上、卸・メーカで20,100社以上に上ります。

【参考】流通システム標準普及推進協議会 (gs1jp.org)

サプライヤーへの支払サイト

支払サイトとは、取引代金の締め日から代金を支払うまでの期間のことです。業界の習慣や取引先との関係によって支払サイトは異なりますが、スーパーマーケットを含む小売業界では約45日です。支払サイトは、業界によって日数は大きく異なります。例えば建設業界は約85日で相対的に長く、トラック運送業は26日と相対的に短いです。
tegata_denshi2021_03_6.pdf (zenginkyo.or.jp) 図表7)

商品を納品する側のサプライヤーは、短い支払サイトを希望し、商品を受領する側のスーパーマーケットは、長い支払いサイトを希望します。
よくあるのは「月末締め/翌月末払い」の月1回の支払いですが、「15日締め/月末払い、月末締め/翌15日払い」のようにひと月に複数回支払日が存在するケースもあります。

スーパーマーケットにサプライチェーンファイナンスを適用するなら

よくある「月末締め/翌月末払い」を例に考えてみます。
生鮮食品などを取り扱うスーパーマーケットとサプライヤーの間では日次で受発注が行われ、おおむね発注日の翌日には出荷されます。しかしサプライヤーからすると、出荷・納品した商品の金額について、スーパーマーケット側から支払いを受けるのは30~60日後です。中小・零細企業の多いサプライヤーにとって、この30~60日は、キャッシュフロー上苦しい状況が続いてしまいます。

スーパーマーケット側がもっと早くサプライヤーに支払いができればよいのですが、即座にその金額を払えるほどの資金余力がないスーパーマーケットもあります。
そこでサプライチェーン上で発生するこの問題に着目して、サプライヤーを資金面からサポートしようという考えがサプライチェーンファイナンスです。サプライチェーンファイナンスにもさまざまな手法がありますが、ここでは例を1つ紹介します。

発注(受注)段階のファイナンス

スーパーマーケットからサプライヤーへの発注(受注)情報を元に融資を受けます。融資額は、発注(受注)金額に掛け目を付与した金額です。返済は、スーパーマーケットからサプライヤーへの支払を原資に充てます。

おわりに

スーパーマーケットをはじめとする小売業界では、日本の生産人口の減少や気候変動やコロナ等の危機を受け、ビジネスの要である商品の安定調達を可能とする、強靭なサプライチェーンの構築が課題となっています。しかし、中小サプライヤーでは、創業から間もなく実績が乏しかったり、融資に必要な担保や保証を用意できない会社もあります。

一方、金融業界における従来の法人向け融資といえば、決算書などの過去実績、担保や保証などを金融機関が審査し、数週間以上の時間をかけて融資をしていました。しかし海外では将来性に着目した融資が一般的であり、イノベーション促進につながっています。このような状況を受け金融庁は、2023事務年度金融行政方針において「事業者の持続的な成長を促す融資慣行の形成」を掲げるなどし、日本の産業振興に向けて金融業界への変革の働きかけも始まっています。

今後は国内でもサプライチェーンファイナンスが、新たな法人支援の形になることが期待されています。

【参考】NTTデータのサプライチェーンファイナンスの事例としてリンク先をご覧ください。
【この記事を書いた方】
本田 寛
NTTデータへ入社以来、複数のシステム開発案件でプロジェクトマネージャを経験。その後、コンサルタントとして銀行/クレジットカード会社/保険会社などの金融機関に常駐し、データ利活用に関する戦略策定/推進組織創設・運営/システム基盤構築を主導。前述に加え近年は、法人営業部門における業務改革/サプライチェーンファイナンスの企画・実現などに従事。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※本文および図中に登場する商品またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
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執筆 オクトノット編集部

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