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手続きのデジタル化でより効率的に!マイナンバーカードの活用事例

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マイナンバーカードの普及に向けて多くの施策が実施されていますが、マイナンバーカードの申請、マイナポイントの取得はお済みでしょうか?実際にマイナンバーカードを取得したものの、引き出しに入れっぱなしでどう使っていいか分からない方も多いかと思います。マイナンバーカードは、公的サービス、健康保険証や運転免許証などのサービスでの利用が報じられていますが、このほかにもマイナンバーカードの認証機能を民間サービスで使うといった事例も出てきています。今回は、マイナポータルAPIの活用を中心に、マイナンバーカードをより便利に利用できる事例や、マイナンバーカードとマイナンバーの違いについてご紹介します。

マイナンバーカードの普及状況と政府の計画

総務省のホームページによると2022年11月時点でのマイナンバーカードの普及率は全国で「53.9%」となっています。2020年11月の「23.1%」、2021年11月の「39.9%」に比べ増加していますが、これにはマイナポイント事業などの施策が影響していると言えます。2022年12月現在に実施されているマイナポイント事業でも、2023年2月末までのマイナンバーカードの申請でマイナポイント付与がされる予定です。

図1:マイナンバーカードの交付率の推移(2022年11月現在)

政府は2021年6月の閣議決定でマイナンバーカードの普及に向け「マイナンバーカードがほぼ全国⺠に⾏き渡ることを⽬指す。デジタル庁による統括・監理を通じて政府情報システムにおけるマイナンバーカードの利⽤を推進する。」としています。その後、「健康保険証、運転免許証一体化などの利活用拡大、マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載等により、国⺠の利便性を⾼める取組を推進する」としており、普及にたいへん積極的です。
2022年11月末時点で2人に1人が保有する状況になったマイナンバーカードですが、まだまだ具体的な使い道がイメージできていない方も多いかと思います。分野・業界に閉じない社会課題解決に向けたサービス創出を目指すNTTデータのソーシャルデザイン推進室では、取組のひとつで “金融x行政の業際ビジネス” を企画推進しています。マイナンバーカードを活用するための「マイナポータルAPI」の仕組みと、その使い道の事例として「マイナポータルAPIを活用した推進中のサービス」をご紹介します。

マイナポータル・マイナポータルAPI

マイナポータルとは?

マイナポータルとは、マイナンバーカードを用いてアクセスすることができる政府運営のオンラインサービスです。マイナポータルを使うことで、例えば、所得・税・年金・健康医療情報などの自分自身の情報確認や、子育て・介護をはじめとする行政手続きの検索やオンライン申請が可能となります。
最近では、疾病対策の一次給付金などの公金受取口座の確認ができるようになりましたが、今後、NISA口座の確認や、転出転入等の引越し手続き申請も可能になる計画などもあり、マイナポータル活用の幅が広がっていくことが期待されます。スマートフォンからも簡単に利用可能ですので、マイナンバーカードをお持ちの方は、マイナポータルアプリを入れて、一度自身の情報を参照されてみてもよいかもしれません。図2にはマイナポータルでできることを記載しています。

図2:マイナポータルアプリでできること

マイナポータルの仕組みと実現できること(マイナポータルAPI)

上記のマイナポータル機能を、一定の要件を満たした企業などがさまざまなサービスに利用できるように、マイナポータルAPIとして政府が無償で一般公開しています。私たちが利用する民間組織や行政機関等が提供するサービスにこのマイナポータルAPIを組み込むことで、利用者の使い勝手のよい製品やサービスの提供が期待されています。
例えば、「自己情報取得API」を活用することで、一般利用者の同意のもと、行政機関から入手した一般利用者の情報を民間企業のサービスに利用できたり、「電子申請API」を活用することで民間企業のアプリやポータルサイトから行政手続申請を受け付けたりすることが可能になるものです。
これでどのように便利になるかを、マイナポータルAPIを活用した2つの事例でご紹介します。

図3:マイナポータルAPIの仕組み

マイナポータルAPIの活用事例

ケース1:住宅ローン申込手続きのデジタル化

マイナポータルAPIの身近な活用シーンとしては、金融機関などの手続きのデジタル化があげられます。みなさまは金融機関での手続きで、必要書類の多さを負担に感じたことや、その煩雑さでやるべきことを先延ばしにしてしまったことはないでしょうか。銀行口座が旧姓のままの方や、住所情報を古いまま放置している方もいらっしゃるかもしれません。
そのなかでも、住宅ローンの申込手続きを考えてみると、申込に必要な書類が多いにも関わらず、物件引き渡しまでの時間も限られるためいつまでも先延ばしできるものではありません。例えば、結婚や出産というライフイベントを迎えたAさん、手狭になった賃貸マンションから夢に見たマイホームを購入する決心がつき、住宅購入に向けて借りたい住宅ローンも絞りこみました。
物件の引き渡しまで時間がないなかで、平日は仕事の都合上日中帯に住民票を取得しに区役所へ出向く時間も確保できません。源泉徴収票もすぐに見つからずに勤務先の経理担当者へ再発行のお願いをしなければならないと焦り始めます。また、必要書類を集めたものの、さまざまな書類に記載したAさん自身の情報にも記入誤りがあり再提出になる始末です。
また、審査を行う金融機関や保証会社においても、事前審査から本審査における顧客情報や審査関連書類は紙で処理されています。早急に処理されることが望ましいのですが、記入不備や記入誤りにより再申込になるケースも多くあったり、利用者-不動産事業者-金融機関-保証会社における情報の取り扱いや、事業者間での資料授受に多大な時間とコストをかけていることが課題となっています。審査書類が段ボールで山積みになっているという話もよくあります。
このようなシーンでは、マイナポータルの自己情報取得APIを活用することで、マイナンバーカードをかざして利用者が同意をするだけで、ローンの申込時に必要となる個人の属性情報(所得情報、世帯情報など)を取得することが可能になります。それにより、申込時に利用者の正確な情報が入力済の申込画面にあらかじめ表示されたり、提出書類が省略できたりと利用者の利便性が向上します。
さらに金融機関や保証会社にとっても、申込者が作成した誤りが含まれるかもしれない情報でなく確実な申込情報を受け取れるようになるため、審査時のチェック作業や、連携・保管する書類の削減など、さまざまなメリットが考えられます。

図4:マイナポータルAPIを活用した住宅ローン申込・審査のイメージ

ケース2:パーソナライズ化されたライフプラン・金融サービスの提供

マイナポータルAPIのライフプランシミュレーションへの活用も試験的に実施しています。将来のライフプラン計画の準備として自身の情報を収集してファイナンシャルプランナーさんへ情報提供することや、ライフステージの変化に伴う見直しのために定期的に家族の情報などをアップデートすることはたいへんです。なかなか将来の計画をしっかり考えられたことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
先ほどのAさんを例に考えてみると、結婚をきっかけに保険会社に勧められて生命保険の契約をしたものの、その後の状況が大きく変わり、今契約している保険も本当に正しいのかよく分かっていません。出産に伴い家族構成も変化し、住宅の購入に伴い収支の状況も大きく変化しています。
本来であれば、子供の成長に合わせて将来の教育費を想定した積立型の学資保険を検討したり、自身の万が一に備えて家族のために収入保障保険を検討したりと、計画を見直さなければならないことは意識しています。しかしライフステージが変化するタイミングはとても忙しく、定期的に家族の収支情報を整理してファイナンシャルプランナーさんへ相談しに行く時間を確保できない状況です。
また、金融機関としても、投資信託や保険等の金融商品販売業務は、利用者の背景にある進学・就職や住宅購入などのライフイベントの影響を受けるため、利用者の同意に基づく情報の提供を効率的に行うことが重要になってきます。
このようなシーンでもマイナポータルの自己情報取得APIの効果的な活用が想定できます。金融機関は利用者の同意に基づき、マイナポータルから提供される利用者の勤務先や収入状況、家族の状況などの情報を取得することができます。
これにより金融機関は利用者のライフイベントの発生に気付き、ライフプラン計画の見直しを能動的に実施し、それをもとに利用者ごとにパーソナライズ化された金融サービスを提案することも可能になります。例えば、利用者が結婚し、子供が生まれたことや、住宅を購入されたことなどを察知して、新たな保険や金融商品をご案内するといった使い方です。
また、マイナポータルの電子申請APIをサービスに組み込むことにより、ライフイベントによって発生する各種手続き(子育て、介護、防災関連手続きに加え、今後は引越し手続き等も可能になる予定)を、金融機関が窓口となってワンストップで完結させるサービスの実現も期待されます。

図5:マイナポータルAPIを活用したライフプランシミュレーションのイメージ

「マイナンバーカード」は「マイナンバー」とは別のもの

これまでご説明した事例を実現するためには、マイナンバーカードが必要不可欠となりますが、12桁のマイナンバーを使用するのではないか?大切な情報が漏洩するのではないか?といった情報もあり、マイナンバーカードの使用に漠然とした不安を持っているというお話も聞きます。
しかし実際のところ12桁のマイナンバーそのものを利用できるのはあくまでも行政機関などに限られています。さらにその利用範囲も社会保障/税務/災害対策の3分野にて複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認する目的のみと法律で限定されています。
一方、マイナンバーカードの一般的な利用シーンとしては、カード表面が公的な身分証として利用できることに加えて、内臓ICチップに格納された「電子証明書」を利用することで、インターネット上での本人確認や認証を安全に行うことを可能にするものです。この公的個人認証サービス(JPKI)には、電子署名用と利用者証明があり、こちらは民間企業も利用できる仕組みです。e-TAXでの確定申告でマインナンバーカードを利用するときには、このJPKIを使うことで紙面の提出が不要となる場合もあります。
12桁のマイナンバーは関係する事務を効率化することのみに限定されていること、マイナンバーカードは電子証明書を使って公的、民間のサービスにおいて本人性を確認すること、この違いを理解したうえで、これらのサービスを受けることが重要です。

図7:マイナンバーカードの特徴

「こんなとき、あってよかった マイナンバーカード」(デジタル庁)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/494e7749-cb53-4bdd-aeeb-49c26d5edbf5/daccc11f/20221020_policies_mynumber_resources_leaflet_13.pdf)を加工して作成
このように普及促進がされるマイナンバーカードについて、今後本格化するであろう活用事例をご紹介いたしました。こちらの活用事例は、マインナンバーカードをうまく利用し、事務の煩雑化の解消や、利用者の行動の変化につなげるものです。マイナンバーカードの効果的な活用は、分野・業界に閉じない社会課題解決に向けたサービス創出を実現するものです。マイナンバーカードの活用の展開にご期待ください。

株式会社NTTデータ 
ソーシャルデザイン推進室
竹内 智洋 (たけうち ともひろ)

株式会社NTTデータに入社後、大手金融機関様を中心に大規模システム提案・開発・保守に従事。
2021年2月から現職、ソーシャルデザイン推進室にて公金法を横断した業際ビジネス創発に従事し、金融×マイナンバービジネス、パーソナルデータを活用したビジネスに関わる案件を推進中。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は記事掲載当時のものです。

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