「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信!

金融が変われば、社会も変わる!

トレンドを知る

デジタルバンクとネットバンクの違いとは?国内外の事例も紹介

画像

ここ数年、金融業界を中心に「デジタルバンク」という言葉を、よく耳にするようになりました。デジタルバンクについて、なんとなく「デジタル技術を用いた先進的な銀行」というイメージで使用していたかもしれません。

一方で、「昔から馴染みのあるネットバンクとは、何が違うのか?」、という疑問も浮かぶことでしょう。デジタルバンクはユーザーにより支持される銀行になるため、銀行が目指すべき方向性の1つです。そのため、デジタルバンクとネットバンクの違いを整理して、デジタルバンクへの理解をさらに深めることは大切です。

そこで今回は、デジタルバンクを正確にかつ深く理解するために、ネットバンクとの違いや国内外のデジタルバンクの事例などを解説します。

「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。

「デジタルバンク」とは

実はデジタルバンクには、明確な定義はありません。ただ、金融業界での使われ方から、「最新のデジタル技術を用いて、これまでにないサービスを提供している銀行」のことを「デジタルバンク」と表現していることが分かります。

「ネットバンク」と「デジタルバンク」の違い

ネットバンクとデジタルバンクの違いは、単純に「言葉が生まれた時期」です。
  • ネットバンク:2000年前後にインターネットを活用したサービスを提供し始めた銀行
  • デジタルバンク:2017~18年頃、スマートフォンが普及。ユーザーが多様なデジタルサービスを手軽に利用できるようになった時期に、デジタル技術を用いたサービスを提供し始めた銀行
両者の呼ばれ方について、経緯としては以下の通りです。
  1. 2000年前後、インターネットを活用した銀行サービスが珍しかった時期に、ネット上でサービスを提供し始めた銀行が「ネットバンク」と呼ばれるようになる
  2. 徐々にインターネットを活用した銀行が当たり前の存在になり、わざわざ「ネットバンク」と呼ぶことがなくなる
  3. スマートフォンの普及を背景に、デジタル技術を活用した新たなサービスを提供する銀行が現れ、それを「デジタルバンク」と呼ぶようになった
ネットバンクは、「ネット専業の銀行」と表されることがありますが、そもそもネットを使わないデジタルバンクはありません。その意味でも、ネットバンクとデジタルバンクに明確な違いがあるというよりは、単に「使われ始めた時期が異なる」という認識が正しいでしょう。

「チャレンジャーバンク」、「ネオバンク」と「デジタルバンク」は違うのか?

「ネットバンク」のほか、デジタルバンクとして分類される用語に「チャレンジャーバンク」、「ネオバンク」があります。ネットバンクとデジタルバンクの違いは前述した通り「言葉が生まれた時期」であり、またデジタルバンクは「チャレンジャーバンク」と「ネオバンク」を含む包括的な概念です。

では、「チャレンジャーバンク」と「ネオバンク」の違いとは、何なのでしょうか。

昨今では銀行免許を持たない銀行をネオバンク、銀行免許を持つ銀行をチャレンジャーバンクとする分類されることがありますが、この分類は必ずしも正確ではありません。イギリスのチャレンジャーバンクと呼ばれる銀行の多くは、最初は銀行免許を持たずにサービスを開始していたことをご存じの方も多いでしょう。両者は「使われ始めた国」および「生まれたきっかけ」が異なるという歴史的な経緯に気がつくと、その違いに合点がいきます。
使われ始めた国 生まれたきっかけ
チャレンジャーバンク イギリス 大手銀行の寡占状態に挑戦(Challenge)する画期的なサービスを提供する銀行
ネオバンク アメリカ 「Unbanked」と呼ばれる、銀行口座を持てなかった層へサービスを提供する新しい(NEO)銀行
チャレンジャーバンクはイギリスで生まれた言葉であり、ネオバンクはアメリカで生まれた言葉です。また前者が既存の銀行への挑戦を背景に生まれたのに対し、後者は既存の銀行へのアンチテーゼとして生まれた性格が強いと言えます。

どちらも「新しい形の銀行」であり、デジタルバンクに含まれる概念である点は同じです。ただし、日本においては、既にイギリス・アメリカで浸透したあとに両用語が到来し、チャレンジャーバンクとネオバンク、それぞれを使う人が混在したため、両用語の意味が混同して使われやすい状況になったと推測されます。

チャレンジャーバンクとネオバンクについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。

【メリット】デジタルバンクによってできること

それでは銀行がデジタルバンクになることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここではデジタルバンクのメリットを2点解説します。

【顧客満足度向上】いつでも銀行を利用可能

デジタルバンクは24時間365日、銀行の各種機能をユーザーに提供しています。24時間365日利用できることで、顧客満足度向上に寄与する代表的な機能が「ウォレット機能」でしょう。

ウォレット機能があれば、手元に現金がなくてもその場でPayPay(ペイペイ)や楽天ペイなどのキャッシュレス決済アプリにお金をチャージして支払うことができます。例えば、深夜にスマホ一つで買い物に行き、お金が足りない時にも便利ですよね。このウォレット機能のうち、「その場でキャッシュレス決済アプリにリアルタイムでお金を銀行口座からチャージする」部分こそ、デジタルバンクのなせる技なのです。

特に生まれたときには既にインターネットが普及していた「デジタルネイティブ」と呼ばれる、世代にとっては、24時間365日いつでもサービスを利用できることが当たり前になっています。デジタルバンクはそうした世代のニーズにも応えることができるでしょう。

諸外国では銀行がウォレット機能を提供していることが普通です。しかし日本ではいわゆる電子マネーと呼ばれるプリペイドカード型の支払いは2000年代の早い段階から使われるようになり、さらにスマホ時代に先行して、ガラケーがウォレット機能を提供するようになっていて、24時間365日「デジタル的な支払い」が可能でした。こうした諸外国より少し進んでいたことが、スマホ時代への移行にちょっと遅れをとってしまった、いわゆるイノベーションのジレンマに陥ってしまっていたと言えるのです。

【ニューノーマル時代対応】新しいサービスの提供が可能

デジタルバンクは、顧客が抱える悩みや不満をデジタル技術で解決し、新しいサービスを創り出すことができます

例えば、アメリカ大手金融機関「バンク・オブ・アメリカ」では、2018年にAIを活用した音声アシスタントサービス「Erica(エリカ)」をリリース。Ericaでは、例えばカード紛失時に「カードの利用を停止して」とEricaに声を掛けるだけで、簡単にカードの利用を停止することができます。「Alexa(アレクサ)」や「OK Google」の銀行アプリ版と考えれば分かりやすいでしょう。

他にも、実際のデジタルバンクは以下のような先進的なサービス・機能を提供しています。

<デジタルバンクのサービス例>
顧客の悩みや不満 解決するサービス
カードを紛失した。コールセンターに電話するのが面倒 スマホからタップ1つでカードの利用を停止
詐欺にあったかもしれない。どうしよう 自動で即時取引を停止。詐欺ではないことが判明すればすぐに再開
海外送金手数料、為替手数料が高い 手数料0円で送金・両替が可能
これらはあくまで初期の一例ですが、デジタルバンクの可能性を示す例であり、今後もデジタルバンクからさまざまな新しいサービスが生まれることが予想されます。

デジタルバンクになるために 2つの課題と解決方法

続いて、銀行がデジタルバンク化を進める上での課題2つとその解決方法を紹介します。

デジタルバンクをBaaSとして活用する

デジタルバンクになるための企画・開発を進める上で、デジタル人材の確保は欠かせません。しかし、こと日本の金融業界においては、人材面および資金面などの理由からデジタル人材の確保および育成は難しいのが現状です。

そこで既にある外部の優秀なサービスを活用して、デジタルバンク化を進めてみてはいかがでしょうか。具体的には既にデジタルバンクとして活躍している銀行のシステムをBaaS(Banking as a Service)として活用し、自身の銀行もデジタルバンクのサービスを提供する方法があります

実際にデジタルバンクに欠かせないサービス・機能を、他の銀行に提供し、ビジネスとしても伸びている金融機関が登場しています。例えば、アメリカのニュージャージー州にあるクロスリバー銀行は、もともとは地域に根ざした古い地域金融機関でしたが、いまや外部の銀行へ決済のライセンス機能を提供し、銀行のデジタルバンク化に寄与しています。

また日本においても後述する株式会社ふくおかフィナンシャルグループのデジタルバンク「みんなの銀行」は、デジタルバンクを含むサービス・機能をBaaSとして連携することを目指しています。

もちろんデジタル人材の確保および育成が自行だけで出来れば良いのですが、それが難しければBaaSの活用も検討してみてはいかがでしょうか。

フィンテック企業との連携

デジタルバンク化を進め、よりユーザーに選んでもらえるサービスを提供するためには、フィンテック企業との連携は必須と言えます。ユーザー視点で考えると、「PayPay(ペイペイ)」も使えるほか、携帯番号だけで送金相手の銀行口座にお金を送れるサービス「ことら送金」も使える銀行の方が、当然便利なわけです。だから外部のさまざまな企業と連携し、多様なサービスに対応させた方がユーザーに選んでもらえるデジタルバンクになれるでしょう。

▼ことら送金についての対談記事もぜひご覧ください。

海外・日本のデジタルバンク事例3選

最後に、海外(アメリカおよびイギリス)と日本のデジタルバンクの事例を見ていきましょう。

【アメリカ】Chime

「Chime(チャイム)」は最大200ドルの当座貸越を手数料無料で提供している「SpotMe」を提供している、2013年設立のアメリカのデジタルバンクです。

同社は、スピーディーな個人向け融資に注力している点が特徴といえます。例えば2020年3月末に、アメリカ政府は新型コロナウイルス感染症拡大による経済援助策として、一定の年収を下回る国民へ現金を給付しました。しかし、全国民に給付がいきわたるにはそれなりの時間がかかかることが想定されました。

そこで、この給付期間の短縮を実現したのが「Chime」です。Chimeは政府による給付が決まると、政府にかわって、いち早くChimeの顧客口座に給付金を振り込むと発表しました。さすがに全員というわけにはいかず、ランダムに抽出した限られた数の顧客に限定はされましたが、新型コロナウイルス感染症拡大によってお金に困っていた人々に支持されたことは間違いありません。

その証拠にChimeは急激に顧客数を伸ばし、アメリカでも最も人気のあるデジタルバンクの1つとなりました。いまではアクティブユーザーが1,300万人を上回っています。

【イギリス】Revolut

2015年に設立された「Revolut(レボリュート)」は、日本を含む200以上の国・地域で展開しているイギリスのデジタルバンクです。ユーザー数は個人ユーザーが2,000万人以上、法人ユーザーが50万以上に上ります。

同社の特筆すべきサービスが、「Revolut <18」と「為替・送金手数料無料」です。

「Revolut <18」は、お金の管理ができる10代向けのサービスです。同サービスにおいて、親は自身のアカウントを子どものアカウントと紐づけることができます。それによって、子どもが利用するデビットカードの上限額を設定できるほか、サービスに搭載されたチャット機能で子どもとコミュニケーションを取りながら、必要なら上限額を引き上げることもできるようになるのです。
このチャット機能があれば、以下のような会話を通じて、親は子どもにお金の使い方を学んでもらうこともできます。

子ども:今日は家で友だちと遊ぶからお菓子を買いたいな。ちょっと今日のお小遣いを増やしてほしい
親:良いよ。でもその代わり帰ったらその分しっかり勉強しなさいね。

また、Revolutは上限額や両替時間帯の条件はありますが、「為替・送金手数料が無料」です。為替手数料が無料なため、海外旅行に行く際は最も有利なレートで外貨に交換できるほか、ウォレット機能で支払いができたり、ATMから引きだしたりすることができるので、外貨両替所に並ぶ必要もありません。

こうしたほかの銀行にはないサービスを提供している点こそ、Revolutがデジタルバンクたる所以と言えます。

【日  本】みんなの銀行

株式会社ふくおかフィナンシャルグループのデジタルバンク「みんなの銀行」は、日本のデジタルバンクの先駆けとも言える銀行です。先述した通り、みんなの銀行は他行のデジタルバンク化をサポートするシステムの提供を目指しています。その意味でIT企業の側面もあるといえます。

またみんなの銀行は全国のミレニアル世代(1980年~1995年に生まれた世代)をメインターゲットに据えている点もユニークですよね。「お金のSNS、はじまる。」という同社のキャッチコピーからして、若い世代をターゲットにしていることが分かります。

みんなの銀行については、以下の記事でも語られていますので、ぜひご確認ください。

まとめ

デジタルバンクとネットバンクの違いは「言葉が生まれた時期」にすぎません。また、いまではデジタルバンクはネオバンクやチャレンジャーバンクを含む上位概念という程度に理解しておくのが正しいと思います。

大事なのは言葉の違いや定義よりも、リアルタイムペイメントのような新しいデジタル技術とスマホに代表されるネット技術を活用してお金を必要とする人を結び、これまでには無かった、あるいはできなかった新しい(ネオ)サービスに果敢に挑戦(チャレンジ)することです。

英語圏のサービス開発の現場では、ユーザの悩みや不満はペイン(Pain)、つまり苦痛と捉えます。

「デジタル技術を用いて、ユーザーのペインを解消する新しいサービスを提供すること」が、デジタルバンクの肝です。ペイン解消により顧客に支持され、よりサービスが利用されるようになる...そのサイクルをデジタルバンクはデジタル技術を武器に創り出しているのです。

いまではそのための技術やサービスがたくさん生まれています。BaaSの活用や地域企業との連携も視野に入れ、デジタルバンクへの歩みを進めていく。まさにそんな時代がやってきた、と言えるでしょう。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
画像

執筆 オクトノット編集部

NTTデータの金融DXを考えるチームが、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信。「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、金融サービスに携わるすべての人と共創する「リアルなメディア」を目指して、日々奮闘中です。

感想・ご相談などをお待ちしています!

お問い合わせはこちら
アイコン