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挑戦者と語る

保険×ヘルスケア先進事例!健康で安心安全な暮らしへの取り組みとは

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ウェルビーイング、ヘルスケアはSDGsの「すべての人に健康と福祉を」という目標にも掲げられ、健康な状態を保つことの重要性が世界的に高まっています。保険業界も、従前のように万が一に備えた保障だけではなく、健康リスクそのものを低減させるためのヘルスケアのアプローチに注目しています。社会全体として持続的に健康で暮らせることを目指し、治療から予防へのシフト、身体や経済面だけでなく心の豊かさも追求するようになっています。その中でデジタルテクノロジーを活用した取り組みが政府や企業主導で推進されています。
今回は、ヘルスケアを取り巻く環境変化、保険×ヘルスケアの先進事例について、NTTデータで保険ITサービスの保険ビジネスのフォーサイト策定・発信に取り組む矢野高史さんに語っていただきました!

本記事は、2023年1月25日のNTTDATA Innovation Conference 2023でのパネルディスカッション「保険×ヘルスケアビジネスの将来展望 ~ スタートアップや大学・研究機関との未来共創 ~」に際し、モデレータの矢野さんにインタビューした内容に基づいて執筆しています。
パネルディスカッション視聴にあたって、その理解を深めることができる内容となっていますので、ぜひ事前にご一読ください!

ヘルスケアを取り巻く環境変化

――SDGsの目標3として「すべての人に健康と福祉を」が設定されるなど、今やウェルビーイング、ヘルスケアは世界共通のテーマとなっています。実際にはどのような変化が起こっているのでしょうか。

矢野さん 国内では、まず国民医療費の増加があげられます。少子高齢化の影響により国民一人あたりの医療費は過去10年で毎年2.4%も増加しており、そこに不安を持つ人が増えています。また国や地方公共団体も、社会保障制度を継続していくために、個人の健康維持に目を向け始めています。

企業が社員に寄り添った健康経営に意識を向けるようになった、ということも変化としてあげられます。昔はがむしゃらに働く企業戦士が求められた時代もありましたが、今は社員一人一人を大切にしようという意識にシフトしてきています。

また、コロナ禍による変化もあげられます。家で過ごす時間が増えたことにより、ストレスを感じている人の割合も増えています。

――社会構造の変化だけでなく、時代とともにウェルビーイングやヘルスケアに関する私たちの価値観も変わってきているということですね。

矢野さん 他にも、Z世代などの若い世代を中心に、商品やサービスを選ぶ際にも環境への配慮が意識されるようになってきていますよね。世の中がこのように変わりつつある中で、デジタルテクノロジーを使って「健康になりたい」とか「安心安全に暮らしたい」という気持ちは、みなさん持っていらっしゃるのではないでしょうか。

ヘルスケアの未来を実現するテクノロジー

――健康で安心安全に暮らせる社会の実現というお話がありましたが、テクノロジーを活用することでどのように私たちの生活は変わっていくとお考えでしょうか。

矢野さん まず、あらゆる事象のデータ化が進むと考えています。生活者個人の健康情報や環境情報も含むデータが生体センサやPHR/EHR(※)などから上がってきて、それが一元管理されるようになります。

例えば、そのデータをAIがさまざまな角度から分析・診断し、私たちはそのAIのリコメンデーションを参考にすることで、無理をせず、一人一人に合った健康行動を取る、といったことが可能になります。

また、今注目を集めているメタバースやデジタルツインでは、拡張現実世界で人と人との新たなコミュニケーションや、健康になるための行動変容へ向けた新たな取り組みが進むと考えられます。さらには、バイオデジタル技術の進化によって、これまで以上に病気の可能性を早期に発見し、予防することが可能となります。

(※)PHR/EHR:ヘルスケアに関係するデータの種類。PHR(Personal Health Record)は、患者自身が自分の健康を管理することを目的とした健康関連情報・ライフログのこと。EHR(Electric Health Record)は、医療機関が管理する個人の電子カルテに含まれる診断に関する情報・検査情報・患者の基礎情報・レセプト情報のことを指す。

――今お伺いしたメタバース、VR/AR等のテクノロジーを活用した事例について教えてください。

矢野さん 例えば、現在協業しているスタートアップのゼネラ社とはバーチャルRUNというスポーツイベントに取り組んでいます。センサを身体につけてその場で足踏みすると、ディスプレイ内でアバターがバーチャルなランニングコースを走ることができる仕組みを作っています。

身体の不自由な方やなかなか屋外に行けないような人でも、自宅にいながら3Dモデル化された観光地などのコースで運動ができるというものです。これはバーチャルでの参加だけでなく、リアルで参加することもできるインクルーシブなイベントでもあります。また、海外からも参加できるので、海外の人が日本の紅葉のある山並みを走る体験ができる等、観光イベントとしての効果も狙っています。

矢野さん 次は、私たちが連携する東京大学 葛岡・雨宮・鳴海研究室の取り組みになりますが、拡張満腹感というARにより食習慣を改善させる研究もあります。これはARゴーグルを通して見えるクッキーの大きさを変化させることで、満腹感を錯覚させ、食べる枚数をコントロールしようというものです。小さく見せると食べる量が増え、大きく見せると食べる枚数が減ることが実験で分かっていて、視覚だけでも脳は騙されてしまうそうです。

ヘルスケア未来像に向けたNTTデータの取り組み

――未来のヘルスケア社会の実現に向けた様々な最先端の取り組みをご紹介いただきました。NTTデータで今取り組まれていることは何でしょうか。

矢野さん まずは、フォーサイト、つまり未来の姿を描くことです。私たちは、フォーサイトデザインメソッドという方法を使って、未来を描くところから始めます。

ポイントは、明るい未来を描くということです。未来が明るければ明るいほど、自然とみんなそちらの方向に行きたいなって思えるじゃないですか。自分たちがこうなりたいという未来を描かず、このままだと何か悲惨な未来が待っています、ということだけ言っていても仕方がない。「デジタルテクノロジーを活用することで、私たちはこんな明るい未来を目指します」ということを描いた上で、それをきちんと伝えることが重要だと思っています。

二つ目は、社内に留まらない、スタートアップや大学・研究機関と連携した取り組みです。私たちNTTデータだけでやれることはすごく限られていると思っています。なので、社外から新しいテクノロジーやナレッジを取り入れ、一緒に未来を創っていくことが重要です。

もちろん、産学やテクノロジーの会社と連携するだけではなく、保険会社やヘルスケアの領域に強い他の業界の企業もあるので、いろんな業界の人たちと一緒に創っていくということも意識しています。

矢野さん 三つ目は、ヘルスケアに係る共創施設の開設です。単に未来を描いただけでは、各自がばらばらのイメージを持つことも多く、関係者と議論する際も空中戦に終始してしまいがちです。

それならば、実物を触りながら、プログラムコードを眺めながら、ARの町並みを見ながら、もうちょっとこうしようねと会話した方が、より早く描いた未来にたどり着くことができるのではないかと思っていて、正にそういうことができる仕組みを創ろう(または作ろう)としています。

――直近予定しているイベントの詳細について教えてください。

矢野さん 2023年1月24, 25日開催のInnovation Conference 2023において、”保険×ヘルスケアビジネスの将来展望 ~スタートアップや大学・研究機関との未来共創~”をテーマにパネルディスカッションを行う予定です。

パネリストとしては、先ほど紹介したバーチャルRUNに関するAI技術に知見を持ち、地域のヘルスケア課題解決に取り組むゼネラ株式会社の藤田社長、拡張満腹感などのクロスモーダル研究の先駆者である東京大学の鳴海准教授をお招きする予定です。

当日は、ここでは紹介していない先進の取り組みやヘルスケアの未来につながる研究についても語りますので、ぜひ視聴していただけると嬉しいです。


〈プロフィール〉

矢野 高史 さん
NTTデータ 第三金融事業本部 保険ITサービス事業部 戦略デザイン室長  
国内大手生損保、外資系コンサルティングファーム、グローバルクラウドベンダーにて、DXを推進。2021年10月、保険業界向けコンサル組織の責任者として入社。保険業界の未来を描き、DXを推進することで、生活者の健康や安心安全の実現を目指す。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。
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執筆 オクトノット編集部

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