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金融が変われば、社会も変わる!

挑戦者と語る

家族×フィンテックの挑戦者 中村貴一さんと語る 家族を想うITサービスの姿

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スマートフォンの普及により、エンタメから金融まで、あらゆるアプリやWEBサービスで個人化が進みました。そのため、家族同士でサービスを共有する上ではさまざまな問題や課題が生じています。私たちは今、このようなITサービスをどのように家族と利用しているのか。そして、未来に向けてどんなサービスを必要としているのか。家族向けフィンテックの挑戦者・中村貴一さんと、家族を持つ3人のNTTデータ社員が語り合いました。

現在の生活スタイルについて

――花谷さんはお子さんが18歳と子育ては一段落されたところ、土田さんは保育園に通うお子さん、宮田さんはまさにお子さんが生まれたばかりと、ライフスタイルは皆さん大きく違います。ライフスタイルによって違うと思いますが、家族で共有しているアプリやWEBサービスは普段どのようなものを利用していますか。

花谷:つい先日ですけど、音楽のサブスクを始めたいと思い立って『Apple Music』に加入しました。同居している娘は、それまで音楽アプリの『dヒッツ』を使っていたのですが、そっちは退会してもらって『Apple Music』のファミリープランに入りました。あとは『Amazonプライム』に入会しているので、私のアカウントを使って娘が『Amazonプライムビデオ』でよくアニメを観ています。

中村:同じアカウントを家族で共有していると、お互いにどんな映画を見ているのか分かっちゃいませんか?

花谷:それもそうなのですが、不便なことが多いですね。娘がアニメを見過ぎるせいで、「次に見る」に表示されていた僕の好きな映画が追いやられてアニメばかりになっています。かといってアカウントを別にすると料金もかかるし、娘がどれだけ利用しているのかを把握できなくなるのも困るので、僕のアカウントを共有するしかないのかなと思っています……。

土田:私は写真共有アプリですね。保育園に通う4歳の娘がいるので、家族アルバムアプリ『みてね』でおじいちゃん、おばあちゃんと写真を共有しています。ポチポチと子どもの写真を選べば自動で届けられるので本当に助かります。1枚1枚メールで送るのは手間がかかるので、『みてね』を使わないことは考えられないです! あとは、一般的ですけどスーパーなどの宅配アプリを使っています。

中村:『みてね』は800万ダウンロードされていて、ママの3人に1人が使っているらしいです。

土田:確かに周りのママ友もほとんど使っていますね。本当に便利です。私達の親世代には『Googleフォト』はハードルが高いけど、『みてね』だったら使いこなせるところも人気の理由だと思います。

宮田:うちもちょうど2週間前に長男が生まれたばかりなので、『みてね』で子どもの写真を両親に送りまくっています。あと、結婚当初から使っているものだと『TimeTree』というスケジュールの共有アプリを活用しています。

中村:『TimeTree』は全世界で2,800万、国内でも1,200万ダウンロードされているようです。結構使っている方が多いと思います。

宮田:子どもが生まれる前は妻の検診などの付き添いをする機会が多かったのですが、『Time Tree』に登録してもらえればすぐに通知が来るので、パッと予定を確認できるところが便利でした。あとは、オムツを買うとかの予定もスケジュールに入れて、メモ替わりにもしています。

土田:私の場合、そのままシェアすると仕事の予定が全部夫に分かってしまうのには少し抵抗があるので……、スケジュールの共有は諦めています。

花谷:全部の予定を共有したくないであれば、必要な予定だけを『TimeTree』 に自分で入力する。それくらいは頑張らないといけないよね。

土田:その手間をかけるくらいだったらアプリを使わずに、口で伝えた方が簡単でいいやって、なっちゃいます(笑)。

中村:写真共有機能は『Googleフォト』にもあるし、スケジュールの共有は『Googleカレンダー』でもできます。でも皆さんそういう使い方はしてないですよね。というのも、手間がすごくかかるからなんです。例えば写真を共有しようと思ったら、アルバムを作ってそのリンクを家族にメールで送って招待する。ここまで導線が長いと我々の親世代が使いこなすのはちょっと難しいですよね。その点『みてね』や『TimeTree』は、最初から家族で使いやすいようにデザインされています。だからこそ、ここまで普及しているんだと思います。これからのアプリやWEBサービスは、もっと家族やグループに向けたデザインをしていく必要があると考えています。

お子さんが生まれたばかりのNTTデータ 金融事業推進部 技術戦略推進部 主任 宮田孝二さんは、オンラインで参加しました

家計管理で起こっている問題

――さまざまなアプリを利用されているのですね。家族で共有するもので、重要なのが家計管理だと思うのですが、ここ数年でスマホ決済などの支払いサービスが増え、家計の管理も大きく変わったと思います。皆さんのお家ではどのように家計を管理していますか?
宮田:うちはクレジットカードのアプリを入れていて、いわゆる家計簿アプリは使っていません。カードの使用履歴を見て、近所のスーパーの買い物だったら食費とか、使ったお店から何にどれくらいお金を使っているかを把握しています。ただ、私のクレジットカードが本カードになっていて妻は家族カードを使っているので、妻のアプリからは家族カードの履歴しか見られない。僕が使った分は結局、口で伝えるかLINEなどで知らせるしかない。そこが今一番もどかしいですね……。

中村:カードの引き落とし先はどうしていますか?

宮田:夫婦がお互いに毎月決めた生活費を入金する共有口座を作って、そこから引き落とすようにしています。

土田:でも、共有口座の明細も夫婦どちらかのアカウントからしかチェックできないですよね。うちも銀行の共通口座にお互いが生活費を入金して、家族カードで買い物をするようにしています。共通口座と言っても、そもそも私のアカウントで、家族カードもそこから派生したものなので、基本私しか明細を見られないような状態になっています。そうすると夫は入金だけで、口座の預金管理が私の仕事になる感じがあります。そこがちょっと納得いかないかないところもあるんですよね。

中村:意外と知られていないんですけど、実は三菱UFJ銀行さんは2年くらい前から『ファミリー口座照会サービス』というのを始めていて、家族の口座情報をお互いのマイページ上に表示できる機能を実装しています。

土田:それは知らなかったです。その機能がどの銀行にもあるといいですね。

花谷:2人とも共同口座を使ってちゃんと管理しているんですね。偉いなぁ。うちは私のお給料から家計費を妻に渡して、あとはお任せという古いタイプのシステムです。支払いもスーパーで買い物をするときはそのスーパーのクレジットカードを使うとポイントがたくさんつくのでそれを使っているし、コンビニで買い物するときは家のものであっても僕のポイントにしたいので、『d払い』で支払いをしています。最終的にレシートを妻に渡して、現金を精算してもらうようにしています。

中村:土田さんと宮田さんは日常の飲食やコンビニでの支払いはどうしていますか?

宮田:家族の物を買うときはクレジットカード、個人のものはスマホ決済で払うようにして使い分けています。

土田:私も家計の支払いは家族カードで集約しています。でも、口座の管理も含めて何かすっきりしないです。どうしたら一番いい形ができるんでしょう?

中村:共働き世帯にとってベストだと思うのは、まず銀行に共通口座を1つ準備し、そこに紐付く形でクレジットカードの家族カードを作ります。その家族カードと共有口座を『マネーフォワード』に登録し、アカウントを夫婦間でシェアすると全明細を共有できます。さらにほとんどの銀行には生計を共にする親族に限りキャッシュカードをもう1枚発行できる『代理人カード』というサービスがあります。キャッシュカードを夫婦2人共が持てば、預入や引出も自由にできるようになります。これも便利なサービスですが、ほとんどの方が知らないんですよね。そこまでやると家族間で金融情報を全てシェアできるようになります。

花谷:でも、それってすごく面倒ですよね。頑張りたくないから使っているサービスなのに、これだと本末転倒ですね。

中村:そうなんですよね。僕達は家族という単位でも生きていますので、そこを快適に暮らしていこうと思ったときに個人という単位を解決していく必要がでてきます。でも、そのステップはとても難しくて、ITリテラシーが高くないと乗り越えられない。だからこそ、世帯で簡単にお金を管理できる仕組みが提供されると暮らしがもっと快適になると思っているんですよね。

個人アカウントから家族で使えるサービスへ

中村:実は金融サービスと同じようなことが他のサービスでも起こっています。マンガアプリで買ったマンガをシェアできないとか、『Amazon』でも家族で使うお米を夫のアカウントで購入すると、妻のほうからは注文履歴を見られないし、配送状況も夫に確認しないと分からない。これを今後20年も、30年もやり続けるのはストレスですよね。『Time Tree』でスケジュールは解決され、『みてね』で写真共有ができるようになったかもしれないけれど、ライフスタイル全体を見ると、まだまだ部分的にしか解決されていません。家族アカウントが使えるかどうかというのは、すごく大きな問題だと思います

宮田:中村さんが『共同財布』※を開発されたのも、家族で使えるサービスを作りたいという想いからですか?

中村:共同財布は2017年に立ち上げたのですが、最初は家族で使うことを全く想定していませんでした。当時はフィンテックが流行し始めていて、特にブロックチェーンが注目を集めていました。僕は技術者なのでブロックチェーンを使って金融で何か新しいビジネスができないかなと考えたときに、これからはインシュアテックの時代が来る、そこで思いついたのが共同財布の前身となる『Gojo(ゴジョ)』でした。

保険組合の組合費を『Gojo』にプールしておいて、トラブルが起きたらそこからお金を受け取ることができる。そんな使い方をイメージしていました。保険組合を作るとどんないいことがあるかというと、例えば美容整形というのは通常の保険はかけられないので、手術前にデポジットしておけば、いざというときにお金がもらえる。そういう仕組みが作れるんじゃないかな、というところから始まったプロダクトだったんです。

土田:最初は保険組合を作るためのものだったんですね。

中村:そうなんです。でも、実際に使ってくれそうなユーザーや保険業界の方々にヒアリングすると、日本人の99%は国や民間で提供される保険にすでに加入しているので、保険組合を運用するニーズはほぼないことが分かったんです。そこで苦肉の策としてコミュニティでお金を管理できるという打ち出しでリリースしました。当初はサークルなどの会費運用を考えていたのですが、いざスタートしてみると、家族が使い始めた。

例えば、遠方に住んでいる両親のために子ども達が毎月2万円ずつ積み立てて、実家に帰ったときの買い物の精算や、両親を旅行に連れていったときの旅費精算に使う、といったような使われ方です。そこで初めて家族の間のお金のやりとりに課題があるのではないかと気づき、ヒアリングを重ねていくと共働き夫婦のお金の問題が浮き彫りになっていったんです。昔の日本では専業主婦が当たり前だったので、家計も夫の銀行口座1つあれば用は足りていました。

でも今は、専業主婦が600万世帯なのに対して共働きは1,200万世帯と、圧倒的に共働きが多い時代になりました。共働きとなると1つの家庭に銀行口座が少なくとも2つあるわけです。でも、家賃は1つの口座からしか払えないし、それぞれの口座の情報が共有できないから夫婦によってはExcelとかスプレッドシートを使って毎月精算している方もいらっしゃいます。それで、夫婦間のお金の問題を解決しないといけないんじゃないかなと思って、アプリの見せ方を変えていったら共働き世帯を中心にどんどん利用が伸びていきました。

花谷:それだけ多くの人が家族で共有できる金融サービスを求めていたということなんですね。

※『共同財布』とはカップルや夫婦などの家族、その他にもシェアハウス・サークルなどのグループで共有できる共同財布アプリ。集金・精算などのお金管理が簡単にでき、LINE Payによる支払いも可能。さらに、お金の出し入れはデータ化され、何に・誰が・どれだけ使ったのかも確認することができる。現在はサービスを停止している。

これから期待する金融サービスとは

――今後、お金の分野でどんなサービスがあったらいいなと思いますか?
宮田:私も妻もこれまでライフプランを考えてこなかったのですが、長男が生まれて生命保険に加入したほうがいいのかと焦り始めています。ただ、お金周りのことはファイナンシャルプランナーであっても気軽には相談しづらいので、チャットで相談できたり、自動で計算してくれたりするアプリがあると嬉しいです。

中村:実はそういったサービスはすでに始まっていて、例えば『お金のアンサー』というものが有名です。チャットでファイナンシャルプランナーに相談できるサービスですが、実際にファイナンシャルプランナーがやっている作業は、収入と将来のキャリアプランを雛形に入力して自動計算をすることです。そのナレッジを持っている人がプロダクトを作ったらAIによるファイナンシャルプランンニングサービスはすぐに実現できると思います。

花谷:できれば誰にでも当てはまるような一般的なプランではなく、自分と同じ規模の会社で働いている人がどれくらいの年齢で家を買って、どんな保険に入っているというデータを基にしたライフプランを作ってくれるようなサービスがあるといいですよね。

土田:うちの場合は、娘が毎日のように保育園で描いた画や工作を持って帰ってきます。きりがないので、しょうがなく写真を撮って捨てているんですけど、写真と紐付けて思い出も一緒に残しておける機能があると嬉しいです。お金も同じで、私は今でも頂いた結婚祝いや出産祝いをご祝儀袋に入れたまま残しています。特別なお金でも普通に入金するとただの数字のデータになってしまうのが嫌なんです。

でも、デジタルを活用すれば、特別なお金を使うときにアプリ上でメッセージや動画を流すようなこともできるんじゃないかなと……。思い出も家族で一緒に共有できるアプリができたらいいですね。

花谷:今回みんなで話してみて思ったのは、アカウントが共有できないだけじゃなく、『Amazon』にしても銀行口座にしても、全ての情報がサービスを提供する側に管理されているところに問題があるということ。例えば『Amazon』でお米やトイレットペーパーを買ったということは妻と共有するけれど、仕事で使うパソコンを購入したことは共有しないというように、全てをユーザーがコントロールできれば何の問題もない。購買したデータは、私がいなければ生まれないデータなわけです。

だったら、そのデータをユーザーが自由に使ってもいいと思うんですよね。家計簿アプリの『マネーフォワード』が人気なのは、いろいろな銀行にある複数の口座や何枚もあるクレジットカードを一元管理できるところですよね。これと同じように、ユーザーが主導権を持ったサービスが提供されるようになれば、もっと上手く家族が一緒にいろいろなサービスを楽しめる時代になると思います。

中村:本当にそう思います。家族って物理的に一緒にいますし、全ての情報を共有すればいいんじゃないって思うかもしれないですけど、プライバシー性の高い情報を全てオープンにはしたくないという気持ちは、当然誰もが持っていますよね。

今回3人のお話を聞いて、特にITの世界では、グループという単位でサービス設計がされておらず、まだまだ解決されていないことが多いと改めて感じました。誰しも独立した個人として生活をしている一方で、家族や会社といった集団の一員としても生きているわけじゃないですか。本来はその単位ごとにプロダクト設計をしたほうがいいのに、ほとんどのプロダクトは未だに個人だけに向いている。

今後はいかに家族という集団に向けたプロダクトを作ることができるかが、より重要な時代になってくると思います。
〈プロフィール〉

中村 貴一 TAKAKAZU NAKAMURA
ファミリーテック株式会社 代表取締役/最高技術責任者
早稲⽥⼤学卒業後、FutureOne株式会社に⼊社し、エンジニアとしてのキャリアをスタート。その後、ITベンチャーを経て、株式会社Baycurrent Consultingに転職し、⼤⼿ゲーム会社のシステム基盤開発や先端技術の研究⽀援などを⾏う。2016年、株式会社BrainCatを創業し、⼤⼿企業やスタートアップの業務⽀援を⾏う。その後、グループウォレットアプリ「Gojo/共同財布」を開発し、2019年に株式会社CAMPFIREに事業譲渡。現在は、新たにファミリーテック株式会社を設立し、家族をより豊かにするサービスを生み出すべく奮闘中。

花谷 昌弘 MASAHIRO HANATANI
NTTデータ 金融事業推進部 デジタル戦略推進部 部長
妻と18歳の娘さんの3人家族。『Amazonプライムビデオ』の共有をどうするかが目下の悩み。

土田 真子 MAKO TSUCHITA
NTTデータ 金融事業推進部 デジタル戦略推進部 課長
夫と4歳の娘さんの3人家族。忙しく働きながら家事・子育てに奔走中。

宮田 孝二 KOJI MIYATA
NTTデータ 金融事業推進部 技術戦略推進部 主任
妻と生まれたばかりの長男の3人家族。新米パパとして今後のライフプランを思案中。
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執筆 オクトノット編集部

NTTデータの金融DXを考えるチームが、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信。「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、金融サービスに携わるすべての人と共創する「リアルなメディア」を目指して、日々奮闘中です。

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