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金融が変われば、社会も変わる!

コラム

2023年を振り返って ChatGPT、キャッシュレス、資産形成、人材確保など

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2023年も終わりを迎えようとしています。金融とデジタルの視点で社会を観察し、情報を発信するオクトノット編集部でもいろいろな変化を感じた1年でした。社会の動向に沿って2023年を振り返ります。

生成AIの隆盛とAIガバナンス

2023年は生成AIに注目が集まった年でした。2022年11月にサービスを開始したChatGPTはたいへんな勢いで広まりました。検索サイトに工夫してキーワードを入力して検索するスタイルから、少し詳しい人にお願いや質問をするように文章を入力することで、かなりの精度の回答を得て作業を進めることが多くなりました。業務の効率化が期待されていますが、いまだ強力なユースケースは出ているとは言えません。しかし生成AIの利用で私たちが何かを調べることは明らかに効率化しています。

一方で生成AIの利用に慎重な姿勢をとる企業も増えてきており、2023年3月頃から国内外の金融機関を含む多くの企業で生成AIの利用を禁止する動きも出てきました。これに対し、ChatGPTを提供するOpenAIは、かねてより提携関係にあったMicrosoftと共同でAzure OpenAI Serviceを提供しました。このサービスは、企業の機密情報を保護しながら生成AIである程度の品質の回答を利用することができるサービスで、多くの企業が採用を決定するようになりました。Microsoftは2023年7月にMetaと生成AIで提携を発表しており生成AIの中心的なプレイヤーとなっています。

生成AIの利用が進むなか、AIガバナンスについても関心が高まっています。2010年代から始まった第三次AIブームで業務にもAIが使われることが多くなりました。企業で利用されるAIは、学習データの性質がモデルに反映されることもあり、社会的、倫理的な振る舞いが問題視されることもありました。このほかAIの利用による機密情報の漏洩や、他社の知的財産権等の権利侵害なども問題になります。

AIの挙動を適切にコントロールしたうえで社会活動に役立てるため、政府や業界団体、学術団体、企業などがAIのガイドラインを公表しています。AIガバナンスに対する取り組みは注目を集めており、AIの利用は、ガイドラインで提示された「原則」を、企業の業務として「実践」していくフェーズに入っています。

量子コンピュータの認知向上

2023年3月に理化学研究所が国産初の量子コンピュータの稼働を始め、量子コンピュータの認知が高まりました。量子コンピュータは、これまでのコンピュータが使っていた「電圧」による0か1のビットの表現ではなく、「量子ビット」を使い、1ビットで持てる情報量を膨大に増やすことができます。この量子ビットを使った量子コンピュータは、スーパーコンピュータで1万年かかる計算処理を200秒で実行したという発表もあり、その性能が期待されています。
この量子コンピュータの実用はしばらく先のようですが、ひとたび実現されたらこの高速な処理能力により大きなセキュリティリスクが発生します。量子コンピュータを使えば、インターネットで使われているRSA暗号や楕円曲線暗号などが簡単に解かれてしまうのです。これに対して「耐量子計算機暗号」という量子コンピュータを使っても解読が困難な暗号の標準化も進められています。「耐量子計算機暗号」のうち「格子暗号」が有力であり、オクトノットにも「格子暗号」について解説した記事があります。

キャッシュレス決済の普及

キャッシュレス決済もいっそう普及しました。新型コロナウイルス感染症の脅威も落ち着き、会食の会計や精算にキャッシュレス決済が使われることも多いです。2023年4月に経済産業省が、2022年のキャッシュレス決済の比率が36.0%であったと発表しました。2018年4月に経済産業省が発表した「キャッシュレス・ビジョン」で掲げた目標「2025年までにおよそ倍の4割程度、将来的には世界最高水準の80%の達成」に近づいています。こうした状況をまとめた記事を公開しています。
また、クレジットカード決済やデビットカード決済、QRコード決済など、さまざまな種類に分かれるキャッシュレス決済について、利用者、店舗の視点で整理した記事も公開しています。この記事では、利用者や店舗にとって、どのキャッシュレス決済がおすすめなのかをまとめています。さらにキャッシュレス決済の普及が進む現在において、金融機関が着手すべきことについて提言しています。

資産形成を後押しするテクノロジー

2024年から導入される新しいNISA。大きな特徴は非課税保有期間が無期限化したこと、非課税投資枠が大幅に拡大したことです。政府が資産所得倍増プランを掲げ、あらためて「貯蓄から投資」へ転換を促す機運が高まるなか、投資に対するデジタル技術の活用も実現されています。2023年5月にリリースされた「ALTERNA(オルタナ)」もその一つ。ブロックチェーンを活用したデジタル証券として、個人投資に新たな選択肢をもたらすことが期待されています。

※記事執筆時点ではデジタル証券は新しいNISAの投資対象とはなっておりません。

「ALTERNA」を通じた不動産投資は、自分が大家さんになってテナントからの賃貸収入を配当として受け取る仕組みになっています。これまで、不動産分野は、個人向けの金融商品組成がなかなか上手くいっていなかった領域でした。個人投資家を対象として、小口化とある程度の流動性を確保するためにブロックチェーン技術を使って発行されるデジタル証券であるセキュリティトークンを活用していることが特徴的です。
資産形成においては「BaaS」も重要なキーワードになっています。さまざまな業種の企業が、自社のサービスと銀行の機能を組み合わせた新サービスの創出に挑戦しています。企業の活動に金融の機能を組み込む「Embedded Finance(組込型金融)」とともに金融と非金融の融合をあらわすキーワードになっています。2022年12月に開始した「dスマートバンク」は、三菱UFJ銀行とNTTドコモの業務提携により誕生したサービスです。

日常生活に欠かせない携帯電話の利用と金融サービスを組み合わせることでポイントの付与などのサービスが行われます。dポイントによるポイント投資をサポートするほか、お任せ資産運用などのサービスとの連携もあります。金融サービスへの強力な顧客接点となるスマートフォンを利用し、投資を積極的に行う環境も整備されつつあります。

人材不足の処方箋

雇用の流動化が進むなか、企業の経営者、人事部門、また現場のみなさまはそれぞれの立場で、人材の育成や採用にお悩みを抱えていることでしょう。オクトノットでは2023年に「人材不足への処方箋」をテーマに記事を公開しています。NTTデータ社内での社内公募による人材流出の防ぎ方として、“新しいことに挑戦する”というミッションを持った常識外れの組織を作り、運営する取り組みが記事になっています。
また、オープンで自律的なキャリア形成についての回では、「社員がキャリアと向き合うことは、組織へのエンゲージメントを高める作用があるため、最終的には転職を抑止する効果につながる」などの産業・組織心理学研究の仮説が、組織内で運用されている実態が生々しく語られています。
これらの記事は人材の流動化が意識される現代の日本社会において、示唆に富む内容となっています。

終わりに

2023年、オクトノットは「金融×デジタル」をターゲットとし、独自の視点で情報を発信してきました。今年は、コロナ禍からの回復が本格化した年でした。そのなかで生成AIへの期待と不安、量子コンピュータへの注目、キャッシュレス決済の進展、資産形成の後押し、人材不足への対策を注目すべきトレンドとして取り上げました。2024年も独自の視点で読者のみなさまのお役に立つ、世の中に先んじた情報を発信していく予定です。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
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執筆 オクトノット編集部

NTTデータの金融DXを考えるチームが、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信。「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、金融サービスに携わるすべての人と共創する「リアルなメディア」を目指して、日々奮闘中です。

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