Web3とこれまでのWebの違いは何か?
近年台頭してきたこのWeb3とはこれまでのWebに関する課題を解決できると期待されています。Web3がどのような課題を解決できるのかを明らかにするために、まずはWeb3が登場するまでのWeb1.0・Web2.0についての理解を深めていきましょう。下の図はWeb1.0からWeb3の流れを示したものです。
図1:Web1.0からWeb3への流れ
・Web1.0
Web1.0 は1989年に発明されたWorld Wide Web(WWW)がもとになり、1990年代半ば~2000年代半ばに急速に普及しています。世界中の情報がどこからでも手軽に手に入るようになりました。
しかし情報を発信するためにはWWWの仕組みをよく理解して使う必要があり、情報発信まで踏み込めない多くの人にとっては、Webページをブラウザで見て情報を受け取るだけに留まるReal Onlyの時代だったと言えます
・Web2.0
現在我々が利用している多くがWeb2.0と言えます。2000年代半ば~2010年代後半に現れた技術を利用しているのがWeb2.0です。Web1.0の登場は画期的でしたが、情報を発信する側は受け取り側ほど楽ではなく、発信の敷居は高い状態でした。その解決策として生まれてきたのがインターネットやWebの仕組みを勉強しなくても情報を発信できるブログといったサービスです。
ブログを読んだ情報の受け取り側も簡単にコメントできる機能もあり、発信する側、受け取り側の相互の交流が容易になります。そして多くの人とのつながることができるようになりました。
そこに目を付けた「ソーシャルメディア」と総称されるサービスや、Webにどのような情報が発信されているかを見つける検索サービスが多く開発され提供されていました。これらが改良されてより便利になったのが、Web2.0の時代です。
Web2.0の初期には多くのサービスが提供されていましたが、ソーシャルな結びつきや提供する情報にスポンサーをつけ広告費などをうまく得ることに成功した一部の企業だけが現在も残っていると言えます。その便利なサービスを大多数の人が利用しているのが現在の状況です。
しかし、その便利なサービスを一部の企業が提供していることで、その企業に多くの情報が収集され、さらに情報をマネタイズする役割が集中してしまったと言われています。
こうした一部の企業に集中した情報やマネタイズの役割を分散させ、情報から生まれる価値を、多くの人の手に取り戻そうという動きが出てきました。この動きは同時期に生まれた分散型を指向したブロックチェーンと結び付き、Web3が注目されています。
Web3はこうした情報やそれに伴う価値をWebの利用者で分配するような世界観で作られています。Web3の基幹技術と言えるブロックチェーンはそれをベースとした分散型の暗号通貨などで一躍注目を浴びるようになっています。
*なぜWeb3.0ではなくWeb3なのか?気になる方はこちら
Web3の先にある“Trusted”な自律分散社会
Web1.0 は1989年に発明されたWorld Wide Web(WWW)がもとになり、1990年代半ば~2000年代半ばに急速に普及しています。世界中の情報がどこからでも手軽に手に入るようになりました。
しかし情報を発信するためにはWWWの仕組みをよく理解して使う必要があり、情報発信まで踏み込めない多くの人にとっては、Webページをブラウザで見て情報を受け取るだけに留まるReal Onlyの時代だったと言えます
・Web2.0
現在我々が利用している多くがWeb2.0と言えます。2000年代半ば~2010年代後半に現れた技術を利用しているのがWeb2.0です。Web1.0の登場は画期的でしたが、情報を発信する側は受け取り側ほど楽ではなく、発信の敷居は高い状態でした。その解決策として生まれてきたのがインターネットやWebの仕組みを勉強しなくても情報を発信できるブログといったサービスです。
ブログを読んだ情報の受け取り側も簡単にコメントできる機能もあり、発信する側、受け取り側の相互の交流が容易になります。そして多くの人とのつながることができるようになりました。
そこに目を付けた「ソーシャルメディア」と総称されるサービスや、Webにどのような情報が発信されているかを見つける検索サービスが多く開発され提供されていました。これらが改良されてより便利になったのが、Web2.0の時代です。
Web2.0の初期には多くのサービスが提供されていましたが、ソーシャルな結びつきや提供する情報にスポンサーをつけ広告費などをうまく得ることに成功した一部の企業だけが現在も残っていると言えます。その便利なサービスを大多数の人が利用しているのが現在の状況です。
しかし、その便利なサービスを一部の企業が提供していることで、その企業に多くの情報が収集され、さらに情報をマネタイズする役割が集中してしまったと言われています。
こうした一部の企業に集中した情報やマネタイズの役割を分散させ、情報から生まれる価値を、多くの人の手に取り戻そうという動きが出てきました。この動きは同時期に生まれた分散型を指向したブロックチェーンと結び付き、Web3が注目されています。
Web3はこうした情報やそれに伴う価値をWebの利用者で分配するような世界観で作られています。Web3の基幹技術と言えるブロックチェーンはそれをベースとした分散型の暗号通貨などで一躍注目を浴びるようになっています。
*なぜWeb3.0ではなくWeb3なのか?気になる方はこちら
Web3の先にある“Trusted”な自律分散社会
Web3が実現する価値の移転
Web2.0では、一部のプラットフォーマーと呼ばれる企業に情報とそれに伴う価値(情報をマネタイズしたもの)が集中していました。
その価値をユーザー自身に取り戻すためには「情報の所有権」の概念が重要になります。ユーザーに情報の所有権が移るのがWeb3です。
具体例で見ていきましょう。例えば、Web2.0時代に、インターネット上で電子書籍を買ったとします。電子書籍の購入者は読むことはできます。
しかし、その本を紙の書籍のように古書店で販売したり、友人や家族にあげたり貸したりすることはできません。また電子書籍を購入したアカウントが、使用禁止になった場合には読むことができなくなります。
アカウントの使用禁止は、私企業である電子書籍の販売企業の一存によって決められます。
Web3の思想は、電子書籍を購入したのであれば、その電子書籍を他の人に譲ったり、古書店のような市場で売買したりすることができるようにしよう、というものです。そのためには、一部の企業が集中し管理している情報は、電子書籍のデータと共に、購買したユーザーに移転できるようにしなければいけません。
ユーザー自身が情報だけでなく、対価を払って得た価値を所有し、明示・証明できるようになったことがこれまでのWebとこれからのWeb3の大きな変化になります。
上で説明した価値の移転をする代表的な技術の応用に、「NFT」があります。「NFT」とは、 Non-Fungible Tokenの略称で、Non-Fungibleは日本語で非代替性という意味です。他に変えることができない、言い換えればそこにある唯一のモノであるということで、その所有者の所有権を示すものです。
Tokenは、それを「示す」ための記号・印という意味です。電子書籍といったデジタルデータにブロックチェーン技術を使って、この印をつけることができます。
ブロックチェーンを利用してNFT化した電子書籍は、ユーザーが対価を払って得た価値を所有し、その所有権が明示され、証明されています。電子書籍の所有者が古書店のような電子書籍の市場で他者に販売したり、友人や家族に譲渡したりすることができるようになります。
では次にこのWeb3の基幹技術であるブロックチェーンを応用したNFTゲームの事例を見ていきましょう。
その価値をユーザー自身に取り戻すためには「情報の所有権」の概念が重要になります。ユーザーに情報の所有権が移るのがWeb3です。
具体例で見ていきましょう。例えば、Web2.0時代に、インターネット上で電子書籍を買ったとします。電子書籍の購入者は読むことはできます。
しかし、その本を紙の書籍のように古書店で販売したり、友人や家族にあげたり貸したりすることはできません。また電子書籍を購入したアカウントが、使用禁止になった場合には読むことができなくなります。
アカウントの使用禁止は、私企業である電子書籍の販売企業の一存によって決められます。
Web3の思想は、電子書籍を購入したのであれば、その電子書籍を他の人に譲ったり、古書店のような市場で売買したりすることができるようにしよう、というものです。そのためには、一部の企業が集中し管理している情報は、電子書籍のデータと共に、購買したユーザーに移転できるようにしなければいけません。
ユーザー自身が情報だけでなく、対価を払って得た価値を所有し、明示・証明できるようになったことがこれまでのWebとこれからのWeb3の大きな変化になります。
上で説明した価値の移転をする代表的な技術の応用に、「NFT」があります。「NFT」とは、 Non-Fungible Tokenの略称で、Non-Fungibleは日本語で非代替性という意味です。他に変えることができない、言い換えればそこにある唯一のモノであるということで、その所有者の所有権を示すものです。
Tokenは、それを「示す」ための記号・印という意味です。電子書籍といったデジタルデータにブロックチェーン技術を使って、この印をつけることができます。
ブロックチェーンを利用してNFT化した電子書籍は、ユーザーが対価を払って得た価値を所有し、その所有権が明示され、証明されています。電子書籍の所有者が古書店のような電子書籍の市場で他者に販売したり、友人や家族に譲渡したりすることができるようになります。
では次にこのWeb3の基幹技術であるブロックチェーンを応用したNFTゲームの事例を見ていきましょう。
NFTゲーム Sorareとは?
ブロックチェーン、NFTの技術に詳しく、それを応用したゲームSorareを実際にやっている方に、編集部がインタビューしました。
「Sorare」は2019年3月にフランス企業「Sorare」によりリリースされ、サッカーを題材にしたNFTゲームとして高い人気があります。
「Sorare」は2019年3月にフランス企業「Sorare」によりリリースされ、サッカーを題材にしたNFTゲームとして高い人気があります。
図2:Sorareのカードが配置されたイメージ
Sorareとは、現実のサッカーの試合と連動しているファンタジーフットボールゲームです。
サッカー選手をコントローラーで操作してプレイするのではなく、現実世界の選手の活躍を予想し、五人の選手のカードを選びそのスコアの合計点で競います。選手のスコアは現実の試合の活躍によって変動します。
カードはGK、DF、MF 、FW、Extraにそれぞれ1枚ずつ配置します。ExtraにはGK以外の選手を1人配置します。
5枚全ての選手がポイントの対象となるため、直近5試合のアベレージスコアなどを考慮して良い選手を選ぶことが重要です。
NFTは何もしなければただのデジタルデータですが、Sorareはゲームと組み合わせることで所有し、使用するという体験を提供している一つのサービス事例です。
Sorareのプレイヤーが選手のNFTカードをいつから持っているのか、NFTの所有者が誰から誰に変わったのか所有者の情報がブロックチェーンに記載されています。
Sorareでは1週間に2回、週の半ば(火曜夕方-金曜夕方)と週末(金曜夕方-火曜夕方)にスコアが変更されます。実際のサッカーの試合が開催されていて、試合の内容とリアルタイムで連動しスコアが決定されています。
Sorareでは選んだ選手が活躍すると高いポイントを獲得でき、上位入賞すると暗号通貨のETH(イーサリアム)や選手のカードがもらえます。そのため大きなスコア獲得が期待できる選手が高額で取引されています。
Sorareのプレイヤー間で選手のカードを売買することもできます。NFTのためOpenSeaやCoinCheck NFT(β版)などの取引所でプレイヤー間の売買が可能です。すでにビッグネームで活躍が確実視される選手のレアカード、例えば2021年3月にクリスティアーノ・ロナウド選手のカードが3200万円で売れたというニュースもありました。
NFTを取り入れることで、ゲーム参加者の所有欲、カードの希少性をうまく価値に反映したゲームとして運営されています。
Sorareをプレイするうえで、サッカーの知識はある程度必要です。例えば、日本で活躍して海外に移籍した選手が活躍できなかったり、けがで試合に出られなかったりすると、その選手のカードの価値は下がります。そのため持っているカードの選手の動向を適宜確認することがSorareでは必要です。
Sorareではゲーム内では暗号通貨ETHを使って取引します。既に暗号通貨を持っている人であれば、ETHを準備できれば始められます。持っていない人は、暗号通貨交換所にアカウントを作って、ETHを購入、暗号通貨ウオレットであるMetamaskを用意して送金して、Sorareに入金すれば、選手のカードを購入し始めることができます。
サッカー選手をコントローラーで操作してプレイするのではなく、現実世界の選手の活躍を予想し、五人の選手のカードを選びそのスコアの合計点で競います。選手のスコアは現実の試合の活躍によって変動します。
カードはGK、DF、MF 、FW、Extraにそれぞれ1枚ずつ配置します。ExtraにはGK以外の選手を1人配置します。
5枚全ての選手がポイントの対象となるため、直近5試合のアベレージスコアなどを考慮して良い選手を選ぶことが重要です。
NFTは何もしなければただのデジタルデータですが、Sorareはゲームと組み合わせることで所有し、使用するという体験を提供している一つのサービス事例です。
Sorareのプレイヤーが選手のNFTカードをいつから持っているのか、NFTの所有者が誰から誰に変わったのか所有者の情報がブロックチェーンに記載されています。
Sorareでは1週間に2回、週の半ば(火曜夕方-金曜夕方)と週末(金曜夕方-火曜夕方)にスコアが変更されます。実際のサッカーの試合が開催されていて、試合の内容とリアルタイムで連動しスコアが決定されています。
Sorareでは選んだ選手が活躍すると高いポイントを獲得でき、上位入賞すると暗号通貨のETH(イーサリアム)や選手のカードがもらえます。そのため大きなスコア獲得が期待できる選手が高額で取引されています。
Sorareのプレイヤー間で選手のカードを売買することもできます。NFTのためOpenSeaやCoinCheck NFT(β版)などの取引所でプレイヤー間の売買が可能です。すでにビッグネームで活躍が確実視される選手のレアカード、例えば2021年3月にクリスティアーノ・ロナウド選手のカードが3200万円で売れたというニュースもありました。
NFTを取り入れることで、ゲーム参加者の所有欲、カードの希少性をうまく価値に反映したゲームとして運営されています。
Sorareをプレイするうえで、サッカーの知識はある程度必要です。例えば、日本で活躍して海外に移籍した選手が活躍できなかったり、けがで試合に出られなかったりすると、その選手のカードの価値は下がります。そのため持っているカードの選手の動向を適宜確認することがSorareでは必要です。
Sorareではゲーム内では暗号通貨ETHを使って取引します。既に暗号通貨を持っている人であれば、ETHを準備できれば始められます。持っていない人は、暗号通貨交換所にアカウントを作って、ETHを購入、暗号通貨ウオレットであるMetamaskを用意して送金して、Sorareに入金すれば、選手のカードを購入し始めることができます。
NFTの課題と未来
最後にNFTゲームに限らないNFTの課題と未来について考えてみましょう。
Web3の基幹となるブロックチェーンを用いたNFTや暗号通貨全般に言えることですが、基本的には自己責任が前提となっているサービスがまだまだ多いのです。
NFTはまだ発展途上であり、法規制や税制度が追い付いていないこともあります。当然NFTゲームを実施するうえでこのようなリスクを意識する必要があります。
また技術的な未熟さやセキュリティの脆弱性でハッキングなどの問題もあります。例えば、知らない人から送られてきたNFTを受け取ったら、自分のもっているNFTや暗号資産が抜き取られるといったハッキング事例が話題になりました。
またNFTゲームに限りませんが暗号通貨の売買で一定の利益が出ると課税の対象となります。課税を考慮して暗号通貨を管理する必要があります。
実際に一定の利益が出た際には税理士に手続きをお願いすることもあるそうです。
税理士の方もまだNFTや暗号通貨についての税制を適用した事例を扱った経験が少なく、最初は手探りで処理を進めていることもあるそうです。
現時点でNFTゲームは利用者数やゲーム関連で動かしている価値も大きく一定の成功を収めているといってよい状態と言えます。しかしWeb3やNFTの社会への大々的な普及には前述したような法律、制度、技術的な課題があります。
このような課題を解決する技術が期待され、ゲーム以外の分野への展開も望まれています。
現在は暗号通貨やゲームなどで応用されているブロックチェーンの新たな応用先はどのようなものがあるでしょうか?
私たちが所有しているものの価値を明示・証明したうえで、自由に流通できる対象への応用が広がっていくと考えるのが妥当と思われます。
具体的には株主優待券やコンサートやイベントのチケットへのNFTの適用が期待されます。企業が発行した株主優待券やチケットを購入した所有者が、NFTを利用することで合理的に他者にその価値を流通することができることがいずれ可能となるかもしれません。
ブロックチェーン技術を応用し、デジタルデータの価値を多くの人が流通させ、利用できるWeb3の世界が近づいています。暗号資産、NFTなどのキーワードに触れる機会も多くなると思います。価値の流通の新たな動きのご理解の一助にこの記事がお役に立てばと考えます。
Web3の基幹となるブロックチェーンを用いたNFTや暗号通貨全般に言えることですが、基本的には自己責任が前提となっているサービスがまだまだ多いのです。
NFTはまだ発展途上であり、法規制や税制度が追い付いていないこともあります。当然NFTゲームを実施するうえでこのようなリスクを意識する必要があります。
また技術的な未熟さやセキュリティの脆弱性でハッキングなどの問題もあります。例えば、知らない人から送られてきたNFTを受け取ったら、自分のもっているNFTや暗号資産が抜き取られるといったハッキング事例が話題になりました。
またNFTゲームに限りませんが暗号通貨の売買で一定の利益が出ると課税の対象となります。課税を考慮して暗号通貨を管理する必要があります。
実際に一定の利益が出た際には税理士に手続きをお願いすることもあるそうです。
税理士の方もまだNFTや暗号通貨についての税制を適用した事例を扱った経験が少なく、最初は手探りで処理を進めていることもあるそうです。
現時点でNFTゲームは利用者数やゲーム関連で動かしている価値も大きく一定の成功を収めているといってよい状態と言えます。しかしWeb3やNFTの社会への大々的な普及には前述したような法律、制度、技術的な課題があります。
このような課題を解決する技術が期待され、ゲーム以外の分野への展開も望まれています。
現在は暗号通貨やゲームなどで応用されているブロックチェーンの新たな応用先はどのようなものがあるでしょうか?
私たちが所有しているものの価値を明示・証明したうえで、自由に流通できる対象への応用が広がっていくと考えるのが妥当と思われます。
具体的には株主優待券やコンサートやイベントのチケットへのNFTの適用が期待されます。企業が発行した株主優待券やチケットを購入した所有者が、NFTを利用することで合理的に他者にその価値を流通することができることがいずれ可能となるかもしれません。
ブロックチェーン技術を応用し、デジタルデータの価値を多くの人が流通させ、利用できるWeb3の世界が近づいています。暗号資産、NFTなどのキーワードに触れる機会も多くなると思います。価値の流通の新たな動きのご理解の一助にこの記事がお役に立てばと考えます。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。