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金融が変われば、社会も変わる!

オクトノットとは

[祝]オクトノット2周年 この2年を振り返って

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Octo Knot(オクトノット)は2021年3月22日にサイトを公開し、本日で2周年を迎えます!この間、オクトノットがメインフィールドとする「金融×デジタル」の世界は、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな変化の波にさらされました。感染症は社会全体にたいへんな逆風となりながらも、人々がニューノーマルのあり方を模索する過程で、デジタル化の加速・定着を促しています。最近では「メタバース」をはじめとする新たなテーマが次々と台頭するなど、さまざまな可能性の広がりも予感させてくれます。逆境を乗り越えた先にあるワクワクする未来に想いを馳せながら、新たに編集長に就任した山本英生がこの2年間を振り返ります。

ニューノーマルの動き

2019年に感染流行が始まった新型コロナウイルスは、2020年になっても世界中にたいへんな猛威を振るい続けていました。オクトノットが誕生した2021年3月は新型コロナ感染症の緊急事態宣言が発令され、多くの活動が制限されている状態です。

オフィスへの出社や会合が制限されるなか、感染症への対策として、テレワークが推進され、ビデオ会議、コラボレーションツールが普及し、あらゆる場面でのデジタル化が加速しました。感染症の拡大の過渡期には、紙の書類に押印するためだけに出社するという話を聞いたこともありました。現在では大企業を中心に紙を使った決裁の多くがデジタル化されています。

新型コロナウイルス影響での閑散とする東京の様子

コミュニケーションについてはどうでしょう。会社の会議のほとんどがオンライン化されるほか、大学などの学校の講義や授業もオンライン化されました。上司、同僚、部下、友人との対面でのコミュニケーションが一時的に減少しましたが、「対面で会う必要があれば会う」といったメリハリをつけたコミュニケーションが選択されるようになりました。

テレワークが定着すると通勤時間がなくなり業務が効率化すると思う一方で、通勤時間が気分転換になっていることに気づいたりすることもありました。現在は必要な時に必要な人と対面で話すために出社する、それ以外はオンラインでというニューノーマルが定着しつつあるのではないでしょうか。
みなさまの周りではどのような働き方の変化、デジタル化の動きがあったでしょうか。オクトノットでもコロナ後の働き方、オフィスのあり方、チームワークに関するテーマを取り上げました。こちらの記事では、NTTデータのファシリティマネジメント事業部が、コロナ禍でのオフィスの利用状況などを紹介しています。出社することで自然とできていたチームワークを意識して作らなければならない時代になりつつあります。デジタル化を前提とした新たなワークスタイルへの取り組みについても参考にしていただけるかと思います。

金融のデジタル化

新型コロナウイルスの流行がキャッシュレス決済の普及も後押ししました。キャッシュレス決済事業者のキャンペーン効果もありましたが、現金等の授受による感染リスクを避けるために、それまでキャッシュレス決済を利用していなかった層にも利用が広がったようです。

感染症流行下でのキャッシュレス決済の普及

キャッシュレス決済の事業者はユーザー獲得のために、店舗からの決済手数料を無償にしたり、消費者へポイント還元したりするなどのキャンペーンを実施していました。一時期に比べキャンペーンも落ち着きましたが、キャッシュレス決済の利用は増加傾向にあります。

店舗側には現金を扱うコストやリスクの低減や、レジなどでの応対時間の短縮、省力化などのメリットがあります。消費者側にも、現金を持ち歩かず荷物がかさばらないことや家計簿アプリとの自動連携などのメリットがあります。キャッシュレス決済に関する記事はこちらになります。
キャッシュレス決済とも関連する取り組みとして、デジタル地域通貨も活性化しています。岐阜県飛騨・高山地区で利用される「さるぼぼコイン」、福岡県福岡市発の「まちのわ」が手掛け全国の自治体で導入が進む電子商品券、神奈川県鎌倉市、小田原市などで利用される「まちのコイン」などが代表的です。

こうした地域通貨が活性化したポイントは、地域通貨によって異なります。地域を限定することで加盟店の負担にならない程度の運用手数料の設定(さるぼぼコイン)、紙で発行していたプレミアム商品券のデジタル化(まちのわ)、有効期限のあるコインで地域への貢献を重視する(まちのコイン)などの地域通貨ごとの特徴を持っていることがわかります。新型コロナウイルスの影響で地域に定着した活動も増加するなか、地域通貨はいわゆる地元コミュニティのニューノーマルを支える要素となることが考えられます。
金融サービス自体のデジタル化も、この2年間で急速に進んでいます。2021年3月に開催されたフィンテックカンファレンスFIN/SUM 2021では、日本銀行の黒田総裁が、「情報システムと金融システムの融合、アズ・ア・サービスの先にあるもの」というビデオメッセージでEmbedded Finance※1とBanking-as-a-Service(BaaS)※2について言及し、組込型金融の芽生えが見られました。組込型金融により、金融機関の機能・サービスがAPIを通じて金融機関以外の事業会社から利用可能になり、金融サービス自体がデジタル化することになります。

※1 Embedded Finance:金融以外の事業会社が自らの事業に金融機能を組込むことでエンドユーザーに対して事業と金融サービスを一体化して提供するサービス形態

※2 Banking-as-a-Service(BaaS):金融機関が自らの金融機能をサービスとして必要とする他社に提供するビジネスモデル
小売、運輸、通信など金融以外の事業会社が行う事業と、金融機関の預金、融資、保険、投資などの金融サービスが融合する組込型金融がこの時期を境に活性化してきています。この組込型金融という異業種連携により、事業会社は金融業のライセンスを得ずに金融機能を含むサービスを提供できます。金融機関は、これまでリーチができなかった顧客層に対してアクセスできる可能性が増加しています。

米国大手小売業者ウォルマートが発行する「Money Card」というプリペイドカードの残高に利子が付くなど、新たなサービスが組込型金融で展開されています。海外ではさまざまな事情で銀行口座を持てない人が数多くいます。「Money Card」は口座を持てず銀行と馴染みが薄い利用者の貯蓄をサポートするなど、金融機関の新たな顧客層を取り込んでいるとも言われています。

メタバースの進展

ニューノーマルの動き、金融を含むビジネスのデジタル化が進むなかで、メタバースも急速に進展しました。2021年7月にはITプラットフォーム企業大手各社が決算発表で「メタバース」を取り上げました。経済産業省もメタバース市場に注目し、同じ7月に仮想空間についてのレポートを発表し、メタバースについても言及しています。
FacebookのOculus VR部門が開発したOculus Questは、2020年10月に後継デバイスOculus Quest 2が発売され、スタンドアローン型のVRヘッドマウントとして注目を集めました。2021年10月にはFacebookが社名をMetaに変更し、メタバースによる仮想空間ビジネスへの注力を表明しています。

オクトノット編集部でも、NTT XR Coworkingを使用し、三次元仮想空間で臨場感があふれる会議を体験しています。模索しているニューノーマルのコミュニケーションに仮想空間の利用が期待されています。
金融機関でもメタバースに対する積極的な取り組みが進められています。2022年2月には米国銀行大手のJPモルガン・チェースが、メタバース空間であるDecentraland※3(ディセントラランド)にOnyx by J.P. Morgan(以下、Onyx)ラウンジを出店しています。Onyxでは、暗号資産やブロックチェーン技術に関する情報交換が行われています。

※3 Decentraland:メタバースの仮想世界のプラットフォームのひとつでありゲームをプレイしたり、コンテンツを作成したり楽しんだりすることができる。
人々のメタバース内での活動時間が増えれば、そのなかでの経済活動が生じます。経済活動をするうえで価値交換の仕組みが必要になってきます。この価値交換の仕組みに金融サービスを提供することなどを目的に、いくつもの金融機関や小売や通信などの事業会社がメタバースに参入してきています。

期待されるメタバースのビジネス活用

メタバース内での価値交換の仕組みとして、現実世界でも暗号資産を支えるブロックチェーン技術やそれを利用したNFT(非代替性トークン)などWeb3関連の技術が使われています。メタバース上のアイテムはデジタルデータです。NFTを使うことで、メタバース上のアイテムやサービスなどの唯一無二性を担保し、保有者の所有権を証明できます。つまり、メタバース内で、データ保有者の権利を保護したうえで経済活動を行えるようになるのです。

一方で、メタバースのような仮想世界でも使われるNFTや暗号資産の権利保護の法整備はまだ十分とは言えない状態です。著作権、消費者保護、資金決済などについては、今後の政府や各省庁の動向を見据えてビジネス展開を検討したほうがよいでしょう。

デジタル化を見据えた今後

新型コロナウイルスの流行で私たちの生活様式は大きく変わりました。人との接触が過度に制限された状態から回復しつつも、これを機に生じたデジタル化の動きは現在も進行し、過渡期の状態にあります。

一方で、国際的な政情不安、資源・エネルギー・食料などの価格上昇、金融市場の先行き不透明感など、社会情勢の変化は一段と激しさを増しています。ニューノーマルの動きや金融サービスの新たな形態、メタバースの進展と連動し、デジタルデータの活用により金融ビジネスは今後もより高度化していきます。

本日で2周年を向かえたOcto Knotは、今後も「金融×デジタル」をターゲットとし、独自の視点で読者のみなさまのお役に立つ、世の中に先んじた情報を発信していきます!
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※本文および図中に登場する商品またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。

慶應義塾大学商学部卒業後、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。システム開発を経験した後、金融領域のITグランドデザイン策定や、量子コンピュータ、AI、RPA、データマネジメントなどの先進技術領域のコンサルティングや情報発信に従事。データ活用による金融サービスの高度化を指す「センシングファイナンス™」を提唱し、日本経済新聞社と金融庁が共催する「FIN/SUM」をはじめ、セミナー・講演の実績多数。2022年より、オクトノット編集長に就任。

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