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日本がキャッシュレス化を進める理由って?導入するメリットや金融機関の今後を紹介

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日本政府は、2025年までにキャッシュレス決済率を40%にすることを目標に掲げています。また、国を挙げての大規模なキャッシュレスキャンペーンも2019年から2020年にかけて行われました。

なぜキャッシュレス化を進めることになったのでしょうか。そこで本記事では、日本がキャッシュレス化を進める理由をまとめました。キャッシュレス化を進める理由と生じるメリット・デメリットや金融機関における取り組み・対策もあわせて確認していきましょう。

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日本でキャッシュレス化が進められる理由は3つ

日本でキャッシュレス化を進める理由は主に3つあり、人手不足解消・現金決済のコスト削減・インバウンド客による消費拡大で、キャッシュレス需要が伸びたことにあります。

理由1:生産性向上・人手不足の解消のため

日本では、2030年には需要に対して644万人の労働力が不足するとされています(パーソル総合研究所調べ)。労働力が不足するなら、労働時間を減らして生産性を上げる必要があります。

経済産業省が2020年1月に公表した「キャッシュレスの現状及び意義」によると、レジ締めの作業時間はレジ1台当たり平均25分です。キャッシュレス化を導入すれば、こうした毎日の作業時間をカットできます。
労働時間に対する生産性の向上が見込めるでしょう。

理由2:現金決済のインフラコスト削減・リスク低減のため

現金決済インフラとはATMの設置・運営などのことで、これらの維持・管理にはコストがかかります。実は現金決済インフラには、年間約1.6兆円を超える費用がかかっています(出典:経済産業省「キャッシュレスの現状及び意義」(2020年1月))。

キャッシュレス化を進めることで、現金決済インフラの費用を削減が可能となります。また、偽造紙幣や現金強盗の減少も期待されています。

理由3:インバウンド消費が拡大したため

コロナウイルス流行前には、インバウンドの消費量が拡大していました。調査によると、訪日外国人の約7割はキャッシュレス決済手段があれば「もっと多くお金を使った」としており、もっと消費は増える可能性がありました。(出典:経済産業省キャッシュレスの現状及び意義(2020年1月)

コロナ禍でインバウンド消費は落ち込みましたが、代わりに宅配などのリモート決済・お金に触れたくない人の非接決済需要などで、キャッシュレスの需要が増えています。

いずれにせよ、現金授受以外の決済方法が求められている状況にあります。

日本におけるキャッシュレス化の現状・将来的な目標とは

政府がキャッシュレス化を積極推進する一方、実際どれくらい浸透しているのでしょうか。日本における達成状況・目標を主要各国と比較しながらまとめてみました。

キャッシュレス化の現状

日本のキャッシュレス化の現状は、諸外国に遅れをとっています。2020年の日本のキャッシュレス決済支払比率は約30%まで上昇しましたが、アメリカでは約50%、イギリスは約60%、フランスが約45%、中国では約80%、韓国は約95%です。

諸外国の状況を見ると上記の中国・韓国をはじめとして、アジア地域の国々でのキャッシュレス化の割合は日本と比べ非常に高いことがわかります。

今後は、政府による推進や新型コロナウイルスの感染拡大などの影響を受け、キャッシュレス化が日本でもより進むことが予想されます。

出典:経済産業省の「キャッシュレスの現状及び意義」(2020年1月)

将来的な目標

経済産業省の「キャッシュレスの現状及び意義」(2020年1月)によると、政府は2025年6月までにキャッシュレス決済比率40%を目指すとしています。2025年には大阪・関西万博が開催予定です。そのためキャッシュレス決済比率が延びれば、よりインバウンド消費の伸びが見込めると考えられています。

また政府は、将来にはキャッシュレス決済水準を世界最高レベルの80%にすることを目標としています。今後、対象取引も拡大、キャッシュレス対応の店舗やデジタルで個人間送金を行う人が増える見込みです。

キャッシュレス化を進めるメリット

キャッシュレス化を進めると、店舗・消費者それぞれにメリットが生じます。

店舗側のメリット

店舗側で生じるメリットとして、次のようなことが挙げられます。
  • データで売上を把握できるため、管理しやすくなる
  • レジ関連の作業が効率化される
  • キャッシュレス決済を愛用する利用者が導入店舗の新規ユーザーになることがある
  • お釣りの渡し間違いがなくなる
レジで現金受け渡しを間違えると、レジ締めのときにお金があわず大事になるケースもめずらしくありません。キャッシュレス化を導入することで、レジを扱うアルバイトや店長がそのプレッシャーから解放されるメリットも大きいでしょう。

消費者側のメリット

一方、消費者側のメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
  • 財布に多くの現金を入れなくていいので荷物がかさばらない
  • スムーズに支払いを完了できる
  • クレジットカードなどのポイントがたまる
  • キャッシュレス決済のキャンペーンを利用して、お得になることがある(例:割引、ポイント還元など)
  • 家計簿アプリなどと連携できる
キャッシュレス決済では、消費者が財布から現金を必要な分だけを取り出して、おつりを受け取る作業がなくなります。レジでやり取りする時間が少なくなるため、急いでいるときにも便利です。

キャッシュレス化を進めるデメリット

他方で、キャッシュレス化を進めることには、店舗にも消費者にもデメリットが考えられます。

店舗側のデメリット

店舗側のデメリットには以下のようなものがあります。
  • 会計のマニュアルを変更しなければいけない(従業員の再教育も必要)
  • 初期費用や決済手数料がかかる
  • 現金払いがなくならない限り、キャッシュレス決済と両方管理しなければいけない
上記はあくまでも、現段階で考えられるデメリットです。今後キャッシュレス決済がもっと一般的になれば、状況が変わる可能性があります。

消費者側のデメリット

消費者にとってのデメリットの例は以下の通りです。
  • 不正利用のリスクがある
  • キャッシュレス化された店舗か確認する必要がある
  • デバイスの電池切れ・故障、災害が発生した際にキャッシュレス決済を使用できない恐れがある
  • お金を使いすぎる
消費者のなかにはデバイスの電池切れで、決済できないことを不安に思う人がいます。また、サイバー攻撃を警戒している人のなかには、現金主義を変える気がない人も多いようです。

ただ、これらの状況も変わらないものではなく、技術の進歩による克服を待っている状況といえるでしょう。

金融機関におけるキャッシュレス化の取り組み・対策

金融機関では、以前からクレジットカードなどのキャッシュ決済手段を用意しています。これらの手段の利便性をさらに上げること・セキュリティの確保などが現在の課題であり、各金融機関での取り組みが見られます。

金融機関の取り組みの例1:三井住友カード

三井住友カードでは、非接触対応のVisaカードを導入しています。決済機にカードをタッチするだけで支払いが完了するため、消費者側の利便性、店舗側のレジ作業にかかる時間の削減が可能です。

セキュリティ技術も世界基準に合わせる一方、クレジットカードの利用明細や利用残高などのデータで家計管理ができるVpassアプリも提供しています。

Vpassアプリは、さらにお金の使い過ぎを防止するための通知機能も搭載するなど、キャッシュレス決済のデメリットを克服するための対策が施されています。

出典:国がキャッシュレスを推進するメリットとは?|【ヒトトキ】三井住友カード

金融機関の取り組みの例2:みずほ銀行

みずほ銀行は「みずほWallet」や「J-Coin Pay」など、キャッシュレス決済サービスを豊富に用意しています。

みずほWalletはみずほ銀行の口座をスマホアプリに登録すると、決済用機械にスマホをかざすだけで支払いでき、非常にスマートです。また、即時引き落としで使い過ぎの不安がないこともセールスポイントの1つとされています。

J-Coin Payは、スマホアプリに口座情報を登録すると入出金・送金が可能です。みずほ銀行の口座以外でも使用可能で、個人間送金にも非常に便利な入出金・送金方法です。

出典:みずほ銀行で始めるキャッシュレス|みずほ銀行

金融機関の取り組みの例2:北國銀行

石川県に本店を置く北國銀行でも、Visaデビットカードと連携できる北國おサイフアプリを提供するなど、新しい取り組みを行っています。アプリでは預金・ポイントの残高照会だけでなく、クーポン配信なども行われ、使えば使うほどお得になる、との評判もあります。

出典:キャッシュレス環境の整備|北國銀行

キャッシュレス化で金融機関が行うべき対策とは

まずはデビットカード、クレジットカードといった、カード決済の普及促進が考えられます。金融機関としてはすでに使っているものを活用できるため、追加コストを抑えてキャッシュレス化が進められるメリットがあります。

他にもスマホベースの利用シーンに沿ったウォレット(電子財布)を提供すること、よりリアルタイム性の高い決済基盤を提供すること、リアルタイムで家計管理・口座管理ができるようにすることなどの対策が有効です。

現金が使われている利用シーンへの応用も、金融機関のイニシアチブで進めることが課題です。例えば払込票を使っている人も多い税金や各種保険料などを、QRコード等の手段でもっと手軽に決済を可能にすることなどが考えられます。

加えて、利用者向けのプロモーションにも力を入れるなど、各金融機関では利用者獲得のための施策も必要です。
また、個人間での小口の資金移動を実現する「ことら」というサービスも2022年10月に開始されています。ことらは、日本電子決済推進機構が提供するスマホ決済サービスBankPayのほか、銀行のスマホ決済サービスとも連動して資金移動ができるサービスです。
「ことら」には以下のような特徴があります。

・少額の個人送金の手数料が無料あるいはとても安価
・スピード感のある即時送金が可能
・口座番号を教えあわなくても電話番号やメールアドレスのみで送金可能


「ことら」により高頻度で定額のカジュアルな送金が可能となり、キャッシュレス化加速の糸口になることが期待されます。ことらの利用もキャッシュレスの利用者獲得の施策となりえるのではないでしょうか。

金融機関は今後、キャッシュレス化への対応が必要不可欠

日本でキャッシュレス化を進める理由は、
  • 少子高齢化が進み労働力不足となることへの対応
  • 現金決済のインフラコストの削減・リスク低減
  • インバウンド消費への対応
が挙げられます。

一方、キャッシュレス化をすれば、店舗側は生産性改善、消費者側は決済にかかる手間の省略・時間短縮などのメリットが生じる見込みです。

日本は諸外国に比べキャッシュレス化が遅れているとされていますが、電子マネーやガラケーでの決済といった、海外に比べ進んでいた部分もあります。

「諸外国よりもキャッシュレス化が遅れている」という視点ではなく、なぜ諸外国に抜かされてしまったのかを分析することが、次の打ち手を考えるうえで重要といえるでしょう。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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