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地域活性化のカギ「地域通貨」とは?効果や成功事例、導入時のポイントを解説

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地域活性化や地方創生の文脈でよく話題に上がる「地域通貨」。その名のとおり、地域で使える通貨なのですが、通常の法定通貨とは異なり、人の感情に訴求する性格を持ちます。これまで様々な事業者が地域通貨を運営し、地域活性化に貢献してきました。 一方、地域通貨は“多産多死のビジネス”とも言われています。それだけ長く運用することが難しいジャンルでもあるのです。そのため、地域通貨を始める際には持続可能な運用体制を整えることが必須です。 今回はそんな地域通貨について、導入により期待される効果や成功事例、抱える課題などについて解説していきます。

「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。

地元経済を盛り上げる「地域通貨」とは

一般的に、地域通貨はある特定の地域やコミュニティーのみで利用できる通貨と理解されています。

しかし、これはあくまで地域通貨の一側面です。地域通貨を地域通貨たらしめているのは、「人や地域を支えたい」「環境に良いことをしたい」といった経済合理性の観点からはむしろ不合理な目的やニーズに訴求する工夫が凝らされている点にあります。つまり、人的交流や相互助け合い、環境保護といった経済外的な活動までをカバーした、交換手段としての機能に特化した通貨が「地域通貨」と言えるでしょう。また法定通貨との関係で言うと、地域通貨は経済外的な役割のない法定通貨をカバーする、補完的な存在であると言えます。

加えて、経済活性化の観点から早く使用してもらえるように、一定の期間が経つと価値が減ったり、なくなったりする工夫がされているのも大きな特徴です。

地域通貨と法定通貨は何が違うのか?

法定通貨と地域通貨には、次のような明確な違いがあります。
  • 法定通貨:国家や中央銀行によって独占的に発行され、法律により何らかの通用力を持つ銀行券。日本の場合は日本銀行券で、単位は円(Yen)。米国の法定通貨はFederal Reserve Note(米国連邦準備銀行券)で、単位はUnited States Dollar
  • 地域通貨:特定の限られた地域やコミュニティーに限定して、国家や中央銀行以外の自治体、企業、NPOや商店街が独自に発行する通貨。法律により強制されないので、極端な話、受け取りを拒否される可能性もある
一般的にその国の法定通貨は、その国内では絶大な信用力があります。「日本銀行券なんか使われているのを見たこともない」という日本人はいないでしょう。

一方、法定通貨ではない地域通貨は信用力の醸成が極めて重要です。そのため、地域通貨は信用して使ってもらえるような仕組み作りが必須になります。

地域通貨の仕組み

地域通貨の仕組みには、次のような特徴があります。
  • 地域通貨の流通スピードを速める工夫がされている
  • 地域特有の体験と結びつける
  • とりわけ相互扶助や環境保護等に関連した発行や利用を組み込む
期間限定クーポンやポイントが発行されたら、なくなる前に早く利用したいと思いますよね。この性質を活かして、時間が経つと失効し、利用できなくなる(もしくは価値が減る)仕組みを持つ地域通貨があります。これは通貨の流通スピードを速め、地域経済を活性化させることを目的としています。

また、地域通貨は強制通用力を持ちません。そのため、地域通貨には納得・信用して利用してくれるための工夫が必要になります。その工夫として、地域通貨では「地域特有の体験と結びつける」「相互扶助や環境保護等に関連した発行や利用を組み込む」といった仕組みを導入しています。

特定の地域通貨でしか、その地域独自のモノ・サービスや体験を購入することができなければ、その地域通貨を使わざるを得ませんよね。また、ビーチのごみ拾いや畑の収穫手伝いで地域通貨が発行されれば、その地域への貢献が体験として得られます。

そもそも、その地域を訪れて何かを買ったりするだけであれば、法定通貨や全国の多くの場所で使える電子マネーを使った方が経済的にははるかに合理的です。だからこそ、地域通貨は「その地域だけでしかできない体験やその地域に貢献したい」という経済外的な欲求に訴えかける仕組みが不可欠なのです。

地域通貨の歴史・注目されている背景

日本における地域通貨の歴史と、地域通貨が注目されている背景について解説します。

地域通貨の歴史

地域通貨の仕組みの多くは海外で生まれました。「経済活性化のために通貨の流通スピードを上げるには、時間の経過と共に通貨の価値を減らせばよい」というアイディアも海外生まれのもの。例えば、毎週水曜日になったら2セントで買ったスタンプを押さなければ使えない、といったスタンプ通貨は1930年代から海外で使われるようになりました。

日本における地域通貨は、こうした海外のスタンプ通貨、アメリカのイサカアワーやカナダのLETS(Local Exchange Trading System)などの有名な取り組みが伝えられたことにより、1980年代半ばころより試験的に導入が始まります。

1990年代後半からは経済に加え、文化振興や景観維持、福祉増進といった多様な目的で初期地域通貨ブームがひろがり、その後も、地域通貨はNPOや市民団体など多様な組織が主体となり、盛り上がりを見せました。さらに2010年代後半からは、スマートフォンで電子的にやりとりができる地域通貨が増えています。

デジタル地域通貨が注目される理由

近年、日本において地域通貨が注目されている背景には、「キャッシュレス決済の普及」が挙げられます。PayPayや楽天ペイといったキャッシュレス決済と同様の文脈において、手軽にスマホで決済可能なデジタル地域通貨が注目を集めているのです。

例えば、地域通貨の成功例として有名な飛騨地域限定の地域通貨「さるぼぼコイン」も、当初は地域で便利に使えるキャッシュレス決済手段として注目されていました。

とはいえ、地域通貨の“経済外的な役割および機能”は、デジタルになってもかわりません。そのため、経済外的な役割および機能を排し、単にキャッシュレス決済を地域に導入しただけでは、法定通貨や全国で使われている大手事業者のキャッシュレス決済に代わって使用されることはないでしょう。

地域通貨の目的と地域にもたらす効果

地域通貨の目的と地域にもたらす効果について、詳しくみていきましょう。

地域経済を活性化させる

地域通貨の一つの目的および効果は、「流通スピードの増加による地域経済の活性化」です。

減価や失効のある地域通貨は、「価値が減る(なくなる)前に早く使おう」というインセンティブが働きます。その結果、地域内での通貨の流通スピードが速まり、地域経済の活性化につながるのです。

次に、地域住民だけでなく外部からの旅行者が地域通貨を利用すると、流入する地域通貨量が増え、地域経済がより潤います。そのため、地域通貨の運営側としては、旅行者が地域通貨を使ってみたくなる仕掛け作りも重要なポイントになります。

最後に地域経済を活性化させたい!という“想い”は最も重要です。その“想い”がもととなり、地元企業が手を取り合った良い実例が、デジタル地域通貨に取り組む「まちのわ」です。まちのわは、SBIホールディングス株式会社、九州電力株式会社、株式会社筑邦銀行の3社による合弁会社です。

この点についてオクトノット編集部が「まちのわ」代表取締役社長 入戸野さんに取材を行ったところ、九州電力と共同設立を決めたきっかけがまさに、“地域経済の活性化という想いが一致したこと”だといいます。

このように地域に根付く企業それぞれの想いが募り、「地域通貨」という形で地域経済を盛り上げる様子もこれから様々な地域で見られることでしょう。

「まちのわ」の入戸野さん× NTTデータの野口さんの対談記事はこちらをご参照ください。

地域コミュニティーの支え合いを実現させる

地域通貨は価値の交換という通常の経済的な役割以上に、人との交流や助け合い、環境保護など経済外的な役割も持つ通貨です。地域通貨を利用する人が増えれば、地域内のコミュニケーションが増え、地域コミュニティーの支え合いにもつながります。

例えば、深谷市の地域通貨「negi(ネギー)」では、ボランティア活動やエコ活動を行うと、negiを獲得することができます。地域のボランティア活動を積極的に行うことで、より良い地域コミュニティー作りに寄与するほか、参加者同士の交流も生まれ、コミュニティーの結束力も高まることでしょう。

オクトノット注目!地域通貨の成功事例2選

オクトノットが注目する、地域通貨の成功事例を2つ紹介します。

さるぼぼコイン(岐阜県高山市・飛騨市・白川村)

地域通貨の成功事例と言えば真っ先に名前が挙がるのが、飛騨地域の地域通貨「さるぼぼコイン」です。

さるぼぼコインは飛騨信用組合が発行している地域通貨で、岐阜県高山市・飛騨市・白川村で利用することができます。加盟店は約1,700店舗、高山市中心街での加盟店シェアは30〜40%(2021年3月末時点)に上ります※。

そんなさるぼぼコインの主な成功要因は、以下の2点です。
  • 飛騨高山の経済規模に合った持続可能な仕組み
  • 地域外の人間がつい飛騨地域に来たくなる仕掛けをする
さるぼぼコインは、信用組合である飛騨信用組合が運営する地域通貨です。そもそも信用組合は非営利組織であり、飛騨信用組合はさるぼぼコインの運用による過剰な利益を追求する必要がありません。そのため飛騨信用組合では、さるぼぼコインを維持できる程度の手数料で運用できているのです。結果として、さるぼぼコインの加盟店やユーザーのコスト負担が抑えられ、広く支持を集めています。

また、一般的に電子決済手段は、サービス開始に先立って高額の設備投資が必要になる装置産業の一種です。しかし、さるぼぼコインの場合は、利用範囲を飛騨高山地区に限ることで、最大でもかけられる運営費用を算出することができます。「実際の運営費用を、算出した最大運営費用以下に抑えることができる」という限定地域ならではの事情も持続可能化に貢献しているのでしょう。

また地域外の人間がつい飛騨地域に足を向けたくなる仕組みとして、飛騨信用組合は情報サイト「さるぼぼコインタウン」を運営しています。さるぼぼコインタウンでは、さるぼぼコインでしか購入できない飛騨地域ならではの裏メニューを発信し、飛騨地域への旅行意欲を掻き立てるユニークな取り組みが行われています。

さるぼぼコインタウンの裏メニューを求め、外部の人間がさるぼぼコインを利用すれば、それだけ地域通貨の流通量が増えるため、地域経済は拡大するという流れが想定できますね。
<「さるぼぼコイン」裏メニュー例>
● さるぼぼコインビール
● 職人が自分のために作った、 非売品の飛騨春慶ビアグラス
● ひみつの不動産物件
● 飛騨高山の山
● ゴリラそっくりな頑固親父が 丹精込めて作った美味い米
● 名物案内人による、飛騨の古い町並み特別ツアー
参考:さるぼぼコインタウン
※参照:電子地域通貨の課題と可能性|季刊 個人金融 2021 秋

さるぼぼコインの仕掛け人の一人、フィノバレー 代表取締役社長の川田修平さんが登場するこちらの対談記事もぜひご覧ください。

まちのコイン(面白法人カヤック)

「まちのコイン」は、面白法人カヤックが立ち上げた地域通貨です。小田原市や鎌倉市、高知市などで利用することができます。まちのコインは地域通貨の特徴である“経済外的役割”を特に重視した地域通貨です。面白法人カヤックでは、次のような『「まちのコイン」が目指すチャレンジ』を掲げています。

以下、「なぜ僕は地域通貨が盛り上がると確信しているのか。お金の歴史から解説してみます。|面白法人カヤック」(https://www.kayac.com/news/2021/08/yanasawa_blog_vol90)より引用
1. 利子というものがなく、使わないと減価していく通貨
2. 地域固有の価値を定量化・最大化することで、地域間の格差をなくすための通貨
3. 従来のお金が取りこぼしてきた価値観を大切にし、人の尊厳を尊重する通貨
4. 人と人が仲良くなっちゃう通貨
5. 地域特有の課題に皆で一緒に取り組み、自分たちの住むまちを自分たち自身の手で素敵にしていく通貨
6. その結果、それぞれのまちが個性的になることにつながっていく通貨
7. これらの取組がビジネスとして持続可能、つまり収益化できる仕組みを持った通貨
例えば、まちのコインには「\和佳店主・佳恵ちゃんを探せ!!/」体験があります(2022年6月時点)。これは喫茶店・和佳の店主の佳恵ちゃんを見つけたら、コインを貰えるという変わった体験です。まちのコインが目指す「人と人が仲良くなっちゃう通貨」だからこその体験と言えますね。

地域通貨導入時に押さえておきたいポイント

最後に地域通貨を導入する際に押さえておきたいポイントを2つ挙げていきます。地域通貨に取り組もうと考えている方は要チェックです。

経済外的な感情に訴求する仕掛けが重要

地域通貨は「地域貢献をしたい」「人の役に立ちたい」といった経済外的な感情に訴求することが重要です。

例えば、福岡県八幡西区折尾の地域通貨「オリオン」は地域ボランティアをより身近に感じて、より住みやすい街づくりに貢献する目的で生まれました。ボランティアやご近所のお手伝いに参加するとオリオンを貰えるなど、「折尾の街に貢献したい」という経済外的な感情に訴えかける仕組みを取っています。

オリオンのような経済外的な感情に訴求する仕掛けがなければ、一般的なキャッシュレス決済と変わりません。地域通貨を導入する際には、いかに経済的な損得を超えた感情に訴求する仕掛けをつくるのかをよく考える必要があります。

持続可能な運用の仕組みでなければ成り立たない

多くの地域通貨が撤退に追い込まれた大きな理由が、「運用コスト負担に耐えきれなくなったため」です。そのため、新たに地域通貨へ参入する事業者が考えたいのが、「持続可能な運用の仕組みづくり」。

例えば、地域通貨の成功事例「さるぼぼコイン」の運営主体・飛騨信用組合では、加盟店がさるぼぼコイン→日本円に換金する際に1.5%の手数料を得ています※。また、飛騨信用組合は、さるぼぼコインのプラットフォームシステム開発において導入コストを抑えつつ、持続的に運用できる費用を回収する仕組みを整えました。

海外においても、例えばドイツの地域通貨「キームガウアー」では、運営事務局が100ユーロにつき2ユーロを運営経費として使用できる仕組みを整えています。

このように長く運営できている地域通貨は、運営費用を踏まえた仕組みを構築しています。

地域通貨は特定の地域でのみ流通するという性格上、その地域経済のパイ以上の利益を出すことはできません。利益の上限が決まっている以上、シビアに運営費用を考えた上で、持続可能な仕組みを設計して運用することが重要です。

※1.5%の手数料からユーザーに還元する1%を差し引いた0.5%分が運用費に回すことができる

デジタル地域通貨に期待する今後の展開

デジタル地域通貨は、地域経済および地域コミュニティーの活性化といった効果が期待されています。特定の地域でしか使えない地域通貨ならではの効果と言って良いでしょう。

一方、長くデジタル地域通貨を運用するためには、運営側や加盟店側、ユーザー側にとっても負担が少ない持続可能な仕組みづくりが大切です。そして、持続可能な仕組みづくりには、通貨の電子マネー化やECサイトとの連携などデジタルの活用がカギになるでしょう。

デジタル技術の発達は、地域通貨の利便性を高めています。これからは、よりデジタル技術を活用して、持続可能な仕組みを整えた地域通貨が出てくることが期待されることでしょう。地域を盛り上げるデジタル地域通貨の未来を、オクトノットと一緒に見守っていきませんか?
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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