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金融IT検定とは?その内容と有用性を発表会からわかりやすくひも解く

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金融IT協会は、金融分野のIT開発や活用を網羅し、ITパスポート試験に変わる金融IT分野の共通認識となると期待されている新しい検定制度である「金融IT検定初級」を発表し、受験申込受付を開始しました。
銀行の行内資格としての検討もされるほど注目を集め、金融IT協会会員企業はわずか半年で100社を超えました。
合格すると受験者や金融機関は何が得られるのでしょうか? そして、金融IT協会が目指す、検定にとどまらない組織の枠を超えたその先とは何でしょうか?
金融IT協会に加入したNTTデータ、オクトノット編集部は、さっそく「金融IT検定初級」発表会の模様を取材してきました。

金融IT協会は金融IT人材の育成、スキル継承を支援する

特定非営利活動法人金融IT協会は、2024年1月に体制を刷新し、再スタートしたばかりのNPO法人です。
金融機関やパートナー企業、関連団体への金融とITに関わるすべての人材の育成、スキル継承の支援に取り組んでいます。
金融IT検定を通じて進める「デジタル人材育成」と、意見交換や勉強会を通じてビジネスでの活用を学ぶことによって、金融業界に携わる誰もがIT活用できるように民主化を進めていく「IT民主化」が活動の二本柱です。
再スタートにあたり、同じNPOの金融データ活用推進協会には「金融」と「IT」を冠するNPOとしては唯一無二なのだから頑張れ! とエールを送られたとか?!
会員企業の募集開始からまだ半年で、参加企業数は100社を超え、順調な広がりを見せています。我がオクトノットの母体であるNTTデータも、つい先日加入しました

金融IT検定は金融とITに関わるすべての人の理解を高める共通言語

そんな金融IT協会は、対外活動を開始した当初から、金融IT検定の準備を進めているとアナウンスしていましたが、いよいよその準備が整い、申し込みの受付が開始されました。
試験は昨今の多くの資格試験同様、CBT(Computer Based Testing、紙と鉛筆ではなく、問題はコンピュータの画面に表示され、回答を入力する方式)で行われ、60問の選択式の問題に60分で答えます。
受験料は税込みで8,800円。下記のページから申し込むことができます。
金融IT協会会員なら、メールにて協会に申し込むと40%引きで受験できます。
金融IT検定初級は、金融分野の ITに関わるベースとなる知識が問われます。初級はあくまでも入門編で、新卒から入社 3 年目ぐらいのレベルで答えられる内容とのことですが、受験者は、金融機関の事務セクションを含む全職員に加え、ITパートナー企業など金融業務に従事する、すべての人を対象と考えているそうです。
なぜなら、立場や役割の違いによって、用語の理解に違いが生じ、通じなかったり、誤解が生じたりすることがあるからです。
デジタル化でビジネスモデルは高度化しており、新しいデジタル用語やビジネスモデル用語が日夜生まれています。
IT部門なら当然のように理解して使っている言葉でも、ユーザー部門は知らないため、何か丸め込まれているような気がする。逆にユーザー部門が業務を遂行する上で守らなければならない知識がIT部門には欠けているため、話が通じない。現場では、そんな不幸なすれ違いが実際に発生している、と理事の岸さんは指摘します。
金融ITシステムと関連するすべての方々がちゃんと話ができるような共通言語となる。そこには、金融業界のITリテラシーを底上げし、金融分野の IT開発・利活用を目指す、協会の理念と願いが込められています。
それに、デジタル時代には金融はどんどん変わっていかなければなりません。そのためにはビジネスの知識だけではなくて、ITの知識も前提にもっていないといけない。こうした考え方は欧米の金融機関では進んでおり、我々はIT企業である、と自称するJPモルガンのような金融機関もあります。日本ではまだそこまでの状況にはなっていませんが、日本もそうなれるように金融機関を応援したい、と理事長の山口さんは語ります。

金融IT検定合格への道

では、金融IT検定初級に合格するためには、どんな用語を理解し、知っておく必要があるのでしょうか? 気になる試験の中身を見ていきましょう。
シラバス(試験範囲)は金融IT検定の説明ページにあります。
試験問題は大きく3つの分野に分かれ、それぞれに5-7つのテーマがあり、それぞれの下に知っておくべき用語が並んでいます。
ITシステム分野は、ITリテラシーを問う基本的な内容ですが、「ITの基礎用語」よりも、「IT・DXの潮流」が先に来ているのは、ここまでに説明のあった、金融IT検定ならではの特長でしょう。他にテクノロジ、プロジェクトマネジメント、ビジネス戦略(プロジェクト推進やシステムの開発・運用に関する用語や事例)が並びます。
これだけを見るとこれまでのIT関連の資格試験と同じように見えますが、ここからが違います。
2番目の金融デジタルビジネス分野には、近年の金融ビジネス分野における専門用語や不慣れだと理解が難しい言葉が並んでいます。特に「商品・サービスの革新」や「金融DX事例」に並ぶ用語は、基本を理解した上で、移り変わる時代に合わせて、最新の状況を理解しておく必要があります。
3番目の金融システム分野に至っては、金融IT業界の人でなければ聞いたこともないような言葉が並びます。例えば「CAFIS」は「キャフィス」という読み方すら知らない人もいるでしょう。「勘定系」と「事務系」は金融ITに携わる人であれば、水や空気のように当たり前の用語ですが、他の分野の人には聞きなれないかもしれません。
なるほど確かにこれは「金融IT」の知識が問われる試験問題です。60問のうち、金融デジタルビジネス分野と金融システム分野からは、1/3ずつ出題されるとのこと。2/3は金融ITビジネス特有の知識が問われるこれまでにない新しい検定と言えるでしょう。
思えば筆者も金融IT分野に初めて飛び込んだ時には、周りの人がまるで宇宙人の言葉を話しているように聞こえました。当時は必死にメモを取って調べたものでしたが、2、3年経(た)つと当たり前のように同じ言葉で話していたことを思い出します。
こうした言葉が整理され、理解されていくことで、協会の目指す共通言語となり、より相互理解が進むことでしょう。
合格するためにはどうしたらよいのでしょう? まだ申込募集が開始されたばかりで、専門の参考書も、対策問題集もありません。金融IT検定初級のホームページには、いずれ参考資料や解説動画も公開される予定ですが、いまあるのは、まだシラバスやサンプル問題だけです。
金融IT検定の理念から考えると、シラバスを手掛かりに、自分で調べ、理解を進めるのが、遠いようで一番の近道かもかしれません。オクトノットでもこれまで多くの解説記事を手掛けてきましたが、記事にするために、この言葉の共通理解となっている概念は何か、どういう状況かを考えることが筆者自身にとっても勉強になったからです。
オクトノットでも、ことらBaaSといったシラバスにある用語を解説しています。まずはここから試験勉強を始めてはいかがでしょうか?

合格すると何が得られるのか?

合格すれば、もちろん合格証が発行され、認定マークを名刺に刷れるようになります。
しかし、それだけでなく、金融IT協会では、合格者同士が横のつながりを作ったり、取り組みや悩みを共有したりできるよう、コミュニティを作ることを計画しています。この取り組みは単なる検定で終わらせず、その先につなげていってほしい、という思いが込められています。コミュニティはまだ準備中で、12月の立ち上げに向けて鋭意準備を進めているそうです。
金融IT検定合格を目指す気の早い受験者の皆さんにとって一番の関心事項は、果たしてこの検定が本当に自分の役に立つのかどうかでしょう。
とある金融機関では、これまでもITパスポートが事務系職員のIT知識の取得資格として認定されていたが、何年か制度を運用してくる中で、本当に必要なのか? という悩みが出てきたそうです。そんな現状に対して、金融IT検定初級のシラバスにある内容は、銀行の行員にとってもより親近感を持って自分に関係のあることとして勉強するきっかけになるのではないか? という声が上がっていました。
まだ本当にできたばかりで、どうなるかわかりませんから、具体的な金融機関名や発言された方のお名前は控えますが、いくつかの大手金融機関では、行内資格として認められるように調整を始めているようです。

金融IT検定初級発表会の当日は日経でも金融IT検定初級の報道がされましたが、日経記事のURLを行内の関連部署に広く知らせ、行内資格として全行で採用しようと呼びかけた。そんな話をされた方が複数いらっしゃいました。会場にいたのは、この金融IT検定の有効な利用方法の検討をされている、それぞれしかるべき立場にある方々ばかりでしたから、こうした検討が実際に水面下で進んでいることは注目に値します。
発表会後の親睦会でお話していても、このように前向きに検討を進めていきたい金融機関の方々が多くいらっしゃいました。筆者には、いずれの他の多くの資格と同様に、金融機関のIT分野で働く際には必要な資格となっていく未来が見えたように思います。

1994年株式会社NTTデータ入社以来、インターネット黎明期のEC構築、初期の携帯電話へのPayment機能搭載、海外への着メロ壁紙配信からブロードバンド黎明期の動画コンテンツ配信の実証実験等、数多くの新しい分野への取り組み検討に携わる。いつの間にか15年以上のキャリアになった金融分野でも変わらず、先物システムへの新しい通信方式導入、銀行基幹システムのオープン化、その海外への展開、スマホペイメントの検討など、ひとところに落ち着くことがない。現在は金融×デジタルの最新情報を追いながら、今度は早すぎないよね?と時代とにらめっこしつつ新しい可能性を探っている。最近は車にはまっている。

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