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銀行が電子契約サービスを導入する理由とは?効果を上げた導入事例も紹介

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電子契約を利用している事業者は大きく増加しています。電子署名サービスを提供するドキュサイン・ジャパン株式会社の調査によれば、銀行を含む「金融業・保険業」が最も電子契約・電子署名サービスを導入している業種だと言います。

確かに、最近は電子契約を活用する銀行の話をネット上でも見かけるようになりました。では、銀行が電子契約サービスを導入する理由は何でしょうか。

今回は電子契約の意味から銀行が電子契約サービスを導入する理由、導入事例などを解説します。

「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。

電子契約とは

電子契約とは、契約書面を電子化し、第三者により発行された電子証明書を用いて、いつ、誰が契約したのか改ざんできないように、電子署名によって担保された契約を指します。そのための技術や法令が発展、整備されたことによって、急激に普及が進んでいます。

電子契約サービスの市場規模は拡大傾向にあります。株式会社矢野経済研究所の調査によると、2021年には140億円だった同市場規模は、2025年には395億円と、4年間で3倍弱に拡大するだろうという見通しを発表しています。

参照:電子契約サービス市場に関する調査を実施(2022年)|株式会社矢野経済研究所

銀行が電子契約サービスを導入する理由

民間企業で電子契約サービスが増えている理由の一つに、民間企業の契約相手として重要な省庁の改革が挙げられます。
2020年、当時の河野太郎行政改革担当大臣による「はんこをやめろ」という号令を皮切りに、行政手続きの99%超で認印が廃止になりました。省庁では脱ハンコの動きが広がっています。
加えて、2021年のデジタル庁発足も相まり、不動産登記や法人登記などの実印を必要とするような行政手続きでは、電子契約の有効性に注目が集まるようになりました。
河野氏はいまやデジタル大臣であり、これからも契約手続きにおけるデジタル化がより一層進むことが期待されています。

ここでは、かつて公務員がスーツからクールビズに着替えたように、世の中の環境変化に合わせて銀行が電子契約サービスを導入し始めた理由を3つ解説します。

銀行業務における労力や各種コストの削減

銀行で行われる金融取引では、日々大量の紙書類が発生します。その書類処理だけでも確認作業に膨大な事務手続きがかかるほか、書類の保管場所の確保やその維持コストも必要です。例えば、印鑑票の保管コストだけでも、頭が痛い銀行も少なくないでしょう。電子契約サービスを導入することで、業務工数の削減のほか、印鑑票を含む書類の保管問題も改善が期待できます
実際に電子契約サービスを導入することで、書類の保管や事務コストの問題を解決した銀行の事例がネット上でも散見されます。
そのほか、押印してもらうためだけに顧客先へ訪問する必要もないため、移動に係る労力や時間、コストも削減できます。

テレワークの増加

ほかの業種と同様に、銀行でもテレワークの割合が増えてきました。印鑑を利用している場合、押印するためだけにわざわざ出社をする必要があります。
一方、電子契約サービスを導入すれば、その必要はありません。電子契約サービスは、テレワークを推進・実現する有効な手段として銀行でも導入が進みました

CO2削減の取り組みの一環として導入

気候変動問題に対応すべく、銀行においてもCO2削減の取り組みが進められています。銀行には貸出先が気候変動対策に取り組んでいるのかをチェックする役割があるだけに、銀行自身も同問題の対策に取り組まないわけにはいきません。
現に、りそなホールディングスでは同グループのエネルギー使用に伴うCO2排出量について、「2030年度までに実質ゼロ」とする目標を立てています。

電子契約サービス導入により、押印のための出社がなくなることで、移動に係るCO2の削減が実現されます。またペーパレス化によるCO2の削減も大きく期待できます
このように、電子契約サービスは時代の要請にも応えられるサービスと言えるでしょう。

銀行の電子契約サービス活用事例

実際に銀行では電子契約サービスをどのように活用しているのでしょうか。メガバンクと地方銀行、それぞれの電子契約サービス活用事例を見ていきましょう。

三井住友銀行

三井住友銀行では電子契約サービス「SMBCクラウドサイン」を導入しています。SMBCクラウドサインは三井住友フィナンシャルグループと弁護士ドットコムの合弁会社「SMBCクラウドサイン株式会社」が提供する電子契約サービスです。

同行では、融資契約や住宅ローン契約において同サービスを利用しています。特に電子契約サービスによる住宅ローン契約は、当然ながらオンライン上で完結できることに加え、手数料や印紙代もかかりません。こうしたメリットもあり、同行における電子契約の利用率は9割を超えているそうです。
そのほか、法人口座開設や大量のインターンシップ生が提出する誓約書なども電子契約サービスによる電子署名で対応しています。

コロナ禍で地方銀行でも電子契約サービスの導入が進んだ

地方銀行でも電子契約サービスの導入が進んでいます。

例えば、京都銀行では2022年7月に「SMBCクラウドサイン」を導入しました。同行では、個人の顧客には教育ローンやマイカーローンなどの各種ローンを、法人・個人事業主には所定の融資取引をそれぞれ対象とし、電子契約での手続きに対応しています。

また千葉銀行では、顧客の利便性向上と銀行の業務効率化を目的に電子契約サービスを導入しました。電子契約サービス導入の結果、1契約に要する業務時間が平均10分、書類の保管作業時間は約20分それぞれ短縮され、年間5,100時間の省力化効果が生まれました

なお、京都銀行や千葉銀行以外にも、スルガ銀行や山陰合同銀行などの地方銀行が電子契約サービスを導入しています。

【注意】銀行が電子契約サービス導入の際に確認すべきポイント

契約書とは取引契約が成立したことを証明するための文書であり、そのために各種の法律があります。なかでも署名や押印は民事訴訟法で根拠となる条文が規定された大事な要素で、電子契約でもそれは変わりません。

電子契約では、契約書は多くの場合電子ファイルの形をとります。契約の関係者は、何かあった時に法律で適切に取り扱われるよう、この電子ファイルに電子的に署名をします。
電子的に高度な暗号化等の技術が使われることで、紙とは違う改ざんを防止の措置をとっています。
この署名を誰がどのように行い、どうやって証明しているのか?そこに電子契約の難しさがありますが、ここでは銀行が電子契約サービスを検討するにあたり、確認すべきポイントを3点に絞って解説します。

電子契約には2つの型がある

電子契約の署名方法は「当事者型」と「立会人型」の2種類に分かれます
  • 当事者型:契約に関わる当事者の電子署名で契約が交わされる
  • 立会人型:契約を仲介する第三者が署名する
紙の契約書に押される印鑑は、市町村役所に登録すれば役所が印鑑登録証明書を発行してくれますよね?電子契約では多くの場合、信頼できる第三者によって証明書が発行されます

当事者型は、契約当事者自身がなんらかの形で証明書を取得し署名する方法です。従って契約当事者に電子署名や電子証明書の知識が要求され、またPCやソフトウェアのセットアップも必要となります。比較的古くから存在し、法的にも準拠しやすい方法ですが、ハードルが高かったことは否めません。

立会人型では契約を仲介する第三者が署名をするため、知識やPCがなくても契約が可能です。その利便性の高さから、世界的にもデファクトスタンダードになったのはこちらの方式ですが、良いことばかりではありません。契約当事者が署名するわけではないので、厳格な本人確認が求められる場面では採用しづらいという問題がありました。

電子契約の黎明期にはどちらにも一長一短があった、ということですね。

本人確認は適切に行う必要がある

「当事者型」では、電子契約者本人が電子証明書を取得して署名を行うので、本人確認ができます。しかし、電子証明書が漏洩して他人に使われることのないよう、契約者自身が適切に管理する必要があります。電子証明書が記録されたマイナンバーカードはその好例と言えるでしょう。適切に管理されていることを前提に利用シーンが拡大され、便利になっていこうとしています。

「立会人型」では、立会人になる第三者が証明する前に、契約当事者が本人であることを確認しなければなりません。契約者自身が署名しない立会人型であっても、この本人確認が適切になされることで、各種の法律に準拠させることができます。そのための努力が、電子契約サービス提供者や関係省庁によって進められてきました。
また、SMSを使った多要素認証や生体認証といった新しい技術も大きく貢献しています。

当事者型も立会人型もサービスが進化しています。こうした電子契約サービス提供各社によるイノベーションと、政府・関係省庁の努力により、電子契約は広がりを見せているのです。
銀行がクラウド型の立会人型サービスを採用できるようになったのは、こうした努力やイノベーションが行われてきた結果だと言えるかもしれません。

改正される法律に気を配る必要がある

環境変化の多くは法規制緩和に伴う改正といった形で現れるので、関係法にはもちろん要注目ですが、契約には様々な法律が関わるだけに、新しい技術を規定する法律にも気を配る必要があります。
Octo Knotでは2022年1月に改正された電子帳簿保存法についてもお伝えしています。これからも折に触れて皆さんにお届けしていきますので、ご注目ください。

まとめ

電子契約サービスは、銀行業務における労力およびコストの削減、CO2削減の取り組みといった理由から導入されるケースが少なくありません。現に、今回紹介した千葉銀行のように、年間5,100時間の省力化を実現した事例もあります。

電子帳簿保存法の施行や、デジタル庁が推進する「インフラとしてのデジタル社会構築」といった動きからも、今後ますます電子契約の裾野は広がっていくことが予想されます。デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの一つとして、電子契約の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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