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業界の第一人者から学ぶ!センスの良いUIUXデザイナー探しのポイント

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スマホなどの普及に伴い、誰でもインターネットやアプリを使用することが当たり前の時代になったことで、「UI(ユーザーインターフェース)」という言葉を目にすることが多くなってきました。また、新型コロナウイルス感染症の流行も背景に、多くの企業で顧客接点の変革に取り組む動きが加速しており、利便性の向上に加えて利用者が満足できる体験を生み出すことを目指した「UX(ユーザーエクスペリエンス)」という言葉もいろいろな場面で使われるようになってきました。そんな中、まだ “UIUX”という概念が定着していなかった20年以上前から、UIUXデザインの重要性に着目し、日本でその概念を広めたUIUXデザイナーの第一人者、鳥越康平さん。これまでのデザイン開発などのご経験に基づいて、センスの良いUIUXデザイナー探しのポイントについて寄稿いただきました。

センスの良いUIUXデザイナーを見つけるのは難しい

アプリ開発において「センスの良いUIUXデザイナーが見つからない」といった悩みをよく耳にしますが、みなさまにはそのようなご経験はありますか?例えば、あるアプリの提供に向けて、企画段階から1年以上の時間をかけて開発し、いざアプリストアで提供し始めたものの、レビューが散々な状況となってしまった。新規事業の企画を成功させる上で、利用者であるユーザーの視点に立ち、操作しやすく理解しやすいアプリを開発することはとても重要です。その役割を担うのがUIUXデザイナーですが、センスの良いデザイナーを見つけるのにお困りの方が多いと聞きます。

企画者の意図をくみ取り、ユーザーが喜ぶアプリを設計し、エンジニアへの適切な指示も行える。そのようなセンスの良いUIUXデザイナーはどうすれば見つけることができるのでしょうか?私が20年かけて培ってきたナレッジの中でも、最も重要で理解しやすいと思われるポイントをまとめながら、「センスの良いUIUXデザイナーの探し方」についてお話します。大きなポイントは下記の3点であり、以降では、それぞれのポイントについて、デザイン業界に精通していない方にも分かりやすく紹介していきます。

ポイント1:適切な種類のデザイナーを選ぼう
ポイント2:デザイナーとしての実績を読み解こう
ポイント3:デザイナーの得意分野(工程)を確認しよう

ポイント1:適切な種類のデザイナーを選ぼう

まずは、「ウェブデザイナーとUIUXデザイナーの違いを知る」ことが大事です。新規企画におけるアプリ開発で必要なデザイナーはUIUXデザイナーになります。そのため、ウェブデザイナーとUIUXデザイナーが異なるという点を押さえる必要があります。ウェブデザイナーとはホームページやECサイトなどを設計するデザイナーです。一方、UIUXデザイナーはスマホアプリやウェブシステムなどを設計するデザイナーを指します。近年、スマホアプリやウェブシステムの台頭により、ユーザーにとってより使いやすいサービスを提供する観点で、UIUXの重要性が高まっています。

そのため、多くのウェブデザイナーがUIUX業界へ転入しようとしている傾向にあります。ホームページの設計とアプリの設計は一見似たように見えるかもしれませんが、両者に求められるスキルは異なります。したがって、新規企画のアプリを良いものにするためには、UIUX業界に転入を図ろうとしているウェブデザイナーよりも、元からUIUXデザイナーとして育ってきた人材を見つける方が良いということになります。

実際にプロジェクトには携わっていないアプリの『サンプル』を自身の実績として掲載するウェブデザイナーも中には見られ、ウェブデザイナーとUIUXデザイナーの違いは分かりづらいかもしれません。他方で、昔はウェブデザインもやっていたが、今はUIUXデザイン一筋という人材も多く存在します。そのようなデザイナーは採用すべきである可能性が高いといえます。

したがって、UIUXデザインに携わった「経験年数」を見ることが、デザイナー選びの重要な要素だと考えます。例えば、UIUXのデザイナー経験年数が5年以上であればある程度経験を積んでいるという印象、さらに7年以上であればベテランUIUXデザイナーという印象を私は持ちます。経験年数が十分であれば、次項のとおり、実際に携わったプロジェクトの実績をチェックしていくことが大事になります。

ポイント2:デザイナーとしての実績を読み解こう

デザイナーを選定するに当たって実績を確認することは非常に重要です。実績を読み解く際に重要な要素として、まず「大企業の実績があるか?」という観点があります。大企業と仕事をするにはしっかりとした経験や実績が求められるため、誰もが知る大企業や有名なメガベンチャーなどの実績があるかどうかは一つの基準にもなります。

そして二つ目の要素として、「誰もがよく知っているアプリ開発の実績はあるか?」という観点も大事です。世界中を見渡すと膨大な数のアプリが存在しますが、知名度の高いアプリはほんの一握りです。そのようなアプリ開発に携わっていたという実績は、そのデザイナーのセンスや経験を物語っていると言えます。同時にそのようなアプリを作るチームに所属するには、それに見合った能力が求められます。仕事の速さや正確さなども一定程度担保されると考えられます。

最後に「実績に関する定量的な説明があるか?」という観点も非常に重要です。デザイナーの実績には、職務経歴書とは別に「作品集(ポートフォリオ)」というものもあります。言い換えると、そのデザイナーの過去のプロジェクトにおける企画書やアプリの画面イメージがまとまっている資料です。デザイナーとのやり取りの際に「『作品集(ポートフォリオ)』を送ってください」と伝えれば入手できると思います。

デザイナーの作品集を見た際には、UIUXスキルの紹介だけではなく、実績に関する定量的な説明があるかどうか確認してみてください。例えば、事業成長にどのようにインパクトをもたらしたか?アプリのレビューがどれだけ向上したか?などを数値で説明しているかどうかがポイントになります。一般的な話になりますが、経験の浅いUIUXデザイナーの作品集には、定量的な説明が少なく、スキル紹介の割合が大きいケースが見受けられます。

(スキル紹介の例)

一方で、経験豊富なUIUXデザイナーの作品集には、自身が携わったことによりそのプロジェクトの事業成長にどのようなインパクトもたらしたのか?といった実績について、定量的な説明がしっかりされていることが多い傾向があると感じます。そのアプリがどのようによくなったのか?“改善前”と”改善後“でどのように変わったのか?ということが定量的に記されているかどうかが重要です。そういったデザイナーほど、プロジェクトで新規企画の上流の意図をくみ取ってくれやすく、企画の説明時にもスムーズに意思疎通が図れることが多いと思います。これら要素を押さえつつデザイナーとしての実績を読み解いてみてください。

(定量的な説明の例)

ポイント3:デザイナーの得意分野(工程)を確認しよう

いざ「この人なら良いのではないか?」と期待できるUIUXデザイナーが見つかった場合に、デザイナーとの面談に先立ち確認すると良いポイントをご紹介します。それは、「デザイナーの得意分野、つまりプロジェクトのどの工程を担当しているか確認しよう」ということです。アプリの開発には多くの工程が含まれるため、UIUXデザイナーによってもそれぞれ得意としている業務内容が異なります。業務の工程は大きく、①UX設計、②要件整理、③UI設計、④データ制作、⑤開発サポート、と区分できます。

UIUXデザイナーは、事業の企画が定まった後にユーザー目線で上記工程をたどりながらアプリを設計していきますが、幅広く対応可能なデザイナーを探すというのが大事です。多くのUIUXデザイナーは、A:UX設計が得意なデザイナー、B:UI設計が得意なデザイナー、に大きく分類できると思います。

そして、デザイナーの得意分野から、どの程度幅広く対応可能かどうかを確認することがとても重要です。POC(Proof of Concept:概念実証の略)のような、「UX設計〜プロトタイプ開発まで」のプロジェクトであればAのデザイナーが良いかもしれませんし、実際のアプリ開発になるとBのデザイナーも必要になってきます。それぞれのデザイナーの得意分野に加えて、どれだけ幅広く担当可能かヒアリングすることで、そのプロジェクトに最適なデザイナーかどうかを判断できます。例えば、幅広く担当できるデザイナーの参考事例が以下になります。

上図のA☆のようなデザイナーは、UX設計の段階から入ってくれて、さらに企画意図をくみ取ってアプリの要件整理を行えるでしょう。B☆のようなデザイナーは、定まった要件に対してしっかりとしたアプリの設計からデータ制作までを行ってくれるでしょう。もちろんまれに全ての範囲を担えるC☆のようなデザイナーも存在します。C☆のようなデザイナーは企画意図を理解したうえで全ての工程に携わってくれるため、上流のUX設計から下流の開発サポートまで一貫して企画意図を通すことができます。

また、デザイナーとの面談前にヒアリングを行う際には、プロジェクトでどの工程を担当するのか?ということと、どこが得意な分野なのか?を質問すると良いと思います。デザイナーからの返答を踏まえて、どの程度幅広くお願いできそうか検討してみてください。面談前にこれらを確認することで、面談時における質疑応答も双方にとってスムーズなものになると思われます。

新規事業企画の成功の鍵を握るUIUXデザイナー

以上、センスの良いUIUXデザイナーの探し方として3つのポイントをお話しました。
ポイント1:適切な種類のデザイナーを選ぼう
ポイント2:デザイナーとしての実績を読み解こう
ポイント3:デザイナーの得意分野(工程)を確認しよう
これらのポイントをご確認いただき、実際にデザイナーとの面談に臨んでみてください。面接では、企業ごとの考慮事項やポイントなどを確認していくことになると思います。

ユーザー視点で分かりやすいアプリを作ることができるUIUXデザイナーは、企画を成功させる上でとても重要な存在であり、新規事業企画の成功の鍵を握っているとも言えます。他方で、UIUXデザイナーの数はまだまだ少なく、自社に合ったデザイナーを見つけるのは困難を極めるかと思います。どのような観点でデザイナーを探したら良いか分からないという悩みを持つ方も多いと思いますが、本記事の内容が、みなさまにおけるUIUXデザイナーの獲得の一助となれば幸いです。
<この記事を書いた方>
鳥越 康平(とりごえ こうへい) さん

日本で早期からUIUXデザインを広めUX設計のノウハウを構築した数少ないデザイナー。大学卒業後、韓国SAMSUNGのデザイン部で当時最先端スマートフォン端末のUIUX設計・開発に携わったのち、2005年にUIUXデザインのZeppelinを日本で設立。
延べ1億人のユーザーが使う数々の有名なモバイルアプリを開発し、数々の新規ビジネスを創出する。現在は、UIUXデザイナーを紹介するシステムの提供を行う「株式会社Desiign(デザイン)」のCDOとして、UIUXデザイナーの選定を行う。
株式会社Desiign:https://desiign.io/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
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執筆 オクトノット編集部

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