Tマネーが銀行サービスってどういうこと?
見出しの通り、率直に「どういうこと?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。多くの方にとって、銀行という言葉に抱くイメージとTマネーとがすんなりと結びつきにくいのではないかと思います。そもそも、銀行業を営むには満たすべき要件が色々あり、簡単に参入できないイメージがありますよね。実はこのサービスでは、Tポイントを運営するCCC・Tマネーは銀行免許を取得せずに銀行業に参入しているのです。
このサービス、もともと銀行免許を保有している住信SBIネット銀行が、自らの銀行機能をTマネーにサービスとして提供することによって実現しています。これは、近年耳にすることが増えてきたBaaS(Banking as a service)と言われるスキームの1つだと考えられます。BaaSについて本記事では詳細には取り上げませんが、一般的には銀行の機能(預金・貸出・決済など)を、銀行免許を持っていない他の企業に、サービスとして提供するということを指して使われる場面が多いようです。
銀行とは異なる利用者接点を持つ企業が金融機能をタイムリーに提供できることで、利用者に新しい価値提供ができる仕掛けとして、海外ではすでに多くの事例が出てきていますが、最近は日本でも少しずつ増えてきています。例えば、住信SBIネット銀行以外にも、新生銀行グループの「BANKIT」や、ふくおかフィナンシャルグループ傘下の「みんなの銀行」が、専用サイトを立ち上げるなどして、BaaS事業への取り組みを大々的に展開しています。
このサービス、もともと銀行免許を保有している住信SBIネット銀行が、自らの銀行機能をTマネーにサービスとして提供することによって実現しています。これは、近年耳にすることが増えてきたBaaS(Banking as a service)と言われるスキームの1つだと考えられます。BaaSについて本記事では詳細には取り上げませんが、一般的には銀行の機能(預金・貸出・決済など)を、銀行免許を持っていない他の企業に、サービスとして提供するということを指して使われる場面が多いようです。
銀行とは異なる利用者接点を持つ企業が金融機能をタイムリーに提供できることで、利用者に新しい価値提供ができる仕掛けとして、海外ではすでに多くの事例が出てきていますが、最近は日本でも少しずつ増えてきています。例えば、住信SBIネット銀行以外にも、新生銀行グループの「BANKIT」や、ふくおかフィナンシャルグループ傘下の「みんなの銀行」が、専用サイトを立ち上げるなどして、BaaS事業への取り組みを大々的に展開しています。
できることは、ほぼ銀行!
気になるものはとにかく使ってみる!ということで、編集部メンバーが早速申し込んでみました。申し込みはネット完結。本人確認には、株式会社Liquidが提供する仕組みが導入されていました。運転免許証をスマートフォンのカメラで撮影したあと、インカメラでいくつかの角度から、自分の顔をぐりぐりと横に動かしたりして照合。これでおしまいです。
数日後、自宅に封筒が届きました。
数日後、自宅に封筒が届きました。
申し込みの数日後に届く郵送物
認証番号カード
送られてきたのは認証番号カード。券面デザインは完全に機能提供元である住信SBIネット銀行の認証番号カードそのものです。裏面にT NEOBANK支店とあります。キャッシュカードは発行されませんが、スマートフォンのアプリ(以下、スマホアプリ)を使ってATMで現金を引き出せるようになっています。
ちなみに、アプリの方はこのようなイメージ。見た目はTポイント感が満載ですが、機能ラインナップは提供元の銀行とほぼ同じであることがわかります。銀行と異業種との提携において、送金やデビットなどの銀行機能の一部分を使う例はこれまでも比較的多く見られましたが、フルバンキングと言えるような幅広いラインナップで銀行機能を実装したケースは、日本ではまだ少ないと思われます。
ちなみに、アプリの方はこのようなイメージ。見た目はTポイント感が満載ですが、機能ラインナップは提供元の銀行とほぼ同じであることがわかります。銀行と異業種との提携において、送金やデビットなどの銀行機能の一部分を使う例はこれまでも比較的多く見られましたが、フルバンキングと言えるような幅広いラインナップで銀行機能を実装したケースは、日本ではまだ少ないと思われます。
T NEOBANKのアプリ画面
住信SBIネット銀行のアプリ画面
※左が「T NEOBANK」、右が「住信SBIネット銀行」のアプリ画面
【T NEOBANKで利用可能なサービス】
・円普通預金、円定期預金、目的別口座、定額自動入金、給与受取、年金受取
・外貨普通預金、外貨定期預金、外貨積立、外貨送金受取サービス
・外貨即時決済サービス
・振込・振替、定額自動振込、口座振替(銀行引落)、即時決済
・カードローン
・住宅ローン(フラット35)
・BIG・toto
・JRA(中央競馬)、ボートレース、地方競馬、競輪、オートレース、LOTO
・テレフォンバンキング、ATM
・スマートフォンアプリ「T NEOBANK」
(出典)T NEOBANK商品概要説明書
・円普通預金、円定期預金、目的別口座、定額自動入金、給与受取、年金受取
・外貨普通預金、外貨定期預金、外貨積立、外貨送金受取サービス
・外貨即時決済サービス
・振込・振替、定額自動振込、口座振替(銀行引落)、即時決済
・カードローン
・住宅ローン(フラット35)
・BIG・toto
・JRA(中央競馬)、ボートレース、地方競馬、競輪、オートレース、LOTO
・テレフォンバンキング、ATM
・スマートフォンアプリ「T NEOBANK」
(出典)T NEOBANK商品概要説明書
スマホアプリを使って、実際に送金を試してみました。振込先や送金額などの情報を入力し、生体認証をアプリに登録してログインしていれば、最後の認証はパスワード不要で送金実行できます。当然と言えば当然ですが、取引プロセスは提供元の銀行が提供しているサービスと同様です。
異業種が提供する銀行サービスのメリットを考える
ここでT NEOBANKから目線を少し移して、異業種が提供する銀行サービス全般のメリットについて、少し考えを膨らませてみました。
私たち一般の利用者からすると、自分が普段から好んで使っているサービスやお店などが、よりおトク、あるいはより便利に使えるようになる、というところにありそうです。T NEOBANKの例では、普段の買い物などで貯めたTポイントを、ローン返済や、公営競技の投票資金として使うことができます。
また、銀行取引でTポイントを貯めることもできます。給与受取や口座振替、外貨預金などの各種取引に応じてポイントが貯まるため、Tポイントを普段から使っている利用者にとっては、今までただ単に使うだけで終わっていた銀行取引が、ポイントを貯めるおトクなチャンスに化けることになります。
私たち一般の利用者からすると、自分が普段から好んで使っているサービスやお店などが、よりおトク、あるいはより便利に使えるようになる、というところにありそうです。T NEOBANKの例では、普段の買い物などで貯めたTポイントを、ローン返済や、公営競技の投票資金として使うことができます。
また、銀行取引でTポイントを貯めることもできます。給与受取や口座振替、外貨預金などの各種取引に応じてポイントが貯まるため、Tポイントを普段から使っている利用者にとっては、今までただ単に使うだけで終わっていた銀行取引が、ポイントを貯めるおトクなチャンスに化けることになります。
銀行機能を使う企業側から見るとどうでしょうか。分かりやすいところでは、自社サービスの差別化や、利用者のロイヤリティ向上といったところにメリットがありそうです。また、業種にもよるとは思いますが、金融機能を自社サービスのジャーニーにうまく組み込むことで、利用者の利便性向上や、取引離脱の抑止といった効用もあるかもしれません。
また、銀行代理業の許可を受けて「契約の条件の確定又は締結に関与する対価」(※1)を得るようなビジネスモデルも考えられるかもしれません。いずれにせよ、金融機能はこれまで自社単独では実現が難しかった新しい効果や顧客体験を生むための1つの武器となりそうです。
(※1)金融庁『銀行法等に関する留意事項について(銀行法等ガイドライン)』
機能を提供する銀行から見ると、1つには新しい客層にアプローチできるというメリットがあるのではないでしょうか。BaaSが機能提供サービスであると考えるなら、利用に対してシステム利用料を収受するようなビジネスモデルもあり得るかもしれません。
T NEOBANK の例でいくと、Tポイント利用者は約7,000万人と言われています。当然すべての利用者が口座を開いてくれるわけではないにせよ、少し大げさに言えば「T NEOBANK支店」の言葉が意味する通り、約7,000万人が住む街に支店を1つ構えたようなイメージとも考えられるかもしれません(もはや国レベルですが…)。黒子とはいえ、それだけ自社サービスを使ってもらうチャンスが増えることになります。
また、銀行代理業の許可を受けて「契約の条件の確定又は締結に関与する対価」(※1)を得るようなビジネスモデルも考えられるかもしれません。いずれにせよ、金融機能はこれまで自社単独では実現が難しかった新しい効果や顧客体験を生むための1つの武器となりそうです。
(※1)金融庁『銀行法等に関する留意事項について(銀行法等ガイドライン)』
機能を提供する銀行から見ると、1つには新しい客層にアプローチできるというメリットがあるのではないでしょうか。BaaSが機能提供サービスであると考えるなら、利用に対してシステム利用料を収受するようなビジネスモデルもあり得るかもしれません。
T NEOBANK の例でいくと、Tポイント利用者は約7,000万人と言われています。当然すべての利用者が口座を開いてくれるわけではないにせよ、少し大げさに言えば「T NEOBANK支店」の言葉が意味する通り、約7,000万人が住む街に支店を1つ構えたようなイメージとも考えられるかもしれません(もはや国レベルですが…)。黒子とはいえ、それだけ自社サービスを使ってもらうチャンスが増えることになります。
と、ここまでは比較的分かりやすいメリットを挙げてきましたが、最近では機能の融通を超え、これまで出会うことがなかった金融と非金融のデータを掛け合わせることで生まれる新たな価値を、連携の相乗効果として目指す流れも出てきています。本記事では詳細に取り上げませんが、決済データのマーケティングへの活用や、非金融情報の融資への活用など、さまざまな拡がりが期待されています。
ちなみに、Tマネーは4月21日にApple Payへの対応を開始し、スマホ決済市場への参入を発表しました。今後、色々な形でT NEOBANKとの連携が生まれてくるかもしれませんね。
ちなみに、Tマネーは4月21日にApple Payへの対応を開始し、スマホ決済市場への参入を発表しました。今後、色々な形でT NEOBANKとの連携が生まれてくるかもしれませんね。
スマートな取引体験から感じたこと
T NEOBANKの話に戻ると、「非常にスマートに取引できた」というのが、実際に使ってみての率直な感想です。取引の認証については、前述した通り、スマート認証NEOと呼ばれる機能によって、スマートフォンで事前に登録した生体認証(指紋など)を使ってログインすると、送金の取引ごとにパスワードや認証番号の入力は求められません。
ですがこれ、そもそもT NEOBANK特有の機能ではなく、サービス提供元の銀行の機能なのですよね。ということは、BaaSのスキームを活用したビジネスを考える際には(金融機関目線では選ばれるためには)、機能提供の仕方にもよりますが、経済条件やサービスラインナップだけでなく、UI/UXを意識した顧客接点の設計も1つのポイントになり得るということが言えるのではないでしょうか。
ですがこれ、そもそもT NEOBANK特有の機能ではなく、サービス提供元の銀行の機能なのですよね。ということは、BaaSのスキームを活用したビジネスを考える際には(金融機関目線では選ばれるためには)、機能提供の仕方にもよりますが、経済条件やサービスラインナップだけでなく、UI/UXを意識した顧客接点の設計も1つのポイントになり得るということが言えるのではないでしょうか。
ちなみに、T NEOBANK支店を見たときに、スルガ銀行のリクルート支店やANA支店を思い出しました。スルガ銀行の事例は歴史的にはかなり先行した取り組みです。いずれも銀行内に専用支店を設けるという仕掛けは似ていますが、これまでの専用支店と少し違うポイントはTマネーが銀行代理業の許可を得ている点ではないかと思います。銀行代理業の許可を得ることで変わるのは、契約の締結の代理又は媒介を行う“営業”ができるようになることです(※2)。
(※2)金融庁『主要行等向けの総合的な監督指針』
冒頭でTマネーは銀行免許を取得していないと書きましたので、「でも結局許可は取っているんじゃないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。本稿では詳細に取り上げませんが、一般的には「免許」よりも「許可」のほうが、ハードルが低いと考えられています。Tマネーの事例は免許を選択しない一方で、従来多かったモデルに比べてもう一歩踏み込んだ、チャレンジングな取り組みと言えるかもしれません。
別の記事でも取り上げていますが、銀行代理業の登録者数は近年大きく増加しています。価値観や生活スタイルの多様化、感染症流行も相まった顧客接点の変化がトレンドとして注目される中、業界を超えて新しい価値を作り出そうとする動きは、今後も増えていきそうですね。編集部では、今後も新しいサービスをウォッチしていきたいと思います!
(※2)金融庁『主要行等向けの総合的な監督指針』
冒頭でTマネーは銀行免許を取得していないと書きましたので、「でも結局許可は取っているんじゃないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。本稿では詳細に取り上げませんが、一般的には「免許」よりも「許可」のほうが、ハードルが低いと考えられています。Tマネーの事例は免許を選択しない一方で、従来多かったモデルに比べてもう一歩踏み込んだ、チャレンジングな取り組みと言えるかもしれません。
別の記事でも取り上げていますが、銀行代理業の登録者数は近年大きく増加しています。価値観や生活スタイルの多様化、感染症流行も相まった顧客接点の変化がトレンドとして注目される中、業界を超えて新しい価値を作り出そうとする動きは、今後も増えていきそうですね。編集部では、今後も新しいサービスをウォッチしていきたいと思います!
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。