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中小企業流DX! 社員を活かし、企業の潜在力を発掘するDXとは

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経済産業省による「DX推進ガイドライン」の発表から約6年。国内事例が積みあがる一方で中小企業のDX推進率は13.5%に留まります。中小企業にDXは難しいのでしょうか? そうではなく本業の強みや社員の力を活かす「中小企業流DX」があるはずです。企業の規模・状況も考えた本業のDXを一緒に考えましょう。

DXが身近な企業とそうでない企業の違い

経済産業省による「DX推進ガイドライン」の発表から約6年が経ち、デジタルトランスフォーメーションという用語は目新しいものではなくなりました。DXは検討していて当たり前、すでにいくつかの業務で成果を出している。そういったニュースが増えています。この記事を読まれている方々の中にも、デジタルを身近に活用されている方が多いのではと思います。

しかし未だに業務のツールが紙や電話であったり、外回りの社員と内勤の社員との間のコミュニケーションに悩まれている、DXはまだまだと思われている企業も多くいらっしゃいます。特に中小企業、地域企業ではその比率が増す傾向にありますがこれはなぜでしょうか。
一般には、企業規模が小さいとDXへの投資余力が少なくなるから。あるいは少量多品種を扱うことが多く、デジタルが得意な大量処理のメリットを発揮しにくいからなどと言われますが、どうもそれ以外に理由があるようです。多くの中小企業のお手伝いをする中で、DX・デジタル技術への間違った認識があることと、それが原因で二の足を踏む方がほとんどと気が付きました。 

誤解の1つは、デジタル技術の使いやすさに関するものです。DXが紹介されるとき、そのほとんどは高度な技術を使った成功例です。少し前はIoTやRPA、ビッグデータによる需給予測、最近では生成AIなどでしょうか。苦手意識を持つ企業の多くは、DXというとこれらの高度な技術、先進的な取り組みを連想します。そして自分たちの手に余る、いまの業務には使えないと、壁を作ってしまいます。最近はほんの数十分の練習ですぐに使いこなせるツールも多くでてきています。それなのに、心理的な壁が先に来て手をつけなくなってしまっています。

もう1つはデジタル技術を何に使うか、です。この2つのデータを見てください。 
これは中小企業の経営者が重要と考える経営課題(左)と、同じく中小企業の経営者がDXに期待する成果・効果(右)を調査したものです。経営課題は人材の確保と売上を作るための営業や商品開発が上位に来ていて、業務効率化は第7位になっています。
これに対し、DXに対する期待の上位は業務効率化・コスト削減です。中小企業の経営者の多くは、DX・デジタル技術を売上拡大、所謂トップラインの向上に使おうとしていない。あるいは使えると思っていない、ということを示しています。

自社にとって重要な課題と技術が結びついていない。そのためDXへのモチベーションは低くなり、活用が進まない現状につながっています。では中小企業が経営課題の解決にデジタル技術をどう活かしていけばいいのか。それには中小企業の強みである「現場」と「機動力」から始めればいいと、私は考えます。

課題の発見は「現場」から

中小企業の強みは「専門性の高さ」にあります。それは製造ラインであったり、売場であったり、派遣社員の教育体制であったり様々ですが、それらのほとんどが現場で培われてきたものです。
それがDX・デジタル活用を掲げると、とたんにビジョンであったり計画であったり、現場の強みを横に置いて検討を始めてしまうことが多い。そうすると本業と離れた取り組みになりがちで、強みが活きないために成果は出にくくなり、普段と仕事と違う取り組みに見えて現場は自分ごと化がしにくくなります。
成功率を高めるには自社の専門性、つまり付加価値を生み出している商品やサービスから始めるべきだと、私は考えます。 

そのために必要なのは、自分ごとにしやすい具体的な目標設定です。 自社の売れ筋商品はなんでしょうか。お客様から高く評価されているサービスは? そこに焦点を当てることを強くお勧めします。もしどれが売れ筋かが分からなければ、そのデータの集計と分析から始めましょう。 
商品やサービスに焦点を当てたら、次はそれをどう変化させるかです。まずお勧めしたいのは数を増やすこと。販売数量を大きくのばそうとしたら、そこで初めて課題があぶり出されます。 

例えば、もっと営業をかけようとしたとします。 ある会社は、納品事務が回らなくなるので営業にストップがかかりました。また別の会社は、営業リストが枯渇してそれ以上動けなくなりました。あるいは営業所員の腕の差が表れて、思うように拡販できないかも知れません。 

そこがデジタル活用の切り口になります。納品事務が回らなければ、その効率化が特効薬です。業務の流れを見える化し、無駄を省き、単純作業をデジタルに置き換えます。営業リストが枯渇していれば、過去の顧客リストを選り分けたり、政府統計や自治体の公開データから近隣の見込み顧客のマップを作ってみてはどうでしょうか。営業力、セールストークや売場作り、巡回ノウハウの共有も簡単になっています。 

どうでしょう。少しイメージが湧いてきませんか。 業務効率化はとても重要です。しかし本業に、トップラインの向上にデジタル技術を活用する。それがはじめの一歩の勢いをつけ、より大きな取り組みの源泉になっていくはずです。

「機動力」をいかし、すぐに始めてやり切る

目標を立てたら、次に必要なのは経験値です。一般に目標の次にくるのは計画ですが、多くの企業にとってデジタル活用は専門外です。初めからよい計画を立てられるはずがありません。きちんとした計画を立てるために必要なのは経験値。目の前の成功、失敗にとらわれるべきではありません。「とにかくやってみる」、「とにかく完成させる」の意識が重要です。 

ある企業で、見積り提示のスピードアップのお手伝いをしたことがあります。多くの企業がそうするように、そこも見積りの際には過去の類似案件を探して、実績をもとに見積を作成していました。そしてこれも多くの企業がそうであるように、過去の見積り情報は事務所からしか参照できませんでした。そのためお客様のご要望を聞いた後にお時間をいただき、帰社して類似案件を探して見積を作成する。多くの営業担当の方が、この手間をもったいないと感じていました。

結果、その企業では過去の見積をデータ化してクラウド上で管理することを選びました。お客様先から類似案件を探して、概算見積を提示することができるようになり、成約率・リードタイムが大きく向上しています。結果だけだと単純に見えますが、やっていく中でいくつも課題がありました。 

最初の壁は経営層がクラウド化に難色を示したこと。そして過去の案件をうまく検索できなかったこと。次に営業所員が使いこなしてくれなかったこと。いずれも試してみて初めて見えた課題です。これを1人の営業所員とIT担当がタッグを組み、1つずつ形にしていきました。 

いまでは社内のほとんどの資料がデジタル化され、事務所の内外を問わず必要なデータを必要なときに、どこからでも参照できるようになっています。経営層の意識も変わり、デジタル化や社内改善を奨励する文化もできました。自社の変革ノウハウをもとにした、コンサルテーションも新規事業として始めたと聞いています。

実際に進めていくには

中小企業流のDXについて、始め方からステップについてご紹介しました。言っていることは分かるが、実際に手をつけようとすると手が止まる。そんな方もいらっしゃると思います。そうした中小企業に寄り添おう、ともに地域や業界を盛り立てようという伴走者が多くいらっしゃいます。次回はそんな企業の変化に寄り添う、伴走支援の在り方についてご紹介しようと思います。
【この記事を書いた人】
青木 滋

青木 滋

株式会社NTTデータフィナンシャルテクノロジー
テクノロジー&ソリューション事業部 技術戦略企画担当
プロフェッショナル
東京・日本橋の下町出身。大規模システムの研究開発・導入支援を経て、2017年より働き方改革を実現するためのITサービス開発と企業支援に従事。
現在はその出身から、地域経済をデジタル技術で応援したいという思いで、地域企業への伴走支援とその枠組みづくりに取り組んでいる。
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は執筆当時のものです。
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執筆 オクトノット編集部

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