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API gallery MeetUP ~Vol.18”API自治体アプリ×金融 エンベデッドファイナンスの可能性”

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スマホの利用で顧客接点がデジタル化し、アプリからユーザーの情報を得られるようになっています。こうした流れで、行政や事業会社のサービスを介して金融機能を提供するエンベデッドファイナンスへの期待も高まっています。今回はデータドリブンマーケティングの事業を手掛ける株式会社DearOneの安田さんに、地方自治体と地域金融機関が連携し地方の課題を解決する地域DXアプリの可能性についてお話しいただきました。

本記事はNTTデータが運営する「API gallery」プレゼンツで2023年7月25日に開催したウェビナー「API gallery Meet UP ~ Vol.18 “地域DX×スーパーアプリ”」の内容を記事化したものです。
API galleryでは随時ウェビナーを開催中です!過去の企画、および今後の開催予定は以下のリンクをご覧下さい!
青柳さん 今回は地域DX×スーパーアプリがテーマということで、アプリ、マーケティングに強みのある株式会社DearOneのマーケティング部ゼネラルマネージャーの安田さんにお越しいただいています。

安田さん 株式会社DearOneでマーケティング、インサイドセールス、パートナーアライアンス等のマネージャーを担当しております、安田と申します。よろしくお願いします。

弊社はNTTドコモのグループ会社でして、飲食店や小売りからメーカー、大学、自治体に至るまで幅広い業種・業態へサービスを提供しています。我々の事業のポイントはデータドリブンというところで、データを使ったマーケティングのご支援が特徴です。また、既存の会員、顧客にロイヤルカスタマーになっていただき、LTV(※)を高めるグロースマーケティングのご支援を中心に手掛けているのが大きな特徴です。

※LTV: 顧客生涯価値(Life Time Value)のこと。顧客が自社と取引を始めてから終了するまでの間に、もたらす利益を表す指標。


青柳さん 本日は、まず私から地域におけるアプリの重要性をお話して、安田さんからDearOneさんの強みであるデータドリブンマーケティングについてお話しいただければと思っています。

地域におけるアプリの重要性

青柳さん マーケティングフレームワークでAISASというものがあり、それぞれの頭文字が消費者の購買行動のプロセスとなっています。「A(Attention)」 が認知、「I(Interest)」が 関心、「S(Search)」が 検索、「A(Action)」が 購買行動、「S(Share)」が 共有を意味し、この順序で消費者は商品を見つけ、購入していくと考えられています。

最近は若年層を中心にタイムパフォーマンスという言葉が使われているように、この検索(Search)すら億劫だというユーザーが増加しつつあります。
例えば口座の残高を確認したいときは、ブラウザを開いてインターネットバンキングにログインするよりも、バンキングアプリで見る方が簡単ですよね。
こうした背景から、アプリマーケティングの比重が高まっています。

次はエンベデッドファイナンスの話をさせていただきます。従来は金融機関がエンドユーザーに直接金融機能を提供したものが、金融機関が事業会社や行政を介してエンドユーザーに金融機能を提供するようになっています。

【図1:地域におけるエンベデッドファイナンス】


青柳さん 図1の青い部分が今までの銀行の金融です。銀行取引をするためにバンキングアプリがあります。一方、地域に住む皆さんは自分の目的のためにいろいろなアプリを使います。例えば、地域マネーを使ったり、地域の交通に乗ったりなど、図1の赤い部分の中に金融が入ってくるのがエンベデッドファイナンスです。
「みきゃんペイ(伊予鉄グループ×伊予銀行)」、「ふくアプリ(福井新聞×福井銀行)」に代表されるような地域アプリの裏には金融が組み込まれたことで、地域で目的別の活用へ拡大が期待される事例がいくつもあります。これらのアプリは、目的にダイレクトにたどり着きたいというユーザーのニーズに応えられるようになっています。

このようなアプリを使っていくと、さまざまな情報がたまっていきます。銀行、自治体、地域のお店、住民の方、みんなで使えるようなプラットフォームになっていて、蓄積されたデータをどのように活用するかがポイントになります。例えば広告ビジネスに利用する、地域の皆さんの行動変容を促すような話も出てくると思います。

ユーザーの求めるアプリに金融が入ってくるといった背景を踏まえて、どういうアプローチで地域アプリを提供していけばよいのか、ここから安田さんにお話を伺います。

安田さん 私からは地域DXに向けたアプリの活用ということで、地域のDXアプリってどのようなものなのかを中心にご説明します。


安田さん 株式会社DearOneはNTTドコモのグループ会社で、デジタルマーケティングのご支援を中心にやっている会社です。私たちの支援内容は主に2つです。

1つ目はデータドリブンマーケティングで、顧客理解を深め、企業のファンを増やす伴奏パートナーをやっています。企業や自治体、大学等のデータを使ったマーケティングの支援をしています。2つ目は、ユーザーのサービス継続利用率を高めたり、購入頻度や回数・単価を上げたりといった、既存のお客様をロイヤルカスタマーに変えていくグロースマーケティングのご支援をしています。

本日ご紹介するのは、1つ目の支援である「ModuleApps2.0」という伴走型のアプリ開発サービスです。こちらのサービスはクーポンアプリや会員証アプリを低価格短納期でお作りし、アプリを作った後も、クーポンやプッシュ通知の効果的な送り方といったところの継続的なご支援を提供するサービスです。

【図2:ModuleApps2.0の概要】

地域DXアプリの活用


安田さん ここから自治体の地域DXアプリの活用の話をさせていただきます。

自治体の抱える課題は、地域創生が非常に大きなウェイトを占めています。自治体からアプローチするターゲットは大きく2つに分けられます。1つ目が住んでいる住民の方、そしてもうひとつが観光客です。

地域の住民向けでは、自治体からの発信がなかなか伝わらないですとか、若い方に興味を持っていただけない、手続きの方法がわかりにくいといったお声をよくお聞きします。
一方、観光客向けでは、観光客が増えない、特定の観光地しか回ってもらえない、リピーターになっていただけないなどの課題があります。

このような課題を、自治体の公式アプリ、地域DXアプリで解決します。
地域住民向けにはお知らせや手続き方法、災害関連の情報を提供します。身近なスマートフォンに情報が届き、若い方にもアプリであれば割と使っていただきやすいというメリットがあります。また、情報発信も非常に分かりやすくできます。

観光客向けには観光情報ですとかイベント情報やクーポンをお送りして、地域のイベントへの集客を行ったり、周辺の観光地のご案内をしたり、「また来てね」というようなメッセージを送っていくというような使い方ができます。

このような地域DXアプリを作るメリットは3つあります。
1つ目はユーザータッチポイントが作れることです。Webサイトだけに限らないタッチポイントが増えることで、認知度の向上も図れます。
2つ目はOne to Oneコミュニケーションです。プッシュ通知を使って、ユーザーに合わせた内容をプロアクティブに発信ができることがアプリの大きな強みです。発信内容はユーザーに合わせて変更できます。
3つ目はユーザー行動を把握できることです。ユーザーのアプリ上での行動傾向を分析することで、よりユーザーに合ったコンテンツを発信できます。

2023年6月14日、NTTデータ、インフキュリオンの2社と地域DXアプリの提供を開始しました。この地域DXアプリでは、行政と連携した地域振興券の電子化と、地域通貨のサービスを金融機関のサービスを含めてご提供しています。DearOneで提供しているModuleApps2.0はホワイトラベル方式(※)で、標準的な機能をあらかじめ用意しています。

地域DXアプリでは防災、子育て、生活情報といった地域に密接に関係のある情報が提供されることが多いです。

(※)他社の製品を自社ブランドで販売する方式。自社    ブランドのイメージに合わせたカスタマイズをすることができる。

【図3:地域DXアプリ提供サービス】


安田さん 今回のModuleApps2.0はBaasをベースとしています。標準的な機能はモジュール化されているため、必要なパーツを組み合わせて手軽にアプリ開発ができ、短期間で安価にリリースできます。また、標準機能モジュールにない機能は個別に開発することが可能なため、クライアントごとのカスタマイズにも対応できます。このようなことから、既に200以上の企業、自治体で導入されています。

地域DXアプリの可能性

安田さん ここからは地域DXアプリの可能性を青柳さんと一緒にお話をしていきたいと思います。

青柳さん 最初の質問ですが、地域DXアプリってそんなに使われているのでしょうか?

安田さん 実際に我々がアプリを作らせていただいた自治体の情報を調べました。人口に対して、アプリを利用されている人数割合は9%でした。

例えば、私の出身の岐阜県大垣市は人口が16万人います。16万人の9%というと1万5千人が使う計算になります。0歳から100歳までをカウントしていますので、1割近くの方が利用されていると考えるとかなり多いと思います。

青柳さん 自治体アプリで人口対比が1割ぐらいということですが、一般的な小売店とか流通加盟店ではどのくらいの方がアプリユーザーになっているのでしょうか?

安田さん 一般的に私たちがよく提供するリテールや飲食店の会員アプリですと、来店する方の20%ぐらいが使われるイメージです。

青柳さん 地域アプリは、ダウンロードしてもあまり利用されないのではないでしょうか?

安田さん ダウンロードした方が月に一回以上アプリ起動する割合、平均アクティブ率は60%となっています。これも非常に高い割合だと思っています。

青柳さん 40%もあれば高いというイメージがありますね。ダウンロードだけして離脱する人もけっこう多いですし。

安田さん 飲食店、ドラッグストア、スーパー、コンビニのような日常的に利用するお店のアプリのアクティブ率が比較的高く、6割から7割だそうです。

60%というのは日常使いするお店と同じぐらいのアクティブ率です。アプリをダウンロードした方が、自治体の情報をきちんと得たいという期待の表れかと思っております。また、私たちの調査では、ここ3年くらいで地域DXアプリを使われ始めた方が7割ほどという結果も出ています。コロナの影響もあり、アプリから情報を得るということが一般的になってきているようです。特にゴミカレンダーが主婦層から好評で、とても便利に利用しているというお声をいただいています。


青柳さん
 高齢者の方もアプリを使いこなせるのでしょうか?

安田さん そこはやはり疑問に思われますよね。地域DXアプリの50代以上の利用者は、63%となっています。内訳は50代が21%、60代が42%でした。年齢が上の方でも使っていただけるということがわかると思います。

青柳さん 逆に若年層が少ないですよね。

安田さん ゴミカレンダーや防災情報といった、特に40代以上に興味・関心がある情報が多いからだと思います。地域DXアプリはちゃんと住民に使われています。金融機関の方々も是非自治体とこういった地域DXアプリの取り組みにご興味を持っていただけますと幸いです。

視聴者からの質問

青柳さん 地域DXアプリをリリースした後、どんな課題が出てくるのかを知りたいです、という質問をいただいています。

安田さん アプリをリリースした後の課題は大体決まっておりまして、1つ目はまずダウンロード数を増やすこと、2つ目は利用していただかないと意味がありませんので、アプリの利用率を高めることです。この2つが特に地域DXアプリでは大事になると思います。

青柳さん ご回答ありがとうございます。次の質問ですが、地域DXアプリは誰が運営するケースが多いのでしょうか?

安田さん やはり自治体ですね。住民に関わる課や観光に関わる課が主体になって進められるところが多いです。

青柳さん 最近目につく事例は自治体以外にも地元の鉄道会社だったりしますよね。

安田さん そうですね。今後は自治体ではやりきれないところを民間の企業が入ってやっていく事例も増えていくと思います。

青柳さん 最後に今後の意気込みを聞かせてください。

安田さん 地域DXアプリは住民の方にも自治体にとっても、非常にメリットがあるものだと思っております。ご覧頂いている金融機関の皆様のサービスと組み合わせて、地域DXアプリを作っていきたいと考えております。是非、お声がけください。
<プロフィール>

安田 一優(やすだ かずまさ)さん
株式会社DearOne マーケティング部 ゼネラルマネージャー
パソコン販売店店長、ITエンジニア、ITインフラSIerのマーケティングを経て、2020年よりDearOneへ参画。DearOneではマーケティング、インサイドセールス、パートナーアライアンス等のマネージャーを担務し、マーケティング、インサイドセールス、セールスの連携体制を構築する。中小企業診断士資格保有。
DearOne    https://www.dearone.io/
モバイルマーケティング研究所    https://moduleapps.com/mobile-marketing/

青柳 雄一 さん
株式会社NTTデータ 金融戦略本部 金融事業推進部 部長
入社以来、数多くの金融系新規サービス立ち上げに従事。2015年からはオープンイノベーション事業にも携わり、FinTechへの取り組みを通じて、複数の金融機関のデジタル変革活動を推進。NTTデータのデジタル組織立ち上げ、デジタル人材戦略策定/育成施策も実行。現在は当社金融分野の新デジタル戦略、外部連携戦略策定・実行にも従事。2021年10月にリリースした金融APIマーケットプレイス「API gallery」の推進をリード。
API Gallery https://api-gallery.com/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※本文および図中に登場する商品またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じたうえで取材を行っています。
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執筆 オクトノット編集部

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