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顧客理解と地域DX!セールスフォースと語る地方創生の鍵!

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昨今、地域DXというキーワードが盛り上がりを見せています。首都圏一極集中による格差の拡大や、人手不足と生産性低下、観光や商業の衰退といった地域を取り巻く数々の社会課題。その解決策として地域活性化のためのDXに注目が集まっています。そしてその牽引役となることを期待されているのが、地域の企業と幅広いネットワークを持ち、地域経済を支えている金融機関です。金融機関自身もDXと向き合う中、地域DXを推進するためには何が必要なのか?その1つの鍵となるのが「顧客理解」です。今回は地方創生・地域DXのスペシャリストであるセールスフォース・ジャパンの井口さんと「顧客理解×地域DX」をテーマに語り合いました!

本記事はNTTデータが運営する「API gallery」プレゼンツで2022年5月16日に開催したウェビナー「API gallery Meet UP ~ Vol.6 “顧客理解×地域DX”」の内容を記事化したものです。
API galleryでは随時ウェビナーを開催中です!過去の企画、および今後の開催予定については以下のリンクをご覧下さい!

ホットトピックス!顧客理解と地方創生のトレンドは?

青柳さん 昨今、さまざまなシーンで顧客理解の深化が重要だと言われます。それは金融機関においても当てはまります。しかしながら、実際に顧客接点の強化や顧客理解の深化を実現する具体的な方策までたどり着いていないという方も多いと思います。特に、金融機関の顧客だけでなく、その先にいる生活者や事業者といった広い意味での顧客に対する理解や接点強化も含めるとさらに難しくなります。
井口さんはセールスフォース・ジャパンで地域DX・地方創生に取り組んでいらっしゃいますが、顧客理解と地方創生といったテーマにおける最近のトレンドについて感じていることはありますか。
井口さん 昨今は、事業者とのつながりや、持続可能な地域づくりがトレンドとして注目されていると感じています。持続可能な地域づくりというのは、町と仕事と人が密接に絡む課題です。その地域に仕事があり、仕事があるからこそ住みたい人が増え、住人が増えればこそ利便性の高い住民サービスや生活サービスなどの仕組みが生まれてくる。そういう関連性を意識していこうという流れですね。

青柳さん なるほど。セールスフォースさんも地域DX分野でさまざまな活動を展開されていますが、IT企業として地域DXと向き合うに際してどのようなポイントを重視されていますか。
井口さん 当社では、「ビジネス自体が社会を変えるプラットフォーム」になるべきだという方針のもと、特に地域企業のトップラインを伸ばしてくことを重視しています。ボトムラインの改善も大切ですが、コロナ禍で地域経済が疲弊している現状では、経済活性化ひいてはトップラインの向上が必要不可欠と感じます。これは金融機関の立場に立った時も同じことが言えるのではないでしょうか。
青柳さん まさに大事な考え方だなと思います。セールスフォースさんでは地域の金融機関とは実際にどんなお取組みをされているのですか。
井口さん 例えば、金融機関向けには「Financial Services Cloud」というサービスを展開しています。営業やコールセンター業務の支援ツールに金融機関独自の機能を追加したようなサービスですが、お客様に関わる情報を一元管理することが可能となります。個人のお客様であればライフイベントを包括的に捉えることができ、結婚に合わせて住宅ローンを勧めるなど、ニーズに合わせたタイムリーな提案ができるようになります。
横断的な情報連携を可能にしていくことも重要です。コロナ禍で顕在化した「社内データが部門ごとバラバラで分かりづらい」といった問題への対処というだけに留まらず、昨今活発化している金融機関のホールディングス化や、新たな非金融ビジネスを目的としたグループ子会社設立などの動きに対しても有効です。こうした横断的な情報連携の観点は、地域DXを推進していく上でも欠かせない観点になると思います。

お客様を深く知る!データ活用による顧客理解の深化と地域DX

青柳さん 地域経済の担い手である金融機関は地域DXの牽引役として期待されています。他方で自社のDXと両にらみで取り組まなければならない中、何から手をつければよいか苦労しているという声もよく聞きます。セールスフォースさんではどうされていますか。
井口さん 金融業界ではありませんが獺祭(日本酒)の蔵元として知られる旭酒造様との事例が参考になると思います。旭酒造様では、まず酒造りにおける「作業の見える化」に取り組まれ、データ活用により、旨かった酒がなぜ旨かったのか、旨くなかった酒はどこが失敗したのかを検証できるようになりました。
さらに、旭酒造様は酒に関するお客様の評価分析に挑みました。ただ、日本のみならず、25か国・地域以上で販売されている獺祭に対して、飲食店や酒販店といった取引先から情報を集めるだけでは限界があります。そこで目を付けたのがデジタル・データ分析をより広範囲に活用することです。
これにより、お客様との関係が一層深まり、さまざまなお客様の本音を知ることができるようになりました。真のニーズがわかり、具体的な打ち手を見つけることにつながっていったのです。こうしたアプローチは金融機関においても同様に重要だと思います。
青柳さん 顧客理解を深めるためにはデータ活用が重要なポイントになりそうですね。
井口さん そうですね。地域における顧客理解の深化というテーマでは、鶴巻温泉(神奈川県秦野市)にある陣屋旅館様との取組みもとても印象に残っています。昨今、コロナ禍で観光事業者は全国的に疲弊していると言われており、陣屋旅館様もその影響でかつては廃業間近の状況でしたが、デジタルを駆使して顧客理解を抜本的に変革し、V字回復を果たしました。
鶴巻温泉は立地上、他の有名温泉地のように近隣観光の拠点として宿泊をPRすることが難しく、宿泊予約サイトなどの代理店経由でも客足はあまり伸びていませんでした。そこで目を付けたのがデジタルの活用です。クラウドCRMツールの導入により、予約や売り上げの管理、また出迎えや清掃といったワークフローのデジタル化を行いました。
さらに、これまで女将やスタッフの頭の中にしか無かった顧客情報をデータとして蓄積できるようになり、組織内での情報共有や「お客様カルテ」の作成を通じて顧客理解のさらなる深掘りが可能となりました。これにより、首都圏に住むビジネスパーソンの方が近場でゆったりしたいという目的で宿泊することが多いという傾向が分かりました。
青柳さん それまで経験と勘に頼っていたところをデータでしっかりと見えるようにしたわけですね。その後はどのような施策を実行されたのでしょうか。
井口さん 陣屋旅館様ではお客様のニーズにより深く応えられるよう、部屋のグレードアップやサービスの充実に取り組まれました。結果、お客様一人当たりの単価アップに結び付き、経営状況も改善していきました。
このような顧客志向の発想は事業者がDXを検討する際の重要なポイントだと思います。ちなみに、驚くことに陣屋旅館様は自社での成功事例をもとに宿泊事業者向けのソリューション「陣屋コネクト」を展開してITビジネスにも参入されています。

地域DXを考える!一番のポイントは?

青柳さん 陣屋旅館様の取組みはとても印象的ですね。まさに他の宿泊事業者との差別化に成功した事例と言えます。井口さんは、地域DXを進めていく上で、どんな観点を大切にされていますか。

井口さん 本質的には、事業者がデジタルを活用することで「どのように稼ぐ力をつけていくのか」というアプローチが大切だと考えています。地域では人材不足も課題ですが、例えば当社では、DX推進のリーダー養成プログラムやデジタルリスキリングコンテンツの提供といった地域の人材育成の取組みを実施しています。金融機関が主導して事業者のビジネス変革・マネジメント変革を支援・促進していく動きも考えられるのではないでしょうか。
他方で、企業単位のDXにとどまらず、地域を面でとらえて、地域のデータを地域全体で利活用するといった観点を持つことも重要です。例えば、「陣屋コネクト」では今まさに、地域共創を目的とした地域共通の顧客管理プラットフォームに関する取組みを進めています。金融業界でも、地銀や地銀を含めたジョイントベンチャーが地域データを利活用したり、地域プラットフォームの構築を推進したりする取組みが見られます。
青柳さん 金融機関の立場に立ってみると、地域DXや事業者DXを支援するに当たってはさまざまなハードルもあると思います。例えば、ソリューションの選定、導入ステップの考え方などへの悩みはよく耳にするところです。こうした点についてはどのようにお考えでしょうか。
井口さん どのような情報を活用してどのような支援をしたいかという目的にもとづいて考えることが必要です。観光事業を例にすると、明確なねらいもなくウェブサイトを作成したり広告を出したりしても、売上が伸びるかどうか分かりませんよね。
まずは目的をクリアにしておく必要があるということです。目的により、どのITツールを使うのか、どのように使うのかは変わってきます。また、業務のビジョン作りも重要になってくると思います。手段ありきではなくまずはしっかり課題から入りつつ、将来の展開計画も描けると望ましいですね。

青柳さん 目的をクリアにして始めること、まず課題から入ることが大切ということですね。ただ、最初のステップとなる課題整理をどのように進めればよいのかわからないといった悩みを持っている方も少なくないかもしれません。
井口さん 実際に某銀行と協力して取り組んでいるのですが、営業・渉外担当の業務にフォーカスした業務効率化のジャーニーを検討するワークショップや、課題を効果的・効率的に解決するためのビジネス課題を整理するワークショップなどを開催して、一緒に悩みに向き合っています。地域の金融機関の方々やNTTデータさんとも一緒になって地域DXを盛り上げていきたいですね。
<後日談>
地域DXへの想いを語り合い、絆を深めたセールスフォース・ジャパンとNTTデータ。
両者のアセット・ソリューションを組み合わせ、地域金融機関を核とした地域経済の活性化に貢献するべく、両社の新規事業を担う社員が集い、ビジネス創発ワークショップを共催しました!

ワークショップでは本記事でも取り上げた陣屋旅館様にも登壇いただき、ビジネスアイデアに対して女将の直球フィードバックをいただくなど、大変盛況なイベントとなりました。セールスフォース・ジャパンとNTTデータは企業の枠を超えて、これからも地域DXに取り組んでいきます!

<プロフィール>

井口 統律子 さん
セールスフォース・ジャパン エンタープライズ金融&地域DX営業統括本部 金融&地域DX営業本部 統括部長
地方で西陣金糸業の家に生まれるもITの世界へ。2000年よりマイクロソフトにてテクノロジーを活用した企業の働き方改革、生産性向上や中小企業・地域資源を活用した活性化、スマートシティに関わる。2019年よりセールスフォースにて地方創生、スマートシティ、スマートガバメントを担当しつつ、地域DXに全国を飛び回る日々を過ごす。
セールスフォース・ジャパン(https://www.salesforce.com/jp/

青柳 雄一 さん
株式会社NTTデータ バンキング統括本部 OSA推進室 部長
入社以来、数多くの金融系新規サービス立ち上げに従事。2015年からはオープンイノベーション事業にも携わり、FinTechへの取組みを通じて、複数の金融機関のデジタル変革活動を推進。NTTデータのデジタル組織立ち上げ、デジタル人財戦略策定/育成施策も実行。現在は当社金融分野の新デジタル戦略、外部連携戦略策定・実行にも従事。2021年10月にリリースした金融APIマーケットプレイス「API gallery」の推進をリード。
API Gallery(https://api-gallery.com/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。

新卒で銀行の業界団体に入職。金融機関や他業界団体等との折衝・調整に携わり、具体的には資金決済インフラや為替取引の制度運営に関する業務に従事した後、金利指標改革や市場規制の案件に関する業務等を幅広く経験。
その過程で、金融分野におけるNTTデータの影響力の大きさを実感したこと、社会を支える重要インフラを提供している点に魅力を感じたこと等をきっかけに、NTTデータへ中途入社。
現在は、金融業界のトレンドを、IT技術やビジネス、社会課題といった様々な切り口で調査・整理し発信する「金融版NTT DATA Technology Foresight」の取組み等に携わる。

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