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経済情勢が変化し、企業は新規事業の創出で新たな競争力の源泉を獲得しようとしています。金融機関も既存業務の収益のみでの優位性確保は困難となりつつあります。市場、業務環境などへの対応のため、デジタル化、ステークホルダーとの関係の多様化などを軸に新規事業の創発に取り組んでいると思います。新規事業向けのシステム開発には試行錯誤も必要となるため、ウォーターフォール型よりアジャイル型が適することもありITベンダーもそれに対応しています。企業の中で新規事業を進めるには、さまざまな問題が発生します。既存事業との関係性や、人員を含めたリソース、周囲の理解、システム開発の手法や予算獲得など、新規事業の推進ならではの苦労をしている読者の方も多いと思います。今回は、三菱UFJ信託銀行で新規事業を推進されている齊藤さん、企業内で未活用のデータに着目しデータ活用ビジネスの初期の企画、展開を専門とするNTTデータの福原さんに、新規事業推進のコツについてお話しいただきました。多くの企業に対し新規事業立ち上げのサポートをご経験されているライズ・コンサルティング・グループの須藤さんが進行役を務めてくださいました。

三菱UFJ信託銀行の新規事業

須藤さん 本日は三菱UFJ信託銀行のオフィスをお借りして、企業の新規事業推進についてお話しいただきます。こちらの部屋はギャラリーと呼ばれており、事業に参画する多くのステークホルダーの方々が組織や所属の壁を越えて利用するというコンセプトで設計、運営されているとお聞きしています。

齊藤さん 外部の方々とコラボレーションすることを目的に作っています。資料作成よりもホワイトボードコミュニケーションを優先するイメージです。また新規事業をはじめ多くの人を巻き込むための雰囲気づくりに力を入れています。「キラキラしている場所だからそこに行きたくなる」場所を意図しています。

須藤さん こちらのスペースも新規事業を推進するうえで有効に作用しているのですね。対談の冒頭では、三菱UFJ信託銀行の新規事業についてお伺いしたいのですが、初めに今三菱UFJ信託銀行で行っている新規事業の内容と社内での建付けについてご紹介ください。

齊藤さん 最近の当社の新規事業としては、情報銀行「Dprime」(ディープライム)、ブロックチェーンを利用したセキュリティトークンプラットフォーム「Progmat」(プログマ)が挙げられます。デジタルが前提の社会環境に変化するなか、人々の行動履歴などの情報や暗号資産をはじめとしたデジタル資産を対象にしています。当社は従来、金銭や有価証券など伝統的な資産を対象に信託をしていましたが、デジタル時代に即した新しい信託を創っています。情報銀行ではパーソナルデータが対象になります。セキュリティトークンでは不動産をはじめとしたさまざまな資産、果てはワインのようなものまでも信託の対象として、トークン化することを想定しています。これまで信託の対象にならなかったものを、ブロックチェーン技術を使い信託銀行が行うことで安全性の高いサービスとして提供できます。

Progmatの事業構想

須藤さん 株式や現金などの伝統的な信託財産から、デジタル化することで信託の対象が拡張していくイメージが理解できます。それでは本題に入っていきますが、新規事業を展開するなかで意思決定フェーズ、体制構築フェーズ、サービスの磨きこみのフェーズに分けられるかと思うので、その流れに沿ってお伺いします。まずは、新規事業の意思決定についてお聞かせください。私も以前三菱UFJ信託銀行で働いていたので、新規事業の意思決定が難しい組織だと認識しているのですが、意思決定まで行きつくコツについてお聞かせください。

組織としての新規事業意思決定のコツ

齊藤さん 社内で新規事業のコンセンサスを得られるよう、徐々に上に話を上げていくことも大事ですが、社外からの外圧で社内を動かすことも有効です。特に金融機関はこうした傾向がありますが、多くの企業は横並びで動くことが多く、他社がやっていれば我々もやらねばということになります。そういった意味では、既に競合組織が先に事業化を検討している場合には、「ラッキー」とポジティブに捉えることができます。日本ではなく海外でやっている、自社の業界でなくても他業種がやっていることであっても、じき自分たちにとっても脅威になり得る潮流に感度を高くしていくことが必要です。企画段階でこういう外部の動きがあることを意思決定者に適時的確にインプットすると、意思決定のスピードが上がります。

須藤さん 現場からタイムリーに外部の情報を伝えることが大事ですね。数年前はこうしたことがなかなか起こりづらかったと思いますが、近年は何が変わっていますか?

齊藤さん 数年前から金融分野以外でのソフトウェアの進展が大きく、デジタル化によるゲームチェンジが信託分野にも波及し、何もしないわけにはいかなくなったのです。

福原さん 当社でもこうしたゲームチェンジは察知しており、数年前からFintechを推進する取り組みを行ってきました。

須藤さん メディアも効果的に利用されていますね。

齊藤さん 某外資系IT企業は新規事業を企画するときに、まずプレスリリースやQ&Aを作るそうです。プレスリリースを作る際には、世の中のニーズや提供する価値を突き詰めなければなりません。これは価値があるものを企画できているかをチェックするためにしているそうです。こうした活動はサービス企画時に取り入れています。外の力も使って新規事業を進めるには、プレスリリースを書いてみることをお勧めします。その手が止まってしまうのであれば企画自体がまだ十分な段階でないと思います。

また、メディアへの発表はギャップを意識するとよいと思います。一般論として、スタートアップ企業がトークンや暗号資産のサービスを発表しても目新しいと認知されづらいかと思います。ところが、信託銀行がセキュリティトークンサービスを大々的に実施する発表となると、世間は実施主体に対する先入観(古い、遅い…など)と革新的なサービス内容のギャップに驚きます。読者の皆様が所属している会社が、一般論としてイノベーションとは縁遠いと思われている“伝統的な大企業”だとしたら、メディアへ訴求するうえではむしろ有利である、とポジティブに捉えた方が良いと思います。

須藤さん 確かに、三菱UFJ信託銀行が新規事業のプレスリリースを出していると、見切り発車じゃないのだなと感じますね。次に、体制構築についてお聞かせください。

新規事業の体制構築のコツ

齊藤さん​ デジタルビジネスといっても取り扱う事業によって、その特性は変わります。そして特性の違いに応じて、新規事業の体制に対する要件も変わります。私はパターンとして下記の3つを想定しています。

1:企業本体の外部に、独立組織を作り本体とはあまり関与しない(いわゆる出島型)
2:企業本体の中に、既存事業とは独立した新規部署を作る
3:立ち上げは企業本体の中の専門部署でやるが、立ち上げ後のオペレーションは企業本体の既存の部署に移管して実施する

どれが適切かについては新規事業の特性によります。現在のコア業務に遠ければ1のように企業の外に出島のような組織を作ったほうが良いでしょう。本業に近ければ1はNGで、2または3を選ぶほうが妥当です。情報銀行は信託銀行のコア業務から遠いようで近いと判断したため、我々は今3の形で情報銀行を実施しています。

福原さん こうした新規事業の体制構築をしていると、従来の業務をしている人のモチベーションが上がらないという話や協力が得られないという苦労をよく聞きます。このようなご苦労はなかったでしょうか。

齊藤さん 新規事業を開拓する“忍者型”(試行錯誤が前提)の人も、業務を的確に行う“武士型”(失敗は許されない)の人も、いずれも企業にとっては必要です。そうでなければサービスとしてスケールしません。新規事業については、これからの必須業務であるというコンセンサスが“武士型”の人たちを含む現場レベルで社内に浸透していることが重要です。新規事業、従来事業のどちらをやる人であっても、会社としてその事業を実施している背景を理解し、自分事として実施できるだけのコンセンサスや、“忍者型”と“武士型”の異なる考え方に対する相互理解が必要です。

須藤さん 組織体制の構築については、当社でも多く相談を受けるテーマですので読者にとって参考になる興味深いお話だったのではないでしょうか。新規事業を進めるなかで、個人レベルで、例えば隣の人を巻き込む点で工夫したことはありますか?

齊藤さん 具体的なアウトプットを見せていくことしかないですね。何かをお願いした際にポジティブな反応がない場合は、相手からは自分のアウトプットが見えていないというのがほとんどです。自己満足ではなく、相手に理解されるアウトプットを見せて評価されることが大事です。アウトプットを出しているのに理解されていないのは、相手と自分のアウトプットの認知にギャップがあるからです。私のアウトプットが当社のFintechとしてのアウトプットであり、私がアウトプットしないと当社として何もしていないのではと思われてしまう・・・くらいの気概を持って見られていることを意識していました。

アウトプットの質も大事ですが、早く出すこと、多く出すことも大事です。社内ではなくお客様の意見をもらうためにアウトプットしています。お客様のニーズがありそれに適したサービスを出し、リリースしてから改善するやり方がこれら新規事業にはフィットしていました。お客様の具体的な声が最も強力な「やる理由」になるので、お客様になりうる人から多くの意見をもらうことで、自分語りではないサービスになります

須藤さん 次に、新規事業に適するDevOps(※)というソフトウェア開発手法が利用されるケースが増えていますが、三菱UFJ信託銀行でのDevOpsの適用状況や難しさについてお聞かせください。

※DevOps:開発担当者と運用担当者が連携して、ソフトウェアを迅速に開発しテストすることで、速いペースでサービスの進化を実現する開発手法。

新規事業での開発運用のコツ

齊藤さん 試行錯誤しながらDevOpsに対応しています。原則どおりですが、開発・運用を含めて一連のプロダクトとしてサービスをとらえています。一般論として、開発と運用では成績評価などの観点も異なり対立することもあるかと思います。DevOpsという開発手法の導入には開発と運用での相互理解が重要です。新規事業としての目標を共有することが相互作用の醸成に有効に作用します。

福原さん DevOpsを利用なさるうえで、開発と運用の相互理解が重要な点は感じております。エンドユーザーの方のフィードバックがDevOpsでの開発に有効だと思いますがこれをうまくシステムに吸収する方法についてお聞かせください。

齊藤さん モバイルアプリビジネスでは、まずはAppStoreなどのユーザーのコメントをフィードバックとして参考にします。これ以外にも、アプリのログイン回数などのKPIを設定して、画面遷移の状態や操作頻度などの見えない声を拾うようにしています。これらの顕在/潜在のユーザーの声を最前線でアプリの開発をしている人間だけに留めず、運用メンバーを含めたチーム全体で共有することが大事です。

福原さん DevOpsを運営する体制はどのあたりから意識されるべきとお考えですか。初回リリースに向けて多くのリソースを割いて、リリースが近くなったタイミングからDevOpsの体制を意識するケースもあると思いますがいかがでしょうか。

齊藤さん 新規事業のサービスを企画する段階で、運用に要する体制やコストを意識する必要があります。ローンチしたら売るだけ、というわけではないからです。SaaSが普及したあたりから、プロダクトとして完成したものを最初からリリースできることはまれです。未完成の状態でローンチして、あるべきプロダクトの姿と各断面のバージョンとのギャップを認識したうえで、そのギャップを埋めるリソースをどの程度想定するかを企画段階で考える必要があります。

須藤さん NTTデータのなかでDevOpsの定義や、実際のプロダクト開発にどのように適用されているかを教えていただけますでしょうか?

福原さん DevOpsはすべてのシステムに適用するものではないと考えています。当社が提供するシステムのなかでは安定的に提供することで価値があるものもあり、そうした対象にはDevOpsは向きません。モバイルアプリのように更新が短期間にされるものについてはDevOpsを適用していきたいとお考えのお客様も増えてきました。システムの特性を理解し、それに応じた開発体制を組成する必要があると思います。

須藤さん DevOpsならではの予算の確保の特性がありますか?

福原さん お客様のなかで予算は年度で決まっていると思いますが、完成形がはっきりとしない場合もあり、改善スコープを決めづらく予算の確保に苦慮することもあります。予算の管理上計画的にならざるを得ないのは十分に理解しています。

須藤さん 齊藤さんにお伺いしますが、発注する側の立場として、開発時に先が不透明な中で、少しずつ予算をもらいたいと開発ベンダーに言われたらどうしますか?

齊藤さん 収支の見通しが立っているかが重要で、開発・運用の概算コストを含めてトータルでプラスの見通しとなるようにできるかで判断します。10年間安定し動いているシステムの保守運用のコスト見積りと、新規サービスの運用のコスト見積りの確度は違いますよね。新規事業にDevOpsを適用する場合は、ビジネスとしてトータルでどう見るかが重要で、開発はコストの一要素でしかありません。収益、支出の双方を管理するスタンスで、変化が分かった時点で修正することを前提として、まずは収支が赤にならない程度で投資計画上の“枠”を押さえておけば、その“枠”の内訳の変化が生じたとしても意思決定への影響は少ないと思います。

須藤さん 枠の内訳の変化という話がありましたが、どういう状態になったら撤退するのかという撤退基準を事前に決めているのでしょうか。

齊藤さん 撤退ラインの設定は必須です。新規事業は、日々変化する事業環境のなかで「任せてください、これ以上の損は出しません」という撤退ラインを設定し、現場に裁量を持たせて変化に対応するべきです。撤退ラインを決めたのにズルズルいってしまうことがありますが、一度撤退ラインを動かした実績を作ってしまうと、その後別の新規事業を任せてほしい時に信用されず、結果として新規事業を生み出しづらくなってしまうので、注意が必要です。

新規事業でのDX人材

須藤さん ここまでは三菱UFJ信託銀行における新規事業の意思決定、体制構築、開発運用を話題としてきました。NTTデータでもDX関連の案件は増加していると思いますが、どのような案件が増えていますでしょうか?

福原さん NTTデータのなかで私たちのチームはデータ活用を支援するABLERというソリューションをご提供しています。これまでのシステムでは活用しづらかった人のノウハウやインターネット上の声、口コミ、ニュースなどの活用のご支援や、企業のデータマネジメントに関するコンサルティングサービスなども対応しています。特に製造業では熟練のノウハウが若手に伝わらないなど具体的なニーズも確認できています。また全社単位でDXを推進し、全社横断でのデータ活用を目指しても、組織の壁でなかなか進まないという問題もあります。他部門にデータを共有するインセンティブも明確でなく、一部の部署がDXによるデータ活用を率先して実施しようとしても協力が得られないケースもあります。

また、さまざまなお客様に共通している課題としてはDX人材の不足もあります。現行のコア業務もありながら、DX関連の新規事業も立ち上げないとならないためDX推進にリソースを割きづらく、自社で育たないといった課題です。

須藤さん DXについての人材の課題は大きいですね。人材不足、キャリアパス、育成、採用などでお客様を支援なさった例はありますか?

福原さん まず、NTTデータ内に人材育成施策として社内資格や認定制度などがあり、こちらをIT系の人材育成事例としてお客様に紹介することがあります。お客様に提案するアジャイル開発ではお客様とoneチームで対応しています。また、内製化を志向するお客様も多く、リリース後の改善はお客様自らで行われるケースも増えてきています。このようなご要望にお応えするため、スキルトランスファーを目的として、開発フェーズにお客様に参加いただき、DX人材のブートキャンプ的な取り組みを提供することもあります。

須藤さん DX人材になりたい方は多いのでブートキャンプキャンプのニーズは高そうですね。福原さんにとってのDX人材の定義はどのようにお考えですか?

福原さん DXに必要な人材定義はひとつではないと思っています。以前は業務部門、システム部門、ベンダーでの役割が明確に分かれていましたが、これが変わってきていると思います。DXはシステム部門やベンダーだけでなく、業務部門がITを理解し、デジタル化する視点で考えていく必要があると思います。そのため業務にもデジタルにも勘所を持つ素養や能力が求められるようになってきていると思います。

須藤さん DXではビジネスプロデュース、SEなど多くの役割の方の参画が必要となりますが、組織としてどう人材を組み合わせればよいと思われますか?

福原さん プロジェクトを企画するときに必要なスキルのポートフォリオを検討し、不足してしまう役割やプロジェクトとしての必要な人材の育成を考慮する必要があると思います。

齊藤さん 安易に「DX人材」という用語を使わずに、本質的にDXとは具体的に何をすることを指して用いているのか、必要なのは何をしてほしい人材なのかを、明確にすることが必要です。DXと一般に言われる文脈では、次の3つの領域の人材が関わり協調する必要があります。

1:顧客理解をする人材(営業部署、カスタマーサクセス、デザイナー)
2:ビジネスとして成立し継続させる人材 (企画部署、業務オペレーション部署)
3:ITに精通している人材 (IT部署、ITベンダー)


この3つの領域をフラットに理解するハブになる人材がいないとうまく回りません。しかし、ハブ人材だけでもうまくいきません。ハブ人材は業務もITも他のその領域を専門とする人ほど深くは知らないからです。つまり、一般に「DX人材」といわれるハブ人材以外にも、他の領域にこれまで従事してきた人がDXに関わることが不可欠です。

須藤さん DXにキャッチアップできない人、DXに積極的でない人はどのようにしたらよいのでしょうか?

福原さん DXを積極的に推進していく人材と、既存の業務を優先的に推進していく人材はどの企業にもそれぞれ一定数いらっしゃると思います。ただ、DXを推進する上での新規事業を社内で理解されず止められてしまうのはよい状態ではありません。個々人のキャリア志向を前提に業務に対する深いノウハウを取り込み活用することが必要だと思います。

齊藤さん 全員を「DX人材にしていかなければならない」という目標設定がそもそもズレていると思います。業務オペレーション領域や顧客対応領域の人は、IT領域の人と協力することでデジタル分野でも活躍することができます。個人が1人で取り組むものではなく、チームとして取り組むものなので、異なるスキルセットを持つ人材の組み合わせの問題です。企業が今後生み出そうとしているデジタルビジネスのなかで、どの領域で活躍できるかを個々人が考えられるようにする方が建設的だと思います。

須藤さん この記事をお読みになった方が、NTTデータにDXをお願いする場合はどの段階でどのようにお願いをしたらよいでしょうか?

福原さん 企画の初期の段階から一緒に検討し、悩ませていただきたいです。初期検討からお客様の文化を理解し、関係性を築きながら、ともに活動させていただきたいと考えます。

須藤さん そうすると、昔は顧客の中で作りたいものが決まっていてウォーターフォールで作るイメージだったのが前倒しで企画から入っていき、オペレーションまで行い、改善まで行うといった関わり方になっているのでしょうか?

原さん そうですね。決まったものからだとご提案できることも限られてきますので、企画段階から関わっていきたいです。

須藤さん これまで、企業の新規事業を進めるコツについて多くのご意見をお聞かせいただきました。最後に読者の方にメッセージをお願いします。
齊藤さん 心を強く!ということがすべてです。この記事を読んでいる方は新規事業について苦労なさっていると思います。社内調整は否定されることも多く疲弊しますが、俯瞰してみることが大事です。自分が起業していると仮定することで俯瞰ができます。自分のチームを自分の会社の社員と捉えたり、社内の関係部署をアライアンスで結ばれる別の会社組織だと捉えたりすると、コミュニケーションの仕方が変わるはずです。

予算等の意思決定者である上司や、上司の上司は株主だと思ってみてください。意思決定者への説明も、単なる“社内調整”ではなく出資者を口説く“ロードショー”だとマインドチェンジすることで心持ちは大きく変わるのではないでしょうか。社内起業したと思い込むと、気持ちが楽になります。つらいと思ったら発想を変えることも必要です。

福原さん 過去に事例のない取り組みを最初に経験することは得るものが大きいと思います。さまざまな取り組みで、最初から成功することはなかなかありません。たとえ失敗したとしても、その経験を次にチャレンジする人へノウハウとして展開していくことができます。こうした経験が組織のなかに広がっていくことで生きたノウハウが蓄積されていくため決して無駄なことにはなりません。

須藤さん 齊藤さん、福原さんには貴重なお話をお聞きすることができました。須藤が所属するライズ・コンサルティング・グループは新規事業の支援、企画立案のサポートもしています。新規事業案件を取り扱う上で私が気を付けていることは、まだまだ縦割りの会社が多いのでこの対談でも話題になりましたハブ人材として活躍できるよう心がけています。そういったことができる齊藤さんのような人材がいる会社ばかりではないと思いますので、ハブ人材がいないといったニーズがおありの際はご連絡ください。

企業がデジタル化を軸に新規事業を進めていくうえでのコツをこの対談でお聞きすることができました。新規事業を社内の意思決定、体制の構築、システム開発、DX人材など話題は多岐にわたっています。この対話のなかで一貫していたことは外部や社内のリソースをいかに新規事業に巻き込んでいくかという点であったと思います。意思決定では、ライバル企業や他業種などの動向を外圧として利用することで社内の意思決定を高速化しています。体制の構築、システム開発、DX人材の育成では、新規事業に対して社内のコンセンサスをバックに多くの人たちの関与を促すための多くのノウハウを披露いただきました。新規ビジネスの実施について「自社を代表してやっている」という気概に励まされた読者の方も多いと思います。この記事を通じ多くの方を自らのビジネスに巻き込むことを改めてご認識いただけましたらと思います。

<執筆者:神戸 雅一>
<プロフィール>
齊藤 達哉 さん
三菱UFJ信託銀行
2010年入社。法人営業で融資や不動産の仲介営業を担当。その後システムセクションでIT企画に携わる。2016年、FinTech推進室設立後、1人目の専任担当として三菱UFJ信託銀行におけるFinTech業務を推進。行動履歴や資産状況といったパーソナルデータを預り、個人の明確な同意の下でのデータ流通と対価の還元を可能にする情報銀行サービス「Dprime(ディープライム)」や、ブロックチェーン技術を用いてさまざまな資産を裏付けとしたセキュリティトークン(デジタル証券)の発行を可能とするプラットフォーム「Progmat(プログマ)」等を立ち上げる。現在は「Progmat」の事業推進のほか、新たなデジタル新ビジネスの企画にも従事。
須藤 陽平 さん
ライズ・コンサルティング・グループ

2009年三菱UFJ信託銀行入社。主に、証券化業務に従事し、信託スキームを活用した新規事業立ち上げを経験。国内監査法人系コンサルティングファームを経て、2019年にライズ・コンサルティング・グループに入社。各種金融機関向けに業務改革支援、新商品開発支援、ガバナンス体制強化支援等のさまざまな案件を牽引する。
福原 亜希子 さん
NTTデータ

入社以来、当社独自ソリューションの企画・営業やお客様との新規サービスの立ち上げなど金融・製造を中心にクロスインダストリーでの新規ビジネスの立上げを幅広く経験。2018年より現担当にて、お客様のデータ活用における課題の解決に向け、高度データ管理ソリューションである「ABLER」の企画・提案活動に従事。
ABLER®(https://abler.nttdata.com/
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。

企業の研究開発部門で、ナレッジマネジメント、Web系アプリケーションの研究開発に従事。事業部門で、業務プロセスの分析と業務設計を行い、事務の集中化やヘルプデスクの安定運用のための機械学習の適用などを経験。現在は金融分野における機械学習の応用を目的とし、自然言語処理、説明可能性、AIの公平性、異常検知などの調査、ユースケースの検討に従事。

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