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コラム

【量子とは何か~物理学者vs光~(中編)】

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本コラムでは、量子について分かりやすく解説し、量子の知識を深めます。前編では量子の起こす不思議な現象について説明しました。中編以降では、光学の発展の歴史をたどりながら、量子の性質に迫ります。

前編の振り返り

前編では、量子の不思議な性質がどのような現象となって現れるか、実験を例にご紹介しました。
光は観測されていないときは波動のように振る舞い、観測されているときは粒子のようにも振る舞ってみせるのです。
これは人間の感覚に照らし合わせると何とも奇妙なことです。そのため、長い間光はどのような現象なのか、解明できませんでした。
量子力学では、光の粒子は観測されていない状態では確率の波として存在しています。観測されていない状態では干渉縞(じま)が、観測されている状態では粒子がスクリーンに現れていると説明されます。
量子コンピュータの量子ドットが「0」と「1」を同時に持つことができて、観測するとどちらか一方に定まる、という原理は上記の説明と同じ現象なのがお分かりいただけると思います。
二つの波の高い部分がぶつかると、より高い波になり、高い部分と低い部分がぶつかると相殺されて無くなってしまいます。一方で、粒子は突然溶け合って融合したりはしないと考えると、感覚的にも納得がいくでしょうか。観測している、していないに応じて波と粒子の状態が切り替わる現象は、直感的に理解することが難しいのだと思います。
前編では、観測しているということが具体的に何を意味するのか、実験を通じて解説しました。特に何かの比喩ということもなく、文字通り人が見ているか見ていないかで結果が変わっていることがご理解いただけたかと思います。
本編では、この理論がいかにして構築されたか、物理学者たちの偉大な功績をひも解きながら説明します。
読み終わるころには、量子力学の基本的な考え方がつかめるようになるでしょう。物理学の不思議が垣間見られると思います。

光は粒子であるの時代

光に関する探求の始まりは、紀元前にさかのぼります。
科学という概念がなかった時代に、天に輝く星々や虹の成り立ち、なぜさまざまな色が存在するのかなど、素朴な疑問が生じました。
神の力といった神秘的な解釈を引き合いに出さずに、科学的な考察が議論として扱われるようになるには、17世紀まで長い時間を待たなければなりませんでした。17世紀は、ガリレオ・ガリレイ(イタリアの自然哲学者、天文学者、数学者)やヨハネス・ケプラー(ドイツの天文学者)らにより、天文学における重要な発見が相次ぎました。みなさんご存じの天動説から地動説への大転換が起こった時代です。
そうした激動の時代の中で、観察や実験により実証する科学的な手法を生み出した学者が誕生します。

ニュートンの肖像

この名を知らない人はいないでしょう。古典力学の礎を築いた学者、アイザック・ニュートンです。
ニュートンが1687年に発表した有名な著書『自然哲学の数学的諸原理』(プリンピキア)では、運動の3法則(慣性、運動、作用・反作用)をまとめ、天体の運動と万有引力の法則について記述しています。物体が動く法則やすべての物体に働く力に関して、体系的に説明しました。特に運動の3法則は、力学の基礎となる偉大な功績なため、この人の名を冠して「ニュートン力学」と呼ばれています。
力学や微分積分の創造でも有名なニュートンですが、光学でもさまざまな功績を残しています。
例えば、太陽光(白色光)がプリズムを通すことで赤や青、緑などさまざまな色の光に分けられ、それらが混じると白色に見えていることを示したのはニュートンでした。

プリズムによって白色光が分光される

1704年に出版された『光学』では、主に光の色に関する性質を述べており、物質と光という存在の本質を解き明かそうと試みました。しかし、ニュートンの明せきな頭脳をもってしても光の謎を解き明かすことはできませんでした。その一つが「光が粒子である可能性」であり、それが真実なら実証されるべきことが書かれています。
ニュートンを特に悩ませたのは、光の波動性でした。
回折を例にとりましょう。回折とは平行に進む波が障害物にぶつかると、障害物のうしろに回り込む現象です。川の流れの真ん中に棒を立てたら、一度棒にさえぎられた流れが、すぐに一つの流れに戻りますよね。これは光を波動の一種と考えると容易に説明できます。しかし、粒子として考えた場合、他の物理法則と矛盾のないように説明しようとすると無理がでてきます。棒にボールを当てたら、当たった角度によっていろいろな方向に跳ねていくはずです。川の流れの例のように、ボールが棒のうしろに回り込んでいくとは考えにくいでしょう。
もちろん、光は波なのではないかと考えた人がいなかったわけではありません。

ホイヘンスの肖像

オランダの学者クリスティアーン・ホイヘンスも、光の波動説を提唱した1人でした。
一般にはなじみのない名前かもしれませんが、土星の衛星タイタンや土星の環を発見したことで有名です。また、ガリレオ・ガリレイと交友があり、ガリレオが発見した振り子運動の性質を用いて振り子時計を発明した人物とも言われています。彼の業績は高く評価され、故国オランダでは紙幣のデザインにもなりました。
ホイヘンスは光が回折したり屈折したりする仕組みを考え、1690年 に 『光についての論考』という著書を発表しました。著書の中で、光の波動としての性質を論じ、ホイヘンスの原理としてまとめました。
ホイヘンスの原理は、波の表面を点まで分割し、その点から球面の波が出ており、球面の波に共通に接する線が波の面になっているというものです。
説明だけで理解することが難しいため、図に表すと次のようになります。

ホイヘンスの原理

海の波のようにほぼまっすぐ進む波が左の図で、石を水に投げ入れたときにできる波紋のように波が円形に広がる様子は右の図です。同じ波なのにどうしてまっすぐ進む場合と広がる場合があるのか、疑問に思ったことがある方は多くないのではないでしょうか。世界は不思議に満ちていて、非常に面白いですね。物理学を勉強するにつけ、先人の観察力や論理的に考える力に感じ入るものがあります。
ホイヘンスの原理を使うと、波の性質をうまく説明できます。
ただし、この現象を説明できるというだけで、あくまで理論上の話です。実際に点から波がでていることを、現実に示すのは無理があります。ホイヘンスの原理に基づいて波に関する現象を計算してみると、その結果は波の現象を正確に説明できるので、真偽はわからないものの、今日に至るまでこの原理に基づく計算が一般に使われています。
ともかく、ホイヘンスの原理によると、光は波であると考える方が物理学的には自然である気がします。更に1723年には、アゴラスポットという光を波と考えないと説明ができない現象が発見されました。
それにも関わらず、当時主流となっていた粒子説が優勢な状況が100年ほど続くことになりました。
波動説にも粒子説にも正しさを証明する決定打がない状況でしたから、ニュートンほどの天才が粒子だと言うのなら粒子なのだろう、と考えた人が多かったのです。
稀代(きだい)の天才、ニュートンの権威によって支えられてきた光は粒子説の時代にも、やがて終止符が打たれるときがきました。
次のコラムでは、ヤングが波の暗唱を発見したことから量子力学へつながっていく歴史をたどってみます。
後編に続く
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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執筆 オクトノット編集部

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